昨年の大飯原発再稼動後、国内のすべての原子力発電所が再び、すべて止まりました。今年の夏も猛暑記録を塗り替えましたが、大飯以外の原子力発電所がすべて止まっていても全く停電などは起きませんでした。この猛暑の対応は11、12、13年と三回の夏を切り抜けた実績も作り出しました。自民党政権、電力会社、経団連が言うような原子力発電所再稼動は、国策として必要との言い分は全く通用しないことを証明しました。
安倍政権は、国民の原発再稼動反対の声が減少し、再稼動やむなしの世論形成を狙っています。したがって、福島第一原発事故、事故処理などは東京電力任せにして関与してきませんでした。同時に、マスコミの話題になることも避けてきたように感じます。ところが、オリンピック東京招致に福島原発事故、汚染水漏洩に焦点が当たり、政治的に再度、表面化してしまいました。しかも、安倍が行った国際舞台での発言が、国際公約の形になりました。10月に開催される臨時国会、その後の通常国会でもこの発言、この政権の認識が国会質疑で質されることとなります。
自民党型政治の特徴は、日本の政治経済の閉塞、困難さの真の要因を根本的に分析、転換策を検討しないことです。誰が考えても原子力発電に依拠したエネルギー政策が長期的に見て展望があるとはいえないことは分かりきったことです。理由は、ウラン燃料の有限性、核廃棄物処置ができないこと、核分裂の制御は困難さ、事故の過酷さ、テロ攻撃などへの防御困難さなどです。エネルギーコストから言っても再生可能エネルギー、化石燃料によるエネルギーにも勝てないことも分かっています。
安倍政権が場当たり的なエネルギー政策に終始することなく、長期的な見通しを持ったエネルギー政策を立案し、国会での審議を行うこと。福島第一原発事故の事故調査報告の検証を国会の場で行うこと。原子力発電所の再稼動を行わないこと。再生可能エネルギーへの投資を増やし、エネルギーに占める比率を早急に引き上げること。発送電分離を早急に行うこと。各電力会社の電力融通網を補強すること。政治が果たすべき課題、役割が決定的に重要になっています。
<北海道新聞社説>
関西電力大飯原発(福井県)4号機が定期検査に入り、国内の全原発50基が運転を停止する。東京電力福島第1原発事故後、稼働する原発がなくなるのは、昨年5月に北海道電力泊原発3号機が止まってからの約2カ月間に続き2度目となる。
原子力規制委員会は新たな規制基準に基づき、北電を含む電力4社の原発について再稼働の是非を判断する安全審査を既に開始した。規制委が国民の安全を最優先する姿勢を貫けるかどうかの試金石だ。
泊原発は、最大津波の高さを下げた北電の判断をはじめ数々の問題が指摘されている。規制委はこれらの疑問点を徹底的にただし、厳格に審査しなければならない。政府は、規制委が安全を確認した原発から再稼働させる方針を示しただけで、無責任にもエネルギーの将来像をあいまいにしている。
安倍晋三首相は東京への五輪招致の際、福島第1原発の汚染水問題の解決を確約すると同時に、原子力の比率を下げ、今後3年間に再生可能エネルギーの普及を最大限加速させるとあらためて言明した。
国内外に向けて発信されたこれらの言葉は、まさかリップサービスではあるまい。原発依存度を下げる道筋を早急に示すべきだ。期間を区切って原発を縮小していく計画を策定し、それぞれの段階でのエネルギー構成を具体的に提示する必要がある。
規制委は日本原子力発電敦賀原発2号機の直下に活断層があると認定した。こうした危険な原発や老朽化した原発から廃炉にしていく工程表が欠かせない。 規制委の審査は安全のお墨付きを与える手続きではない。淘汰(とうた)される原発を確認する作業ととらえ、最終的にはゼロを目標とすべきだ。
再生可能エネルギーの普及に3年は短すぎる。開発に時間がかかる地熱や、北海道の風力のように送電網の整備を要するものもある。最適な組み合わせを考え、それぞれに数値目標を設定し、潜在力を生かす政策支援が求められる。 長期の目標を見据えた総合的な政策体系を示した上で、国民に負担を求めることもあるだろう。
原発停止による燃料費負担増を理由に、電力各社は次々に電気料金値上げに踏み切った。原発に頼らぬ社会の展望抜きでは、国民は何のために痛みに耐えるのか分からない。処分のあてのない使用済み核燃料や放射性廃棄物、破綻した核燃料サイクルといった原発推進策の矛盾も放置されたままだ。山積した課題を先送りして、なし崩しに再稼働を進めるのは許されない。