私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

山本謙一の利休にたずねよ

2012年07月22日 16時36分30秒 | 歴史/時代物
さすが直木賞受賞作、たいへんおもしろかった。

時代小説だとたいがい江戸もの、市井ものがポピュラーでけれど、これは戦国時代もの。
でも戦国時代ものにありがちな、戦国武将一代記(織田信長の生まれから本能寺までみたいな)とは全然ちがう本だった。 利休の切腹の朝からはじまり、時をさかのぼって話がすすまれていく。

切腹の15日前を細川忠興、24日前を古田織部、4年前を秀吉というように、それぞれの立場からみた利休像を語りながら、切腹の因果関係をほのめかしていく。

利休といえば侘茶、錆茶などを確立した茶道の大家で秀吉の茶頭でもあった。
この本、利休切腹の事件だけでなく、利休個人の心理的な部分にも踏み込んで、利休の美にたいする執着心、また茶道とはなんなのかということも、利休の関係者による証言でじょじょにわかってくる構成になっている。

堺の商人が名物を売るために、仕上げられた茶道。
茶道という趣味/嗜みをひろめることによりプチバブルをつくり、それに"必要"だとされる付随品を売買するマーケットを確立。 そんな俗世的なものなのに、 利休にかかると、とても真摯なものになる。
そんな不思議な利休の魅力にとらわれ、妬んだ秀吉。
その魅力の底辺にあるものがなんのか、最後になってわかる。

この本、ハードカバーで買う価値ありだけど、単行本で880円ででています。

遠藤寛子の算法少女

2012年07月15日 14時11分57秒 | 歴史/時代物
200年ほど前に実際に出版された算数(和算)の本、"算法少女"をもとにした本。
出版したのは千葉桃三という医者と、その娘のあき。
その本をもとに、時代小説ふうにした本。
たいそう興味深い資料で、べつの時代小説家が書けば、もっとおもしろいフィクションになっていただろうと思う。本屋対象になった、天地明察も江戸時代の数学の質の高さを描いていて、本としてもとてもおもしろかった。 これもそういうものかと思ったので、小説としてイマイチな内容だったので、残念。

スーザン コリンズのハンガーゲーム

2012年07月02日 16時06分36秒 | ファンタジー


春ごろアメリカで大人気になった映画の原作。
SFらしいけど、SFぽくなく。バトルロワイアルの真似と言われているけれど、そんなこともなく。

キャピタルという都市に支配されている12の区域。その12の区域から毎年少年少女1人ずつキャピタルに送られ、ハンガーゲームという殺し合いを生中継で行う。主人公はキャットネスという第12区域にすむ貧しい少女。同じく12区域の代表ピーターという少年。テレビ感覚の殺し合いがはじまり、勝者は一人。

バトルロワイアルのときには殺し合い事態を中心によんでいたので、これといって誰を応援することがなかったけれど、この本は登場人物にたっぷりのめりこめるので、キャットネスの応援をすることまちがえなし。

バトルロワイアルのように血みどろのバトルや恐怖心をあおるような心理的な本ではなく、キャピタルとその植民地となっている区域の間にある矛盾、貧富の差など、社会面をにフォーカスをあてた作品となっている。ゲームがはじまってからは手に汗にぎるようなサバイバルの連続で最後まで一気読みだった。


3部作の1作目で、まだ2作目は日本ではでていないよう。
ちなみに、ハンガーゲームは中高生むきの本となっている。
なのに、このあまり長くない本をさらに、上下巻の文庫にして売ろうとしているには驚いた。