2023年新春特別企画
1986年に放送された
NHKドラマ「匂いガラス」のロケ地検証。ドラマエピローグの橋脚と安治川トンネルは10年前に検証を終えていた。しかし、ドラマ終盤に映る大阪の渡船場の特定ができないままだった。10年前はネットで拾える渡船場の情報も少なく広いエリアにある8か所の渡船場のいちいちを当たるわけにもいかなかった。
渡船場MAP
大きな手掛かりとなるのは渡船場の桟橋への通路形状配置。航空写真で調べるもドラマと合致するものは見つけられなかった。あとは周囲の風景から情報を拾うしかなく特徴点を抽出してみた。
・渡船場横に大型のサルベージ船が係留できるだけの川幅がある
・遠景に赤白煙突
・対岸に比較的高層の団地群、屋上形状に特徴あり
・団地群の左手に横縞のある白い倉庫
渡船場横に巨大なサルベージ船が係留されている(制作/著作:NHK)
渡船場一か所につき対岸含め2か所の桟橋、合計16か所のポイントについてGoogleのストリートビューとGoogle Earthを駆使して検証を進めた。そして最終的に絞り込んだのが「千歳渡船場」だった。しかし遠景はドラマの景色と似ていたものの桟橋への通路配置はドラマのそれとはまったく違っていた。赤白煙突も確認できず、サルベージ船を係留するような施設も見つけられなかった。そして何より大きな違いは橋長950米に及ぶ「千歳橋」が渡船場横に架かっていることだ。調べてみるとこの橋の竣工は2003年5月。ドラマ撮影後に架けられたことがわかる。この橋の工事で渡船場の改修が行われたと推測するに至った。
千歳橋によって渡船場が改修され風景が変わる
ロケ地検証の頼りの綱は遠景の団地群風景と白い倉庫のみ。あとは現地調査しかないと考えロケ地までの移動手段の検討を始めた。移動手段に選んだのは路線バス。JR環状線大正駅から大阪府済生会泉尾病院近隣のバス停の路線系統と時刻表をあたる。移動手段にこれほどナーバスになるのには訳がある。ドラマエピローグの橋脚ロケ地取材時には6月の蒸し暑いなか二つの巨大ループ橋を含むおよそ10kmの道のりを徒歩で移動した。この時の苦労がトラウマとなっていた。場所特定までの経緯説明はここまでとしてロケ地の画像比較をしていく。
(ドラマキャプチャー画像全ての制作/著作はNHKに帰属いたします)
ドラマの遠景が場所特定となった特徴的な団地群。このカットが無ければ場所の特定はできなかった(制作/著作:NHK)
ドラマ撮影当時と変わりない現在の団地群
団地群横には白い倉庫(制作/著作:NHK)
白い倉庫は大阪港湾局保税蔵置場だった
団地と保税蔵置場は当時のまま
ドラマの桟橋への通路配置(制作/著作:NHK)
通路の配置は一変していた。ロケ地特定は困難を極めた
千歳渡船場(鶴町側)
対岸から見たドラマロケ地の桟橋
千歳渡船場、千歳橋が大きくのしかかり風景は激変していた
取材してわかったのは渡船利用者は結構多い。渡船は無料で行われていて
運行間隔は10分から20分。全国の渡船がどんどん消滅していくなか今後もこの事業を継続してほしいと願うばかり。
(記事画像は2022年10月31日に撮影)
おまけ
10年前の橋脚取材ではこの40Rループ3層(歩道)を都合4回徒歩で昇り降りする羽目に
匂いガラス ロケ地その1
匂いガラス ロケ地その2
雨月の使者 その1
雨月の使者 その2
雨月の使者 その3
雨月の使者 その4