磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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077バーバラが“原爆乙女”……

2006年06月03日 | Ra.
ラヂオアクティヴィティ[Ra.]
第一部ブロック・バスター

四、インスタント・カーマ

077バーバラが“原爆乙女”……



しかし、マイクはまだ“原爆乙女”なら、生きていてくれるのだから、幸せな方ではないだろうかー。
いや、多くの苦しみを背負って生きているより、むしろ一瞬にして死亡した方が幸せなのだろうか……。

マイクの心は混乱を究めた。
椅子をふりあげた。

勇気は後ろから、マイクの腕をとって、
「冷静になれよ!」
と説得した。

「うっうっうっ」
マイクは真っ赤な顔をして、ブルブルと震えている。

「椅子を投げたって、どうにもならないぜ。クールになれよ」
と睨みつけた。

「わかったよ……」
その声は高音で弱々しく、ついにマイクは泣きだした。

“原爆乙女”をアメリカ人は、アメリカの世界最高の技術で、そのケロイドをとる形成外科をした。
そうボランティアで、何と慈悲深いアメリカだと思った。
しかし、もしロシアがそんな行為をしたって……。
おわびなんかになるものか……。俺のバーバラだぞ!

「ぜったいにロシアを許さない」
マイクは唇をかみしめた。
原爆乙女に援助の手をアメリカは与えたと威張っていたマイク。
そんなことを、すっかり忘れている。

「ロスに原爆が落ちました。軍事アナリストの鬼頭先生に来てもらいました」
「えー、ついに来たのですね。こうなることは、わかっていたのです」
「わかっていたのなら、なぜ、早く言わない!」
マイクはテレビに向かって、強い口調で訴えた。
しかし耳をかさなかったのは、マイクの方である。

ロスアンジェルスの地図が出され、コンピューターで死亡者を予測している。
「ロスの中心部は、もはや壊滅です。人間のすべては分子に変えられました。この人たちは、幸福といえます。その回りの人たちには、生き地獄が待っています。つまり、片足がなくなったり、失明したりするのです。いいえ、失明しているでしょう。そして、すぐにも急性症状があらわれます。この辺りの人たちは、二十四時間のうちに死亡します。断末魔は激しいものがあるでしょう。その回りの人たちの命は助かるでしょうが、火事などから逃れるために、パニックになるでしょう。銃器の自由なアメリカでは、略奪なども起こるでしょう」

「天気予報じゃないぞ!」
勇気は怒った。何十万という人たちが死んでいくのに……。

「助かる道はあるのでしょうか?」
「いいえ、ないでしょう。日本もどうなるかわかったものではありません」








閑話休題

核戦争などはない。
どうして、そんなことが言えるのだろうか?

核兵器をもつこと自体が異常なのに。
異常な世界をつくりあげて、
それが正義などといえる人たちがいるのだ。

戦時と平和な時とを分けてはいけない。
そこで、もう彼の論理に服したことになる。

チンピラのような人間の
脅しにのっても、
平和はこない。






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