赤江瀑氏が作家デビュー前に、長谷川敬(本名)の名前で詩作を発表していたことは知られていますが、その全容を調査した方はいるのでしょうか。
同人誌「詩世紀」昭和28年3月号(4巻3号)
その目次。「超の抒情」という作品が掲載されています。
赤枠の部分です。部分拡大しました。
著作権がありますから、作品自体を載せることは出来ません。
現物を手に取って、作品が載っているかどうかを調べられないことがほとんどなので、なかなか集まりません。
全容ならずとも、調べた方がいらっしゃればご教示ください。
北杜夫には昭和30年代に絵本の作品が2種3冊あります。
昭和36(1961)年に別冊キンダーブック物語絵本 秋の号 として『みつばちぴい』(和田誠・絵 フレーベル館)が出版されました。
昭和38(1963)年には月刊予約絵本「こどものとも」(福音館書店)90号として『ローノとやしがに』(得田壽之・絵)と、トッパンのキンダー絵本(フレーベル館)として『みつばちぴい』が出版されました。
一時期は北杜夫作品も集めていたのですが、当時は芥川受賞作品『夜と霧の隅で』の元帯付を始めとして、『どくとるマンボウ航海記』『羽蟻のいる丘』『楡家のひとびと』『船乗りクプクプの冒険』など帯付の状態の良いものは皆、高価でした。そのため、次第に集める気力が失せてきました。
実のところ、当時は『みつばちぴい』は程度が良くないけれども手に入れたと思い込んでいたのです。
本当は、昭和38年刊の所蔵本より2年も前の昭和36年に「別冊キンダーブック物語絵本 秋の号」で刊行されたのが初出だとは知りませんでした。
知っていたら、北杜夫全作品蒐集という目標からもう少し早く撤退していたでしょう。
トッパンのキンダー絵本の表紙。マルシ―表示が1963となっているだけで、奥付はありません。
『みつばちぴい』は、その後、昭和59年4月に復刊され、現在は「復刊絵本セレクション」( Kindle版)でご覧になれます。
その表紙。
もう1冊の絵本『ローノとやしがに』は厄介です。
月刊予約絵本「こどものとも」の市販本(並製)の表紙。
裏表紙。
当時、「こどものとも」は並製の市販本のほかに、「特製版」という名称で図書館用のハードカバー版が同時に出版されていたのです。並製版が定価100円に対して、ハードカバーの特製版は倍の200円でした。
特製版の表紙。
特製版の裏表紙。
この本に「特製版」があると説明した文章や、実際に古本として特製版を販売しているのを見たことはありません。
※(注)現在も「特製版」という表記が使用されていますが、「市販本ではなく、幼稚園・保育園に直接販売する販売代理店の専売品として、月刊誌の旧号をハードカバー化したもの」で、月刊誌と同時に刊行されていた「特製版」は制作されなくなっています。
Wikipediaの「北杜夫」の項に、下に紹介した小学館の創作童話シリーズは載っていても、この作品自体の記載が無いのはなぜなのでしょう。
この本は、版元の福音館書店の創業50周年記念に1号から50号、51号から100号というセットで復刻版が出版され、以後も節目の年に再刊されたことがありますが、セット販売なので、この1冊だけというのは購入できません。
セットをバラして単品で販売する古書店をたまに見かけるので、運が良ければ手に入ります。
バラで購入した復刻版があったので、その裏表紙。
奥付部分の拡大。
赤枠で囲った部分が復刻版の表示ですから、初版だと思い込んで「安い!」とつい買ってしまわないようにご注意ください。
『ローノとやしがに』は画家を山田哲也に変えて、小学館から創作童話シリーズの1冊として昭和54年6月に出版されましたが、現在は新刊では購入できません。
その表紙。
さらに絵本つながりで、思い出すままに書き連ねると……
翻訳絵本で、ヘルメ ハイネ作『カラスのリヒャルト』、『ぞうさんのおだんご』(ともにCBS・ソニー出版1979年)がありました。
知り合いの絵本編集者から『ぞうさんのおだんご』を探している高名なイラストレータがいると聞き、何冊か持っていたので差し上げたところ、喜んでいただいたこともありました。お礼にサイン入りのカレンダーをいただきました。
このシリーズには、星新一が訳した『トマニ式の生き方』という作品もありました。
このシリーズは裏表紙に訳者のことば、他のシリーズ作品名が袖に印刷された透明なアクリルカバーが付いていますが、スレやすいこともあって、綺麗なものはなかなかありません。
探したら『カラスのリヒャルト』が出てきました。
その表紙。
……こう書いていて、『スカーリーおじさんの世界旅行』(中央公論社刊)という大判の絵本があったことを思い出しました。
それは次記事で……。
『年を歴た鰐の話』は平成15年9月、翻訳者の山本夏彦(2002年10月23日逝去 享年87歳)の一周忌を前に文藝春秋社から復刊されました。
復刊から10年近く経つ2014年2月時点で、新刊としての購入は既に出来なくなっているようです。
AMAZONに載っていた復刊本の解説には「昭和17年初版の作品が、昭和22年の再版を底本として新たにふりがなを加えて遂に復刊」とありますが、手元の初版(桜井書店版)の発行年月は昭和16年7月ですから、このデータベースには誤りがあります。
桜井書店版 昭和16年の初版。残念ながらカバー欠です。
標題紙
奥付
本文
文藝春秋社から復刊されたものは横判なので、底本にした昭和22年版は横判なのではないかと推測していたら、ネットオークションに昭和22年の4版が出品されているのを見つけました。
画像を見たら、はたして横判でした。その本はカバーも無く、綴じ糸もほつれかかっていて状態が悪く、誰も入札していませんでしたが、出品価格は驚きの5万円!
文藝春秋社刊の復刊本。
トンネル函
表紙
巻末には吉行淳之介の文春文庫『読書と私』所収の「幾つかの『一冊の本』」からの抜粋、久世光彦の山本夏彦著『私の岩波物語』(文春文庫)の解説を転載したもの、徳岡孝夫の解説(新稿)が載っています。
吉行淳之介は昭和22年版を、定価30円という当時にしたら高価だったのを新刊で購入しているんですね。
久世光彦によれば、 「昭和十六年初版のこの訳本は、とうの昔に絶版になっていて、所蔵している人が数えるほどしかいないので、今やいわゆる《知る人ぞ知る》本と言われているらしい。」 なんだそうで、私が初版を所蔵していることを知っていた知り合いの編集者を通して、某有名作家に貸したことがあります。
「年を歴た鰐の話」の初出は昭和14年4月1日発行「中央公論」春季特大号(通巻619号)。手元に初版があるのだから、初出誌もあってもいいかなと検索してみたら、ヒットした古書価は4500円! うーん、雑誌で4,500円かぁ……まあ無くてもいいやということにしました。
初版から40年近くが経過した1986年、新たに訳者を出口裕弘にして刊行したのは福音館書店でした。
装丁デザインは堀内誠一。「ショヴォー氏とルノー君のお話集(全5巻)」の第1巻、『年をとったワニの話』というタイトルで刊行されました。
函オモテ
函ウラ
表紙
この単行本のシリーズも残念ながら「品切れ・重版未定」ですので、現在、新刊で入手可能なのは、福音館文庫版の『年をとったワニの話』(本体価格735円)だけです。
表紙
「ショヴォー氏とルノー君のお話集」の本書以外の4冊は以下です。(本体価格は2014年3月現在)
『子どもを食べる大きな木の話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈2〉』(683円)
『名医ポポタムの話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈3〉』(788円)
『いっすんぼうしの話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈4〉』(630円)
『ふたりはいい勝負―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈5〉』(788円)