彩彩日記 作詞家/シンガーソングライター 大塚利恵のブログ

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大塚利恵の歌解説vol.6「玉子ごはん」

2020-08-25 11:26:48 | 大塚利恵の歌解説
『DISCOVER the 90's”第9弾アーティストとして、”大塚利恵”のサブスク全曲配信』を記念して、オリジナルソングの歌詞と解説を、一曲ずつご紹介しています♫

vol.6は、2nd.マキシシングル「涙のカギを開けて」(98年9月19日リリース)のカップリング曲、「玉子ごはん」。
1st.Albumまでの曲は、だいたい10代の時の曲です。

玉子ごはん
作詞作曲:大塚利恵
編曲:土方隆行 大塚利恵


やけどするほど あついうちに
ごはんに混ぜて 口にはこぶの

楽しい朝も 悲しい朝も 考えないで
なるべく安い 玉子を割るの

捨てられた約束 忘れられた言葉
愛された玉子の
ぬけがらが積もっていく

また今度ね 今度っていつ?
涙がでるわ
分からないけど 分からないから
とにかく今日も 始めなくちゃ

子供のうちに 覚えた味は
何より上手く 体に溶ける

立派な人も 転んだ人も 思い出したら
なるべく早く 食べたくなるの

自信ならあるけど 不安は消えないわ
大好きなひととき
それだけがわたしのもの

また明日ね 明日ってどこ?
たくさんあるわ
数えてみても 数え切れない
とにかく今日も 玉子ごはん

「また今度ね」今度っていつ?
「また明日ね」明日ってどこ?
「またいつかね」いつかっていつ?
遠くて見えない
分からないけど 分からないから
とにかく今日も 玉子ごはん



上京してすぐに作ったと思います。
プロデューサーさんのところに持って行ったけれど、反応はまあまあだったかな。
当時の周りのスタッフも、「他の曲ほどは良くないけど、まあ、ね。」くらいな感じでした。
多分、他の曲のデモよりも最初から完成度が妙に高かったのが、つまらなく感じられたのかも。
思春期的な、未完成だけど何かありそうな、不思議なバランスの曲が沢山あったので。

新曲を作って持っていかなきゃ、と焦りながら池袋の部屋のピアノに向かい、ワーっと作り上げた記憶があります。
テーマがどうとか何も考えていなくて、歌詞も含め勢いで、感覚で書いたと思いますが、たまたまカチッとすぐまとまったんでしょうね。
後から直したのは、一番の最後「始めなくちゃ」のところだけです。
最初はここも「玉子ごはん」だったんですけど。
レコーディング前に、ディレクターの熊谷さんに指摘されて、確かに、と思って。

そう、当時の曲作りは、頭じゃないエネルギーを使っていたような記憶があります。
だって、テーマも把握してなくてこういう曲ができているって、不思議じゃないですか?
「降りてきた」とかよく言いますけど、そうではないです。そもそも、降ろそう、降ろしたいという思いがないと降りてこないし。
『どうしてもこの思いを曲にしたい、でもいつでもいいんじゃなくて、今じゃなきゃダメなんだ!』
と、自分で自分を追い込んだ時に、クンダリーニと言ったらおこがましいけれど、お尻の下がムズムズして、ウワーッと創作に向かう強いエネルギーが出てくる感じ。
それが、私に限らず、思春期の曲作りの秘密なんじゃないかと思ってるんですけどね。

「玉子ごはん」は、そんなわけで、もしデビューの際にスタッフが入れ替わらなければ、リリースされなかった可能性が高い曲です。
今となっては、出せて本当によかった。
気に入ってくれる方も多く、カバーしてくれる人もいたりして。自分でもとても好きな曲です。

逆に、デビュー前のライブではいつも歌っていたのに、リリースしなかった曲もあります。
理由は忘れちゃったけど、1st.Albumに向けて選曲した時に、自分で選ばなかったのかなあ。
2nd.に入れようと思っていたのかも。
でも結局、新たに曲作りすることになっちゃったので、1st.Albumまでにピックアップしなかった古い曲は、そのままになってしまったんだと思います。
自分の中でも時が経ち過ぎて、いろんなことがあり過ぎて、もう古い曲はいいや、ってなってた部分もありましたし。
思い起こすと、出したかった曲も結構ありました。
タイミングですね。

自分のオリジナル曲は、歌詞先行で、途中から曲と同時進行に作ってゆく、とこないだ書きましたが、その方がメロディが面白くなるんです、私の場合は。
逆に、曲先だと自分でつまらなくなっちゃうことが多くて。
「玉子ごはん」も、曲先だったら思いつかなかったメロディだと思います。
というか、素のメロディだけではいい曲なのかどうか判断がつかなかったと思います。
特にサビとか。

まるで他人の曲のように、解説してみようと思います。
日常の象徴としての「玉子ごはん」。歌詞によく出てくる食べ物だと、「トースト」とかと同じ感じですかね。
ただ、玉子ごはんは日本ならではで、ちょっと懐かしいし、かっこつけていない感じかな。
タイトルが「玉子ごはん」って、可愛い印象を受ける人も多いかもしれないけれど、とてもリアルなモチーフだと思います。

うまくいかないことや叶うかわからない希望、約束、いろんなことに立ち止まってしまいそうだけど、とにかく一歩ずつ前に進んでいく。
淡々と日常を生きながら、慈しみながら、日常の中の大好きな瞬間を糧にして。
当時、いつデビューできるのかなとか、なかなか進まない状況に悶々としていた気持ちも反映されていると思います。

私の歌は、だいたいどの歌も、時が経って歌っても違和感はありません。
普遍的なことや真実しか書いていないし、特に古くなる要素もないので。
自分の中では古くなった感じや、これはもう歌えないな、という感じはしたことがないです。
特に「玉子ごはん」は、初期に多かった「僕/君」ではなく「わたし」の一人語りだし、おばあちゃんになっても自然に歌えそうな気がします。


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