島田荘司の"暗闇坂の人喰いの木"
なぜ探偵というのはあんなに偉そうなのだろう。あの人を見下した態度、バカにしきった有様、近くにこんな人間がいたら間違い無く友達にはなりたく無い。
かなり前に探偵御手洗潔シリーズの"占星術殺人事件"を読んだので、このキャラクターがどういう人物かすっかり忘れていた。典型的なホームズとワトソン君関係。御手洗には"友人"の石岡というんがいて、この人物が御手洗とともに遭遇した猟奇的な事件を回顧録のように話すすめる。これも、またまた典型的ホームズパターン。しかし、読んでいてこの2人どうしても、友達にはおもえない。 いいようにつかわれているいじっられっ子の様、お昼にパン買ってこいとかいわれそう(実際秋葉原まで電気用品の部品をかってこいとたのまれていた。なぜ御手洗本人が行けないのかは不明)。でも、石岡が友人だというならそれでいい、何も言うまい。
数々の暴言、理不尽な要求も御手洗を名探偵と認めているがゆえ許しているのだろう。しかし、こういう石岡の態度がさらに御手洗の高邁な態度を助長しているとおもう。
数々の暴言を下に記してみた。どうだろうか? もしこれが、あなたの友達もしくは同僚だったら?
"今のんびりお喋りしている時間はないんだ、同じことをなんども言わせないでくれ"(電話で石岡をよびつけあれせい、これせいと指示をしておきながら、石岡が説明をもとめるとこの言い草)
"たまには謎が残る事件でもいいのではないかい" (さんざん石岡を手伝わしておいて、石岡が説明を求めると勿体つけてこう言放つ)
"石岡君、僕のブルゾンを持ってきてくれたまえ"(え? 今なんて言った?と聞き返すだろう普通)
思うに探偵には大きく分けて3種類ある。ホームズタイプ、金田一タイプ、あとは地道に浮気調査とかするタイプ。
ホームズタイプは典型的な嫌味で偉そうな人物。決して自分が全てを分かるまで何も教えないし、どう思うかなど一切聞かない唯我独尊タイプ。"いや、まだ話す時ではない。あと2ー3確かめないといけないことがある。"というセリフとともに全てを自分の手柄にする。こういうタイプには必ずワトソン君が側にいて、オレさま的なキャラクターをさらに助長させる。ワトソンも悪いといえば悪い。一度でいいから、"あっそ、じゃオレ帰るから一人でやれば"と言ってホームズの鼻をへし折るくらいの意気込みを見せて欲しかった。
金田一は、ホームズにくらべるとかなり腰が低い。いつも現れる警部にも礼儀正しいし、なにより"友人"という名の助手がいない。田舎くささもいい工合に彼の好感度を上げているし。しかし、いかんせんちょっと鈍くさい。謎をとくのがいつも遅すぎで犠牲者を無意味に増やしている。
もちろん、御手洗はホームズ型。女嫌いなとこまだそっくり。 しかしこの本のおもしろい所は探偵は典型的なヨーロッパ風のホームズなのに、謎/事件はまさしく横溝正史の世界。まさに和洋折衷。
まあいろいろ文句をいったけれど、時々無性に"本格ミステリー"というのが読みたくなる。御手洗シリーズはそういうものなのであらかじめご用心。