最終回文庫◇◇雑然と積み上げた本の山の中から面白そうなものが出てきた時に、それにまつわる話を書いていきます◇◇

※2011年9月以前の旧サイトで掲載した記事では、画像が表示されないものがあります。ご容赦ください。

私のコレクション 1枚の書票をめぐって

2012年10月14日 | 限定本





「書票」というのは、「蔵書票」もしくは「書票」と呼ばれることが多くなっている「自分の本」ということをあらわしている紙片のことを言います。日本では「蔵書印」を押すほうが一般的かもしれません。ラテン語の「Ex-Liblis」や、英語の「Bookplate」と表記されることもあります。

このブログでも、前に深沢幸雄氏や水谷昇雅(昇昌)氏の書票作品を紹介していますが、書票(ここでは、そう呼ぶことにします)や、それを集めた書票集もコレクションの対象にしていました。「していました」と過去形なのは、このところ書票の制作依頼もせず、コレクター同士ので交換もせず、書票の全国大会にも参加せず、書票集もほとんど買っていないからです。

自分のコレクションの中で、書票関係のもので一番古い日本のものは……と探していたら、こんな雑誌が出てきました。(「一番古い」かどうかは、まだわかりませんが……。)

「愛書趣味」第5号(大正15年5月25日発行)


表紙に書票が貼り込んであります。編輯兼発行者は齋藤昌三。持っているのは、この1冊だけで、前後の号はありません。
巻末近くに「表紙のエキス、リブリスは、夢二氏の『三味線草』から採った」と説明があります。

「採った」というのは、どういう意味なのでしょう。「夢二」というのは、あの竹久夢二のことでしょうが、その著書に『三味線草』というのがあるようなので、その中にこの絵があり、それを模刻したということ? それとも、竹久夢二本人の作品? どちらなのでしょう。

それは識者にお尋ねすればすぐにわかるのでしょうが、この書票、別のところで見たことがあると思って、関係ありそうな本を探してみました。
そうしたら、『日本の古蔵票』(齋藤昌三著 昭和21年9月20日 書物展望社刊 限定300部 造本:内藤政勝)の中にありました。この本の古書価はけっこうするのに、なぜか手元に2冊あるのですが、どちらも函がありません(^_^;) そのうちの1冊は誂えた帙入りです。本文は陸前白石産和紙に印刷され、書票というものの歴史を詳解しています。

その表紙。表紙だけ『日本古蔵票』と「の」が漢字になっています。標題紙も奥付も『日本古蔵票』です。


著者、齋藤昌三氏(少雨荘)の署名ページ。


巻末に「現代票を拾ふ」というページがあり、古いものは墨1色で色彩が乏しいので、色彩豊かな昭和の時代に作られたものも紹介しておくと、実物が数葉貼り込んであります。


その奥付。



いや、これだけではなかったような気がして、さらに書棚を探すと……ありました。
"BOOK PLATES IN JAPAN"(昭和26年3月15日 青燈社刊 限定70部)の表紙に実物が貼り付けてありました。この簡単な造りの本には、書票の実物が17葉貼り込んであります。

その表紙。


その奥付。


奥付部分だけを拡大。


ちょっと調べてみました。
竹久夢二(没年は昭和9[1934]年)著の小曲絵本『三味線草』は、大正4(1915)年に新潮社から出版されていて、木版が7葉入っているので、初版に限らず古書価はけっこうします。木版の画像を探したところ、あるお店が7葉すべての画像を載せていました。その中にこの書票と同じものがありました。ただ、提供されている画像が小さいので、まったく同じものなのか、それを模刻したものなのかまでは判断が付きません。
『三味線草』の刊行から四半世紀を経て(大正15年発行の「愛書趣味」5号より前にも実物が貼ってあるものがあるかもしれませんが)実物を貼るということは、大量に刷ってあったと考えるよりは、版木がきちんと保存されていて、昭和の時代に刷り増ししたと考える方が妥当かもしれません。

たったこれだけのことを書こうとするだけで、いかに自分の書票の知識が浅薄で、断片的だということがわかりました(^_^;)



【10/17追記】
夢二の『三味線草』はノーベル書房から復刻版が出ているのがわかって、元版は高価で手が出ないので、安価な復刻版を手に入れてみました。
その本で確認すると、この書票と同じ挿絵がありました。ところが、細かな点で差異がありました。
女性の指が違っていたり、女性の髪と背景に輪郭線があったり……

このノーベル書房版の奥付はこんなふうになっています。

昭和 五十 年十二月十二日 印刷
昭和五十一年十一月 一 日 発行

これはどう考えてもおかしいです。印刷してから1年ほど寝かしてあった計算になります。
この本、正確な意味での復刻版ではないようで、挿絵を比べるのも意味がなかった気がします。



















私のコレクション 訳者 ラフカヂオ・ヘルン(2)

2012年10月03日 | コレクション





前記事に続き、5冊セットのうちの1冊、"THE GOBLIN SPIDER" 訳者は同じラフカディオ・ハーンです。

表紙。


挿絵の中から2点。




奥付。こちらは初版です。


裏表紙。



ここに収められた話は、ラフカディオ・ハーンが日本各地に伝わる蜘蛛伝説を集めて、そこから創作したものだと考えられています。













私のコレクション 訳者 ラフカヂオ・ヘルン

2012年10月02日 | コレクション





長谷川武次郎が発行した縮緬(ちりめん)本は21種20冊あるそうですが、大正時代後半に息子の西宮與作が発行したラフカディオ・ハーン訳の日本昔話(JAPANESE FAIRY TALE)は縮緬加工していない大判の平紙版で5冊あります。5冊帙入りのセットで販売されたようですが、手元にあるのは、バラで2冊だけです。2冊とも程度は良好です。
タイトルは"THE FOUNTAIN OF YOUTH"(訳語は「不老の泉」「若返りの泉」など)。
所蔵のものは昭和に入ってからの重版本です。

表紙。


挿絵がいくつか入っています。泉の水を飲んだお爺さんが若返った場面。


その話を聞いたお婆さんは泉の水を飲みに行く。
いつまでたっても帰ってこないお婆さんを探しに行くと、泉のほとりにお婆さんの着物の中にいる赤ちゃんを見つける。
若返りの泉の水を飲み過ぎて、赤ちゃんに戻ってしまったという場面。



奥付。ラフカディオ・ハーンは「ラフカヂオ・ヘルン」と表記されています。



裏表紙。


手元にあるもう1冊、"THE GOBLIN SPIDER"は、次の記事で紹介します。
本当の縮緬本は1冊しか持っていません。縮緬本の状態の良いものは、かなり値が張りますからね。
手触りは柔らかくていいのですが、クタクタしているので、どうしても保存が良くありませんし、これを画像にして、わかってもらえるのか……という心配があります。まあ、おいおい紹介していきます。


縮緬本は梅花女子大学のコレクションが有名です。
http://manabiya.baika.ac.jp/el/index.php?course=7

放送大学図書館の貴重書のサイトでは、何冊かの縮緬本の全場面が見られます。
次回紹介する予定の"THE GOBLIN SPIDER"も、全場面見られます。 
http://lib.ouj.ac.jp/gallery/virtual/index.html













私のコレクション 谷川俊太郎 限定版

2012年10月01日 | 限定本





限定部数は記載されていませんが、稀少部数ではないようです。

表紙。市販本と同じですが、表紙、本文用紙とも石州和紙を使っています。


奥付。活字を使わずに、挿絵・本文と同じ瀬川康男さんの手書きです。

(無理に開けないので、スキャナーにかけられません。撮影なので多少歪んでいます)

初めから署名が入っているわけではなく、新刊書店で谷川俊太郎さんのサイン会の時にいただいたご署名。