外国語学習の意味、そして母国語について考えましょう

社内公用語の英語化、小学校での英語の義務化など最近「英語」に振り回され気味ですが、何故、どの程度英語を学ぶか考えます。

続続続の(2/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

2018年09月17日 | 英語学習、教授法 新...

続続続の(2/3):関係詞の学習の仕方、教え方のアイデア

続続続で、いちおうこのシリーズを終えます。「英語の学習理論はまだないのでないか」というという問いかけと、関係詞の習得法という具体例から「理論」の必要を明らかにするための対話篇の部分を、交互に進めてまいりました。続続続では順序を変えて、対話篇が先です。そのあと、なぜ理論が必要かの問を深めます。

■関係詞の二つの学習法

包含関係対話編では、前回、その前までとまったく違うアプローチをとりました。関係詞節(形容詞節)を括弧と捉えれば分かりすいという方法です。初回からとってきた方法は、それとはちがい、「限定」と「前へ進む要素」というあらゆる言語にある二区分に基づきながら、日本語から英語へ移るというアプローチでした。関係詞の前提条件は何か(原因)、そして関係詞を使うとどう便利か(結果)を示すことで、理論のきれっぱしを明るみにだしました。関係詞という一点を検討することで、この点が可能なら他もできるだろうという発想で、ずっと広い学習理論も可能だということを示すことを目的にしました。

■「理論」がないと...

なぜ、「理論」など必要かということにも折々触れましたし、最期にもう一回復習しますが、ここでも一言ひとこと述べておきましょう。多少くどいことは承知ですが。まず個人が学習する際、無駄な努力は避けたい、プラス、どう学習動機を維持するか。一方、クラス、学校から国家レベルにおいては、どうカリキュラムを立てるかという議論に必要になるからです。昨今の、大学入試アウトソーシング論のどたばたも、「学習理論」が委員の間に共有されていないことも一因なのではないかと睨んでいます。

さて、対話篇の終わり。二人の登場してもらいます。

■対話、続き。二つ目の関係詞学習法

生徒:今回、まったく違うアプローチを提示しましたね。習う側は困るかも。

3重の関係詞先生:たしかに。まだこの二つのアプローチの関連は十分考えられていません。そこはブログの気安さということでお許し願いたいです。でも、それらの説明の部分部分からは学習のヒントが見つかったかもしれません。

生徒:はい。関係詞節には連体形で訳せないものもあるということとか。前回の、関係詞節=括弧の文は、新聞などを訳さないで英文の順序で読むとき意識すべきだと思います。たとえば、上のイラストの文を「限定」ということに忠実に訳すと意味の流れが逆になってしまいますヨネ。

先生:個人でも団体でも、時間は限られているので、がむしゃらな学習ではなく、方法を考えるべきですね。

あ、ここで参考書の紹介。このシリーズは網羅的ではないので関係詞についても抜けている点があります。そのため自分で勉強を進める人のためによい教材を紹介します。Raymond Murphyの、"English Grammar in Use"。青い表紙の本で今fourth Edition。本屋の英語教材コーナーに積んであります。このサイトでも紹介しています

■関係詞の前のコンマ

生徒:すでに、方法を意識して新聞などを読んでいるのですが、気になるのは、以下の引用のように関係詞の前にコンマがある場合とない場合です。

The 350,000-kilowatt No. 1 unit will be the first to resume operations at the Tomato-Atsuma thermal plant, whose three generators were shut down following a powerful earthquake that struck Hokkaido on Sept. 6. (Japan News 2018/9/17)

先生:マーク・ピーターセンさんなどは、この問題を関係詞の学習の最初のころに持ってきたいようです。じつは、ふつうの関係詞は「制限用法」と呼ばれるのです。制限というのはいままで「限定」と言ってきたことと同じ。ところが、コンマ+関係詞で示す文は「非制限用法」と呼ばれます。この課題は、英語の表記の問題だけでなく、日本語と英語とのちがいにからむ二重の問題なのですが、そこのところがごっちゃになっている場合が多いようです。

生徒:え!。関係詞の本質を否定するではないですか。

先生:あ、問題の核心を掴んでいますね。いままで「限定」ということを口うるさく言ってきたのはここに導くためだったのですヨ。急に「制限」という文法用語を聴いてなにか新しいことのように思う人が多いようなので...。ま、関係詞とふつうの代名詞の中間ということです。限定するわけではないのですが、直前の名詞の説明をしたい、とアッピールする場合です。

生徒:たとえば?。

先生:

(1) I don't like the novels which Mr. M wrote.

(2) I don't like the novels, which Mr. M wrote.

非制限の関係詞例(1)はほかの人が書いた小説なら好きかもしれないが、Mr.Mのがぜんぶ嫌いと言う意味。(2)は、I don't like the novels. Mr. M wrote them.とほぼ同じ。ですから、会話ではコンマの部分で一息置いて発音します。the novelsは、ほかのは好きだがMr. Mのに限っていやだという意味ではなく、たまたま読んだのが嫌いだった。あとで考えると、Mr. Mだったからかな、というニュアンスを込めています。イラストのwho has green eyesの部分も、ピンクではなく緑の目の魔女、ということを言いたいわけではありません。

生徒:だったら、------- because Mr. M wrote them.と言えばよさそうです。

先生:そうです。非制限用法の関係詞を使うのは、becauseと言い切れない場合です。ですから訳すとき、「~ので」とはっきり訳していいのかどうか迷います。イラストの文も、気味が悪い(spooky)のは目が緑だからか...、はっきりしません。

■制限、非制限用法で意味が明確に変わる場合

木村伊兵衛パリもっとはっきりした例を挙げましょう。世の中、限定できない名詞があります。固有名詞ですね。でも少しその固有名詞に説明を加えたいというとき、非制限の関係詞が使われます。

(1) I love Paris, which I lived in for 10 years.

パリは一つしか世の中にないので分割して限定することは不可。そこで非制限用法です。しかし、つぎの例もあるので比べるとより理解が深まります。

(2) I love the Paris which I knew when I stayed there 50 years ago.

生徒:ほほう。(2)は、想像上のパリなので「私が知っているパリ」を他の人の脳裏にあるパリと区別して限定できるのですね。

先生:もう一つ限定できない場合。それは一般論です。

(1) Take trains, which are more earh-friendly.

もし、

(2) Take trains which are more earth-friendly

だとどう意味が違うか分かりますか。

生徒:日本語にすると分からなくなりますネ。両方とも「地球に優しい電車に乗ろう」です。しかし、限定しているかどうかという視点で英語で理解すると違いははっきりします。(1)は、電車というものはすべて地球に優しいということを前提して(一般論)、自動車などより電車に乗ろうという訴え。(2)は、電車にもいろいろあって、地球に優しくない電車ではなく、地球に優しい方の電車に乗ろうという意味ですね。

■日本語では制限、非制限の違いはぼやける

先生:じつは、この英文は、小田急線のホームにあった「地球に優しい電車に乗ろう」を英訳したのです。ここで、一つ課題が浮かびます。日本語の名詞修飾では制限か非制限かの区別はできない、ということです。ですから、日本人は、限定、非限定の区別に鈍感と言えるかもしれません。和文英訳をするとき注意すべき点ですね。ちなみに、日本語だけでなく、修飾語を名詞の前に持ってくると英語でも区別はつきません。日本国憲法の以下の太字の部分は、制限なのでしょうか、非制限なのでしょうか...。

----- 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して----

英訳:--- trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world.

日本国憲法前文和文は「諸」を入れることでなんとか「非制限用法」だということを示していると思いませんか。

生徒:さっきのパリの文も訳すと制限か非制限か分かりにくくなります。

(1)私は10年過ごしたパリを愛している。

(2) 私は50年前に滞在したとき知っていたパリを愛している。

■関係詞=括弧の応用例

先生:ところで、さっきの北海道火力発電所の記事、検討して、例の括弧に入れる形に変えてみましょう。

生徒:The 350,000-kilowatt No. 1 unit will be the first to resume operations at the Tomato-Atsuma thermal plant, whose three generators were shut down following a powerful earthquake that struck Hokkaido on Sept. 6.

先生:ここで取ってつけたように説明するのはほんとうはまずいのですががthatは、whichと違い、非制限用法では使いません。それだけ直前の名詞を限定する力が強いのでしょう。

生徒:括弧方式で書き換えてみますヨ。

The 350,000-kilowatt No. 1 unit will be the first to resume operations at the Tomato-Atsuma thermal plant, (its three generators were shut down following a powerful earthquake (it struck Hokkaido on Sept. 6.))

苫東それでも読むのが遅いのは、関係詞のせいでなく、英語の語順になれていないことと語彙の不足だからだということが浮かびあがります。

訳します。えっと、whoseの前は固有名詞なのでコンマ。that以下は、9月6日に襲ったという限定なのでコンマなしです。固有名詞なので、whose以下を先に訳しても上の鉄道の文のように誤解は生じません。しかし、二つも関係詞が重なっているので、英文と日本語の順序がひっくりかえるのを避けるために、whose~はピリオッド+itsだと考えて訳しましょう。

-------

35万キロワットの第1ユニットは、苫東厚真火力発電所で最初に運転開始する。そこの3機の発電機は発電機は、9月6日に北海道を襲った強力な地震のあと停止していた。

------

非制限関係詞例文先生:読む速さについては、それを克服するには、早い時期から英語に触れる量を増やさなければならないでしょう。それが関係詞などの文法要素の理解で妨げられないようにしたいです。

■前の文全体を主語とする非制限の関係詞

ところで、非制限の関係詞が前の文全体を主語とする場合にも触れないわけにはいきません。とても基本的な構文です。今、良い例文がないので、よく学校で使われる例文を挙げましょう。

(1) She said nothing, which made him angry.

(2) She said nothing which would make him angry.

生徒:(1)は、whichは前の文全体を指していて、「彼女は何も言わなかった。そのことが彼を怒らせた。」(2)は、「彼女は彼を怒らせるようなことは何も言わなかった。」ちがいますねえ。

先生:前の文全体が主語になる形は基本的な形なので中学3年ぐらいから慣れさせておくべきだと思います。あ、分詞構文にも前の文全体が主語になる形がありますが、たいてい参考書にはないので、ここで付言。

生徒:ここでも「理論」の一端。で、最期のもう一つ練習問題があるとか。

先生:最期に括弧入れにする練習として、ジェイムズ・アワーさんの正論大賞受賞の辞の冒頭近くの文を挙げてみます。ちょっと長く抽象的なので、中級者向けです。教室でじっくり説明するような性質の文です。下に引用するだけではちょっと残念ですが。

In the USA, when a person is speaking on a subject about which the speaker has a strong opinion, or when a person involved in a financial transaction has an opinion or personal interest which those listening to or interacting with the speaker do not know about, it is appropriate, and in the case of some financial transactions, to be legally required, to make it that opinion or personal interest known in advance. When this is done clearly and completely it is known as “full disclosure.”

Since I do have a strong opinion about the subject I am speaking about, the positive value of the U.S. Navy Japan Maritime Self-Defense Force relationship, I want to fully disclose my conviction of this fact at the beginning of my remarks by letting you know of my personal bias.

In the USA, when a person is speaking on a subject (the speaker has a strong opinion about it), or when a person involved in a financial transaction has an opinion or personal interest (those listening to or interacting with the speaker do not know about it), it is appropriate, and in the case of some financial transactions, to be legally required, to make it that opinion or personal interest known in advance. When this is done clearly and completely it is known as “full disclosure.”

Since I do have a strong opinion about the subject (I am speaking about it), the positive value of the U.S. Navy Japan Maritime Self-Defense Force relationship, I want to fully disclose my conviction of this fact at the beginning of my remarks by letting you know of my personal bias.

 



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