物事を単純化することでことの本質をあぶり出し、理解する上で一助にすることはよくあることです。しかし、政治は多くの国民、地域、自治体によるおかれた状況の違いなどがあり、単純化することで効率よく、政治的な対応ができるかといえば、出来ないことのほうが多いように思います。どこの国でも政党がいくつか出来て、多数意見、少数意見などの調整をどう図るかが政治的には重要な課題となっていると思います。イギリスの政権交代は小選挙区制度によるものです。また、アメリカの2大政党制も政権交代、政権のたらいまわしにより少数派、少数意見を切り捨てるための制度として問題視されています。
自民党政権が小泉政権以来特徴的な運営手法として使っている有識者懇談会なるもの存在が政権運営、日本政治に大きな影響を与えています。この有識者懇談会は、安倍、自民党政権の戦略、戦術つくりの露払い的な役割を負わされています。政権にとっては懇談会だから政府が決めることができると考えているのかもしれません。また、そう主張しているのだと思います。しかし、政府方針、法案を決める重要な起案をこのような私的懇談会に担わせること自身は非常に恣意的であり、問題であると考えます。この新聞報道でも指摘するように結論は決まっているような人選であり、単なる隠れ蓑的な組織として利用しているとしかいえません。
アメリカを中心とする先進工業国の多くが資本主義経済、特に、新自由主義経済を中心とした政治経済運営を行うことで政治経済の矛盾が激化し、そのことが政治的な不安定さを作り出しています。それらの特徴は国家財政の赤字、財政破綻、大手金融機関の破綻、多国籍企業の租税逃れ、法人税率の引き下げ要求などにつながっています。現象面では1%の富裕層が勝者となり、富を1人締めすることで貧富の格差拡大、中間層の没落などが先進工業国での政治経済問題となっています。これらは共通する政治的な特徴です。
リーマンショックから5年が過ぎて、金融危機は表面的には沈静化したように見えますが、新自由主義がもつ政治経済的な欠陥は少しも改善、解決のめどが立たないのが現状ではないかと思います。実際に、アメリカのオバマ政権が誕生し、最悪の金融危機、大手自動車会社の破綻は回避されましたが、リーマンショックを引き起こした政治経済環境は改善されず、ミニバブルの再現が起きているといわれています。貧富の格差は一層拡大し最高の資産家7兆円をこええる資産を1人が所有するという異常さが継続しています。
政治経済が多様性を許容し、それぞれがいろいろな試行錯誤を行うことで、地球環境にとってよい政治経済政策とは何かを探ることが重要になっていると思います。エネルギー政策をとってもそのことが指摘でいると思います。アメリカ型の原子力エネルギー、化石燃料重視のエネルギー政策は危険性、温暖化問題と行き詰まりがあきらかになっています。今起きている政治経済問題は、これまでの政治経済運営、考え方では解決不可能であることを示しています。その今までの古い考え方に縛られることなく、未来を見据えた、新しい政治経済、文化などの模索を行うことが必要です。
しかし、安倍、自民党型政治運営は古い考え方に凝り固まり、富裕層、大手金融機関、多国籍企業にとって有利な政治経済方針しか採用しようとしていません。このことが日本の政治経済的な閉塞感を増加させ、解決不能としているのだと考えます。仲間内からしか意見を聞かない政権運営では矛盾は解決するどころか、さらに深まるしかないことはあきらかです。どうしようもない了見の狭さと、無責任で、長期的視点の欠如した安倍政権、自民党です。そのことを理解できない分析能力の浅さと無知にはあきれるばかりです。
<有識者懇談会に関する報道>
憲法解釈で禁じられてきた集団的自衛権の行使容認などを議論するため安倍晋三首相が設置した有識者懇談会が十七日、参院選をはさんで約七カ月ぶりに再開し、憲法解釈を見直す必要性を確認した。年内に報告書を作る方針だが、メンバー全員が行使容認論者。世論や与党・公明党の理解が得られていないにもかかわらず、結論ありきで解釈改憲を目指す首相の主張を代弁する内容となりそうだ。
「積極的平和主義こそ、日本の背負うべき看板ではないか。新しい時代にふさわしい憲法解釈のあり方を検討する基礎となることを期待したい」
首相は十七日の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)の会合で、こう強調した。
この懇談会は、第一次安倍政権で首相が設置。第二次内閣でも今年二月、全く同じ十三人のメンバーで再スタートした。現在は十四人。いずれも講演や論文などで、集団的自衛権の行使を容認する考えを明らかにしている有識者ばかりだ。
柳井座長は八月のテレビ番組で「憲法解釈変更をして、日米の同盟関係をしっかり運用できるようにすることが絶対必要」と強調。北岡伸一座長代理も「日本の安全保障環境が悪化しているのは事実だ。集団的自衛権を部分的に認めることはあり得ない」と全面解禁を主張した。
懇談会は二〇〇八年に提出した報告書で、公海上の米艦船の防護や弾道ミサイル防衛など四類型で集団的自衛権行使や集団安全保障への参加を認めるように提言した。今回は対象国を米国以外にも拡大する方針だ。
首相は、懇談会からあらためて、解釈改憲への「お墨付き」を得ようとしている。だが、偏った人選の懇談会がまとめた報告書では、とても世論の支持は得られない。
八月の共同通信の世論調査では、集団的自衛権の解釈改憲に「反対」が50・0%に達し、「賛成」は39・4%にとどまった。公明党の山口那津男代表も反対姿勢を崩さない。
首相周辺でも「政権運営は経済中心で、集団的自衛権の議論は急ぐべきではない」と年内の結論を先送りするよう求める意見がある。ただ、首相の思い入れは強く、先送りしても解釈改憲を進めたい姿勢は変わらない。