私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

有川浩の空飛ぶ広報室

2014年04月17日 14時32分05秒 | ミステリー/文芸
有川浩の自衛隊作品。 
広報室とあるから、この作者が書いた”県庁おもてなし課”と同じかんじかなとおもったら、びっくりく航空自衛隊の広報室の話でした。
どこにでもある広報室ですが、この本は特殊な自衛隊の中の広報室。
一般企業のそれとはまた違う広報室の環境でがんぱっている自衛官の話です。
主人公はブルーインパルスのパイロットにのるはずだったが交通事故によりパイロットの資格剥奪され内勤にまわされた空井二尉。空井とその同僚がそれぞれ違う章で主人公になり、話がすすんでいきます。

最後の章のタイトルは、”あの日の松島。”震災で壊滅的な被害をうけた基地とその中で救援活動をする基地の人たちの話。
どの章もすごく面白かったが、最後の章はなけるほどよかった。
ちなみに、あとがきには小説になったまでの逸話も書いてあり最期まで楽しくよめた。

全体としてすごくよかったです。今までの有川浩の自衛隊作品の中では一番だと思う。
取材もよくしてあり、裏話やリアルさがありお仕事小説としても秀逸。

航空自衛隊では本当に、”空飛ぶ広報室”というのを開設しているようです。どうやら、この小説とのコラボで。


池井戸潤のロスジェネの逆襲

2014年01月09日 12時56分49秒 | ミステリー/文芸
お正月に読んだ本。 
半沢直樹人気の真っ只中でつい買ったけれど、なんか読む気がせずつん読状態だった。

「オレたちバブル入行組」、「オレたち花のバブル組」に続く3部作目の銀行を舞台にした企業小説。 題名どおり、バブル組とロストジェネレーション世代の確執、銀行内の派閥など中身の濃い小説だった。 

唯一気になったのが、反体制派というか革命児というかそういう半沢のキャラクターの色が薄いこと。 上司としての半沢、ときおり部下に熱血先生のような説教をたれる半沢とうのが鼻についた。 まーバブル組で上司という立場なんだから現実に忠実といえば忠実なんだけど。

前作で予想外に出向を言い渡せられた半沢にたちはだかる新たな敵は副頭取。
それにしてもよく次から次へと派閥親分がでてくる。大きな企業はそういうものなのだろう。
最後にまっているのは、半沢への新しい辞令。 銀行に戻れるのか!? 読んでのお楽しみ。

池井戸潤の下町ロケット

2013年09月02日 15時24分42秒 | ミステリー/文芸
半沢直樹がすごく人気なので、ひさしぶりに"バブル入行組"を借りて読み返そうとおもったら、案の定貸し出し中だったので、かわりにこれをかりた。
直木賞をとった作品だったけれど、読んでなかったので丁度よかった。

宇宙工学の研究者だった佃だがロケットうちあげの失敗の責任をとり研究職をしりぞき、親の街工場(佃製作所)をつぎ、社長とよばれる生活がはじまる。
ものを作ったり、研究したりだけではなく、資金調達、人事など、研究職をしていたころは縁のないことを苦心しながらやっていく。
中小企業の厳しい状況のなか、ロケットへの夢を捨て切れない社長、現実をみてほしいと願う社員、大手企業との裁判、銀行とのシビアな取引などが書かれている。
とくに前半はこれでもかというぐらいの苦しい中小企業の状況が書いてあって、ハラハラしどうしだった。


確かにちょっとでき過ぎハッピーエンドだけれど、爽やかで読後感がすごくよかった。



東野圭吾のナミヤ雑貨店の奇跡

2013年06月30日 17時20分30秒 | ミステリー/文芸
タイムトラベルものと聞いていたので敬遠していたけれど、とてもよかった。
SFっていうよりファンタジーぽくて、でも無理のない話にまとまっている。
実際はタイムトラベルではなく、手紙によって過去の人と結びついていく話。
過去といっても1970-1980ごろ。万博とかビートルズとかモスクワオリンピックとかそのころのカルチャーもでてきて、ちょっと20世紀少年をおもいだしてしまった。

ナミヤという雑貨店のおじさんがはじめて子供相手の悩み事相談。おじさんが死んでしまて、悩み事相談は終わった。30年後2012年、たまたま空き家だった雑貨店に逃げ込んできた泥棒3人が過去からきた悩みごと相談の手紙をみつけたのがきっかけで、過去とこの3人とがつながりはじめる。

いまひとつ噛みあわない手紙(携帯とか言葉使いとか)の内容がなかなかおもしろかった。これはおすすめ。



三浦しをんの船を編む

2013年03月17日 13時53分09秒 | ミステリー/文芸
今さらだけど、去年の本屋大賞の船を編む。
やっと追いついたと思ったら、もう今年の本屋大賞64が発表されてるし。

大好きな"風が強くふいている"に続きよかった。
私としては"風が。。。"のほうが好きだけれど、これもなかなか。
三浦しをんだなーってかんじの本だった。
すごくよく書けているんだけど、軽い感じ、漫画を読んでいるような感じ、読みやすい、という言葉が浮かんでくる。お約束的な深い感動ではなく、日常的な感動というか。
ま、読んで損なしの一冊。

あらすじをいうと、出版者に務めているまじめ君と辞書編成チームの10年を過した辞書作りの話とチームメンバーの面々を書いた話。あらすじが簡単になってしまったけれど、本当これだけ。

爽やかな春らしいを本を読みたいときにはぴったり。
最近になって、カバーの裏に漫画が描いてあるのを発見してびっくり。
まさに、読んだ時の印象にドンピシャ! カバーはずしてみて下さい。

奥田英朗の無理

2013年01月14日 16時48分40秒 | ミステリー/文芸
無理っておもわず言ってしまいそうな話だった。
なにをどうやっても無理。 ど~~んと暗くなること間違いなし。

3つの人口過疎の東北の町が、合体してゆめの市という新しい自治体になった。
市役所の福祉課につとめる相原友則。バツイチ。生活保護の不正受給者や独居老人の世話にほとほと嫌気をさす。
女子高生久保史江。複合商業施設ドリームタウンしか行くところのないゆめの市を嫌い、東京の大学に進学することを夢みてる。
老人相手に詐欺まがいに、漏電遮断器をおしうりする、加藤裕也。地元の暴走族あがり、バツイチ子持ち。
堀部妙子。派遣雇用でスーパーの万引き監視員。夫とは離婚、二人の成人した子からは音信不通。新興宗教にはまっている。
市議会議員、山本順一。2世議員で県議をねらっている。妻はアルコール中毒。

という五人五様にゆめの市に住んでいる人たちの日々の生活の話。とめどなくゆめの市で落ちていく5人。ふつうの生活、将来の夢など無理。ただ、この5人だけが特別なのではなく、多かれ少なかれこの5人の状況を共有しているであろう、ゆめの市民。
個人のだれが悪いというわけではなく、ある意味全ての状況がゆめの市に反して動いている。 しかも、ゆめの市は雪深い東北の地方都市。 季節は冬。それがいっそう、無理感をあおっている。 

読み終わったあと、思わず三浦しをんの”風がつよくふいている”を思い出してしまった。 青春とか目標とか夢とか希望とか若さとか爽やかとか感動などと真っ向から相殺する本であった。 
本自体はよくできているけれど、落ち込んでいるときには読まないほうがいいと思う。





湊かなえの花の鎖

2012年10月11日 17時58分33秒 | ミステリー/文芸
どんでん返しとまではいかないけれど、あ~と言わされる終わり方だった。
なるほどねっと妙に納得した。
前回同様、告白ぽい怖さがいつくるのかと身構えつつ読んでいたが、すんなり普通の小説だった。
花、雪、月の3人の女性の視点でかかれていて、それが不思議に交差しあっていく。
湊かなえらしい手の凝んだ本の構成だった。
なかなかよい本だった。


貴志 祐介の狐火の家

2012年08月16日 14時02分07秒 | ミステリー/文芸
著書の推理作家協会賞受賞作”ガラスのハンマー”の続編。
これに続編があることをしらなかったので、どこかで似たようなキャラクターを読んだなと疑問にかんじていた。 
セキュウリテー防犯のコンサルタント(実は泥棒?)をしている榎本と弁護士の純子。
この二人が毎回密室の謎をとく、結構本格推理小説。でもユーモアたっぷりの短編で簡単に読める。
毎回毎回、よくこんなに密室事件をかんがえられるなと感心する。
このシリーズ、ぜひテレビでやってもらいたい。ガリレオシリーズのように1話完結で、おもしろいとおもう。
シリーズの最新作は”鍵のかかった部屋。”

横溝正史の獄門島

2012年02月02日 23時08分06秒 | ミステリー/文芸

2012年最初の一冊はじつは獄門島だった。
正月から獄門島。

もちろん読み返しだから、話の内容とかも結構おぼえてる。
覚えてるのに、なんでこんなにおもしろいのだろう。

無意味な密室(密島)という設定、納得のいかないみたて殺人。
一体いつ人一人を木につるす時間があった?
物理的に一人でできたのか? 何故吊さなければならない?
金田一さん、なんで警察にまで情報を隠しているのですか?
今は言えないって、それじゃ、いつ通報するんですか?
などなどつっかみどころ満載なおなじみの作品。
だけれど、一回読み始めると、横溝ワールドにどんどん惹かれてしまいます。
名作といわれるゆえんでしょう。

ちなみに、角川文庫からだしている金田一耕助ファイルの表紙がとてもいいです。
私がもっているのは獄門島だけですが、この表紙で揃えようかなと考え中。










イシグロ カズオのNEVER LET ME GO (わたしを離さないで)

2011年07月24日 15時04分29秒 | ミステリー/文芸

映画化されたと聞いたので、原作もよんでみた。
良くも悪くもイシグロカズオだった。
もりあがりかけるといえば、かけるんだけど、これがイシグロ文学といわれれば、はあぁそうですかってかんじ。 淡々とした語りが、さすがブッカー賞作家と言われれば、まあそうですねって納得するしかない。
臓器FARMがテーマとなっているんだから、いくらでも泣きを取れるだろうに、淡々としすぎて、あっけなく終わってしまった。凡人の私は、泣き所がほしかった。
さすが世界のイシグロ。
ということでこれは映画でみてください。

角田光代の八日目の蝉

2011年06月12日 17時11分58秒 | ミステリー/文芸

最近話題になっているようなので興味津々だった。

不倫相手の赤ちゃんを盗んでしまった希和子、新しく薫となずけて逃避行の生活をはじめるというあらすじだった。
おもしろそうだなとおもって借りたが、思っていたのとちょっと違っていた。

本の半分はこの誘拐された赤ちゃんが大きくなって自分の過去を振り返る話になっている。
私が思っていたような愛人と妻の確執とかとちょっと違っていた。
男もめぐっての2者の争いではなく、母親としての自分に重きをおいている。 
はっきりいって、男はもうどうでもいい状態、まったくこの本のポイントではなかった。
それはとてもリフレシングな着目点だった。 
これはこれでいいけれど、対岸の彼女や森に眠る魚のほうが読み応えがあった。

桜庭一樹の赤朽葉家の伝説

2011年05月16日 12時22分24秒 | ミステリー/文芸


祖母、母、娘の3代にわたる赤朽葉家の物語。
1953年から2000年までを3代の女性をとおして戦後、高度成長期そしてバブル後の日本をてらしていく、スケールのおおきな本である。
このように野心的な巨編作だが、なんだかなーこのペラペラ感。
スイスイ読めるんだけど、なんか本をとおしてのまとまりが無いというか, 薄ぺらいというか。

似たような趣向で佐々木譲の警官の血という本があるが、あちらのほうが格段上。
できそこないの宮尾登美子と坂東真砂子というかんじ。
この本は図書館でおひまなときに。

奥田英郎の空中ブランコ

2011年05月15日 13時30分42秒 | ミステリー/文芸


おもしろかった。 おもわず声をだして笑うほどおもしろかった。
小説で声をだしてわらうなんてめったに無い、希有なことである。もうそれだけで直木賞もの(2004年直木賞受賞)

この本には表題作以外に、ハリネズミ、義父のズラ、ホットコーナー、女流作家の短編5作がはいっている。
空中ブランコでは人間不信になったサーカスのブランコのり、ハリネズミは先端恐怖症におちいりナイフがこわくなったため血判状に判がおせないヤクザ、医学部長である義父のズラをとりたくなる強迫症状におちいる精神科医、ボールがなげれなくなったプロ野球選手、前に書いたネタではないかと常に強迫観念を抱き本がかけなくなった作家が患者。

彼らを治療(?)するのが5歳児なみの精神科医伊良部一郎。
伊良部総合病院のあととり息子なれど、売上が伸びないなので地下にある精神科をオフィスとする破天荒な名医(?)。
名医なのか偶然なのかは不明。
ある患者は"総合病院の地下に住みついた子供の妖怪"またある患者は"白いトド"またある患者は"海面に出現したクジラ"と伊良部先生のことを描写する。

これは絶対おすすめ。いまなら文庫本で530円とお買い得。


真保裕一の灰色の北壁

2011年05月08日 10時55分40秒 | ミステリー/文芸


この作者の栄光なき凱旋を読んでいらい、ファンになってしまった。
ホワイトアウトと同様山岳もの。短編3作が入っていて、どれも山登り関係。
これで新田次郎賞を獲得したらしい。
新田次郎文学賞というのはジャンルをとわず自然を題材とした秀逸した作品におくられる賞らしい。
気になってみたのでWIKIPEDIAで調べてみた。
おもしろそうなので、今度からこの線で本を借りてみようとおもう。

山登り(こう書くと小学生の遠足のような印象をあたえてしまうかもしれないが)には詳しくないし興味もない私にでも分かり易く、かつ無理なく話にのめりこませる。
3作ともプロの登山家の寡黙さと情熱がかかれている。その情熱もスポーツ独特のあつくるしさがなく、でも迫力ある描写でよかった。
あと、ちょっと死体もあり。あと、ちょっと意外性もあり。

おすすめの一作。


湊かなえの贖罪

2011年05月04日 18時36分46秒 | ミステリー/文芸


おもしろかった。 この作者どくとくの作風が女のこわさみたいのをきわだたせている。
殺人なんだけどミステリーではない不思議なこわさ。 ご都合主義なつじつまの合わせかたも不思議ときにならない。
前作の告白同様、語手を代えて話をすすめていく連作物。
小学校のとき殺された少女の友達4人とその殺された娘の母親という5人の語手が彼女なりの殺人事件の経験をかたっていきます。
でも、過去の話だけでなく、現在の彼女たちの境遇をおりまぜての告白。

この作者は小学校の先生だったのか、もしくは家族に教師という職業の人がいるのかとおもわせるほど、教師という職業にこだわっている。
告白でもそうだったが、今回も4人のうち一人がおおきくなって小学校の先生になり、その立場から過去の殺人事件をかたっていく1章がある。
この人のかく先生像というのがナマナマしいのだ。モンスターペアレンツなるものから脅迫まがいのプレッシャーをうけ、生徒はずうずうしく、いろいろ大変な職業である。
そういうプレシャーのなかで仕事をしている先生の心情がよくかけている。 この本にでてくる先生もその一人。
不法侵入者から子供たちを助けたのに保護者にたたかれ、PTAのつるしあげ総会にだされ、この先生の言ったひとこと"あんたたちの子供なんて助けるんじゃなかった"
おもわず深くうなずいてしまった。

大変よかった。ぜひぜひ図書館でかりてみて。