最終回文庫◇◇雑然と積み上げた本の山の中から面白そうなものが出てきた時に、それにまつわる話を書いていきます◇◇

※2011年9月以前の旧サイトで掲載した記事では、画像が表示されないものがあります。ご容赦ください。

私の絵本コレクション *クヴィエタ・パツォスカー(2)"PRINC A MALA PRINCEZNA"

2014年08月30日 | 絵本




本書の著者は先に紹介した詩集"Primpilim pampam"と同じ、ヨゼフ・ハンスリーク(JOSEF HANZLIK)です。イラストをクヴィエタ・パツォスカーが担当しています。

"PRINC A MALA PRINCEZNA"
タイトルを訳すと『王子とちいさなお姫さま』となるようで、
1989年刊 240ページと厚みがあります。

 表紙。


 裏表紙。




本書は表紙 →見返し →表題紙 という普通の本の構成と違っていて、複雑になっています。
表紙を開くと見返しがあるのは普通の本と同じですが、見返しの裏にも見返しのイラストを逆版で使っていて、表題紙にあたるページにはイラストがあるだけで、それをめくると見開きのイラストがあります。
左ページ上には作者の名前、下には出版社ALBATROSの名前、右ページの上に本のタイトル、下に発行地名のPRAHAがあります。


さらにページをめくると、右ページは表紙と同じイラストで、上と下に本のタイトル、左ページのイラストは右ページのイラストを逆版で使ってあり、上に作者名、下にクヴィエタ・パツォスカーの名が入っています。




表紙にクヴィエタ・パツォスカーの表示はなく、ここにきて初めて名前が出てきます。


さらにページをめくると、左ページのイラストの下に前奥付があります。




対向する右ページは第1章のイラストとタイトルがあり、8ページからお話が始まっているようです。

読めないチェコ語にクヴィエタ・パツォスカーのイラストだと、ストーリー展開が推測できず、ただイラスト見て楽しむだけです。



前奥付は発行年だけですが、うしろにも奥付があります。




他の本と比べて類推すると、緑色の下線を付したところが印刷部数だと思われます。
「Naklad」というのが印刷部数で、「Vytisk」というのが「部」にあたる言葉のようです。
ですから、本書の初版部数は9500部ということになります。

※絵本コレクションには「絵本」に関連した作品も含みますので、ご了承ください。




私の絵本コレクション *クヴィエタ・パツォスカー(1) "Pimpillim pampam"

2014年08月29日 | 絵本



ドーレア夫妻の絵本が続いたので、ちょっと毛色の違う人の作品を紹介します。


"Pimpillim pampam"はチェコの詩人・作家ヨゼフ・ハンスリーク
(Josef Hanzlik 1938.2.19~2012.1.26)の詩に、クヴィエタ・パツォスカー
(Kveta Pacovska 1928.7.28~ )がイラストを付けています。

所蔵本は1981年発行の初版と1988年発行の再版の2冊で、発行部数は初版が10,000部、再版は15,000部です。

初版と再版では表紙カバーの絵柄が違い、初版のカバーは加工されていないザラつきのある手触りですが、



1988年版はカバーの表面がPP加工してあります。




再版のカバーの絵柄によく似たイラストも収められています。


カバーを外した表紙は、どちらも布装であることには変わりませんが、箔押ししてある絵柄が違っています。

初版。



再版。



初版の収録作品数が41タイトル、64ページなのに対して、1988年版は2部構成になって収録作品数が52タイトル、80ページと大幅に増えています。その分、イラストも増えています。

チャペックのことを調べていたときに、ユニークなイラストを描く人がいるものだなぁと興味が湧いたのが、このクヴィエタ・パツォスカーでした。
チェコ語はまったくわからないのに、目につくたびに値段と相談しながら、少しずつ所蔵が増えてきました。


1990年2月1日~4月15日まで、ちひろ美術館で「色彩と空間の魔法使い クヴィエタ・パツォウスカー展」が開かれ、高槻、長岡、東広島市を巡回しました。
2013年も7月12日~9月17日まで、安曇野ちひろ美術館で「色の音 紙の詩 クヴィエタ・パツォウスカー展」が開かれていたので、ご覧になった方をいらっしゃると思います。




私の絵本コレクション *ドーレア夫妻(5) "OLA and BLAKKEN"

2014年08月28日 | 絵本





本書は"OLA"(邦訳『オーラのたび』)出版の翌年の1933年に出版されました。"OLA and BLAKKEN" 
    
 表紙
 


 所蔵本は1933年刊の初版ですが、
 ページの破れを接着テープで補修したために、
 汚らしく変色した糊跡がいくつもあります。

 表題紙。
 


 奥付部分
 


 ストーリーはドーレア夫妻(3)で紹介した
 『トロールのばけものどり』と同じですが、
 ほぼすべての場面が描き直されています。


 木のてっぺんにとまった「ばけものどり」を描いた場面は
 『トロールのばけものどり』とは違う描き方なので紹介します。
 


 左下の変色した部分が接着テープの跡です。ページの破れを
 接着テープを貼って直そうとするのは、最も愚かしい行為です。



 個人的にはオーラと老馬ブラッケンを描いた表紙が好きですが、
 内容にはそぐわない感じがします。

 30数年後に「ばけものどりを退治する話」として描き直したのは、
 "The Terrible Troll・Bird"が残したかった作品なのでしょう。


 1939年に誕生した長男は、オーラと名付けられたそうです。













私の絵本コレクション *ドーレア夫妻(4)"ANIMALS EVERYWHERE"

2014年08月27日 | 絵本






"ANIMALS EVERYWHERE"初版は1940年。所蔵本は1954年以降の版です。




表紙と同じ絵柄のカバーが付いています。




奥付。




裏表紙。





同じ内容のものが Books Children's Collection の1冊として
"D'AULAIRES’BOOK OF ANIMALS"というタイトルで復刊されています。

中の絵柄を使って表紙がデザインされています。ご本人が亡くなっているので、デザイナーの手によるものと思われます。




表紙として使われたページがこちら(実際は見開きに絵があります)ですから、結構大胆にトリミングしていますね。




この復刊本では、裏表紙は本についての解説が入っているだけになっているのは、ちょっともったいないです。数年前にAMAZONで購入しましたが、現在も購入可能のようです。本文はジャバラになっていて、折り本仕立が伸びる斬新さがあります。残念ながら、両面テープで接着されている部分が糊の劣化で全部剥がれてしまっています(^_^;)












私の絵本コレクション *ドーレア夫妻(3)"The Terrible Troll・Bird"

2014年08月25日 | 絵本





原題は"The Terrible Troll・Bird"




邦訳は『トロールのばけものどり』(いつじあけみ/訳 2000年 福音館書店刊)



今回は原書と邦訳の表紙を並べるだけにします。



著者のドーレア夫妻の経歴は原書や邦訳本の巻末に紹介されていますが、正確な情報が得られなかったようで、情報に違いが見られることに対して、苦言を呈しておきます。

★ 夫のエドガーの出生地 ★
邦訳『ひよこのかずはかぞえるな』(瀬田貞二/訳 所蔵本は1978年2月20日第2刷 福音館書店刊)と邦訳『オーラのたび』(吉田新一/訳 所蔵本は1986年9月10日第4刷 福音館書店刊)では「スイスで生まれ」になっています。原書 ”Troll”(1972年)でもスイスになっています。
しかし、邦訳『トロールのばけものどり』(いつじあけみ/訳 所蔵本は2001年7月15日第2刷 福音館書店刊)では「ドイツのミュンヘンに生まれ」となっています。その原書 ”The Terrible Troll・Bird” の巻末の経歴が書いてある文には生誕地についての記述はありません。訳者か担当編集者が別資料で調べたのかもしれません。


★ 没年 ★
夫のエドガー・ドーレアは(1989年~1986年5月)、妻のイングリ・ドーレアは(1904~1980年10月)ですから、夫より6年早く亡くなっています。
邦訳『オーラのたび』の初版が出たのは1983年ですから、妻のイングリ・ドーレアはすでに亡くなっていました。しかし、巻末の訳者による著者の経歴の文中では、妻イングリ(1904~ )、夫エドガー(1898~ )と存命中の扱いになっています。
邦訳『オーラのたび』の第4刷が刊行された時(1986年9月10日)には、すでにふたりとも亡くなっていますが、没年を入れなかったのは重版担当者のミスです。そうは言っても出版社の事情で、品切れ期間が長かった作品を急に重版することもあり、チェックせずにそのまま印刷されてしまうこともあるのだと思います。


★ アメリカに定住した年 ★
『オーラのたび』と『トロールのばけものどり』では1929年、『ひよこのかずはかぞえるな』では1930年になっています。どちらが正しいのでしょうか。


印刷された内容は、独り歩きを始めます。事実確認されないまま安易に引用され、さらにそれが孫引きされて……となると、何が正しいのかわからなくなっていきます。
著述を生業にする人、編集者は情報を正確に伝えていく責任があることを自覚していただきたいと思います。

文筆のプロではなくても、こうしたブログで情報発信するときは、ネット情報に限らず印刷されたものであっても、まったく悪意は無くても、「情報」を掻き集めて内容を鵜呑みにして発信してしまうと、不確かなはずの部分が消えて確かな情報として拡散していくことがあります。
情報の扱いには危さが含まれていることを自覚することが大切です。自戒を込めて……。










私の絵本コレクション *ドーレア夫妻(2) 『オーラのたび』

2014年08月24日 | 絵本






(夫)エドガー(1898~1986)と(妻)イングリ(1904~1980)はミュンヘンの美術学校で出会い、1925年に結婚。1929年にアメリカに移住。アメリカ児童文学の育ての親と言われるアン・キャロル・ムーア女史の勧めで絵本を共作するようになり、1932年にデビュー作ともいえる、この "OLA" が生まれました。



カバーが付いていますが、下部に痛みがあったのでしょう。
10ミリほど切り取られていて、寸法が足りなくなっています。


所蔵本は刊記が無く、おそらく1960年代の図書館用の廉価版の除籍本で、表紙は布装で表紙と同じ絵柄が印刷されています。





邦訳は『オーラのたび』吉田新一/訳 福音館書店刊 1983年初版。カバーは元々ありません。
所蔵本は1986年第4刷。




原書と比べると、スミ版のリトグラフの調子が若干つぶれ気味で、のっぺりした感じになっているのが残念です。















私の絵本コレクション *ドーレア夫妻(1) 『トロールものがたり』

2014年08月24日 | 絵本





絵本のコレクションの中で、最初に取り上げるのは、ドーレア夫妻の作品です。

翻訳された作品もかなりあり、いくつか紹介していこうと思います。まず "TROLLS" から……。


"TROLLS" 1972年初版。所蔵本は図書館版で除籍されたものですが、状態はさほど悪くありません。




巻末の説明によると、この本の中のモノクロの絵は印刷技術のうちで最も古い方法のひとつ、リトグラフで刷られ、カラーの絵はアセテート板を使い、スミ版の絵を基本に各原色を重ねて色を出す近代的方法で印刷され、活字はスタンリー・モリソンによってロンドン・タイムズのために設計されたタイムズローマン体14ポイントを使用しているということです。


邦訳『トロールものがたり』は1978年にほるぷ出版から、2001年に童話館出版から出版されています。

『トロールものがたり』ほるぷ出版 1978年の表紙。著者名表記が「ドーレア」ではなく「ダウレア」になっています。






『トロールものがたり』童話館出版 2001年の表紙。





はるぷ出版版は原書の印刷方法に近いもので印刷されていて、網点がありません。
童話館版は、ほるぷ出版版の復刊といっていますが、4色分解による印刷で、網点があります。

同じ図柄を見てみると……

まずは、ほるぷ出版版。






童話館版。






そして原書。





画面ではその違いはわからないと思います。









私のコレクション 石井桃子『ノンちゃん雲に乗る』

2014年08月23日 | 童話






私が最初に読んだのは、カッパブックスの『ノンちゃん雲に乗る』でした。
当時の大ベストセラーです。


元版の大地書房版を目にしたのは、ごく最近のことでした。




その奥付。残念ながら初版ではなく、再版です。




財団法人大阪国際児童文学館が選定した「日本の子どもの本100選(1946~1979)」のサイトを見ると、初版本の地味な書影が載っていました。
(【参考】→ http://www.iiclo.or.jp/100books/1946/htm/frame002.htm )

初版は昭和22年2月20日発行で、初版発行から2年後に出た再版(桂ユキ子装画/松本かつぢ装幀)です。
初版から再版で、表紙をガラッと変えています。初版の表紙があまりにも地味で、売れ行きが悪かったのでしょう。


記憶にある光文社版の単行本は紺色の表紙はこんなふうでした。ネットで探しました。




家にあった、カバーが取れて裸本だった新書版も、元は同じデザインのカバーが付いていた記憶があるのですが……。
評判になったのは、光文社版が出てからのようです。





私のコレクション 『日本の書物』庄司浅水著 限定版

2014年08月05日 | 限定本





著者の庄司浅水という名前は、子どもの頃からなじみがありました。というのも、小学生の時に友だちの家に遊びに行くと、近くに「庄司浅水」という表札がかかったお宅があったのです。そのときは変な名前だと思ったので、特に印象に残っているのです。

今から思うと、家の近くには『肉体の門』で知られる作家の田村泰次郎やシャンソン歌手の石井好子の家があり、小学校高学年の時にはちょっと離れた、自転車で遊びに行く公園の池のほとりに、有名歌手の家が建ち、話題になったことがありました。東京の杉並区での話です。


『日本の書物』庄司浅水著 美術出版社 1978年6月刊には市販本の他に限定本(限定部数225部)があります。


総革装の表紙。
画像では、デザインが飛び出しているように見えますが、実際は金箔押しで窪んでいます。



デザインはケルスティン・ティニ・ミウラ女史で、見返しマーブル、総革装、天金、函帙に収められています。


函帙。表紙と同じデザインの空押し。



マーブルの見返し。



識語署名のページ。



「225部のうち200部に1~200の番号を入れ、25部は「非売」としてⅠ~XXVの番外数字を記入した」とあります。


当時はおそらく予約満席で手に入らなくて残念がった人もいたのでしょうが、

刊行から36年経った今、調べてみると、当時の販売価の半額以下で入手できるようです。