goo blog サービス終了のお知らせ 

彩彩日記 作詞家/シンガーソングライター 大塚利恵のブログ

※こちらは旧ブログです。
新ブログ https://ameblo.jp/rieotsuka-officialblog/

大塚利恵の歌解説vol.3「体温計」

2020-08-22 12:46:25 | 大塚利恵の歌解説
『DISCOVER the 90's”第9弾アーティストとして、”大塚利恵”のサブスク全曲配信』を記念して、オリジナルソングの歌詞と解説を、一曲ずつご紹介しています♫

vol.3は、デビューマキシシングルのカップリングで、1st.Album「Oh Dear」にも収録されている「体温計」。
19歳くらいで書いた曲です。
ソニーの出版社のプロデューサーさんに、新曲を毎週書いて持って行く→ご褒美にご飯を食べさせてもらう、ということをしていた時期。

体温計
作詞作曲歌:大塚利恵
編曲:土方隆行 大塚利恵


あなたの肌に
触れてはいても
温かいことしか分からない

だからいつも
カバンの中に
体温計がひとつ

いつかあなたに手渡して
返ってきた
赤いメモリを見てみたいの

あなたの為に
笑ってみても
似合わない顔が映るだけ

それもやがて
柔らかくなって
愛がにじむといいな

いつかあなたの体温が
わたしの隣で
少しずつでも変わるといいな

手紙でも 電話でも
優しさは感じてるけど
心だけ計れない
大切に思う程

あなたのことを知れば知るほど
何かを失うような気もするわ

もしもこのまま
計り切れるなら
体温計は捨てて

いつかあなたは気付くはず
わたしの心に
ずっと住んでた
ウソとホント
どんなふうにあなたに
手渡そうか
わたしの体温計



■1st.シングル「いいよ。」の歌詞カード



■1st.アルバム「Oh Dear」の歌詞カード



この歌は、結果として恋愛の歌ですが、恋愛ソングを書きたいと思って作り始めたわけではないと思います。
どんなに愛し合っている相手でも100%同じ感覚には絶対になれない、自分の思うようにもならない。
自分の中の、びっくりするような内なる冷酷さに気づいて、私はこの人と一緒にいる資格なんかない、、と、愕然とすることもある。
そういうことをわかった上で、一緒にいることを選ぶ。
心と心が響き合い一つになる瞬間を信じて、宝物みたいに集めてゆく。
恋愛だけの話じゃありません。

実は最初は「体温計」じゃなくて、「体重計」だったんです。
何か、計るもの、、と思ったら体重計かなと思って。真剣に。
なんか色気がないと気づいて変えたんだと思いますけど。
でも、作詞する時は、「いやいや、体重計はないだろ」っていう風に、最初から決めつけないようにはしてるんです。
どんな言葉にも、どんなモチーフにも偏見を持たないようにしている。
違和感があるようなモチーフの方が、新鮮でいい歌になることはたくさんありますから。
勝手な思い込みや先入観、他の人がどう思うかとか、書くときには毎回そういうのをリセットしてます。

この歌は童謡みたいって言われたことがあるんですけど、確かに、いわゆるJ-popの王道「Aメロ-Bメロ-サビ」みたいなはっきりした展開がなく、こじんまりとした曲です。
「手紙でも 電話でも〜」のブロックだけ、大サビというか、クライマックス的に展開します。
この部分は、アドバイスをもらって、その場で思いついてスケッチした記憶があります。

「体温計がひとつ」のところのメロディは、「ドレミソラ【ドーミレ】ラー【ド】」(【】内はオクターブ上)
1オクターブと2度の開きがあり、すごく音域が広いんです。
例えば童謡の「しゃぼん玉」も、出だしの音(シャボン玉飛んだ、のシャの音)からトップノート(「かぜかぜ吹」くな、の所)まで、1オクターブ+4度ありますね。
短いし、易しく聞こえるのだけど、実はドラマティックなメロディです。
大きな舞台のセットではなく、小さな宝石箱の中に、目一杯のストーリーが詰まっているような感じ。

お世話になっていた音楽出版社にはいろんなプロデューサーさんが所属していて、その中に伊藤銀次さんがいらっしゃいました。
私の担当ではなかったのですが、夜、青山一丁目の会社内のスタジオでプリプロしていた時に、たまたまいらっしゃって、頼んだらすごく気さくに素敵なギターを弾いてくださったんです。
銀次さんにはいつも気にかけてもらって、優しくしていただいてました。
残念ながらその頃の音源は世に出ていませんが、カセットテープかDATで持ち帰ったデモが、探せばうちにあるかも。

「体温計」って、計って数字を出す物なので、現実的なモチーフです。
嘘発見器じゃないけど、感じていることや愛を数値で計れるとしたら、とても冷酷だと思いませんか。
あなたが私を思ってるより、私の方が3割増しであなたのことを思ってるじゃないの!ひどい!とか笑。
そのモチーフを使ってこの歌で描いているのは、綺麗事ではない真実、でも人間らしいぬくもりなんだと思います。

土方さんのアレンジで、アコースティックギターがメインですが、イントロやアウトロの「レドレドレドレド…」というギターのリフは、もともとピアノで弾いていたものです。
ただの「レドレド」なんですけどね、なぜかこの歌には欠かせない要素だったみたい。土方さんに拾ってもらえて嬉しかったです。
リフも、何か感情を表していたりします。
あなたはどう感じますか?もしよかったらそんなところにも注目して聞いてみてください。

最新の画像もっと見る

1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (tessy)
2020-09-02 09:30:06
懐かしい空気感と今知る真実!
返信する