私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

東野圭吾の"むかし僕が死んだ家"

2007年07月30日 11時26分17秒 | ミステリー
東野圭吾には珍しく"謎とき"主体の作品。"謎とき"ものでは"どちらかが彼女を殺した"や"あるとざされた雪の山荘で"などもあるけれど、それとはまた別のかんじがする。東野圭吾といえば人物をかくのがうまいが、これはまったく逆。人物、とくに主人公"私"の7年前に別れた彼女"沙也香"などかなりうすっぺらいかんじがした。それというのも、フォーカスが"謎とき"だから。

その徹底さは主人公の名前すら出てこないところにも現れている。"私"と"あなた"だけで全300ページおしきられている。しかも、人物は"私"と"沙也香"のみ。舞台は山奥の家だけ。それなのに、不自然さをかんじさせない。あくまで、余計なもの排除して本格ミステリーにしようという意気込みが感じられる。まあ無理をいえば沙也香のキャラクターが結構イライラさせられる人で、それが鼻についた。でも、それも山奥の家に2人だけというセッテイングを保つてめにはしょうがないのだけれど。だれかが我儘をいって"私この家に残るわ"といはなければいけないけどさ。それでも、あと100ページほどのばして沙也香のキャラクターをなんとかしてほしかった。それに引き換え"私"のキャラクターは奥が深い。タイトルの"僕"もじつは2重の意味があるとよんでからきずかされる。

思うに'あっという間に読んでしまう"本といわれるものには二種類ある。ひとつはまさに1ページ1ページが面白くついつい寝る間もおしんで読んでしまうというもの。もうひとつは"最後がどうなるのか知りたくてたまらず"という展開、この前紹介した"憑神"が変な意味でこれにあたる。この本はまさに後者。"最後はどうなるの""謎は結局なに"というあせりから、昼ご飯もつくらず読んでしまった。

本格ミステリーといわれている作品はおうおうにしてこの手が多い。謎ときだからそれでいいのかもしれないけど、読んだあと一片の物足りなさを感じる。特に幼児虐待などのすわりのいい社会的問題をちらつかせているだけに、この読後感はなんだかな。やっぱりそうくるかとしらける物があった。といことで、この本は古本屋で300円というところが妥当。それはまさしく私がBOOKOFFで払った値段。

大沢在昌の"ジョーカー"

2007年07月30日 07時22分50秒 | ハードボイルド
大沢在昌らしいハードボイルドな作品。6編のショートストーリーが入っていて、手軽に読める本。この6編どれをとっても十分に単行本1冊にのばせる話なのにあえて(もしくは面倒で)短編になっている。でも、下手な短編につきまとう尻切れ蜻蛉の様相はなく、よくまとまっている。
この本"ジョーカー"シリーズとなっているけど、でているのはこの1冊のみ。せめて、2冊目でてから、シリーズ化するべき。おもわずインターネットでジョーカーシリーズ第2弾をさがしてしまった。

内容を簡単に説明すると、ジョーカーというなんでも屋が依頼人に会うところから話がはじまり、いろいろ事件やトラブルに巻き込まれ最後は一件落着で終わるという単純な話。文庫本で648円。ちょっと高いな。新刊で買うほどのものではないけど、古本屋で見かけたらお買い得な一品。通勤電車などで読むのに最適。

大沢在昌の作品に出てくる主人公はほとんど同じタイプ、職業が警察かなんでもやか探偵かにがしやか。多分こういう人物にあこがれているからか、こういうハードボイルドを書かせると本当にうまい。しかも、こういうタイプの主人公ほとんどが中年とよばれる35ー40歳ほどの独身男性。新宿鮫の鮫島など丁寧にちゃんと年をとっている。これは私だけかもしれないが、自分より年上=大人、自分より年下=子供という感覚があって、作品の主人公が自分より年上だと安心してよめる。"大人"だからこういうこともありだろうとなんか変に納得できるから。この図式でいくとかなりの人口が"子供"ということになってしまい、これから先"子供"の比率は伸びるばかり。
私がこれに気付いたのは漫画の"有閑倶楽部"をよんでいたとき。私はこれをまだ当時"りぼん"で連載していたころから読んでいた。小学生の私にはこの6人の高校生は"大人"であんな事やこんな事がおきても"大人"だから対処できるのだろうと素直に読めた。18ー19歳のときも違和感なくよめていたとおもう。ところが10年後読んでみるとセッテイングが不自然なほど稚拙で話に集中できない。ちっとも面白いとかんじられなかった。たぶん、これはある日きずいてみたら高校球児が年下だったときのショックと似ているとおもう。たぶん、気付いていたら水戸黄門と同い年とか、一体その時どうかんじるのであろう。もしかしたら、格さん助さんとはもう同い年かもしれない。これは、こわいな。
そんなこをいっていたら、世の中の本のほどんどが年下の主人公という日もちかいかも。ドラマはもうほとんどが年下の年齢だろうし。
とりあえず、大沢在昌の本はこの点では大丈夫。なんといっても、主人公が60歳のハードボイルドのシリーズもあるから。

東京サザエさん学会編"礒野家の謎"

2007年07月29日 10時03分42秒 | ノンフィクション
随分前にはやったこの本、改めて読み直してみたけれど面白い。正確にいうと15年まえに出版されたもの。そのころいろいろな謎本(ドラえもんの謎とか)がでたのでおぼえている人もいるとおもう。結構ブラックな内容のシリーズ。偶然、図書館で見つけててにとってみた。

この学会ちゃんとした研究者が集まっていて、おもしろいながらもちゃんとした意義ある論文になっている。サザエさん一家をとおして戦後の日本の発展や移り変わりがよく観察、考察されている。

昭和21年から始まったこの漫画、当時の人々の生活が等身代でかかれているため史的資料としても十分価値があり、そこに目をつけたこの学会は斬新。例えば戦後、おはぎとスイカがいかに魅惑的な食べ物かその出典の回数の多さでもうかがえる。しかも、サザエさん一家この2つの食べ物には異様なほど執着心をみせる。
万博を期に家が洋風になったり、家電製品が豊富になったりと全68巻をとおしてかなりかわっているらしい。32巻で電気ストーブ、33巻で電気釜、35巻で1ドアタイプの冷蔵庫、36巻で白黒テレビ、37巻で掃除機、39巻で手動洗濯機を購入している。連載当初サザエさんとふねは洗濯いたで洗濯をしほうきで掃除をしていた。とくにふねは1日中家事をしていたらしい。それが、昭和34年から40年代にかけてこの変化。ふねはテレビで英会話を習い始めるまでにいたる。この家電の急速な普及により都市では昭和30年前半にけっこう停電がおこったらしい。この影響でサザエさんでも停電ネタがこの当時よく登場したらしい。今テレビではどうなのか知らないがそろそろパソコンを礒野家でも買っていいのではないだろうか? 今の子供にしてみれば礒野家はかなり簡素なはず。簡素などころかピンとかないかもしれない。
ちなみにマスオさんの給料昭和40年当時で手取り3万4千円。マスオさん早稲田卒らしいが、給料は当時の平均並。銀行振り込みではなく、現金手渡し。いま考えるとすごいな。テストが返ってくる時先生のところにとりにいく心境だろう。

この本は漫画がもとになっているので、テレビでみるサザエさんと少しちがうらしい。例えばサザエさんとタイ子さん全然仲良くないとか、タイ子さん姑との仲が悪いとか。まあいろいろ読みどころがあるのだが、私としては礒野家の年中行事の話が一番おもしろかった。節分、七夕、エイプリルフール、月見とかなりマイナーなものから年末年始とメジャーなものまで礒野家では暦そのままに生活している。特に秋は忙しい。"芸術の秋""食欲の秋""スポーツの秋""読書の秋"といろいろとやらなければいけないことがあるから。あと、松茸もかわないと。

確定申告

2007年07月26日 06時48分59秒 | 日常の話

確定申告やり直し。
税務署から手紙が来て、やり直してくださいといわれた。足りない書類があったらしい。検査でひっかかるかどうかはもう運。去年も一昨年も大丈夫だったけど、今年はダメが出た。
日本とちがい確定申告は国民どころかここに住んでいるすべての人がやらなければいけない。自営業だろうとサラリーマンだろうと留学生だろうと関係なし。みんなやる。 今年も4/15までにちゃんと申告し、追加の税金10万もはらった。なのにやり直し。日本の確定申告はどうか知らないけど、この確定申告結構むずかしい。すごい数の書類があり詳しくいろいろわかれている。みんな税金専門のサービスやとったり、それようのソフトをかってやっている。うちは毎年一番簡単なのですましているけど。多分損しているだろうなと思う、でもお金だしてやってもらってその上払わなければならなかったらいやだし。それに税金のサービスやっている人プロの税理士ではなくふつうのパートだというし。それなら、自分だやったのといっしょ。
一応その書類をかいて送った、それで税務署が納得しなかったらさらに4万加税。これは痛い。
いろいろ人にきくと税務署がらみの恐ろしい話を聞く。ちゃんと4/15に出したのに、8カ月後になって書類の不備を指摘され、さらに課税。その上その8カ月分の利子も払えといわれたらしい。その8カ月は税務署のかった時間なのに。じつは今回わたしも変だなとおもったことがある。手紙には6/20づけになっていて、20日以内に返事をくださいとかいってあったのに、実際投函されたのは7/2。これは7/2から数えて20日?それとも6/20から数えて? ちょっとずるくない? とりあえず証拠のため封筒は取っておいてある。

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所

2007年07月22日 17時29分45秒 | ミステリー
いやあ、あらゆる意味でこの本きつかった。
題名のとうり漫画の"こち亀"を7人の作家が小説じたてにしたもの。もちろん、登場人物も同じ。いわば材料を同じもの7人に渡して、さあ料理してみて下さいといってるようなもの。もちろん中には5つ星のシェフもいればデニーズで働くバイトのコックさんだっている。同じ材料を渡されているだけにその差は痛いほど歴然としている。そういう意味できつかった。

この本"こち亀"連載30周年記念と日本推理作家協会設立60周年を記念してコラボで出版されたもの。この二重の意味を分かって書いていたのは東野圭吾だけだった。わずか12ページなのに内容が濃く両さんのキャラクターをよく表しながら江戸川乱歩賞の選考委員を皮肉った揶揄するかのような作品。でも、それが厭味にならないのは両さんのハチャメチャな性格をよく利用し、書けているから。
次によく書けているなと思った作品は京極夏彦の"ぬらりひょんの褌"。これは両さんをまったく登場させずしてそのものすごさをうまく語ったもの。他の作家のように自前のキャラクターを両さんと絡ませているのだけど(京極堂と大原と寺井)それに無理がなく自然に読ませる。 大沢在昌も同様に自前のキャラクター鮫島などを登場させているのだけど、全然だめ。両さんの世界と鮫島の世界が全くかみ合ってない。

あとの4人の作品ははっきりいってつまらない。こち亀がどうこういう以前の問題。 この4人一体どういう理由でこの仕事をひきうけてしまったのだろう。日本推理作家協会への義理かなんかか? 自分の作品がいやがおうでも他とくらべられるとわかりきっているのに。それにしても作品の優と乙の差が一目瞭然としていてそれがまた面白いというところにこの7人の競作の意味があった。
この本をよんで分かったことはこの4人の本は多分読まないであろうということ。あとこの本こち亀よんだことの無い人はこの本買うのはやめておいたほうがいいと思う。

浅田次郎の"憑神"

2007年07月22日 07時22分35秒 | ファンタジー
この本いいのだけど、なんか居心地が悪い。全体的なストーリーとしてはとても個性的で面白いのだけど、なんかこうチグハグなところがある。それが後味の悪さを隠せない。例えば主人公の別所彦四郎のキャラクター前半と後半でかなり変わっている。それをうけて、話の性格まで違ってしまった印象があるのでほとほと戸惑った。

あらすじを簡単に説明すると江戸末期というかもう維新の時、江戸御徒士(下級侍)の出戻り(1度婿にいった)居候の次男坊である彦四郎が憑神をよびこんでしまうところから話がはじまる。最高ついていないみじめな境遇の彦四郎のもとに貧乏神、疫病神、そして死神がつぎつぎに現われ不幸をよびよせる。その度に彦四郎それぞれの神様に宿振り(不幸を他の人にうつす)をお願いする。3度目の死神が現われ、さあどうする彦四郎という話。

私は2度目の疫病神が現われた時まで、これはコメデータッチで書かれているのだと思っていた。どうしようもない侍の次男坊、忠義とか伝統とか家とかどこ吹く風の自由人でも人間的に優しい人柄、あまり深くものを考えないたちなので憑神たちが現われたびにどうやっってその場をしのごうかと戦々恐々とするが人懐っこい性格で神様たちを取り入ってしまう。でも、最後の死神だけはさすがにどうするものかと知恵をしぼって退治する。とまあこんな感じの印象をうけた。ちょっと昔話ぽい感じ、同じストーリーを3回くりかえし、最期はなんらかのオチがあるみたいな。 これが全然違う。本当に前半50%はこういう印象だったのだ、ところが後半に入ってから様相が一転する。

疫病神が彦四郎の兄に取りつくところから様子は一変する。四角四面お家大事だとおもっていた兄のキャラクターが実はちゃらんぽらんで侍やめたいとおもっていた人だった、一方自由人だとおもっていた彦四郎じつは武士道とか義とか先祖伝来の家とか御役目とかをすごく大事におもっていた人だったらしい。この辺から雲ゆきが怪しくなってきたので私はすごいスピードで本を読み進めた。"おもしろくて一気に読ませる"とか"ページがかってに開いてしまう"とかいう話ではなく、"オチはなんなんだ!"という不安から。読んでびっくり、夜鳴き蕎麦屋の親父相手にくだをまいていたあの彦四郎が徳川の臣として御家人の反乱に加わるのだ。しかも、権現様(家康)の幻をみるというおまけつき。天に選ばれし英雄陣羽織をきて太刀ふるいいざ戦場へというかんじ。いやーびっくりした。まさかこういうオチとはね。3人の憑神様の意味は最後のほうではきえていたね。彦四郎のひとり舞台。

これ、2冊違う本がくみあわされたかんじがする。浅田次郎、面倒でも2冊書くべきだった。"憑神と次男坊彦四郎"という話と"別所彦四郎、維新を生きる"という話。
映画化したらしいけど、どういうふうになったいるのか見もの。

上半期直木賞

2007年07月21日 08時43分42秒 | 日常の話
上半期の直木賞きまりましたね。松井今朝子の"吉原手引草"
もちろん読んでいないけど、候補作をみるとそれほど強敵がいそうにもないし、順当なとこなのだろう。なんといっても、このブログでも紹介した畠中恵と北村薫が候補作に入っているのをみたときは、びっくり。そりゃいくらなんでも、べッキーさんと若旦那では無理ではともった。

それにしても直木賞選考委員何とかならないのか? 平均年齢67歳。
大御所といえば聞こえはいいけど、いいのかこのメンバーでさ。渡辺淳一、林真理子、田辺聖子、平岩弓枝、五木寛之、阿刀田高、井上ひさし、北方謙三、あと知らない人3人(名前だけは見たことある)。この知らない人3人についてはもうなにもいうまい。定年後の取締役顧問みたいな者としておこう。
不倫だの究極愛だの大人の純愛だの毎回毎回同じこと書いているだけの作家、説教くさい人生の話をエッセーでだしたのが唯一大ヒットした作家、子供ぽいミステリーを書いている作家。あと時代小説家が3人もいる、とくに田辺と平岩はぜったいかぶっている、2人もいらないだろ。林真理子についてはもー彼女の結婚式のことしか思いうかばない。瀬戸内寂聴が入ってないのが唯一の救い。特に渡辺淳一、なんでこの人が推理小説について偉そうにいってるのだ? とくに東野圭吾と横山秀夫についてはぼろくそ。 確か、"半落ち"が受賞できなかったときなんかいろいろあったと聞く。それ以後、横山秀夫はたしか候補作になるのも辞退しているはず。クライマーズハイは受賞確実といわれていたにもかかわらず、辞退。結構かっこういい。
渡辺、田辺、平岩、井上、阿刀田、五木は委員歴18年以上。下手すると25年とかいうのもいる。なんだかなあ、"煎餅はしょうゆ味のみ!それ以外は邪道! カレー味とか明太子とかは論外"って感じ。もう少し若い層の人をいれてもいいのではないだろうか? 20だい、30だい、40だい、50だい、と代表してそれぞれ2人ずつとか。あと、任期は10年。とりあえず、渡辺淳一にはぜひやめてもらいたい。

またまたまた火事

2007年07月20日 08時05分46秒 | 日常の話
またまたまた火事。今度は家とおなじきたがわの斜面が火事。家が高台にあるので、よく見える。次から次へとまー 今年は火事が多い。ちなみに、昨日の西の山の火事の源因は建築中の家の工事の人がシャベルカーで岩を削っていたら火花がちってそれがちかくの雑草に引火して山火事になったらしい。それをうけて、知事がその地域すべての工事中止令をだしたので、大騒ぎ。
この工事責任者にして家のオーナーがこの火事のための消火費用1億円払うことになるらしい。おそろしい。ふつうに暮らしているつもりでも、いつ火事の責任者になるか分からない。
ちなみに、今日の火事をうけて家は停電になった。

追伸: 最近3冊の本を同時進行で読んでいるので書評をかいてません。しばらくお待ちください。小説"こち亀"は読んだのだけど、どう書こうか考え中なので、こちらもしばらくお待ち下さい

またまた山火事の話

2007年07月18日 14時56分57秒 | 日常の話
最近ちょっと忙しかったのでお休みしていた。
この前は暑いと文句をいっていたけど、最近すずしい。27度。43度だったころにくらべるとうすらさむいくらい。 でも、またまた山火事、しかも市内近辺で、が起きたので、窓が開けられない。私の住む市は地理的にいうと盆地で四方を山/丘に囲まれている。こんどの山家事は西の山の斜面で私が住んでいる北の丘の斜面からよくみえる。 煙がすごく、まだ5%ほどしか鎮火されていないらしい。すぐちかくに住宅街があるのでけっこう危険な状態.

ちなみに今日の湿度8%。カラカラ。
普通、氷の入った水のコップをテーブルに置いて置いたら、結露ができるはず。外の気温とコップの温度差がすごくあるのにもかかわらず、水滴が全然でない。これが湿度とどう関係しているか分からないけど、どうにかつながっているはず

伊坂幸太郎の"アヒルと鴨のコインロッカー"

2007年07月17日 07時14分56秒 | ミステリー
伊坂幸太郎の"アヒルと鴨のコインロッカー"

この結構間抜けなタイトル、最後まで読むとその深さに気付かされ感心する。
主人公が書店強盗に誘われるところから話がはじまり、現在と2年前と話が交互に入れ替わり、最後になって読者に全体像が明かされる仕組みになっている。 いろいろ人によってテーマを見つけられとおもうけど、一番印象に残ったテーマは(私としては)生まれ変わりの話。これは遠藤周作の"深い川"を思い出させるものがあった。でも、"深い川"ほどそれに焦点を充てているわけではなく、日常的な風景の一環としてあつかっていて、なじみやすかったと思う。個人的な理由でこの本は泣けた。

私の知り合い/友達にHIVの人がいる。7年前にこの人からこの話を聞かされた時は本当に心底びっくりした。そして怖かった。この人をとうしていろいろその後興味を持ちHIVについてリポートも書いた。なので、HIVについては常識以上の知識があると思う。それを踏まえたうえでこの本のHIVに関するところは賛否両論。HIVになった登場人物"川崎"の書き方はよかったともう。 くれぐれも注意したいが、この本はHIVがメインのテーマではない。だから、サラと書いてあるのだけど、決してかろんじているわけではない書き方。掘り下げてそのことについてかいてあるのではないのに、川崎の心情みたいなのがよみとれる。私はこのところで泣けた。否をいうなら、川崎の昔付き合っていた彼女がそれについて知った時の驚きかた。なんか型通り。自分の経験からいうとこんなものではなかった。 気持ちの切り替えとか前向きになるのが早すぎ。私は偏見をもっていても自分でそれを把握しているつもりだった。そのうえでちゃんとコントロールしていけると。HIVのことは常識範囲で知っていたし(握手しても移らないとか)、でもそのことを明かされた時そんなことは考えられなかった。知識があっても反射的にただ怖いという思いしかなかった。そういう知識はその場にいあわせるとふっとんでしまう。そういうなまなましさを書いてほしかった。

北村薫の"街の灯"

2007年07月13日 04時45分09秒 | 歴史/時代物
高村薫と北村薫。私はこの2人を時々間違える。この本も高村薫と間違えて買った。
高村薫は"マークスの山" "照柿""地をはう虫" "神の火"などを書いた人。北村薫は"ターン" "リセット" などを書いた人。どちらこというと、高村薫のほうが有名だと思う。私は昔北村薫の本"リセット"を古本屋でかって、あまりにつまらなかったので最後までよみきれず,また古本屋へと売りに出した。なぜつまらなかったかとか、話の内容とか全然覚えていないけど、北村薫の本には要注意と思っていた。しかし、その後高村薫とごちゃごちゃになり、この本を買った次第。

"リセット"のことはなにも覚えていないので、比べようがないけど、"街の灯"はよかった。あまりによかったので最後までよんでもまだ高村薫の本だと思い込んでいた。 "へーえ高村薫はこういう本も書くんだ"と感心していた。誤解がとけたのはそれから数日してから。

この本設定が昭和の初期、戦前。私は大正、戦前の話が好き。ノスタルジックなのとあと戦争がもうすぐ始まるとしっているから、全てがはかなく見えるので。特に戦前にしかいなかった華族階級の話など興味がある、滅び逝く前の全盛期ほどはかないものわない。しかも、それを知っている(感ずいている)人たちが話をもっと悲しくさせる。 この本も華族のお姫さまたちと同じ学校にかよっている少女が主人公になっている。この娘は華族ではなく成金。この少女と謎の運転手ベッキーさんが事件をとき明かすながれになっている。お嬢様つきの運転手ベッキーさん、女だてらに車を運転する男装の麗人。この本ではその過去には一切ふれていないがかなり謎の人物。
1冊に短編が3っ入っていて、軽い謎ときの話。ミステリというよりもっと昭和初期の時代や文化、背景などを楽しむための本。この続きが最近でたばかりの "瑠璃の天"。

歯医者に行く

2007年07月12日 08時24分44秒 | 日常の話
昼休みを利用して歯医者に行ってきた。去年から数えて4回目の予約の今日やっと全部の虫歯をなおした。虫歯は10こほどあり、全部治すのに、時間とお金がかった。最後に歯医者にいったのは10年ほどまえなので、虫歯がそんなにあっても驚かなかったけど。過去10年ほど学生をしていたので、健康保険が無く(いや、あったのだけど、歯と目、あといろいろカバーされてないものがある。)歯医者にはいっていなかった。とくに、歯医者嫌いなのでべつに不便も感じなかった。でも、今の仕事がけっこういい健康保険つきなので、つかってみるかとおもって歯医者に去年いったら虫歯が10本もあることが判明。道理で、ちょっとしみるなと思った。しかし、ちゃんと保険に入っている私でする、結構な額をはらった。
ちなみに今日は1万5千円(虫歯3本+本年度の初診料5千円。私の保険は7月に始まって次の年の6月に終わる。だから、7月に入って歯医者に行くと新に初診料を払う。その後は次の7月まで初診料は無し)。保険なしだと、8万円。私が 子供のころはもっと安かった気がする。2千円とか。それとも、今は日本もこれくらいかかるのか?
気に入っているのは、10年前とくらべて全然技術が進歩していて、痛みがほとんどない。だから、歯医者さんにいくのも気軽だった。

次は眼科に行こうと思っている。せっかくの健康保険なので、有意義につかわせてもらう。

よしながふみの"大奥"

2007年07月11日 06時04分24秒 | マンガ
大奥というと女の世界とおもうかもしれないが、この"大奥"実は男女逆転の大奥。
春日局の時代に男しか感染しないという疫病が流行り、綱吉の時代になるころには日本の男子の人口は女子の人口の1/4まで減った。なので、ほとんどの仕事は女が担い、家督も女子が受け継ぎ、男子は貴重な種馬として貸し借りまたは売られるような存在になった。という結構奇抜だけどなんか現実性のあるセッテイング。そんな男子が貴重な世の中、大奥では美男子3000人が将軍(女)に仕えている。その将軍もなくなり、次期将軍の綱吉(くどいようだけど、これも女)が幕府の財政立て直しのてめ、大奥縮小に取りかかる。ちなみに、江戸城の表の役人、老中とか奉行所の人とかみんな女。そんななか、綱吉はなぜ女には2つ名前があるのか(例、綱吉/お信)、なぜ外国の使者に謁見する時は男装しないといけないのかということを疑問に思い始める。

1巻はここではなしがおしまい。綱吉は準主役みたいなのだけど、その後の話の鍵を握っているので、後半は綱吉が主体で書かれていた。実におもしろかった。
2巻では時代がさかのぼり、春日局のころ。ちょうど疫病が流行りだしたころで。いろいろな意味で世の中が混乱しており。大奥もその制度を変えようとしているところ。 その混乱にまきこまれたお坊さんと将軍(女)の話。1巻は綱吉の性格がサバサバしていて、読んでいて楽しめたけど、2巻は世の中が混乱していることもあり、将軍(女)も春日局のあやつり人形のようになっているので、かなり読んでいて悲しくなる。

まんが(初めにいうの忘れたけど)とは思えない充実感。620円と漫画としては高めだけど、その価値あり。よく、漫画が値段をたかくするために大判、豪華な装丁、カラー という余計な装飾をくわえてあるけど、これは620円で文句なしに売りに出せる品。
難をいるなら、出版されるのがすごく遅い、1年に1冊のペース。

七夕の日

2007年07月10日 06時20分45秒 | 日常の話
土曜日は7ー7ー07とおめでたい七夕の日だったので近くにある(車で45分くらい)の湖えと出かけてきた。帰りに天ノ川が見れるかもとおもったけど、結構難しかった。星は すごい数あるのだけど、写真とかでみる天ノ川らしきものはなかった。北斗七星もちゃんとあったけど、天ノ川はなし。日本と見れる日が違うのか???
ちなみにこの湖先月書いた山火事の近く。あの後1週間ほどして火はおさまった。火事の現場は湖の南側、私たちが行ったのは北側。この湖ちなみに深さ500m、周囲116km。透明度が有名で底が透けて見える。あと、映画のGODFATHERの撮影にも使われた。兄が弟(アルパチーノ)に暗殺されるところ。

伊坂幸太郎の"陽気なギャングが地球を回す"

2007年07月09日 14時12分51秒 | ミステリー
今日は伊坂幸太郎の"陽気なギャングが地球を回す"。
映画化もされたらしいから知っている人も多いと思う。取り敢えずさきに本の感想を言うと、期待以上に面白かった。

魅力のあるキャラクターというのがあるけど、例えば先述の新宿鮫のような。 たとえ保護する上司が退職しても、ライバルが左遷されても、恋人と別れても話の内容、または主人公のキャラクターには全然影響しない、そんな強い個性でグイグイと話を進めていくタイプ。陽気なギャングはこれとは対象的で、"魅力あるチーム"とカテゴリーできると思う。登場人物がそれぞれとても個性的なのだけどチームとして動かないとその本領が発揮されないタイプ。伊坂幸太郎の前の作品"チルドレン"もそんなかんじだった。

思うに、こういうタイプの話は書くのが前述のものよりも難しく複雑だ。1人ではなく複数の登場人物に同じように個性を与えねばならず、その上その複数の人物を絡まらせねばならないから。"陽気なギャング"も一見単純な話のようだが結構複雑で380ページの中で4人の主要人物の性格、特技、出会い、家族、過去をそれとなく紹介しつつ事件を進めていっている。話の要所要所が無駄なく無理なくよくつながっていて読者としてはとても読みやすかった。 裏表紙に"ハイテンポな都会派サスペンス"と名うってあったけど、これは違うのではとおもった。 ハイテンポというほど息つく暇が無い訳では無く、サスペンスというほど謎を主体としたハラハラ感があるわけでも無い。都会派というところが意味するのは多分"おしゃれ"とか"かっこいい"とかを言いたかったのではないだろうか。たしかに、本文中の会話はそういうふうに言えることもできるが、私だったら"こいき"と言いたい。そうー 4人合わせて"こいきな奴ら"という感じ。

この本、映画化になるべくしてできた本といっても過言ではない。ちなみに、漫画化にもなった。要するにビジュアル的に栄える作品。けっこうこれはまれだと思う。おおくの本が映画化に失敗するなか、私はこの話を聞いた時いけると思った。ドラマ化もオススメしたい。

さてさて本当を言うと、伊坂幸太郎の本は避けてきた。"チルドレン"も去年読んだばかりだし、"陽気なギャング"は私にとって伊坂の2作品目。なぜ避けてきたかというとそれは名前のせい。
例えば高校のクラス換えの日まず自分の名前を探し、それからしっている友人がおなじクラスかどうかみつけるだろう。その後担任の名前を見て、それが"三浦しをん"だったらどう思うだろう? 私だったら"うわあー"とおもう。
名は体を表すなどという乱暴なことはいわないが、姿形といっしょで人間の名前は第一印象になんらかの影響をおよばすのではと考えられる。 三浦しをんは直木賞作家だ。 たぶん、彼女の本はいいのだろう、でも手がでない。それは、"しをん"だから。 "しをん"から連想されるのはコバルト文庫の少女小説もしくは別冊フレンドとかの少女漫画。間違っても直木賞ではない。

それなら、伊坂幸太郎という名前はいいのではないか? とおもわれるかもしれない。 そう、伊坂の名前はいいのである、響も字も威厳があってよろしい。 しかし、伊坂の書く本のタイトルがいけない。 "アヒルと鴨のコインロッカー"とか"グラスホッパー"とか"陽気なギャングが地球を回す"とか。よく女子高生にきいた最近(にして唯一)読んだ本のタイトルとかにでてきそうな名前、"東京タワー"何とかとか、"電車"何とかとか"冷静と情熱"の何とかとか"きらきら"なんとかと同列に。
しかもカバーもよくない。本当にギャングが地球を回している表紙なのだ、そのまま。ギャグのつもりなのか? うけるだろうけどさ。 まーこういう 個人的な第一印象の偏見で伊坂の本はよんでこなかった。同時に同じ理由で三浦しをんの本も読んでいない。でもまあ、伊坂の例もあるし機会があったら"しをん"の本もためしてみたい。

最後になるが、伊坂幸太郎ここ数年毎回のように直木賞候補にえらばれているがまだ受賞していない。 それも私が無視できなくなってどれ読んでみるかとおもった理由。