香が散る

本を読むのが大好き、少し前からノロノロですが走るのも好き
そんな、代わり映えのしない、でも大切な日々を書き綴っています

リアル・シンデレラ

2014-02-11 19:31:09 | 本のこと
先日、第150回直木賞を受賞された
姫野カオルコさんの
『リアル・シンデレラ』

 童話「シンデレラ」について調べていたのを機に
 ライターの<私>は、長野県諏訪市に生まれ育った
 倉島泉について、親族や友人に取材をしてゆくことになる。
 両親に溺愛される妹の影で理不尽なほどの扱いを
 受けていた少女時代、地元名家の御曹司との縁談、
 等々。取材するうち、リッチで幸せとは何かを、
 <私>が問われるようになるドキュメンタリータッチのファンタジー。


直木賞を受賞された作品『昭和の犬』は
そんなに読む気はなく、他の作品も今までは
あまり興味を持っていなかったのですが
この『リアル・シンデレラ』においてだけは
読みたいと思っていました
ラジオ「安住紳一郎の日曜天国」で
姫野カオルコさんからのお手紙で、
アシスタントの中澤由美子さんのファンで
この小説に出てくる人物に中澤さんをイメージした
などのお話が紹介されたり
(Podcast「姫野さんからの手紙」に詳しいです)
直木賞を受賞された時に出たラジオ番組
「ラジカントロプス2.0 文学賞メッタ斬り!」に
ゲスト出演された時のPodcastで
姫野さんご自身にとても興味を持ったのです
・・・長々と前段を・・・

読んでみて、いや、読み始めてすぐに
「これは好きな感じ」と夢中になりました
泉(セン)ちゃんの小さな頃の不遇には
いたたまれない思いをしたりしながらも
その考え方、受け止め方に、心が震えました
そして、ずっと心を震わせ、静かに読み終えました
がっかりすることは、正直に生きている者には
必ずあるから、そのときは、気配を消せばいい

泉(セン)ちゃんの周りにいた人たちの
告白を元に作られた小説ですが
周りの人たちの、傲慢さも優しさもみんなみんな
一生懸命に生きているからだと思える
ただ、どうしても泉(セン)ちゃんがいじらしくて
仕方がない気持ちを捨てきれないわたしは傲慢だ
だって、泉(セン)ちゃんは、とても幸せなんだから
いまは、何をしているのだろう
どこかで静かに笑っている筈だと信じている
すごく思い入れてしまう小説に出会ってしまいました

  

先週、少し読書力が落ちている時に
ずっと少しづつ再読していたのは
宮本輝さんの流転の海シリーズ
第6部『慈雨の音』

いま、第7部を雑誌連載中なので、
今年には単行本として出るだろうと思い
1回しか読んでいなかったので、再読
やはり、色々なことを忘れていたけれど
たくさんの宝物をもらって読み終わりました
このシリーズは、最後まで読みたいし
何度でも再読する小説だと思うのです

  

そして、第150回芥川賞受賞
小山田浩子さんの『穴』
単行本ではなく、選評も読みたかったので
文芸春秋3月号を購入しました


選考委員でもある宮本輝さんがご自身のHPで
受賞作ではなく、岩城けいさんの『さようなら、オレンジ』を
すごく押した、いい小説ですとおっしゃっていたので
先に、『さようなら、オレンジ』を読みました →こちら
とてもいい本だなと思いましたが
わたしは、『穴』の方が面白かった
共働きで派遣社員として忙しく働いていた女性が
ご主人の実家の横に引っ越してきて
田舎なので、仕事もなく、やることも限られてきて
そうしう生活に膿んでいく様子がリアルなのに
”穴”にまつわることが、幻想的で不思議な感覚
唐突に話が終わってしまった感覚だけれども
その後、あの女性はあの田舎で
名前ではなく、お嫁さんとして生きているのか・・・と
静かな余韻を残してくれた小説でした
小山田浩子さんの「工場」は
書評家の豊崎由美さんがとても褒めていたのですが
文庫本になったら、是非、読んでみたいな

文芸春秋3月号は、芥川特集で
芥川賞受賞者の当時の写真
宮本輝さん、村上龍さんの対談
芥川賞受賞女性作家、川上弘美さん、小川洋子さんたちの対談
選評委員だった方々のお話など
読みどころ満載で、とてもよかったです

  

オリンピックが始まって、
テレビに夢中になる毎日かなと思っていたのだけど
放送時間が真夜中というのもあり
寝不足は、仕事に差し支えそうで怖くて
ダイジェストのニュースばかり
なんだか、仕事をしているか読書をしているこの頃です
気がつくと、部屋のムスカリに花がついていました

今日はすごい雪の札幌でしたが
少しづつ春は近づいているんですよね