またまた御手洗の本で申し訳ないがここ最近こういう安心して読めるお決まりの本を読みたいので仕方ない。まるで水戸黄門を見ているがのごとくきっちり予期した通り話が進んでいく。深いテーマもなければ悲しい話もなく登場人物がキャラどうリの行動をしてくれる安心感、御手洗のオレさま感も今ではまるでうっかりはち兵の食いしん坊ぶりをみているような定着感。
ということで、このシリーズ最新作(私が読んだ中では)、時代も2000年ということで携帯やらメールやらでてきて新装開店のような新しさ。1番最初の占星術事件が昭和56年だからそれから20年ほど経った計算になる。御手洗と石岡君も45歳にはなっているはず。それだからなのか、妙にオジサンくさい。いや、オジサンなのに妙に若者らしくしようとしている。
例えば、電子機器についてしつこく説明していたり。メールとスキャナーの扱いを強調していたり、メールのアドレスもしつこいほど繰り返したり。なんか、"こういう事ちゃんと知っているんだから"と自慢気に語るオジサンのようだった。いや、石岡君や御手洗がオジサンくさいといっているのではない、その後ろにいる作者の意図みたいのが見え隠れするのだ。作者は昭和23年生まれ、もうすぐ定年もしくはもう定年している世代の人である。たぶん、この作者こういう事もちゃんと知っているんだぞと石岡君を通して言いたかったのだろう。でも、やっぱり団塊の世代、昭和の臭いは拭えない。ちょっとピントがずれたカナ文字使いがそれを痛々しいほど表している。ファクスマシンって言うか? 普通ファクスだろう。メールもメイルと表記されているし。電話をプッシュって。。。。そりゃあプッシュホンだろうけどさ。
なにより、ここに出てくるOLの女の子のしゃべり方がなんかズレている。"えー"とか"いやー"とか、オジサンの頭の中で描かれているOLが喋っていますという様な浅はかさ。
なんかこういう細かいけどいたるところで妙なズレを感じたこの作品。作者の年を考えさせられた。
ちなみに、この本を私の前に借りて読んだ人が感想をいたるところに書き込んでいた。かなりお怒りだったらしく線を引いたりもしていた。警察がバカで探偵を頼らないと事件を解決できないのが腹に立つらしい。それを言っちゃあ。。。本も子もない。確かにどこの世界に警察が一般市民に情報をリークしその上事件を解決してほしいとお願いするだろう。しかし、ミステリーではそれがまかりとうるのだから仕方ない。それはずるいというのは水戸黄門に印籠出すなというようなもの。
御手洗シリーズはそういうものなのであらかじめ承知して読まねば。
そうそう最後にもう一つ。この本の装丁なかなかよい。ちょうど肉を切裂いたようになっていてなかなか凝っている。でも、1600円だして買う必要なし。