彩彩日記 作詞家/シンガーソングライター 大塚利恵のブログ

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大塚利恵の歌解説vol.7「ウワサの僕」

2020-09-01 17:45:01 | 大塚利恵の歌解説
『DISCOVER the 90's”第9弾アーティストとして、”大塚利恵”のサブスク全曲配信』を記念して、オリジナルソングの歌詞と解説を、一曲ずつご紹介しています♫

vol.7は、3rd.シングル「夏気球」(98年10月31日リリース)のカップリング曲、「ウワサの僕」。
1st.Album「Oh Dear」にも収録されています。

ウワサの僕

作詞作曲歌:大塚利恵
編曲:笹路正徳

引っ越した君が
手紙もくれないで
僕のウワサを
流している

僕は君の友達で
君は僕の親友だって

昔の僕は
自信ばかり食べて
太ってたことも
君だけが知ってる

離れた君のところにも
たまには僕のウワサが
着くんだろうか
それでもきっと君は信じないよ
君の知ってる僕以外は

お願いだから
これ以上これ以上
ウワサはしないで
君の街からも
僕の姿は見えるの

手紙を出しても
会いに行っても
僕だってことに
気付かないんだから

僕をつくってばかりいないで
ときどきは僕のところに
遊びに来てよ

ウワサの僕の正体は
僕のウワサがつくったものさ

お願いだから
これ以上これ以上
ウワサはしないで
君の街からも
僕の姿は見えるの

好きな色も
好きな人も
みんな変わったのに
君のなかでは
あの頃のままの
僕だけが生きてる

これ以上これ以上
ウワサはしないで
君の街からも
僕の心は見えるの





この曲は、作った時の状況を覚えていません。
多分、高校生の時に実家で作ったのかな。大学に入ってからのような気もするけど。

茨城から東京へ、時々ソニーのSD制作部(新人開発部署)を訪れて、担当だった山下さんにカセットテープに入れた新曲を聞いてもらっていたのだけど、オーディションの後は他のスタッフさんにもダビングして持って行っていたんです。それと、仮契約していたSMAにも。
いつもテープを何本か携えて上京していました。
オーディションでは最年少で、小僧みたいだったので「りえぞー」って呼ばれて、みんなに可愛がってもらっていました。
担当ではなかったけれどごはんに連れて行ってもらったり、新曲を聞いてくれていたスタッフのお一人が、「ウワサの僕」をすごく気に入って口ずさんでくれて、嬉しかった。
一生懸命どの曲も作り上げてはいたけれど、いつも不安でピリピリしていた私は、認められたくて褒められたくて仕方なかったんです。

私は中学が私立の女子中、高校は県立の元男子校と、全然違う環境に飛び込んだのだけど、中学の友達に久しぶりに会って話して感じたことがこの歌詞のベースになったと思います。
書いていると色々思い出しますね。
記憶だから、全てが定かではないけど、とにかく思春期の曲には間違いありません。

〜〜〜〜〜〜〜〜
「あなたってこう」と一度焼きついたら、その人の中ではなかなか変わらないことがある。
自分はこんなに変わり続けてるのに、と辛く感じることもある。
だからあの頃のこととか、いつまでも言ってるのはやめてよ、前に進ませてよ。
懐かしさとか、変わらなくてホッとするとか、そういうのももちろんわかるけれど、それはまた別なんだ。
本人が前に進むのを阻むようなことって、一体誰の何のためになるの。

けどそれはこちらの勝手な思いであって、忘れてと言って忘れてもらえるものではない。

「君のなかでは あの頃の僕だけが生きてる」ようなことが何層にも重なって、逆に「僕のなかでは あの頃の君だけが生きてる」ことだって沢山あって、人生はできていると思います。
ポジティブにも、ネガティブにも。
過去の自分が誰かの中で生きてることが嬉しいこともあり、煩わしいこともあり、何だか切ないこともあり。
うまく言えないけれど、この曲で描きたかった感情は、良い悪いじゃないってことは確かです。
それに、「君のなかでは あの頃の僕だけが生きてる」ことを受け止めつつも、やっぱり変化し続ける自分を生きていく、ということかなと思います。
結果、君とはもう会えないかもしれないし、またピタッと繋がるかもしれない。全ての可能性を決めつけない。
でも決して、「お前なんかサヨナラだ」と振り切っていく生き方ではない。
本当はそういう生き方の方がラクなのかもしれないけど、豊かではないと思います、きっと。

面倒臭いよね、人って!
そして面倒臭くて愛おしい。

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この歌詞には「僕」「君」という人称がたくさん出てきます。
歌詞で人称を使う時は、必要なところだけ最低限、と生徒さんには教えるのですが、この曲の歌詞はちょっと特殊かもしれないですね。
ストーリーっぽくて。
でも、人称が多いけど、必要最低限にはなってると思います。
ストーリーを語るために、必要なところに必要なだけ使ったら結果多かったという感じ。

デビュー前に、南青山MANDALAでライブをした時、この曲を歌ったのですが、僕が君か君が僕か、途中でよくわかんなくなっちゃって、噛んでしまったことがありました。
ライブなんてどういう意識でやればいいのか、全くわからないままやっていたから、アップアップして混乱したのかもしれません。
何をやったら喜ばれ、どうだったら怒られるのか、当時のプロデューサーさんの機嫌を伺っていた気がします。
お客さんのためとか自分のためとか、音楽そのもののためとか、一番大事なことに思いを馳せることもできず。

〜〜〜〜〜〜〜〜
ソニーの音楽出版社の預かりだった頃、プロデューサーさん2人と飲みに行って、この曲の話になりました。
その時、私の担当じゃないプロデューサーさんが、「りえちゃんの曲の中で、俺はあの曲だけは嫌い。認めない。」とおっしゃったんです。
歌詞が後ろ向きだからとか、過去にこだわっているのは俺は許せない、みたいな理由だったかと。
でも、全然そういう歌詞じゃないんだけどなーと思って聞いていました。笑
解釈って人それぞれなんだな、と。
何かがその人の中で引っかかって、そういう風にしか聞こえなくなってしまったり。
歌は印象もとても大事だし、直感的に受ける印象はスルーしてはいけない真実だと思う。
けど、その人の歴史や考えあっての、個人的な印象は別です。フィルターがかかっているから。
プロの音楽プロデューサーさんでもそうなんだと思って、ちょっと驚きでした。
個人的な感想として言っただけかもしれないですけどね、担当じゃなかったから。
その後、こと作品の良し悪しに関しては、あまり人の言うことを聞かないようにしようと決めました。キリがないから。笑

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さて、「ウワサの僕」は、笹路正徳さんがアレンジをしてくださいました。
木管楽器の音色が本当にこの曲の世界観にぴったりでしょう?!
イントロのメロディは、もともとピアノ弾き語りの時弾いていたフレーズが使われています。
スタジオでは、「日本昔ばなし」が始まったみたい!と誰かが言っていた記憶が。
笹路さんが書いてくださった間奏が大好きです。言葉よりも雄弁で、いろんなことを含みながら、歌詞の思いを膨らませてくれている。

この曲も「さかなの夜」などと同様にあまり音域が広くなく、私の曲の中では歌いやすい方です。
ストーリーを語るのに、曲があまりにドラマティックだと歌詞が聞こえにくくて、バランス悪いですからね。
自然にこういう穏やかな曲になったのだと思います。

これはアルバム「Oh Dear」の歌詞カードです。


シングル用、アルバム用、カップリング用、と意識して曲作りしていたわけではありませんが、「ウワサの僕」はカップリング然とした曲かもしれませんね。
陰陽で言えば陰的な。
もしこの曲が好き、深く共感するという方がいたら、ぜひ詳しくお話を伺ってみたいです。
共感してもらえるにはきっと背景があると思うので、そのストーリーを聞きたいな。

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