ringoのつぶやき

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日本株式市場展望(2012年12月)日経平均1万円は通過点‐景気も相場も気持ちから…

2012年12月19日 21時33分34秒 | 
日本株式市場展望(2012年12月)
 
日経平均1万円は通過点‐景気も相場も気持ちから…
 
だけではない‐

広木 隆

「ムーミン谷」のムーミンだって泳ぐ時は水着を着るのよ。普段は素っ裸なのに。大切なのは雰囲気よ。
(『プールの底に眠る』 白河 三兎 )

景気は気から
笛田さおりによるソロ・プロジェクト、「さめざめ」がメジャー・デビューを果たした。12月5日に発売されたデビュー・シングル『愛とか夢とか恋とかSEXとか』のMV(ミュージック・ビデオ)が試写映像としてYouTube などに流れている。ベッドで寝ている女と男。男の左手の薬指には指輪。テロップが流れる。「安心して。本気にはならないから。」 男というのは勝手なもので、こっちは遊びのつもりであっても、相手が本気になってくれないと不満を感じたりするものだ。「ずいぶん冷めてるじゃないか」と言ったら、「冷めてるですって?当たり前でしょ。娘の写真をケータイの待ち受けにしてるような男に、どう熱くなれっていうのよ!」と逆ギレされて焦ったことがあるが、何事も気の持ちようというのは、やっぱり重要である。

本日、日経平均は約8カ月ぶりに1万円の大台を回復した。終値は1万160円と高値引け。主力大型銘柄で構成するTOPIXコア30指数は3%超と急伸。東証1部の売買代金は2兆円を超え、SQ算出日を除くと、2011年3月以来、1年9カ月ぶりの活況に沸いた。売買高は40億株を超えた。活況の目安とされる20億株の倍の出来高となった。少し前の閑散相場がウソのようである。衆院解散、総選挙が決まってからというもの市場の雰囲気、マーケットのセンチメントが完全に変わった。相場というものは「気」ひとつでこうも変わり得る、という証だ。

そして自民党の地滑り的な圧勝。衆院選の結果が出れば「材料出尽しで上げ相場も終了」という見方が一部にあったが、一段と上値を追う展開になっている。なぜ「材料出尽し」とならなかったのか?それはこの相場が単純に「政権交代」を囃して買われた相場ではないからだ。確かに、3年に及ぶ民主党政権下での停滞感が払拭されるという点においては、政権が変わること自体を好感するところもあっただろう。しかし、投資家が日本株を買っている理由は、政権交代の「その先に起きるであろうこと」を期待しているからに他ならない。すなわち、日本の金融政策の大転換であり、それによるデフレ脱却期待である。

ここで神学論争とも呼べるような議論がある。すなわち、日銀が量的緩和を強めても最終需要が弱いなかでは、実態経済におカネが回らず、ただ銀行が国債を買うだけだから効果がないとする意見だ。これはある意味、「卵が先か鶏が先か」的な話であるが、重要なのは「卵は鶏から産まれる」という事実だ。火の無いところに煙は立たないというなら、火を熾してやればよい。積極的な金融緩和姿勢がデフレ脱却への強い意思表示と捉えられることで、市場、企業、家計はインフレ期待を醸成する。そのインフレ期待が投資・消費を促進し、実体経済におカネが回り始める。そうした一連の流れが顕在化してくると、国債市場に偏っている資金が株式市場に流入するだろう。世界でも比類のないほど財政状態が悪い日本の国債がここまで買い進まれているのは、ある意味、「国債バブル」とさえ言える。そのバブル的に膨れ上がった資金の一部が株式市場にシフトするだけでも需給面でのインパクトは大きい。株が上がれば、米国ほどではないにせよ、ある程度の「資産効果」も生まれる。富裕層や企業経営者のマインドも明るくなり、消費や投資の促進効果が期待される。それが「景気は気から」と言われる所以である。

良い金利上昇、悪い金利上昇
リチャード・クー氏の『良い円高悪い円高』が流行って以来、すっかりこの「良い○○悪い○○」という対比の仕方が定着した。今、懸念されているのが、この「悪い金利上昇」というシナリオである。安倍晋三・自民党総裁が主導する経済政策では専ら日銀との協働による積極的な金融政策に目が向きがちだが、新政権の政策では財政面にも注目が集まる。昨日、自民党と公明党は大型の2012年度補正予算案を編成する方針で一致。「10兆円規模」の補正案が浮上している。大型補正には財源として追加の国債発行が避けられず、新政権は民主党が財政運営の指針とした「国債発行の44兆円枠」を見直す方針だと伝わる。


つまり、安倍晋三・自民党総裁が主導する経済政策、いわゆる「アベノミクス」は大規模な財政出動と積極的な金融緩和のポリシーミックスが骨格になる。ここでまた「神学論争」だ。すなわち、「成長戦略が描けないなかで財政出動・金融緩和のみに頼る景気対策は一過性の景気刺激にとどまり国の借金を膨らませるだけ」というものだ。特に、金利上昇という副作用を懸念する声が強い。「狼少年」と揶揄され、負け続けてきた「日本国債売り」を仕掛けるヘッジファンドも、「今回こそは勝てる」と意気込みが荒い。アベノミクスのツケが国債暴落という形で廻ってくるという悲観シナリオがある。

これを懸念される向きは、昨日の日本経済新聞のコラム「一目均衡」で末村篤・特別編集委員が述べた次の一節を読まれたい。
<急激で大幅な金利上昇は国債を大量に保有する銀行を直撃する。しかし、金利反転は、家計の利子所得を増やして購買力を高め、年金等の運用環境を改善し、財政規律を含む金利機能の回復に欠かせない。国債保有者の大部分は国内投資家だから利子所得は国内にとどまる。債権国にとって、金利上昇は国益である>

「債権国にとって、金利上昇は国益」 - この一言に尽きる。経済的弱者にとってインフレは増税に等しい。負債を抱えるものにとっては金利上昇は苦しみ以外の何物でもない。欧州債務危機がその典型例だ。しかし、ここでの議論はマクロベースのお話だ。「日本の借金」が世界最悪なのではない。「日本の政府部門」の債務比率がGDP対比200%なのであって、「日本」全体は純債権国である。金利上昇はネットでみて日本にプラス、まさに国益である。世間には「国債大暴落でハイパーインフレの恐怖」など、仰々しい見出しのトンデモ本がよく売れていると聞くが、物事には必ず二面性があって、どちらかが一方的に有利・不利ということはあり得ない。為替が円安になるのも、エネルギーや食糧などの輸入価格高騰などを考えれば良し悪しだというのと同じ議論である。

お楽しみはこれから - 理想買いから現実買いへ
筆者は常々「Buy On Rumor, Sell On Fact (噂で買って、事実で売る)」という相場格言を引き合いに出す。相場の機微を捉えた非常にうまい喩えで、好きな言葉だ。今の相場の状況は、政権交代による日本の変化を買う、いわば「理想買い」である。これから、新政権による政策の実行力を見定めるステージに入る。そして、その先には「現実買い」が待っている。「理想買い」と「現実買い」、どっちが力強い上昇相場になるだろうか?楽しみを期待して「待つ」という行為自体、嬉しいものである。来春、小学校に上がる筆者の娘は、かねてから欲しかった任天堂のゲーム機「3DS」を買ってもらえることになって、毎晩、指折りして楽しみにしていた。では、実際にDSを買ってもらった後はどうか。「いい加減にやめなさい!」と妻がヒステリー気味に叱りつけるほど夢中になって遊んでいる。楽しみを期待して待つことも嬉しいものだが、欲しいものが手に入って遊べれば、それはそれで実際に楽しい時間を送れるのである。

もちろん、デフレ脱却など、そう容易なことでは実現しない。しかし、その方向に向かって動いているという実感が得られるだけでも、十分だろう。理想が実現に近づく過程。そこが一番、「楽しい時間」かもしれない。


ファンダメンタルズ、企業業績&バリュエーション
柄にもなく(?)、精神論的な話を語ってきたが、最後に数字に基づいて相場観を示す。景気も相場も「気」は大切だが、それだけではダメで、実際の数字の裏づけがなければ、それこそ短期的なバブルに終わる。祭りの後の虚しさが残るだけだ。

目を米国に転じれば、「財政の崖」を巡る与野党協議も大詰め、双方が歩み寄る姿勢を見せている。楽観論は戒めるべきだが、過度な悲観論も修正されつつある。何より、ダウ平均が10月初めの高値から11月半ばの安値までの下げ幅に対して既に4分の3を取り戻しているという事実。米国株式市場は、「財政の崖」を飛び越える可能性を見始めている。仮に米国景気が「崖」から転がり落ちるリスクを回避できた場合、世界景気の見通しは一段と明るくなるだろう。そもそも、今でさえ米国経済のファンダメンタルズは堅調さを保っている。「崖」懸念で停滞していたビジネスが一気に活気づいてくることも考えられる。

日本の上場企業の業績は今期もまた目覚しい回復は果たせそうにない。経常利益の伸び率で見て今年度はひと桁増益にとどまりそうだ。期初に20%を越えていた増益見通しは、第1四半期決算で18%増益に鈍化、4-9月期の上期決算を締めた時点では6%程度の増益と大幅に落ち込んでしまった。パナソニックが2期連続となる大幅赤字見通しに転落、シャープの予想赤字幅も拡大した。ホンダや日産が1000億円規模で経常利益の見通しを引き下げた。製造業だけではない。商品市況の低迷で三菱商事は2000億円を超える下方修正を発表した。上場企業全体では3兆円超の業績下ぶれとなった。但し、7-9月期がボトムだろう。為替の反転、グローバル景気の回復を背景に、これ以上、下方修正が頻発することは考えにくい。そして来期に目を転じれば、経常利益で2割程度の増益が見込まれている。

「経常利益」とは読んで字のごとく、企業が経常的に稼ぐ利益を見るものだ。だから、言い方として変な表現になるけれど、マクロからミクロを見る、あるいは巨視的に企業業績全体を捉えるときには経常利益を参照することが多い。しかし、株式投資において重要なのは当期利益(純利益、最終利益、税引き後利益など基本的に全部同じ)である。特別損益であっても、それらが発生するのは企業の実力、ビジネスの結果であり、税金を払って最終的に「会社」という株主から見た「器」に残る利益こそが株式価値評価の基本となるものだからである。

ユニバース(集計対象)をどう規定するかで、数値は変わってくるが、ここでは個人投資家に馴染みの深い日経平均構成銘柄を対象とする。

お手元に日経新聞がある読者は、16面のマーケット総合欄に記載されている数字を確認しながら読まれたい。昨日の日経平均の終値9,923円に対してPERは16倍とある。日経平均が一つの企業だとして、EPS(1株当たり利益)を逆算すると、

9,923円 ÷ 16倍 = 620円

である。

このPERの16倍というのはどう計算されるのか。筆者の手元にあるデータベース、Quick Astra Managerを使って日経平均を構成する225銘柄それぞれの当期利益について「日経予想」をダウンロードした。その225銘柄の合計額は昨日18日時点で、11兆7,110億円である。同じく225銘柄の時価総額合計は187兆9,493億円である。余談だが、東証1部全体の時価総額は286兆3,385億円だから、日経平均225銘柄で東証全体の約3分の2を時価総額ベースでカバーしていることになる。日経平均のPERは、225銘柄の時価総額合計187兆9,493億円を当期利益合計で割って求められる。

187兆9,493億円 ÷ 11兆7,110億円 = 16倍

さて、来期2014年/3月期の当期利益はいくらと予想されているだろう。市場のアナリスト予想の平均値であるQuickコンセンサスの「来期予想当期利益」を同じように集計すると、225銘柄の合計額は15兆5,360億円である。ここから、来期ベースの日経平均のPERは

187兆9,493億円 ÷ 15兆5,360億円 = 12倍


と求めることができる。業績が伸び悩んだ今期をベースにすれば日経平均の予想PERは16倍とやや割高にも見える。しかし、来期業績をベースとすればまだ12倍である。株式市場は通常1年先の業績を織り込むとされる。年が明ければ、投資家の目線は今期から来期に移る。それとまったく同じことが今年の1-3月の相場上昇でも起きていた。(詳しくは2月20日付レポート「視線の偏差」ご参照)

来期予想ベースのEPS(1株当たり利益)を逆算すると、

9,923円 ÷ 12倍 = 820円

である。来期の業績を織り込んだうえで、現在の見かけ上のPER、16倍が維持されるとすれば

820円 × 16倍 = 13,120円

と1万3000円を超えてくる。さすがに16倍は高望みかもしれない。米国株の長期データに基づくPERの標準値は14倍程度である。過度な悲観が修正された通常モードの株式市場で14倍のバリュエーションは適正と考える。詳しい説明は省くが、長期金利1% + リスクプレミアム6%で割引率=株式益利回り7%とした場合の逆数がPER 14倍に相当する。来期業績を14倍まで評価して(買って)やれば、

820円 × 14倍 = 11,480円

足元の円高修正やグローバル景気の回復は、現在の業績予想に十分に織り込まれているとは考えにくい。アナリストが業績を見直すのはこれからだ。現在820円の来期予想EPSの5%程度の上方修正はあり得るだろう。

860円(820×1.05) × 14倍 = 12,040円

来年3月末までに日経平均は1万1,500円~1万2,000円程度を目指すと考える。

昨日行ったオンラインセミナー「チャット駆け込み寺」で、年度末の高値を「1万2,000円」と述べたら、「えっ?よく聞き取れなかったのですが、今1万2,000円と言いましたか?」と視聴者から驚いたような質問が来たので、「はい、年度末、1万2,000円、来年前半に1万3,000円と申し上げました」と強調しておいた。

今、日本株はやっとPBRで1倍を回復したばかり。これまでずっとPBR 1倍割れが常態化していたが、それは市場が企業に対して「解散して株主におカネを返せ」と言ってきたに他ならない。今、やっと1倍に戻ったところで、それは株主が、自分が拠出した株主資本が、ここから先、ビタ1文も増えないと思っている評価レベルである。世界景気が回復するなかで、円高が止まった。政権が変わり、長く苦しんできたデフレ脱却に日本が動き出す期待が見えた。その最初の年度に当たる来期は経常利益で2割の増益が見込まれる。そのような状況にあって、株主が、自分が拠出した株主資本が将来的に2割3割増えることを期待してもバチは当たるまい。それがPBR 1.2倍とか1.3倍という水準だ。

政権交代でセンチメントが改善しているだけの理由で株高になっているわけではない。業績というファンダメンタルズの裏づけがある。日経平均1万2,000円は、来期予想PER で14倍、PBR 1.25倍。まったくフェアな(適正な)バリュエーションだと思われる。

日経平均1万円なんて通過点。お楽しみはこれからである。冷めている場合じゃない。「安心して。本気になっていいんだよ。」と言いたい相手は、あなたかもしれない。


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