【香港=粟井康夫】人民元の対ドル相場が中国本土外(オフショア)市場主導で急反発している。5日の香港外国為替市場の終値は1ドル=6・82元台と2日間で2%上昇。中国の通貨当局がオフショア人民元の流動性を絞り込み、翌日物金利が一時100%超に急騰した。中国本土では資本規制を企業から個人に拡大。なりふり構わぬ手法で資本の海外逃避を食い止めようとしている。
資金供給絞る
5日の香港短期金融市場ではオフショア人民元の香港銀行間取引金利(HIBOR)の翌日物が前日の16・9%から38・3%へと約1年ぶりの高水準に上昇。午後には100%を超える取引も成立したという。中国人民銀行(中央銀行)の意向を受けた中国の国有銀行などが短期市場への資金供給を絞ったためとみられる。
ヘッジファンドなど海外投機筋は「2017年に入って中国の個人投資家の年間外貨両替枠(5万ドル)が更新されると、中国からの資金流出が加速して元安が進行する」とみて、元売りを膨らませていた。
だが、中国政府は年末から資本規制をさらに強化して対抗姿勢を打ち出した。短期金利の上昇で元の調達コストが想定を超えて上がり、売り持ち高を抱え続けると損失が発生しかねないため、こうした投機筋が慌てて元の買い戻しに走った。香港取引所ではドル・オフショア人民元先物の5日の出来高が約2万枚(20億ドル相当)と過去最高を記録した。
一方、外国為替市場での大規模な元買い・ドル売り介入は見送られているもようだ。人民銀が元安の急激な進行を抑えようとドル売り介入を断続的に実施してきた結果、16年11月末の中国の外貨準備高は3兆516億ドル(約354兆円)と14年のピークに比べて1兆ドル近く減少した。
金利上昇を選択
「外貨準備高が3兆ドルを割り込むと元安を加速しかねないと判断し、中国当局は為替介入よりも短期金利を上昇させる手段を選んだ」(邦銀関係者)との指摘もある。
トランプ次期米大統領が中国を「為替操作国」に指定すると広言するなど、海外からの為替介入への批判を考慮した可能性もある。
香港市場での元高・ドル安につられる形で、各種の規制が残る上海外国為替市場の終値も1ドル=6・88元台と約1カ月ぶりの元高水準を付けた。
昨年来、中国は〓資本規制の強化に動く
<主な規制、窓口指導>
○企業の外貨購入計画、実績を定期的に報告
○高額な海外送金は事前に報告
○外貨建て債務の繰り上げ返済の原則禁止
○企業買収など海外投資を事前に審査
○個人の外貨両替に申請書を提出。資金使途などを申告
○香港など海外で運用目的の保険商品の購入を制限
【図・写真】中国政府は、なりふり構わぬ手法で関与を強める(北京の中国人民銀行本店)
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