私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

京極夏彦の数えずの井戸

2011年10月30日 16時49分03秒 | 歴史/時代物
怪談の古典である番町皿屋敷の新解釈版。
京極夏彦ならではの本作りといい、 お話といい、構成といい、本全体が大変よくできている。 
いつもながらのサイコロ本(堂々の770ページ)なのだけれど、余白がおおいのでかなりゆとりをもった本となっている。 

番町皿屋敷といえば、お皿を割ってしたったお菊さんが殿さまにお手打ちになり、
うらみながらに毎夜毎夜井戸でお皿の数を一まい、二まい。。。と数えるあのお菊さんのお話。
殿様と恋仲であったとかいろいろなバージョンが出回っているけれど、この京極夏彦バージョンはそれぞれの登場人物のサイコロジーにせまる異質のものとなっている。
そう、昔の人もこういう強迫観念があったのでは?と思わせる新たな切り口。

斬新な古典といえば京極夏彦。今回も期待を裏切らないものだった。 




浅田次郎の珍妃の井戸

2011年10月17日 14時07分48秒 | 歴史/時代物
蒼穹の昴の続編。 
蒼穹の昴で主人公だった、春児、文秀、西太后などは登場せず、脇役だった人物(光緒帝、珍妃、アメリカ人のジャーナリスト、蘭蘭など)がでてきます。 

義和団の乱の最中、井戸になげすてられて殺された珍妃。 
国際問題にも発展しかねないこの事件を調べるべく、イギリス、日本、ロシア、ドイツの外交官が清国関係者をインタビューしていきます。 
一人一人話しをきくうちに、紫禁城の裏側の話がみえてきますが、一体だれの話が本当なのか。 
最後に列強の外交官が話しを聞く相手は幽閉されている光緒帝。 
光緒帝のはなしがとても身にしみます。
真実知りたいと連呼する外交官たち、真実を知ってどうするのでしょう。

構成もよく、大変よくかけていると思った。
蒼穹の昴をよんだら、ぜひこれも。

かわいそうな子犬の。。。

2011年10月12日 18時23分55秒 | 日常の話

ぬいぐるみが落とし物として届けられた。
届け人は20歳くらいの男子学生。
言うには、ルームメ-トが子供のころから大切にしている犬のぬいぐるみで、ふざけて誘拐してきたので、少しの間預かってほしいとのこと。
で、その小汚い犬のぬいぐるみを置いていった。

数時間後、その誘拐犯がうれしそうに戻ってきた。
言うには、ぬいぐるみが無くなっているのに気付き、おもいっきりあわてていて、泣きが入っているらしいとのこと。。
しかも誘拐犯がふえていた。みんなおもしろがっているらしい。
あ~~~かわいそうな学生さん。 仲良しのぬいぐるみを盗まれるなんて。
・゜・(ノД`)・゜・


さすがに、誘拐犯もかわいそうになったのか、ヒントをあたえたらしい。
はたして二人はふたたびで出会えるのだろうか?
なるべくなら、私が退社する前にきてほしい。
ぜひとも、ぬいぐるみと寝ているというその学生の顔をみてみたい。
うちの学生アルバイトの娘たちなど "かわいい!!!" と前評判は上々。
若さって...うらやましい限りである。


竹田真砂子の白春

2011年10月08日 22時23分08秒 | 歴史/時代物
予備知識なしに、なにげに図書館で手にとった一冊だったけど、大当たりだった。
この作家のことも本のことも知らず、パラパラとめくってみて忠臣蔵の話なんだと思って借りるのやめようかなあとも考えた。
歴史ジャンルは好きだけど、個人的に忠臣蔵はちょっとなーと敬遠するトピックだったから。
どうしても忠臣蔵にでてくる登場人物に魅力をかんじない。
なんか、クモの巣にかかってしまった虫をおもいだす。

そんなことはどでもいいのだが、この本、私が敬遠する忠臣蔵なのに大変よかった。

生まれつき耳が聞こえないゆえにしゃべることも出来ない"ろく"という女中の一人称をとおして、松の廊下から討入までをおっていく。
不自由な身の上の生まれたにもかかわらず、人に恵まれたゆえに"幸せな星の下にうまれた"と言切るろく。
そんなろくは幼いときに大石内蔵助の母である久満女様に拾われ、その久満女様が亡くなり、赤穂藩京屋敷留守居役であり忠臣蔵46士のひとりである小野寺十内の家に仕える。小野寺十内とその妻であるお丹に可愛がられ、よく仕えるろく。
女中という立場からみた忠臣蔵討入までの日々や、小野寺とその妻とのなれそめや、留守居役の日々の仕事がらなど語っていく。そんな日常の細々とした風景をとおしての討入がとてもよく書けているとおもった。