最終回文庫◇◇雑然と積み上げた本の山の中から面白そうなものが出てきた時に、それにまつわる話を書いていきます◇◇

※2011年9月以前の旧サイトで掲載した記事では、画像が表示されないものがあります。ご容赦ください。

私のコレクション 北杜夫の絵本 補遺

2014年03月19日 | 北杜夫



北杜夫の絵本がまだありました。
1985年、河出書房新社刊の『地球さいごのオバケ』(絵/ラヨス・コンドル)




前に書名だけ挙げた『ぞうさんのおだんご』が出てきたので、書影をアップします。
こちらは透明アクリルカバーをかけたままスキャンしたもの。




裏表紙。





アクリルカバーをはずすと、かなり寂しくなります。





作者のヘルメ ハイネ氏が来日した時にいただいたサイン入りです。












私のコレクション 北杜夫の絵本 その2

2014年03月14日 | 北杜夫





前記事「北杜夫の絵本」につづく記事です。

昭和46年に中央公論社から大判の絵本『スカーリーおじさんの世界旅行』が出版されました。

帯の拡大。




この本には日本語対訳テキストが、別冊として付いています。
96ページもあるので、脱落しないように、本のビニールカバーにはさみこんであります。






「まえがき」の冒頭部分。


書き出しは以下のようになっているのですが、私の誤植ではありません。
文意がチンプンカンプンですね。
「ハレンチというもさら、世人にゲップと恐慌をもたらすことに、私はこのスカーリーおじさんの「てんやわんやの世界旅行」という本を訳すことになりました。」


本文にも別冊にも奥付表記がありますが、別冊の奥付に誤植を発見してしまいました。

「昭和46年2月10日印刷 昭和45年2月25日発行」となっています。

発行の後に印刷というのはあり得ないですね。本文の方の奥付は正しく昭和46年2月25日発行になっています。

全部に目を通せば、さらに誤植を見つけられるかもしれません。


なお、Wikipediaの「北杜夫」の項に、この著作の記載はありません。




「絵本」というよりは「よみもの」ですが、こんな著作もありました。

『よわむしなおばけ』文・北杜夫 絵・和田誠 旺文社こどもの本 昭和53年7月15日発行



受験問題集でおなじみの旺文社が、こどもの本をシリーズで出していたんですね。











私のコレクション 北杜夫の絵本『みつばちぴい』『ローノとやしがに』ほか

2014年03月13日 | 北杜夫






北杜夫には昭和30年代に絵本の作品が2種3冊あります。

昭和36(1961)年に別冊キンダーブック物語絵本 秋の号 として『みつばちぴい』(和田誠・絵 フレーベル館)が出版されました。

昭和38(1963)年には月刊予約絵本「こどものとも」(福音館書店)90号として『ローノとやしがに』(得田壽之・絵)と、トッパンのキンダー絵本(フレーベル館)として『みつばちぴい』が出版されました。

一時期は北杜夫作品も集めていたのですが、当時は芥川受賞作品『夜と霧の隅で』の元帯付を始めとして、『どくとるマンボウ航海記』『羽蟻のいる丘』『楡家のひとびと』『船乗りクプクプの冒険』など帯付の状態の良いものは皆、高価でした。そのため、次第に集める気力が失せてきました。

実のところ、当時は『みつばちぴい』は程度が良くないけれども手に入れたと思い込んでいたのです。
本当は、昭和38年刊の所蔵本より2年も前の昭和36年に「別冊キンダーブック物語絵本 秋の号」で刊行されたのが初出だとは知りませんでした。
知っていたら、北杜夫全作品蒐集という目標からもう少し早く撤退していたでしょう。

トッパンのキンダー絵本の表紙。マルシ―表示が1963となっているだけで、奥付はありません。



『みつばちぴい』は、その後、昭和59年4月に復刊され、現在は「復刊絵本セレクション」( Kindle版)でご覧になれます。


その表紙。





もう1冊の絵本『ローノとやしがに』は厄介です。

月刊予約絵本「こどものとも」の市販本(並製)の表紙。


裏表紙。


当時、「こどものとも」は並製の市販本のほかに、「特製版」という名称で図書館用のハードカバー版が同時に出版されていたのです。並製版が定価100円に対して、ハードカバーの特製版は倍の200円でした。

特製版の表紙。


特製版の裏表紙。


この本に「特製版」があると説明した文章や、実際に古本として特製版を販売しているのを見たことはありません。

※(注)現在も「特製版」という表記が使用されていますが、「市販本ではなく、幼稚園・保育園に直接販売する販売代理店の専売品として、月刊誌の旧号をハードカバー化したもの」で、月刊誌と同時に刊行されていた「特製版」は制作されなくなっています。


Wikipediaの「北杜夫」の項に、下に紹介した小学館の創作童話シリーズは載っていても、この作品自体の記載が無いのはなぜなのでしょう。

この本は、版元の福音館書店の創業50周年記念に1号から50号、51号から100号というセットで復刻版が出版され、以後も節目の年に再刊されたことがありますが、セット販売なので、この1冊だけというのは購入できません。
セットをバラして単品で販売する古書店をたまに見かけるので、運が良ければ手に入ります。

バラで購入した復刻版があったので、その裏表紙。



奥付部分の拡大。
赤枠で囲った部分が復刻版の表示ですから、初版だと思い込んで「安い!」とつい買ってしまわないようにご注意ください。





『ローノとやしがに』は画家を山田哲也に変えて、小学館から創作童話シリーズの1冊として昭和54年6月に出版されましたが、現在は新刊では購入できません。
その表紙。



さらに絵本つながりで、思い出すままに書き連ねると……

翻訳絵本で、ヘルメ ハイネ作『カラスのリヒャルト』、『ぞうさんのおだんご』(ともにCBS・ソニー出版1979年)がありました。

知り合いの絵本編集者から『ぞうさんのおだんご』を探している高名なイラストレータがいると聞き、何冊か持っていたので差し上げたところ、喜んでいただいたこともありました。お礼にサイン入りのカレンダーをいただきました。

このシリーズには、星新一が訳した『トマニ式の生き方』という作品もありました。
このシリーズは裏表紙に訳者のことば、他のシリーズ作品名が袖に印刷された透明なアクリルカバーが付いていますが、スレやすいこともあって、綺麗なものはなかなかありません。

探したら『カラスのリヒャルト』が出てきました。
その表紙。




……こう書いていて、『スカーリーおじさんの世界旅行』(中央公論社刊)という大判の絵本があったことを思い出しました。

それは次記事で……。













私のコレクション 北杜夫の自費出版本 『幽霊』

2014年03月10日 | 北杜夫





この自費出版本は、もともと部数が少ないだけあって、帯の有無で古書価が大きく違う代表格と言えるのではないかと思います。
試しに検索してみると、帯付署名入りは帯無し署名入りに比べると、3倍ほども高い値段が付いていました。


この本は手元に2冊あります。1冊は古書店で購入したもので、もう1冊が今回書影を載せたもので、ある方からいただきました。
残念ながら、どちらにも帯はありません。


表紙




ジャケットを広げて




見返しにはペンによる署名がありますが、宛先が私ではないので、修正してあります。




奥付




私にこの本をくださったその方は、北杜夫が慶応病院の医局で働いていた時の同僚だったそうです。
水産庁調査船の船医として半年近く航海したときのことをもとに書いた「船上にて」を雑誌「文藝首都」に連載し、それを『どくとるマンボウ航海記』として中央公論社から出版し、大ベストセラーになって有名作家の仲間入りをした訳ですが、この時、船医への応募書類を本人の代わりに書いてあげたのが宛名の方だったのです。応募書類を書いてくれたお礼に、この『幽霊』を献呈してくださったのだそうです。

私にくださったこの方は、絵本画家として活躍されていますが、飲みながら話をしていた時に、私が北杜夫のファンだと知ると、差し上げますよと……その時は酔った勢いでおっしゃったのかと思っていたら、後日、ちゃんと送ってくださったのです。

献呈してもらった時から包装紙でカバーをかけていたそうで、ジャケットにほとんどシミもなく、元パラフィンもかかったまま(掲載画像は、パラフィンをはずしてスキャン)の状態です。