2011年05月20日(金) 週刊現代
福島第一原発での事故発生以来、東京電力の株や社債が暴落し、金融市場に動揺を与えている。震災前、1株2153円だった東電の株価は、5月2日の時点で426円。株主たちは巨額の含み損を余儀なくされた。
ただ、この暴落で大損をしたのは、一般の投資家だけではなかったようだ。
「東京電力の株は、実は天皇家も保有されています。天皇家は、いわゆる『内帑金(ないどきん)』という形で、株や債券、現金などの金融資産をお持ちです。その一部が安全資産ということで東電株に投資されていたのですが、今回の震災後、相当な損失を被ってしまったと見られています」(宮内庁関係者)
憲法88条の規定では、「皇室財産は、国に属する」とされており、実際、皇居や各地の御用邸などの不動産は国有地になっている。だが実際には、天皇家がそれ以外に金融資産を持っているのも確か。昭和天皇が崩御した際、今上天皇は約9億円の資産を相続し、約4億円の相続税を支払った。これらの資産が「内帑金」と呼ばれるものだ。
「もちろん、陛下ご自身が資産運用をされるわけではありません。侍従から宮内庁の皇室財産を管理する部門にそれとなく相談があり、確実かつ安全な投資先を紹介しているのです」(同)
もともと国債並みの高格付けを誇り、絶対安全資産と思われていたのが東電の株や社債だった。また、皇太子は独身時代、当時経団連の会長でもあった平岩外四・元東電会長との親交が深く、天皇家が東電に投資していくきっかけになっていたという。
「こうした経緯があり、数億円の資産が、東電の株や社債の形で運用されていたと思われます。したがって3月11日以降、天皇家の資産は、数千万円以上も目減りしてしまっているはずです」(別の宮内庁関係者)
原発事故の直後、「天皇の京都遷座」というプランが政府内で浮上したという。しかし、「東京大空襲の時も昭和天皇は皇居を動かなかった。自分は東京を離れない」という天皇の強い意思により、沙汰止みになったとされる。そんな陛下に、「人災」で大損をさせてしまった東電と菅政権。罪は深い・・・。
「優良」東電株の評価失墜、痛手の個人なお保有意欲-損切り躊躇も
5月20日(ブルームバーグ):業績や配当の安定感から、代表的な内需「優良株」としての地位を確立してきた東京電力株が、過去に類のない東日本大震災、原子力発電所事故を経て、その評価を失墜させた。株主全体の4割近くを占める個人投資家も大きな痛手を被ったが、株価が8割強下げた現在も、保有意欲はなお根強いようだ。
野村証券が20日に発表した「ノムラ個人投資家サーベイ」によると、東電は「保有したい、注目していきたい銘柄」の4位で、前回調査(3月、同率3位)に続き上位に入った。2006年4月から毎月実施しているこのサーベイは、震災の影響で4月は調査を見送っており、今回の結果で東電株暴落後の個人の心理が初めて映し出された格好だ。
会社員の山下貴さん(36歳)が東電株を購入したのは05年。「低金利が続く預貯金でお金をためても仕方がないと思い、配当が安定していて比較的高いといった理由で、2000円台半ばで買った」と言う。日本の代表的企業で、経営危機とは縁遠いと思っていた山下さんにとって、東電の現況は「青天の霹靂」だった。
東証1部上場銘柄で、時価総額と流動性上位で構成されるTOPIXコア30指数にも採用される東電株の株主数は、10年9月末現在で約60万人。うち個人は59万6437人で、発行済み株式数に占める保有割合は37.7%と、金融機関の36.3%を上回る。1人当たり平均の保有株式数は850株と試算され、仮に平均株数を持ち続けていた場合、震災前日と比べ、19日現在で153万円の損失が出ている。
高木証券金融商品部の菊池重夫次長は、東電の個人株主像について「配当利回りが高く、業績、株価、配当が安定的とあって、債券感覚で長く持っている年配の人が多い」と指摘している。
2.3%の魅力危うし
東電は2000年3月期以降、1株当たり年60-70円の配当を株主に支払ってきた。10年3月期まで、毎年3月期末の株価(2250-4030円)から算出された配当利回りは平均で2.3%。同期間の10年国債利回りの単純平均1.45%を上回る。
しかし、その配当が長期間支払われなくなる可能性が高まってきた。政府は13日、原発事故の賠償スキームを決定。東電が上限なく補償の責任を負うことを基本に、電力各社と国が東電の支払いを支援する。東電は、保有不動産や株式の売却、リストラでの資金捻出を検討しており、株主への配当の支払いは難しい情勢だ。
マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、3月24日時点で「配当を払えない電力株を長期投資の観点から保有する意味は乏しい」とし、東電株を持ち続ける個人投資家にほかの高配当利回り株への乗り換えを提案したが、その後の顧客の反応から「損切れずにいまだ保有している投資家が多い」とみている。
東電株を保有する山下さんも、ここまで株価が下がると「売ろうにも売れない」とこぼす。動きが相対的に小さかった東電株だが、4月6日に上場来安値292円を付け、震災前日の3月10日の終値2153円からは約1カ月で86%下げた。5月19日現在も358円にとどまる。
ファンド勢は素早い反応も
個人同様、機関投資家も東電株暴落の被害を受けた。東電の大株主である第一生命保険は、11年3月期に保有する東電株で約1000億円の株式評価損を計上。三井住友フィナンシャルグループも、東電株で800億円の減損処理を強いられている。
ただ、大株主としてのしがらみがないファンド勢は、ためらう個人とは対照的に素早く行動した。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹投信グループ長は、「アクティブファンド内で保有していた東電株を原発事故後に全株売却した」という。原発問題がいつ収束するか分からず、補償額も不透明で、「業績が予想しづらいことから、株価水準の高安を判断する状況では無くなった」との理由からだ。投資信託協会によると、投信が組み入れる電力・ガス株の比率は4月末に1.4%と、2月末の2.0%から大きく低下した。
マネクス証の個人投資家調査では、電力・ガスは魅力的と思う業種のランキングで4月は最下位に後退した。広木氏は東電株について、配当が期待できないだけでなく、「資産も売却されて金額が青天井の補償に回され、損失が続き資本がき損し続けるとみられる。株式の価値が減り続ける公算が非常に大きい株に投資・保有を継続する理由を見出せない」と述べ、乗り換えの必要性を強調している。
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