私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

ダンブラウンのLOST SYMBOL

2011年05月28日 21時30分46秒 | ミステリー
前回(ダヴィンチコード)前々回(ANGELS AND DEMONS)同様、かなり無理のある話だった。
今回はフリーメイソンの失われた言葉の謎、舞台はワシントンDC. 

いつものように朝の5時にロバートラングドン教授が日課の朝の水泳から帰ってくるところから話は始まって、24時間以内に全てが解決。 たとえどんな難題だろうと、何世紀にもおよんで隠しつずけられてきた人類の謎だろうと、天才たちの機密だろうと、1晩でといてしまうラングドン教授。
今回も秘密結社のフリーメイソンが1800年代から隠してきた失われた言葉の謎を24時間でといてしまう。スピード感満点というか光速度なみの話のすすみ具合。

たとえ、準主人公が誘拐され片腕を切り取られた後無事発見されても、病院に行く前にラングドン教授と書斎で謎について語らなければならない。
病院いかなくていいの? 警察のとりしらべは? たった今準主人公の息子が死んだのに、たった今誘拐犯から救助されたばかりなのに、片腕きりとられてるのに???? 自宅屋敷の書斎でラングドン教授とかたる。
うーーんたしかに夜明まであと少しだからいそいで話の決着をつけなければというのは分かるけど。。。24時間の呪縛だな。


スケールのおおきな陰謀論なんだけれども、すごく現実感、信憑性あり。
作者の丁寧な調査のたまものであろう。
ダビィンチコードのときはまことしやかにこの陰謀説がささやかれたりした。 小説どと断っているにもかかわらず、かなりやっきになって小説のおもしろさではなく事実関係を叩かれていた。これほど物議をかもすほど、細部まで調べ尽くしているということだろう。 それを小説のバックグランウンドとして用いているのだけれど、情報小説のようにはならず、ちゃんと小説の筋にそって厭味なく提供されている。
おうおうにして、この手の情報知識があるといきなり主人公がとうとうとなん十ページにもおよんで語ってしまって、読者おきざり状態になりがちだが(例:京極堂シリーズ)、ダンブラウンの本にはそうしたところがない。
さらに、科学と宗教という一見相反するものを違う角度から読み解こうというテーマもいい。

ダンブラウンの本は全て読んでいるが、どれもとてもおもしろい。 海外ものはほとんど読まない私でも、ダンブラウンの本は例外。LOST SYMBOLは発売当日に定価で買ってしまったほどだった。
読むなら是非シリーズ初回のANGELS AND DEMONSから。

森見登美彦の夜は短し歩けよ乙女

2011年05月18日 14時41分54秒 | ファンタジー
う~~~ん  生理的にうけつけなかった。
30ページ程読んだとこで挫折。
直木賞候補で本屋大賞2位だったんだけど、ダメだった。
先輩なる私が後輩の黒髪の乙女とおちかずきになるため半ストーカーとかしてがんばるっていうはなし。
おもしろそうだなって思ったけど、読んでいて誰が誰で、いったいどういう設定で、誰と話ているのかという基本がわからず、ついていけなかった。

東野圭吾の新参者

2011年05月17日 12時56分07秒 | ミステリー


ひさしぶりの東野圭吾、大満足な作品だった。
加賀恭一郎シリーズの最新作。 ガリレオ先生シリーズが有名なため、影がうすいかもしれないが、シリーズ8作目。
前のシリーズを読まなくても十分話はつうじるし、この最新作がシリーズの中で一番おもしろいとおもうので迷わずこれから読み始めることをおすすめする。

準主人公を1章ずつかえ、1件の殺人事件をおっていく。
各章が独立しているのだけれど、殺人事件をとうして一見関係ない登場人物がつながっていく秀作。

日本橋に引っ越してきたばかりの四十代女性が自宅で絞殺された。
日本橋署に着任したばかりの加賀刑事が担当となり、下町日本橋に住む人々に話をきいてまわる。
下町ならではのものを手がかりに1章ずつ確実に殺人犯に近づいていく。
同時にその過程で下町に住む準主人公たちのプライベートな部分にもせまっていく。

ちなみにドラマ化もしたらしいとう話をきき、早速1作目をみてみた。
話的にドラマ化したら絶対いいとおもっていたので結構期待していた。加賀刑事役に阿部寛はいいなと賛同もしていた。
でもすごくがっかり。 見始めて5分でやめた。出始め5分でいきなり、本に登場しない女性記者登場。速攻テレビけした。
なぜ本に忠実にドラマ化できないのか????
脚本家は東野圭吾よりもよい作品をかけると自負しているのか????
それとも、あの女優を使わなければいけない義理でもあるのか????

桜庭一樹の赤朽葉家の伝説

2011年05月16日 12時22分24秒 | ミステリー/文芸


祖母、母、娘の3代にわたる赤朽葉家の物語。
1953年から2000年までを3代の女性をとおして戦後、高度成長期そしてバブル後の日本をてらしていく、スケールのおおきな本である。
このように野心的な巨編作だが、なんだかなーこのペラペラ感。
スイスイ読めるんだけど、なんか本をとおしてのまとまりが無いというか, 薄ぺらいというか。

似たような趣向で佐々木譲の警官の血という本があるが、あちらのほうが格段上。
できそこないの宮尾登美子と坂東真砂子というかんじ。
この本は図書館でおひまなときに。

奥田英郎の空中ブランコ

2011年05月15日 13時30分42秒 | ミステリー/文芸


おもしろかった。 おもわず声をだして笑うほどおもしろかった。
小説で声をだしてわらうなんてめったに無い、希有なことである。もうそれだけで直木賞もの(2004年直木賞受賞)

この本には表題作以外に、ハリネズミ、義父のズラ、ホットコーナー、女流作家の短編5作がはいっている。
空中ブランコでは人間不信になったサーカスのブランコのり、ハリネズミは先端恐怖症におちいりナイフがこわくなったため血判状に判がおせないヤクザ、医学部長である義父のズラをとりたくなる強迫症状におちいる精神科医、ボールがなげれなくなったプロ野球選手、前に書いたネタではないかと常に強迫観念を抱き本がかけなくなった作家が患者。

彼らを治療(?)するのが5歳児なみの精神科医伊良部一郎。
伊良部総合病院のあととり息子なれど、売上が伸びないなので地下にある精神科をオフィスとする破天荒な名医(?)。
名医なのか偶然なのかは不明。
ある患者は"総合病院の地下に住みついた子供の妖怪"またある患者は"白いトド"またある患者は"海面に出現したクジラ"と伊良部先生のことを描写する。

これは絶対おすすめ。いまなら文庫本で530円とお買い得。


卒業式

2011年05月12日 19時33分57秒 | 日常の話

明日は卒業式。
期末テストもおわり、夏休みに突入。 今年は4人の卒業生をだした。
そのうちの1人は4年間私の学生アルバイトとして働いていた。
2人は付属の看護学校へ、一人はNPOのインターン、一人は福祉の正社員の仕事を決めてきた。
みんな、行くところがはっきりとした晴れやかな卒業となった。
この不況のなか本当によかった。
子供のいない私としては、日々日常において、お祝いするイベントがない。
七五三とか誕生日とかクリスマスとかひなまつりとかはなく、淡々と日々がすぎていく。
この年になると、自分の誕生日とか記念日すら忘れるか、覚えていても面倒くさいで終わってしまう。
そんなイベントとは無縁な私だからこそ、生徒の卒業式はいっそう感慨深い。


ちょっと気になる...

2011年05月10日 12時36分43秒 | 日常の話


中山七里の連続殺人鬼カエル男。 真面目な結構グロいサイコサスペンスらしいんだけど、カエル男。
しかも表紙の絵もカエル男。 この表紙をみてからというもの気になってしょうがない。この表紙で買っちゃうかもな。



中身拝見と大きな絵はこちら


学生さん
重いから教科書、図書館に置いてっていい? と聞いてくる学生さんが多いこと。
基本私物は紛失したとき責任問題になるのであずからない。だけど、重いからもちたくない駄々をこねる。
甘ったれさんなどは"忘れ物として置いてっていい?"と聞いてくる。 教科書たかいのに、無くしたらこまるだろう。

図書館 - 大阪府立中央図書館
約200万冊を所蔵する大阪府立中央図書館では多くの本を地下書庫(100m X 100m)に保管しているらしい。
図書館員はカウンターから閲覧請求がファクスで送られてくると三輪車にのって本を探しにでかける。
書架の切れ目となる“交差点”では「交通事故」防止にベルを鳴らす。本を見つけると、後ろのかごに入れて急いで戻り、エレベーターでカウンターに届ける。"おそい"といわれないように、一生懸命こぐらしい。うちの図書館にもASRSという収納スペースがある。これは100%自動化されており、本についてるバーコードをコンピューターに入力すると、大きなクレーンが作動して、本をもってきてくれる。最初にこれをみたときかっこいいっておもったけど、自転車でとりにいくのもいいなーって思ってしまう。


ASRS

自転車

読売新聞

薬丸岳の天使のナイフ

2011年05月09日 12時16分59秒 | ミステリー


良くも悪くも新人の作品だなーっていうのが感想。

あらすじをいうと、妻を少年3人に殺された夫(被害者の遺族)の目線で少年法を問いながら、いったい何故妻は殺されたのかというミステリーになっている。
少年法で保護されているため、少年の名前、事件の詳細などいっさいしることができない遺族。
更生した少年たちは外の世界にでてきている。そんななか、殺人犯である更生した少年Aが殺される。
遺族である夫に疑いがかけられるが、彼もまたなぜ妻が殺されなければならなかったのかという疑問をもち、自分ながらに少年たちをおっていく。

話を2転3転させて意外性をだすっていうか、どんでんがえしで読者をひきつけるってことなんだろうけど、話が出来過ぎ。
さすがに2年かけて書いた作品なので丁寧でつじつまはあっている。つじつまは合っているんだけど、こんなに殺人がつながるかという疑問がのこる。

少年法というこれまたちまたに氾濫しているテーマをとりあげ、結局大学1年生の論文のような両者の言い分みたいのをまとめ、あまりに予想されたとうりのテーマのとり扱い方。

これはヒマなときに図書館でみかけたらどうぞ。

真保裕一の灰色の北壁

2011年05月08日 10時55分40秒 | ミステリー/文芸


この作者の栄光なき凱旋を読んでいらい、ファンになってしまった。
ホワイトアウトと同様山岳もの。短編3作が入っていて、どれも山登り関係。
これで新田次郎賞を獲得したらしい。
新田次郎文学賞というのはジャンルをとわず自然を題材とした秀逸した作品におくられる賞らしい。
気になってみたのでWIKIPEDIAで調べてみた。
おもしろそうなので、今度からこの線で本を借りてみようとおもう。

山登り(こう書くと小学生の遠足のような印象をあたえてしまうかもしれないが)には詳しくないし興味もない私にでも分かり易く、かつ無理なく話にのめりこませる。
3作ともプロの登山家の寡黙さと情熱がかかれている。その情熱もスポーツ独特のあつくるしさがなく、でも迫力ある描写でよかった。
あと、ちょっと死体もあり。あと、ちょっと意外性もあり。

おすすめの一作。


湊かなえの贖罪

2011年05月04日 18時36分46秒 | ミステリー/文芸


おもしろかった。 この作者どくとくの作風が女のこわさみたいのをきわだたせている。
殺人なんだけどミステリーではない不思議なこわさ。 ご都合主義なつじつまの合わせかたも不思議ときにならない。
前作の告白同様、語手を代えて話をすすめていく連作物。
小学校のとき殺された少女の友達4人とその殺された娘の母親という5人の語手が彼女なりの殺人事件の経験をかたっていきます。
でも、過去の話だけでなく、現在の彼女たちの境遇をおりまぜての告白。

この作者は小学校の先生だったのか、もしくは家族に教師という職業の人がいるのかとおもわせるほど、教師という職業にこだわっている。
告白でもそうだったが、今回も4人のうち一人がおおきくなって小学校の先生になり、その立場から過去の殺人事件をかたっていく1章がある。
この人のかく先生像というのがナマナマしいのだ。モンスターペアレンツなるものから脅迫まがいのプレッシャーをうけ、生徒はずうずうしく、いろいろ大変な職業である。
そういうプレシャーのなかで仕事をしている先生の心情がよくかけている。 この本にでてくる先生もその一人。
不法侵入者から子供たちを助けたのに保護者にたたかれ、PTAのつるしあげ総会にだされ、この先生の言ったひとこと"あんたたちの子供なんて助けるんじゃなかった"
おもわず深くうなずいてしまった。

大変よかった。ぜひぜひ図書館でかりてみて。