風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

お城と水と火の国へ(阿蘇) 2-(1)

2015-09-19 | 九州
1日目からの続きです。

○ あとぜきしてね

2日目は朝から日光が照りつけていて、熱い一日になりそう。
マンション裏口のドアに「あとぜきをお願いします」と書かれていました。
これだー!
引っ越ししたてのさっちゃんに「あとぜき」という言葉を教えてもらっていましたが、本当にナチュラルに使われているんですね。
「咳は後でしてね(今はしないでね)」という意味かと思いましたが、「しっかり閉めて」という意味だそう。
熊本では普通に使われているようです。
昔の言葉で、方言ではないんですって。



「くまモン体操」の歌のラストも「はい、おしまい。アトゼキ」でした。

○ 階段県道

光の森駅の改札は、駅建物の2Fにあります。



改札に続く階段を上がりながら「ここ、県道なんだ」とさっちゃんが言いました。
えっ、聞き間違え?
いえ、張り紙に書かれています。本当に階段の県道です。
珍しい~。青森の階段国道なら歩いたことがありますが、階段県道もあるんですね。



道マニア(いるのかな?いるよね)に自慢できるかしら!?



○ 阿蘇の緑の丘

すごく暑い日で、太陽は朝から、じりじりと私たちを照りつけます。
昨日電車に乗った肥後大津駅を通り、阿蘇の方へ行きました。



いつしか山々に囲まれた、緑のなだらかな丘陵が視界いっぱいに広がります。
美しい緑の草原が広がります。遠くに米塚を見ました。



阿蘇駅を通過するときに、ちょっと気になるものを発見。
あれは、犬小屋?駅のホームにあるの?



○ 縦書きの駅名

阿蘇駅を超えて、宮地駅で降りました。
帰りの電車の時間をチェックしようと時刻表を見ると、あまりにスカスカで、気が遠くなりそう。



赤い大きな屋根の駅舎に、縦書きの駅名が掲げられています。
阿蘇神社の最寄駅なので、神社っぽく作っているのでしょうか。



○ 足水でひんやり

暑さをこらえながら、駅からの一本道をひたすら歩いて行きましたが、神社前に着いた時にはぐったり。
体中がほてっているところで、目に入ったのは「足水」という字でした。
足湯じゃなくて足水?
小さな流れができていて、水車が周っています。



見るからに涼しそうだったので、靴を脱いで足を浸してみました。
わあ、冷たい。いい気持ち~。



山からの地下水がわき出ており、またたく間に身体がひんやりしてきました。
たすかるわ。しばらく足をつけて、元気を取り戻しました。

○ 阿蘇の神さま

参道の先に、阿蘇の一之宮、立派な神社が見えてきました。
門の前の道は、珍しい横参道。初めて見ました。

手水舎には「銘水 神の泉」と書かれています。名水で手を洗えるなんて、贅沢~。



日本三大楼門の一つ、大楼門。
重厚感のある檜皮葺の神門です。ステキなカーブに見とれます。



ここには阿蘇山の神様、健磐龍命が祀られています。
この社殿は下宮で、火口に上宮があります。
山から下りてくる爽やかな空気に包まれた場所で、家族の健康をお祈りしました。



健磐龍命の剣とされる、巨大な魔除けの龍。江戸時代の奉納だそうです。
剣に鏑矢が付いているんですよ。それを見ると、いかに大きいかがわかります。



こちらは奥まった場所にある一の神殿。水民元吉という大工棟梁が手がけました。
末代まで名が残って、誉れですね。
お座布団が干してありました。ふかふかですね。



○ 飲んで飲んで、水基巡り

それから、水基巡りをします。
水基(みずき)とは初めての言葉ですが、湧水の水飲み場のことみたい。
阿蘇の恵みの水が、通りの20箇所ほどから出ています。
先ほどの阿蘇神社の手水舎、銘水・神の泉も、その一つです。



あちこちに飲める泉があるなんて、なんて素敵なんでしょう。
しかもどれも、ミネラルウォーターよりも断然おいしくて滋養たっぷり。

水基を見つけるたびに一口ずつ水を飲んでいきます。
暑い日ですが、だれずにすみます。

水基の中で一番の水量の、勢い良く流れる「金脈の水」。
湯水のようにお金を・・・いえいえ、そんなことを考えてはいけません。



通りには、こんなレトロでかわいい雑貨屋さんも。
お馬さんがポップ。



泉の苔も青々としてきれいです。さっちゃんが冬に訪れた時には、苔はほとんどなかったそう。
緑は生きているんですね。
「文豪の水」。あなたも私も、これで夏目漱石に!?



通りに水を撒いている人の後ろにあるのは、水基「欣命水」。
トマトを冷やしています!



「菓恋水」。なんだか乙女の夢のような名前。



「酒社の水」。お酒も作れるほどの名水ということでしょうか。



「妙音の泉」。確かに涼し気な水の音でした。



「よろずの水」。



私の好きな「猿田彦大神の水」。
道の角にあり、道祖神である猿田彦神の代わりだそうです。



○ 時が停まった旧女学校

水基巡りを続けるうちに、旧女学校の建物にたどり着きました。
敷地内からも、水は数カ所から湧き出ています。



明治35年に設立され、昭和52年に閉校した、阿蘇で最初の教育機関だそうです。
時が停まったかのような、レトロな雰囲気いっぱいです。



今は、内装をリノベーションして、輸入雑貨屋さんになっています。
古めかしい外観ながら、とても丁寧に使われていました。



自然としっくりマッチした静かな雰囲気に、函館の洋館を思い出しました。



窓の下に積み上げられた薪が、ロマンをかきたてます。
暖炉にくべるんでしょうね。ああすてき。



○ 石橋とおじさん

Uターンして戻りながら、私の橋好きを知っているさっちゃんが「あの石橋、気にならない?」と指差しました。
先程の水基ルートからは外れる小路にありますが、近づいてみます。
小さな川に架かる橋ながら、きちんと精巧に、そして芸術的に作られています。
写真を撮っていたら、橋の向こうで農作業をしていたおじさんが「どこから来たの?」と話しかけてくれました。

少し会話をして、「昔ここに高野山のお寺があったが、後を継ぐ人がいなくなって無くなったんだよ」と教えてもらいます。
つまりこの橋は、お寺へと続く参道橋だったんですね。
道理で、小さいながらもきちんとした造り。納得です。



「横浜から来たのかい。うちの娘も横浜にいるよ。
えーと、なんだっけ、あの厳しい、事故を起こした学校」
「・・・戸塚ヨットスクールですか?」
「そうそう」

ああ、熊本の人にもそう覚えられているなんて。
「娘さん、横浜の戸塚にお住まいなんですね。
でも戸塚ヨットスクールの戸塚は、人の名前で、横浜の戸塚とは関係ないんですよ」
娘さんの名誉もあるので(?)説明しちゃいました。

でも私も、横浜に引っ越ししたころは「体罰のあるところ!?」と怯えていたものです。
ずいぶん昔の事件なのに、今でも覚えられているなんて、、戸塚校長はよっぽど強烈なインパクトを残した罪な人ですね。
実際に学校のある場所は、愛知県知多郡だそうです。全然ちがーう。

「あ、そうなの?エヘヘ」とおじさん。
お盆に娘さんと会えるのが楽しみのようでした。

「みんな大通りを行くけど、こっち行くと神社があるよ」と教えられた裏道を通って、矢向神社を参拝しました。
阿蘇神社と同じ神様を祀っており、こちらは土地の人たちに大切に管理されているお社。
私たちのほかは誰もいない、小さい社ながら、こぎれいに整えられていました。



○ やわらかハンバーグ

ひとしきり湧水巡りをして、身体の中が浄化された気分。
ランチをとることにしました。
メインの通り沿いのお店は、人が並んで混んでいましたが、少し奥まったところに静かなレストラン「Cafe 璃庵」を発見。



一組いたお客は、入れ違いに出ていき、店内には私たちだけです。
自家農園の豚肉を使っているお店で、頼んだポーク100%ハンバーグは、豆腐みたいなやわらかさで、すいすい身体に入ります。
常連さんらしいお客さんが、一人二人とやってきました。



○ 水鉄砲が虹を呼ぶ

仲通りに戻ると、水の入った木箱に竹の水鉄砲がいくつも入っていました。
(わあ~)と覗き込みます。
自分でやってみたことは、ありません。
実際に見るのも、これが初めてかもしれません。



子どもたちのおもちゃかな?それとも売り物かな?と思っていると、奥から人が出てきて、「水鉄砲、やりませんか?」と言いました。
実際に、やって見せてくれます。水は大きなカーブを描いて、通りの向こう側までよく飛びました。
虹ができそう。



結局、持ち物だったのか売り物だったのか、よくわかりませんでしたが、大人がやって見せてくれたことですし、多分売り物だったんでしょうね。
のんびりした商売っけのなさが、またいい感じでした。

○ 謎の幸せ呼びおじさん

通りにあった「幸せの石」と書かれた巨大な石を見ていると、どこからか謎のおじさんが現れて、
「幸せにしてあげよう。石の前にお座りなさい。写真を撮ってあげるから」と言って撮影してくれ、
時計回りに石の後ろ側に行くよう指示し、「ハイ、ポーズ!」と、また写真を撮ってくれました。
よくわからなかったけど、まあおもしろかったし、これで幸せになったら一石二鳥!



突然おじさんに言われて面食らいながらポーズを取る私たちのことを、ギャル2人が物珍しげに遠巻きにして眺めていたのが恥ずかしかったのですが、私たちが終わると、おじさんは今度はその2人も逃さずに幸せにしていました。
ギャルたちも、笑って逃げるかとおもいきや、おとなしく撮影されていました。
門前町でのゆるいひとときでした。

○ コピーのセンス

駅に戻る途中、夏祭りのポスターを見かけます。
夏らしくていいなと思いましたが、よく見ると日にちの上に、小さく「だっちゅーの!」「どんだけ~!」という文字が。
作った人のセンスにもの言いたし!どんだけ~!



黙って見ていたら、さっちゃんが「だっちゅーの・・・」と口にしたので、吹いてしまいました。
やっぱり同じところが気になったようです。
まあ、これを見た人全員、同じ所に目が行くかもしれませんが。

○ あやうくレミゼ

水基で冷やしているトマトが、水の勢いを受けて、ぷかぷか浮いています。
つやつやと光り、見るからにおいしそう。「食べないの?」と私を誘います。
手を伸ばして取り出し、ガブリとかぶりつきたくなります。



もう私、トマト一つで人生を狂わせても、いいわ!
さっちゃんがいなかったら、うっかり阿蘇のジャン・バルジャンになるところでした。



火の国熊本は、どちらかというと温泉などの「熱い」イメージが強くて、こんなに水の豊かなみずみずしところだとは思いませんでした。
ああ、こんな場所に住みたいわ~!

水基散策に満足して、少し早めですが帰途につくことにします。
行きに通った時から気になっていた丸デザインの石塀を、帰りにパチリ。
これを作るのは、大変そうですね。



○ 豪雨の爪あと

宮地駅で電車を待つ間、さっちゃんが「これを見て」と、駅舎に併設された小部屋に案内してくれました。
そこには、2012年7月の九州北部豪雨災害で、JR豊肥本線の宮地駅-豊後竹田駅間が不通となった時の被害状況の写真やパネル、困難を極めた復旧作業の様子が、記録として展示されていました。
茶色いコードのようにぐにゃりと曲がってしまった、当時の鉄道の線路もありました。



宮地駅から先は、の標高最高地点までは、ぐっと勾配がきつくなります(25/1000)。
こんな山奥の線路が崩れると、復旧するのは並大抵のことではなかったでしょう。
自然の恵みを受けている土地は、自然の危険も受ける場所なんだと、ひしひしと感じます。

○ ひし餅色のターンテーブル



駅のホームはシンプル。2両分の長さしかない、その小ささがいいです。
山手線なんて、最後尾から最前列の車両に移動するだけで、疲れてしまいますから。



ホームから、ひし餅のような配色のかわいい転車台が見えました。
わー、ターンテーブルだー。
かつて走っていた蒸気機関車が、この駅で折り返すために、方向転換に使われていたそうです。

電車がやってきたら、2-(2)に続きます。


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