CLASSIC ROCKを聴こう! PLUS

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幻想への回帰、ユーライア・ヒープ

2015年05月02日 | URIAH HEEP
一部の大物バンドやシンガーを除いては、アメリカとイギリスのマーケット両方で同じようにヒットを出すのは、それぞれの音楽嗜好が異なるので中々難しいことです。

アメリカのアーチストは、アメリカ自体が最大のマーケットであるので、わざわざ他のマーケットで受け入れられるようなサウンド作りは特に意識しなくてもいいわけですが、イギリスのアーチストにとっては、イギリスのマーケット自体が小さいので、他のマーケット、特にアメリカのマーケットで売り上げを伸ばしたいのであれば、彼の地の嗜好を意識してサウンド作りをすることは重要なポイントだと思います。

とは言え、それに従って大幅にサウンドを変えてしまうと、今までのイギリスのファンを失う恐れもあるので、通常それまでのバンドのイメージを残しつつ新しい取り組みをサウンド作りに入れていくことなります。

今回紹介するのは、1975年発売のユーライア・ヒープのスタジオ・アルバム8作目のRETURN TO FANTASYです。前作までベースを担当していたゲーリー・セインはドラッグ中毒になりバンドから解雇され、キング・クリムゾンにいた、ベーシストのジョン・ウェットンが新たに加入しました。彼の加入した段階ですでにアルバムに収録する曲は出来上がっていたので、このアルバムではベースの演奏に専念し、よってクリムゾン時代の存在感はあまり感じられません。

ヒープは前々作のSWEET FREEDOMや前作のWONDERWORLDなどの制作においても、アメリカのマーケットを意識した曲作りが所々に見られましたが、それぞれアメリカ・チャートと33位と38位と大ブレークには至りませんでした。

そのため今回はもう少し踏み込んで、全体的に暗くおどろおどろしいアレンジは無くし、比較的すっきりした感じで仕上がっています。

1曲目のRETURN TO FANTASY(邦題 幻想への回帰)は以前のヒット曲の安息の日々のような曲調、続く2曲目もミック・ボックスのギーターが唸るハードロック調といつも通りのイメージではありますが、5曲目のアップテンポのPRIMA DONNAはなんとブラスが入りコーラスもビーチ・ボーイズのような明るいアレンジ、そして6曲目のYOUR TURN TO REMEMBERはブルージーなバラードでここでも明るい感じのコーラスを採用し完全にアメリカ嗜好の曲となっています。

このアルバムのチャートは本国イギリスでは7位で、彼らの歴代一位のヒットとなりましたが、反対にアメリカでは85位と大幅に売り上げが落ちるなど思ってもみなかった結果となりました。アメリカ嗜好のサウンドに転換したことで、イギリスでは新たなヒープ・サウンドとして受け入れられ、反対にアメリカでは今までのヒープの魅力が薄れてしまったという事だったのでしょうか? マーケットの心を掴むのは計算した通りにはいかないですね~

ビートルズ、ストーンズ、ZEPやマイケルジャクソンなどは、新譜を出すたびに、いとも簡単に欧米1位を連発。彼ら、メガ・スターはマーケットに合わせるのではなく、強引にマーケットを従わせる大きな魅力を持つ唯一無二の存在であったと今更ながら思います。

URIAH HEEP - PRIMA DONNA

ブラスサウンド炸裂の新しいヒープ

私:このアルバムで、ヒープは英チャート過去最高の7位を獲得したことから、かって成功を収めた頃の創作力を取り戻し、文字通り幻想への回帰を果たしたということですね。

博士;その通りじゃ。

助手:博士! 大変です。料金滞納のため、電気、ガスと水道が明日から止められることになりました。

博士:何! 明日から、原始への回帰となってしまうじゃと~!