小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

『ドルフィン・ソング』(08/10~30)

2009-08-31 23:21:41 | 週間日記
巨大カラス、夏の夕空歩き 08/23 18:33


うっかり3週間分になってしまった週間日記です。

●8月
10日(月)朝、寝てたら弟が車取りに行くので乗せてってくれというので出動。東芝の話してたら線路脇でぶつかりそうになって危ない危ない~夜、新たな電話取材
11日(火)昼、塾1件はなぜか折り紙もする。晩は中止~夜は同級生Mト君宅へ。テーマ:SAPPOROラガー、新たな論点1「マクドナルドとカップスター味噌を比較するとどっちがからだに悪いか;サンプルはもちろん恣意」、2「ファミリーレストランは昭和の頃と比較してまずくなっているのか」など
12日(水)打合せで浜松町へ。車内で千住博『絵を描く喜び』読了~編集Oさんと神田・タイ料理ブルーパパイヤで880円セットごちそうさまでした。前日の2論点についてもさすがな意見~事務所に少し寄り、出て近くで野球やってないかと検索、神宮球場バックスクリーン裏に着いたのは宮本の同点HRの歓声が聞こえている時、スリーイニングチケット1000円は6イニングみられたお買い得。延長12回横浜・内川の勝ち越し弾とインタビューは泣けた~帰り、多分今世紀初めての千駄ヶ谷ホープ軒はやけに完成度が上がったように感じた。ラーメン屋、とくにこってり店のジャスミンティーはもっと広がっていいのではないか~帰って入浴後、数年前に安いので買って忘れていた Sonic Youth "Daydream Nation"(1988)を初聴。といっても知ってる曲多数だし、原点回帰の最新作をきくとこれもクラシックか
13日(木)決して体調悪くはなかったが仕事あまり進まず、打破のためとウィスキーがなくなったこともあり大泉でラーメンDB調べ大陸*で大盛ラーメン~えばらでティーチャーズ1080円かな~翌日の資料読んでたら寝てしまう
14日(金)取材で浜松町へ~打合せで大塚へ。編集Sさんとロイヤルホストででかいステーキとエビフライごちそうさまでした~夜の約束まで時間あったので、ゴーギャン展やってるとカン違いで上野に行き、しかたないので西洋美術館で「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」「ル・コルビュジエと国立西洋美術館」。期待してなかったがけっこうおもしろく、常設展をみる時間がなくなった。発見はよく知らなかったマックス・クリンガー~Mixiの会で主宰Pさんはじめ、Sさん、Wさん、Tさんと池袋西武屋上でビアガーデン~2次会カラオケでは、清志郎没後初めてだったので『スローバラード』をがなる~最終前で帰り、駅員に起こされ代行で無事帰還。
15日(土)前日から右耳が詰まり、きこえなくなっていたので耳鼻科に行ったら盆休み~競馬だめ~夜半までよく働く
16日(日)朝も働いて、10時から次週の地域バレー大会の練習~送り盆墓参りと精力的だがいったい何をやってるんだという活動~ここまでがまんしたシャワー~ビール~競馬で、ここしばらくの働きものぶりが評価されたか、新潟メイン天の川Sで54,840円、最終で10,420円をものにするが、もっとちゃんと馬券の鬼のいうことをきいていれば札幌クイーンS17万も獲れたのにと、贅沢な悔恨~少し寝て、ここで働かんと来週の競馬が心配だとさらに働き、夜半過ぎ自然着眠

17日(月)昼は快調に仕事~夜、同級生Mト君と雷文へ
18日(火)昼、籠原の耳鼻科へ~昼は何か迷い、吾妻寿司の700円ランチ~塾、2本立て。間にいつもの電話打ち合わせ
19日(水)ゴーギャン展~渋谷で取材~編集者Oさんとマイアミガーデンでパスタ。ごちそうさまでした~神宮でヤクルト:阪神~千駄ヶ谷ホープ軒・道中黒井千次『老いるということ』読了
20日(木)ずっと原稿~途中ヤオコーへ行き、エイシェントクランほか買い物
終わったところで同級生Mト君から連絡あり、Iさんもいるワインマーケットカゴハラへ
21日(金)夕、競馬の電話取材~中1塾は、英語でたまごSP~夜、同級生Mト君と雷文へ
22日(土)馬券買ったら新潟10R両津湾特別24,100円的中~OBなど何人か誘い参加表明のMダ君と藤岡みかぼみらい館、伊勢正三「風ひとり旅」コンサート上信越編に。詳細は後ほど時間あれば~帰路、伊勢崎ちなりで塩ラーメン+餃子
23日(日)朝から地域バレーボール大会~慰労会。原稿に備え、2次会は不参加で帰宅、入浴、早寝

24日(月)早起き後、何度かの昼寝以外はずっと原稿
25日(火)塾2本立て以外はずっと原稿
26日(水)起きて原稿~途中、弟が来て在庫液晶テレビのテストに付き合う~同級生Mト君と雷文へ。別口で同級生Sミさんに会う
27日(木)ずっと原稿~深夜、西友でティーチャーズ1080円
28日(金)昼は堕落しながら少し仕事~晩は塾
29日(土)まず、またしばらく行けなかった耳鼻科~散髪は地元の若手Sウ君にきいたレディバードで1000円~大麻生四華郷で味噌ラーメン+餃子~セイユウでフォアローゼス995円~競馬は敗れる~母屋、食器の片づけなど~いろいろしてたらOB・Mト君が来。ベトナムのIワ君ともスカイプで話す
30日(日)まず選挙。同級生のTン君と、ひょっとしたら20歳くらい以来かの奥方に会う~国会議事堂近くでの催しスタッフの仕事でOB、Mダ君、Mマ君とともに永田町へ~予定では水道橋でとんかついもやだったが、日曜は前やってたのにやってなくやむなく小諸そばでとろろ丼セット~働く~台風で外は歩けず有楽町、日比谷・謝謝ラーメン*で醤油ラーメン+餃子は3人で6個~帰宅。競馬録画確認したらキーンランドS38万的中の入着で驚くが、なんと斜行降着があり20分間の夢と消える~疲れていたので、風呂に入って早めに寝る

【カウンター09】まとめて
ラーメン6/96(*2/41調整あり) 他外食5/33 外飲み4/59(自治会館の慰労会はアウェイ飲みにカテゴライズで調整) アウェイ飲み2/14(同調整) 読了書2/15 音楽ライブ1/4 美術展2/2 球場野球2/3 購入CD初聴1/6 購入ウィスキー4/52 万馬券3/14

●神宮球場
 仕事で上京したついでに2回。ともに信濃町駅前でサッポロ黒ラベルを買ってバッグに隠してドームとは違って侵入に成功し;阪神戦は場内でも黒ラベル買いましたが敗れました:レフトスタンドでみた。やはり東京近郊では一番好きな球場で、外野の後ろは昔と違ってアスファルトで固まったけど相変わらず野球みないで遊んでる子どもが多いのは豊かな空間。
 東京背脂ラーメンのオリジネーターしばらくぶりの千駄ヶ谷ホープ軒は、横浜戦で食べた時はこの十年の背脂文化を消化しての進化を感じたが、次週はあまり腹が減ってなかったからかそれほど感動なし。クオリティのばらつきはラーメン屋の楽しさでもあるが。

●ゴーギャン展
 やっとみられた。どうしても『月と六ペンス』のストリックランドが頭に浮かんでしまうが、やっぱり豪放で細かくてぽわーん。
 圧倒的な大作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』;やはりフランス語で "D'ou venons-nous? Que Sommes-nous? Ou allons-nous?" といいたい:はもちろん、前週興味を持った版画も、『夜』"Te Po"などおもしろく、晩年になって初期の印象派風で描いた『路上の馬:タヒチの風景』なんかは、後期フェリーニみたいな心持ちなのかなと思った。

●伊勢正三「風ひとり旅」コンサート上信越編
 すばらしい、歌は育つ。後ほど単独レビューを。

●『都市計画家 石川栄耀』
 3週間に読んだ文章で一番おもしろかったのは毎日の藤森照信・評。「昭和の都市計画史に星のように輝きながら、この方面の歴史研究の弱さから長いこと社会的には忘れられていた」人物だそうで、「戦前、充実した道路で知られる名古屋の都市計画を決め、戦後、新宿の歌舞伎町を作」り、「大正末年、内務省都市計画地方委員会の最初の東京帝大土木出身者として、名古屋と取り組むが、その時、最初の人だけあって、道や公園を広げるだけが都市計画とは考えていなかった。自分の仕事を通して現代の都市社会の疎外感を克服したいと念じていた。そして着目したのがお祭と盛り場だった」というから、「ロック」のビートルズのように黎明期はおもしろい。
 圧巻は、「『年に一回なり二回なり市民が一緒になって馬鹿(ばか)をつくすその機会』、『市民を中心とした騒ぎ狂うナンセンス祭りを盛り場を舞台として繰り広げようと提案し、昭和5年、行進曲をバックに20台の花車と400人の踊り手が大行進するという広小路祭を実現した。この成功を踏まえ、瀬戸の瀬戸物祭や20万人もの人出の大須祭りを誕生させた」というくだりで、真の「政治」というのは経済政策や外交ではなく、コミュニティのあり方の創造なのだと実感。新政権よろしく。
 それにしても、さすが「ニラハウス」の設計者、引用のセンスが抜群。5040円で絶対買えないので、なんというかこういうのをレバレッジのきいた書評というのだろう。
  期間限定公開

●『ドルフィン・ソング』フリッパーズ・ギター
 とくにフリッパーズファンではなく音源も一枚も持ってないが;そういえば『猿の惑星』の紹介でコーネリアスに触れた原稿を書いたことがあったのでアーカイブに掲載しました :伝統的な「日本の夏休み」をトラディショナルな「洋楽文化」で味つけたこの曲は大好きで、ビーチ・ビーイズ、ニール・ヤングほか引用の玉手箱的美学。『ヘッド博士の世界塔』は「教養」について考える時にもっとも参考になった一冊、浅羽通明『野望としての教養』でもキータームだった。

「ほんとのこと知りたいだけなのに・・・夏休みはもう終わり」
そしたらさんま月

(『ドルフィン・ソング』Youtubeにはなく、引用曲と並べた33分というニコニコの は愛情にあふれた仕事だと思ってきいてたけど、時間制限か13分くらいできけなくなった。その後、同じ作者の http://www.nicomimi.com/play/sm3851352 で音だけダウンロードできたのですが、こういうのダウンロードできるなんて大丈夫かなと思ってアップロードはフィルタリングしてるというImeemにアップロードしてみたら「failed」。長いからかウィルスなのか。確かにこのわからなさはインフルエンザと同型だと思い、検索して初めて使う http://www.aguse.jp/ では大丈夫と出る)

枯枝線路 蝶の子電車 介さぬ野獣 08/26 07:52


連作、神宮の森
 横浜延長勝ち、21世紀初のホープ


 阪神逆転負け、花火


朝のミーティング 07/23 07:13


「夏休みはもう終わり」 08/26 12:52
コメント (4)
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"Any Time At All~Dream Tales"(07/27~08/09)

2009-08-10 23:27:36 | 週間日記
ゲリラの下のゆず F9・1/2秒、トリミング済み 08/07 17:03


 またも更新できず。2週間の週間日記です。

●7月
27日(月)昼はいろいろ、母屋の片付けも~夜は同級生Mト君と雷文へ。もやしチヂミ、噂のもつ煮丼も
28日(火)午過ぎに電話打合せ~塾は昼と晩の2本立て。晩の休みには中2にAKB48について学ぶ~ヤオコーでエイシェントクラン1080円→ベルクではキリンラガーとともに初めて見たイオン100円第3のビールも
29日(水)自宅映画、成瀬+川島『夜の流れ』(1960)は、共同監督というかたちで二人の特質がよく出ておもしろかった
30日(木)昼は新企画の打合せで仲町・伊勢屋ダンゴ店のラーメン、巻きをごちそうさまでした~ササイでフォアローゼス898円とキリンラガー、菊泉からくち~同級生Mト君宅で絵本担当Kさんとお好み焼きを食べながら『モダンタイムス』をみる会。『星の王子様』や吉本ばななについても話す
31日(金)塾は中1~同級生Mト君と雷文へ~帰って朝読み始めた小川洋子『物語の役割』読了
●8月
1日(土)競馬は小倉最終1万9390円的中~深谷シネマで『アラビアのロレンス』
2日(日)仕事してる馬券の鬼の関係の会で府中へ~大宮駅あじさい茶屋*でラーメン~久しぶりに現金で競馬。当たらず~総勢13名のやる気茶屋ほかで朝まで飲む

3日(月)朝帰り、午後は市の健康診断~帰り、気持ち悪いのでこんな時こそ山田冷やしたぬきと思って寄ると、うま辛カレーというのが目につき冷やしたぬきとのセット~細かい仕事こなしていると同級生Mト君から連絡あり、近所の後輩Sウ君とそのお連れがいる雷文に
4日(火)塾2本立て~中2では、休みにニュースで見た「国民的美少女コンテスト」出場者の年齢当て~翌日出かけるので原稿に追われる
5日(水)朝から出撃~Mト君、妻子と話題の港区フランス料理店へ~妻子は帰り、五反田で業界紙のMワさんに会う~丸の内へ。時間あったのでFカさんの勤務先を探したがお休みでした~深谷から日本橋へ引っ越したMダさん、その後合流の日本橋勤務のYコさんを加え最終まで飲む
6日(木)ずっと原稿
7日(金)朝から、健康診断の大腸がん検査用検便はしばらくぶりでテクノロジーの進歩にびっくり~衛生センターに提出~引落にならなかった携帯代金を払いに行くが、筆頭者の父親の委任状とやらは勝手に書くつもりだったが、身分証が必要と抜かすのでしかたなくいったん帰宅。なんで金払うのにそんなのが必要なんだ~ササイでフォアローズゼス1000円+ベル8年980円~晩は塾~弟が来る~Mト君に誘われ雷文に。この日もホテル関係のSキさんに会う
8日(土)BOS:NYY延長15回を途中から最後まで~競馬は当たらず~自宅でハワード・ホークス『コンドル』(1939)は予想通りにすごい。しかしやはり途中で寝て翌朝観了
9日(日)1週間遠ざかっていたのでラーメンを食べに、利根川を渡りラーメンDBで調べた大泉・札幌で手打ワンタンメン~競馬だめ~気を取り直してすべて畑出身メンバー;じゃがいも・ナス・ピーマン・白ナス、シソは直前に採ろうと企むもゲリラのため断念:の天ぷら作成。父親と1月の叔父の独唱コンサートの録画みる~酔っ払って早寝

【カウンター09】まとめて
ラーメン3/90 他外食2/28 外飲み6/55 アウェイ飲み1/ 読了書1/13 劇場映画1/29 自宅映画2/19 購入ウィスキー4/48 万馬券1/11

 二週間に思ったことをいくつか。

◆『アラビアのロレンス 完全版ニュープリント』
http://www.lawrenceofarabia.jp/
 深谷シネマでやっていたので劇場では高2、1980年以来だから29年ぶりにみる。
http://blog.goo.ne.jp/quarante_ans/e/d2a9a65d680a8dec929ac1dc620dcee3
 その間、録画もしているからみたことはあるが、後半はだるいのでみなかったろう。何しろ4時間近い大作。ビール持参を受付で宣言しての観賞だったが、この後半が思いのほかおもしろかった。
 わかったのは高2、1980年には、世界について何もわかっていなかったということ。本作最高のスペクタクルの一つであるアカバ進攻にしても、「アカバ」という地名だけはわかっていたが、どこにあってどういうところだかまったくわからないままみていた。これ知らないと何もわからんだろうというロレンスの時代のトルコについてさえ、おそらく現在は固形洗剤の名で呼ばれる入浴施設とか、アラン・パーカー『ミッドナイト・エクスプレス』はトルコ大使館の干渉でテレビ放送できないという噂とか、そういうことしか知らなかったのだ。
 それが馬齢を重ねた今では、「シナイ半島横断」「ダマスカス」などという地名もわかるし、トルコ軍将校の憂いも、途中から出てきて物語を加速させるアメリカ人従軍記者の英語が、ものすごくアメリカンイングリッシュだなどというものよくわかる。
 みながら思い出した。最初に商業用書籍に載った原稿はトルコにいるらしいねこのことを書いた旅行ガイドのコラムだった。ちょうど先週ほかの本を探していたら出てきた。
「幻のヴァン猫」(1993/01/01)
http://runjuku.yu-yake.com/simpleVC_20090810152722.html
 当時、インターネットは普及していない。仕事をもらった高校の同級生Iに、「おめえ、これ書いてくれよ」とトルコ観光局から来た英文資料を読んで大塚の事務所にあったOASISかなんかで一時間くらいで書いたと思うが、一読しておわかりのように、そして当時の商業書はそういう輩が多かったように、これはまだ『ねじまき鳥』発表前だった村上春樹の文体をまねている。そして今回「ヴァン猫 泳ぐ」を検索すると村上春樹『雨天炎天』が出てきた。そう、あの時Iが「村上春樹のトルコの紀行文に出てくんだよ」といったような気もするが、だとすれば村上文体をまねるような愚はおかさないはずだ。
 と、そんなことはどうでもいい。何も知らなかった十七歳でみた『ロレンス』以上に、多少の知識がついた四十五歳でみる『ロレンス』はおもしろかった。そして何といっても変わらないのは、砂漠の大活劇の美しさ。「インターミッション」の間にみたパンフレットでは、1980年には名前しか知らなかった村上龍が「映画史上もっとも贅沢で、かつ緻密な作品」と書いていたが、まったくその通りだ。
「運命は自分で切り開く」。
 ガシムを拾い上げて帰って来る、あの爆発的で、感動などという陳腐な言葉は使いたくないシーン。キャメラは大胆に引いてパンの構図を取り、迎えに近づいていったアラブ少年のラクダは勢い余ってロレンスとガシムを追い越していく。そして、三人と二頭のラクダを見つめる砂漠の静寂。
 これを贅沢、緻密といわずして何をそう形容するのか。

◆「戦争もの」(毎日夕刊8月3日)
http://mainichi.jp/select/opinion/yuraku/news/20090803k0000e070056000c.html(期間内)

・・・(全文コピー)
憂楽帳:戦争もの
「戦争ものはもういりません。読む人がいないので」。横浜市のある図書館で告げられた言葉に憤慨したお年寄りの女性(81)から電話をもらった。原爆で多くの犠牲者を出した広島県立広島第一高等女学校の同窓生が出した追悼文集「原爆・八月六日 平和への祈り」。同校卒業生のお年寄りが置いてもらおうと区立図書館を巡った時のことだという。

 前にいただいた文集のページを改めてめくった。64年前の8月6日。娘を家から送り出したことを悔やみ泣く母、がれきの街を娘の無事を祈り探し歩いた父の嘆き、生き残ったことに幸運よりも負い目を感じ生きた同級生たち。悲しみがいっぱいに詰まった文集に何度も涙があふれた。

 一昨年夏に出版した文集はすぐに増刷され、今年も1300部を増刷したという。「若い人たちに読んでほしいから」。お年寄りはこの夏も、各地の学校や図書館に配り続けている。

 門前払いした図書館の人にせめて手にとってページをめくってほしかった。心に響いたはずだ。
【早坂文宏】
・・・

 いつも思う、「愚か」さは「ふた」をしがちだ。でも、ある程度は「みないように」しなければ時間がいくらあっても足りない。「戦争もの」はもういい、と思う自分もいないわけではない。
 ならば何より、「択ぶ」力。「知らなくていいこと」と「知らなくてはいけないこと」。

◆ブイヨンクレール<ムッシュ・イイヅカ>
 闘うもやし業者同級生Mト君から、小3の長女に誕生日も近いしそろそろきちんとしたフランス料理を食べさせたい、うちのもやしを使ったスープの店だ、ちょっと高いが食べてみないか、スープも頼んでおく、と誘われたので、8月5日、港区にあるその店に行く。
「言葉にできないくらい美味しい」
 という小学3年の、夏の日の邂逅についての記述は親であるMト君が書いている。ここでは「透き通ったブイヨン、飯塚氏」と名づけられた100ccちょっとの奇蹟的な液体について書いておく。
 それは一見では、何のスープだかわからない。Mト君のブラックマッペを使っているという予備知識があって、初めてそれがもやしをつかったものだとわかる。
 においをかぐ。これも、初めて食べた野菜ソムリエの方が見学に行った飯塚商店のもやし育成場、「ムロ」のにおいがしたときいていたからわかってはいたが、目にはみえないその小豆の数々は小さな白いカップの中で、思いのほか強いにおいをたてている。そう、Mト君はいつも「味のない野菜」と呼ばれることにいらだっているが、白くてかさが多いだけの緑豆太もやしではこういうにおいは出ない。しかもこれは、手洗いでもやしにとって重要とMト君がいう長い根をそのままに運んで来られたものだ。
 仕事の結婚披露宴撮影ですばやく写真を撮ることには慣れてはいるが、この一杯だけは少し時間をかけて、光の向きを変えたり、表面を揺らしたりして撮っておいた。そうしなければならないものがこの一杯には感じられるのだ。
 そうした後でゆっくりと口をつける。「湛えている」という動詞がぴったりな、悪いたとえでいえば最近の亜熱帯化した内陸の雷前の夕方のような粒子自体の重さを感じるスプーン触りで掬う黄金色の数グラム。ゆっくりと口をつけてみると、ああ、肉の味がする、もやしはどこなんだろう、と思ったやや長めのディレイタイムの後、圧倒的に短いアタックタイムでMト君のもやし工場でざくっと吐き出されるように、そこには見えてはいないブラックマッペの長い根っこを頬張ったような味があった。

 ……以下、少し経ってから話したことを書いておこう。
 肉ともやしが溶け合っているというものではない。肉は肉、もやしはもやしとして一杯の中にいて、スープというのはそういうものだったのだなと、初めて気づいた。なんというかその感じは、初期ビートルズの簡易ステレオ盤のように、ギターは左、ボーカルは右のように、ひどくおおざっぱに分けられた定位のようだが、それはそれでマルチチャンネル録音とは違った味がある。
 そう、これはその時には話さなかったが、肉ともやしが時間差で出てくる感じで思い出すのは、アナログ盤をきく時、曲が始まる一瞬前にきこえる、ゴーストというのかあの音声。たとえば『ハードデイズナイト』のB面をかけて、チリチリという音からジョンのシャウトが炸裂する直前に左の上のほうから一瞬だけきこえる空耳のような "Any Time At All" が肉の味としたら、それから2分14秒の4人のサウンドがもやしとでもいうような、そんなタイム感で味が吐き出される。
 わざわざ深谷の工場までもやしをみに来てこのスープを完成させた、まだ三十過ぎと若いシェフがあいさつに来たので気になる点をきいてみた。
 ―この4人分をつくるのにどのくらいもやしを使ってるんですか
 「400gです。最初に200gで味を出して、それからまた次の日に200gで味を出すんです。いろいろやってそれが一番よかったんです」
 ―はあ、スコッチなんかの二段階蒸留みたいですね。もやしのブイヨンっていうアイディアをどうやって思いついたんですか。
 「Uさん(野菜ソムリエ)からすごく味の濃いもやしがあるときいたんで、それならいい出汁が出ると思ったんです」
 ―肉以外ではどんな素材を考えてますか。
 「冬になったらアンコウなんかおもしろいんじゃないかと思ってるんですけど」
(録音してたわけでないので引用不正確)

 ……ビールやワインも飲んで過ごした昼の時間は3時間少し。Mト君が求めた金額は1万1千円だった。高くないよな、でも、あれだけいろいろ考えてれば、店やってるって楽しいだろうな、と妻子を深谷に帰し次の目的地に向かう地下鉄でMト君と話した。

 大事なのは、緻密さ、考え続けること、そして愚かさに陥らないこと。

Any Time At All http://www.youtube.com/watch?v=w9as8K8SktY

(BGMはおもに夏の夜にマッチする、40年前のビートルズよりアダルトでクールな "Dream Tales" Claudia Villela; Kenny Werner。未だ Mixiミュージックで再生メンバー1人。表題曲Imeemにアップしました http://www.imeem.com/people/FwgvvZ_/music/ms7NwqC9/claudia-villela-dream-tales/

"Menu Marche"
スライドショーは:http://picasaweb.google.co.jp/quaranteans293/090805#slideshow/


晴れの日昼寝 07/27 14:42


曇りの日のしっぽ 07/30 16:38


健康診断 08/02 11:50


愚かさに陥らないこと 08/07 07:13
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