小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

『麦の穂をゆらす風』―「しようがない」―連休前夜

2007-04-28 14:13:53 | 映画
いい天気だった連休前日。3回券が4月いっぱいなのと、ぜひみたかった作品だったことで、シネマテークたかさきに『麦の穂をゆらす風』をみに行きました。
起きてから仕事して、その後の予定から午後2時にシャワーを浴びてのスタート。仕事の電話をしながら高崎線に乗りますが、映画の内容からビールはやめようと思っていながら、あまりの天気のよさに、これでビールを飲まないのはばちがあたると黒ラベルを購入。幸田文を読みながら20分飲んで5分寝て起き、缶コーヒーを買って暗闇に入りました。

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もちろん本作の白眉が、うねり続ける物語であり、政治・思想・歴史にあることは承知しているが、ここでもいつもそうしているように、「映画を映画としてみる」ことを主眼を置いて書きたい。
ケン・ローチは現在、私にとってもっとも気になる映画人の一人である。何本かみた作品でその魅力は何かと考えると、「社会派」と形容される多くの作家と違って思想的には実に中立で、哀しい存在でしかない登場人物の誰もを温かい視線で見守りながら、職人的な映画づくりで実に“社会的”な問題を叩きつけることでみる者の世界に対する愛を再構築させる、そういう映画体験こそその真髄なのだという、ひとまずの結論に達する。たとえば、娘の洗礼の衣装代を稼ぐため愚かな罪に手を染めていく『レイニング・ストーン』、だめな母親の奇妙な愛を描くことで「親権」について考えさせられる『レディバード・レディバード』。
演出的にはいつも、独特のタイム感にうならされる。例をあげれば、前向きに今後の方針を話し合っていたはずの集会が、いつしかとんでもない事態に発展する『大地と自由』、思ってもみない事件から主人公の哀れな姿が見える『マイ・ネーム・イズ・ジョー』といったところで、個人的にはこのタイム感はまったく作風の違った小津のそれを思い起こすのだ。
そんなケン・ローチが描くアイルランド独立運動は、中心人物たちの政治思想と身近な人たちへの思いが複雑な物語の糸を構成し、その美しさ、愚かさをこの上ない切実さをもってみる者に味わわせる。その切実さは、兄弟、幼なじみ、恋人、友人の親という、たとえば『日本の無思想』で加藤典洋が「エコノス」と呼んだ感情的な愛と、国家、社会主義への思想的なようでも実はエモーショナルな愛の間で引き裂かれる主人公たちの、悲しみとそして愚かさへの共感と驚きなのだ。だからみる者は、兄弟のいずれをとがめることはできないし、ダミアンの恋人がこぶしを振り上げるのをわがことのように感じられる。
つまり本作は、「しようがないことへの憤りと慈しみ、そしてそこからしか出発し得ない、状況をよくしようとするための問題提起」という、ケン・ローチが一貫して描いてきた作品の一にほかならない。キリアン・マーフィはじめ俳優陣はいずれもすばらしいが、ローチ作品ではあまりきっちりしてない印象の作風に関わらず役者はどうしても駒という感じが強く、またそれは悪いことではないだろう。緑の、そして荒れた大地、石づくりの民家、ツイードのジャケット、パブやホッケーといったアイルランド文化もまた重要なキャストだ。
ただ、本作でパルム・ドールを受賞というのは、『戦場のピアニスト』のポランスキー、アカデミー『ディパーテッド』のスコセッシと同じく、自身のキャリアとしてはどうか。テーマがテーマだけにしかたないとはいえ、この作品はローチらしいユーモアがなく、これだけで彼の作品が語られるのはもったいない。
個人的には初めてのケン・ローチなら、『レイニング・ストーン』や『マイ・ネーム・イズ・ジョー』をおすすめします。

4月27日 シネマテークたかさき

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と、熱くやるせない2時間を過ごし、気持ちのいい夕暮れの高崎の街へ。これでラーメン食べて行けば塾にちょうどいいと思ったところ、予定のM君母上から腰痛で部活早退のため休むとメールあり。目当てのラーメン屋も売り切れで、では新たな開拓をしようと決めました。
そこで駅本屋で情報収集。知らないラーメン屋もあり、高崎が日本有数のパスタの街というのも初めて知って興味を感じた店もあったけど、何となくソースカツ丼で知られる一二三食堂というのが気になってここに決定。少し歩くし近くに公園があるので、そこでビールでも飲んでから食べることにしました。
途中パスタ屋も確認しならが、元高崎城方面に歩行。駅周辺はやたらと開発が進み、地価の安さからかやたらと古着屋が多いなど平成以降文化優勢のこの街ですが、少し離れると昭和のにおい。揚げ物のおいしそうな何人か並んだ肉屋もありましたが、何といっても少し後にソースカツ丼のため自粛。すると20年前には全国によくあった、いい感じの文京堂という古本屋がありました。
表には『炎のランナー』あたりの中途半端な旧さのパンフレットが並び、奥まったところに昔の中高生にとって秘密の花園だったエロ雑誌が並ぶ、それでもきちんと骨太の文芸書や思想書が並ぶ、こういった古本屋が商売できるのは、もう都内や高崎級の主要地方都市だけです。
お決まりの枯れた老店主が物言わず見守るその店は、意外なほどよく本がまとめられていて好感。初めて知った本も含めていくつかの候補のうち、赤瀬川原平『純文学の素』300円と、吉田秀和『音楽――批評と展望1』200円の文庫2冊を購入。こういう店主によくあるように、意外な高い声でお礼をいいながら袋に包んでくれたその本の重みは、「あまった本ありましたら……」と変なイントネーションでいわれながら渡される黄色い袋、それはそれでありがたいけどおもしろくない、ああいうのとは違った大事な本という感じがします。きっとこの2冊を思う時、あの店主のかん高い声をいっしょに思い出すでしょう。
それか少し歩いてら一二三食堂を確認。予定通りにビールを買って公演で少し、これはさっき買った2冊を、最初のかたまりだけ、80年代と60年代に書かれた極上のテキストを薄暗く誰もいない公園で読みました。今の季節、本を読むのも戸外がいい。人も車も通り過ぎるだけで、見ているのは半分くらいの月だけです。
ほど酔いかげんで一二三食堂へ。これがまたすばらしい店でした。大きな鏡がある店内は、まさに昭和の、しかも地方都市のそれ。これはおそらく近い軽井沢喫茶店文化の影響でしょうが、訪問帖が置いてあり、多くはガイドブックを見て来たという若者の携帯メール文字が踊っています。不思議な風情の店内には、小学生と母親の一組だけ。「西武にはもういい選手が入らないんだよ」「お父さんはひとに自己紹介させるよね」という。やはりこんな店に来る小学生は自分を持っているんだなと思うと、割烹着の店のおばちゃんが「ぼく、お豆腐食べてえらいね」なんていっている。甘めのほうじ茶はすこぶるおいしく、そして出てきたのは巨大3枚入りのソースカツ丼で、ご飯にきざみ海苔が載っているのも、これはかわいらしい。たまに衣ははがれても、それもご愛嬌。香の物もベストで、「今日サービスです」という味噌汁のえのきは見事なぷりぷり感。さらに、「コーヒーと牛乳、どっちがいいでしょう」。これは母子にもきいていたが、そのオプションは意外だったので、何となく「では牛乳を」。早くもって来ちゃってすみませんと中背のグラスで来た牛乳は何だかおいしく、ではと遠い席からお盆に全部載せてお勘定に行くと、「ああ、どうもすみません、ありがとうございます」。これはいい店だ。店を出ると、母子の乗った軽自動車がブー。いつか話ができるといいな、すばらしき野球少年よ。
駅に行くと、おしゃれな今風高校生男子が5人くらい全員携帯を見ながら歩くのに混じり、20年前から迷い込んだような商業高校のネーム入りバッグを持った脚の太い女子高生が「あのセンパイねー」。
高崎はこうみるとやはり田舎の街で、帰りの電車で10分ばかり、快い眠りにも落ちられた。
「しようがない」は憤りと慈しみもあるけど、こんな幸福な時間もまた「しようがない」。

(BGMはアイルランド好きゆえ音源は多いが、ここはトラッドでなくヴァン・モリソンのベスト。おっとなんと今、雷が)
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くもとくものこどものあおども―...blue

2007-04-27 08:36:46 | 身のまわり
木曜朝、降り続いた雨が上がっていて、ねこどもをしたがえて庭に出る。

タンポポやツツジがはき出した水蒸気が空をのぼる。水蒸気は冷たい風にあたって雲になる。雲は重たくなって雨になる。雨は風にふらふらしながら地上に戻ってくる。
サクラソウやスイセンの間ではチョウがうろうろする。チョウを土の上をねこが追いかけてヒバの葉っぱの間ではクモが巣を張って待ち構える。

でもクモのたくらみは空ぶりに終わって、かわりに引っかかった昨夜の雲が落とした小さなしずくが、成層圏を映した大いなる天球の青を表面張力で丸まったからだに集めて、まだ弱い春の陽光にふるえている。

それを見つけた人間は足もとでにゃあにゃあいうねこどもを待ってろとなだめ、大衆化された現代科学の粋であるところの携帯電話カメラを取り出して光の像を半導体に残し、電波に置きかえられた像はいったんどこかにある巨大な半導体に記録される。
ねこどもにじゃあまた後でなと言い残して人間は部屋に入って奇妙な機械の末端をひものついた長い丸いもので操作し、さっき見た光の束を今度は三色の光の集まりで再現された平面上で見る。

ヒバの葉っぱにクモが張ったわなに雲が落としてできた青い水の連なりは、なぜか人間の目には甲冑をつけた肩幅の広い兵士が両手を前方に差し出してバレーのレシーブの態勢を取っているように見える。この青の輝くレシーバーが受け止めようとしているのは何だろうなどと考える人間のひざの上でねこが丸くなっている。

こんな、くもとくものこどものしわざのようなことをつまり、「奇跡」というのではないか。

(BGMはくもとくものこどもの色に似たジョニ・ミッチェルの名盤 blue。植木の名はヒバだったと思うが間違いかも)
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『ボカディージョ・デ・トルティージャ・ぽてとーや』

2007-04-26 11:08:37 | 食べ物・飲み物(~2013年10月)
よく晴れました。
Mixi内「ぽてとや」コミュニティに書き込んだものの転載です。よろしかったらご参加ください。興味があれば参加資格は十分。もちろん、来店経験はなくてもOKです

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ぽてとが到来。
そこで、以前に思いついたものの、その時は置いといたらカビが生えて、おっとこれは安全食品の証拠です、果たせなかったぽてとスペインオムレツを、サンドウィッチにしようと企みました。
スペインに足を踏み入れたことはありませんが、前に少しきいたスペイン語講座でスペインオムレツを知り、自己流でたまにつくっていました。一般的なレシピは
http://home.catv.ne.jp/nn/hmplan/Stayinfo/Cooking/tortilla.html
要はじゃがいもが入ればいいので、これはぽてとを活用できるのではと考えたわけです。あるのはみそぽてとですが、味が深まっていいでしょう。
↑でほかのメンバーもいうように、ぽてとやラードは炒め直しで甦ります。

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1)ちょうどいい大きさ、約4分の1に切ったぽてとどもをフライパンでじゃあじゃあ
2)湯気が立ったところでいったん皿に出し(A)て、食パンにマーガリンを少し塗ってトースターに
3)思ったよりフライパンにラードが残らなかったので、迷った末に影響の少なそうなマーガリンを少し補充
4)卵を割って適度にスクランブルしコンソメを少々入れつつ(A)を投入してかんたんオムレツ完成で皿に(B)
5)食パンを出し、個人的にフライものに欠かさないからしを少々、青物としてキャベツを敷きマヨネーズ少し、その上に(B)を載せてブラックペパーをグラインド
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これで完成。所要時間は5分です。写真はいったん全体で撮っていまいちだなと思いつつ半分。そうだ、サンドウィッチといえば断面だぜと、歯型を避けて包丁で整えて撮影。周辺に脇役があった方がよかった、もうちょっと上向けた方がと思えど、これが温食撮影の難しいところです。

次回のための反省
1)ぽてと1本に卵1個はバランスだめ。サンドウィッチ対応にしたためだが、オムレツ単体なら卵はもっと必要
2)これもサンドウィッチということで略したが、次はタマネギ、ニンニクなども加えたい
3)迷った末にやめたが、すりつぶすとまた違ったかたちになりそう
4)ほくほくさせるにはまずオーブンで加熱してはどうか

命名は
ボカディージョ・デ・トルティージャ・ぽてとーや=bocadillo de tortilla potetoya≒ぽてとやオムレツのサンドウィッチ
で。
反省点は多いので、みなさんで発展させてください。残ったぽてとが生き生きします。

それでは、
!Adios amigos!

(BGMはもっとのどかなのがよかったけど、すぐ見つかったスペインもの『愛より強い旅』サントラ)
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Hello again, Foojie! (...waitng for a dream)

2007-04-23 17:47:03 | 週間日記
理想的。月曜夕更新の先週日記です。

16日(月)昼からずっとよく働き夜の電話取材後、一段落ついた夜、味噌ラーメンが食べたくなり選んだのはしばらくぶりの玉井・とん太
17日(火)この日もよく仕事で遅れたものの、晩、同級生M君宅で初めて会ったM君仕事関係のIさんらとチーズフォンデュ。Iさん帰宅後、M君所有のLD『スペクトルマン』観賞は30年ぶりだろう。寝て朝帰る
18日(水)よく働く~出張授業は中学生にマンガの話などいろいろきく~夜、東方・長崎ちゃんめん
19日(木)この日もよく働き~晩は別府・のび太でかき揚げうどん~塾に4月に就職したOB・Y君来て少し話す
20日(金)この日から別の原稿に集中。いい天気でねこと遊んでたけのこも確認~晩はカレーが食べたくなり、時間もなく、それほど感動を求めなかったので初めてすき屋カレーを。カレーを食べたという記憶にしかならず、こういった態度はよくないと反省。食事は大事にしなければ~本屋でミュージック・マガジン、レコードコレクターズ、アンディ・ウォホールのスタジオヴォイス購入。メジャー特集Numberは日本人ばかりだったので見送り~塾ではM君が持ってきたうまかぼうやしずくちゃんガムを食べ、Y君が持ってきたPC再インストールに成功
21日(土)昼、撮影。帰ってシャワー後、何も食べなかったため拾六間・福龍で大盛味噌。大変な混雑でお待たせしましたと卵のおまけでどうもありがとう~塾で原稿書こうと思うが、早くも意識を失い、汗をかいて寝て、時々J-WAVEのロケットマンやモーリー・ローバートソンの声がきこえる
22日(日)帰って競馬は今週もだめ。今回は参政権を行使し、豊里・永来でもやしそば~仕事しようと塾入りし阪神:巨人少しみる。福原が打たれてて悔しいが、狩野という売出し中のHRは見事。少し原稿に集中し、J-WAVEできいた岡田准一:森絵都の「十代の読書」についての話は興味深かった。森さんの声の魅力にも感。その辺で力尽きて寝る

けっこう働いた一週間。もう新年度なんていってられない。
サッカーは、アーセナル新スタジアム不敗神話の終焉ウェストハム戦と、ニューカッスル戦は途中で寝て半分か。野球は今日のNYY:BOSなど、おもしろいゲーム続く。

土曜日か、叔母が来て4年前に祖父が植えた分け葱を取っていたので咲いた藤のところに行く。
去年は全然咲かなくて、おじいちゃんが前切ってたからもうだめかと思ったんだよ、そうだねえ、でも強いからあっちこっちどんどん伸びてるよ、まったくたいへんだよ。
それから父親が掘ったたけのこを車に積んで、じゃあと帰っていった。

現在のバッグ入り本、幸田文『雀の手帖』「木の声」から
……木には声のある木とない木がある。声といっても木がひとりで声を出すのではない。風が来て木に声を出させる。と言ったらいいのだろうか。……

今はいちばん声が聞こえる季節かも知れない。
ありがとう、フージー。また声を出してくれて

(Phはその伸び放題ジャングル然とした藤の花をモデルとしてこっちは「 (スペース)」を引退後の物干し台の上に置くもすぐ離脱は当たり前か。BGMはこれは藤の花のような rufas wainwright "want two" で、今は幻惑的な waitng for a dream と、藤の花も待ってたか)

【カウンター07】
ラーメン4/51 他外食2/19 外酒1/29  海外サッカー1.5/27.5
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ハグレイキングとの短い日々―sittin' on the ホトケノザ

2007-04-22 11:25:13 | ねこ
天気のいい日曜日にはふさわしくないけれど、忘れられない話を。
「かなしい物語です」

やつはまず、敵として現れた。
だいたい最初に会った頃がよくない。春の訪れからか、次々と世にいう修行に出かけたか愛すべきねこのやつらの姿が見えなくなり、今日も来なかった、今日も来ないと胸がきりきりいっていた頃なのだ。離れ部屋の玄関脇、集まる常駐外ねこ、パートタイム外ねこどもがキャネットに群がった時、初めて会ったやつはすぐには確認できない、四月に丈を伸ばした草むらに潜んでいた。

灰色のやつの容姿は、一言でいってこわい。小さい頭は草原のネコ科肉食獣のようだし、目つきは何も信じるものはないといった不良のそれのよう、首筋に入った段々はさしずめレッドキングのようだ。それが多くののんきねこどもの隙をついてキャネットにありつくべく、息を潜めて姿勢を低くして、草むらから狙っている。推定年齢はそうだな、10歳はいっていそう。田舎につき自由ねこはよくうろうろしているが、初めて見る顔だ。
大事なねこどもを失いつつあった私は、直観的に、すなわち単純にこう理解した。どこからかこいつが来たからうちのやつらはどこかに行ってしまったのではないか、いや、凶暴なこいつのことだから、のほほん暮らしのうちのねこどもに決定的な傷を負わせてしまったのではないか。
ねこ博愛主義を標榜する私であるが、こいつだけにはキャネットをやるべきではない。そう決めて知った顔たちがカリカリする中、近くで機会をうかがうやつを牽制し続けた。そうでないとあのレッドキング首が、わんわんとキャネットを独占してしまう。のろまなキャサリン・アーンショーなど、いつまでたってもカリカリできない。
と、そんな日々がしばらく続く。大事なやつらは帰って来なかったが、やつは頼みもしないのに玄関側にいる。自由人と呼ばれるもののこっちも無限にフリーなわけではないだけに途中で見張りを断念することもあったから、その間にレッドキングネックで凄味を利かせて平和をむさぼるうちねこどもを追い払ってカリカリしていたのだろう。どうやら、常駐組に参入しようとしていた。
ある夜、車で帰って来ると、いつものほかの常駐組や室内組がどやどや集まって来る中、なぜかやつもみんなといっしょに進み、後ろを振り返りながらにゃあにゃあいっている。それはレッドキングが仲良くしようとしているようで滑稽ではあったが、私もいなくなった大切なやつらの不在を受け容れようとすると同時に、このレッドキングにもそんなに冷たくしないでいいのではという気になっていた。
最初はこのいかついねこが来ると逃げるばかりだった平和ボケ組も、いつの間にやらいっしょにカリカリしても平気なようである。それがやつらの偉いところだ。

そんな日々は、でも一週間もなかったろう。
確か三月三十一日の日曜だった。仕事に行く直前、うちでは伝統的にバラックと呼ばれる物置の方から、まさに怪獣の雄叫びのようなニャーという声が聞こえてくる。行ってみると置いてあった赤い座布団の上で、レッドキングが叫んでいた。どうしたのかわからないが、鼻のあたりが黒ずんで苦しそうだ。
しかし仕事には遅れられない。まあなんかよくわからんけどがんばってくれよと言い残し、ネクタイを締めて出かけた。
帰ってから見に行くとレッドキングは座布団の上で、それまでに見た中でもっとも静かになっている。そんな関係だから私は、やつの寝顔なんて見たことがあるはずがない。

でかいからだでも余計なぜい肉などないそのなきがらを、うちのねこどもの墓場にしている前の道との三本辻に穴を掘って埋めた。けっこう大きいし、長く生きたからだだから、敬意を表して少し深く掘った穴の側には、誰にも注目されなくても足しも引きもしない青をたたえたホトケノザが咲いている。
土をかけながら、ほとんど知らないやつの一生を思う。多分十年くらい百戦錬磨で生きてきて、その終わりの二十日間ほどをこの近くで過ごした。それは映画くらいでしかみたことのない、生まれた土地から遠く離れた縁もゆかりもない赴任地でわけのわからぬまま死んでいく兵士のようなものだろうか。
ちょうど日本で一番きれいな、集団で咲くことで愛される花の下で多くの人々が幸福に酔いしれていた四月の最初。誰にも愛されない小さな花を咲かせるホトケノザの近くで眠ることは、やつにはふさわしいことに思えた。
人間に愛されて生きるねこがいる一方でおそれられるねこもいて、しかもどちらもどうしようもなく美しい。

博愛主義。私はねこについても、そうありたいと願っている。
博愛主義に現実性はないから、いつも敗れるということも十分承知している。それでも決して達されるはずのないことを希求することはねこどもにはできない私たち人間だけの特権なのだから、それがどんなに悲しくても享受するべきではないだろうか。だから博愛の精神を持たない人間を私は信用できない。

はぐれてこの地に流れ着いたレッドキングのような首をした灰色のやつを、ハグレイキングと名づけよう。そして、やつがキャネットを狙っていた時のこわくて美しい獣性と、ほんの少しだけ見せた安心と期待の振り返りにゃあにゃあと、お終いに求めた救いの声をおぼえておこう。
墓碑銘にはこの言葉ども、花はホトケノザを。

(Phはきっとやつもこのアングルから見たことがあるだろうホトケノザで、この先に眠っている。BGMはちょっと棚をみて、やつに獣性が似つかわしいオーティス・レディングでさっきちょうど "I've been loving you" でも、I've been loving you の後に続くのは too short。レディングが死の直前に録音したという "(siitin' on) the dock of the bay をもう一度きこう。watchin' the time...)

なお、レッドキングは
http://pulog1.exblog.jp/71891/
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「聞こえないようですが」「きずなは地にあこがれは天に」

2007-04-18 16:44:29 | 週間日記
雨の水曜夕。先週日記です。

9日(月)昼、前々回記事の桜公園~目当てのとんかつ屋休みでやむなく見つけた定食屋でメンチ・コロッケ定食は悪気はないのだろうが、いかんせん自分の目的とはかけ離れていてまいった~仕事して晩は別府・のび太でカレーうどん
10日(火)昼は働き~晩は同級生M君邸へ。
11日(水)昼は働き~晩は別府・のび太で大もりうどん~出張授業~FAX取りに塾に行くと、カギ壊れる
12日(木)公園~カギ修繕~携帯機種変更~ホームセンター~撮影散歩など前回記事に詳しく。昼に拾六間・とんかつ優でロースかつ
13日(金)仕事は何とかがんばり、晩は上柴・越路で大もりそば~授業で中2M君に携帯赤外線受信などおそわる。それでこっちは数学をおしえた
14日(土)この日は競馬は当らずともやる気漲り、年に何度あるかという充実したモチベーションで自宅原稿に取り組む。よっしゃあ、と送ると編集者Oさんからいいですねと電話。一年一度、三年続けてきたシリーズの最高傑作と豪語の後いったん緩め、まずい、といって特に不都合はないはずだが、このままではラーメンゼロになると夜に拾六間・福龍で大盛醤油ラーメン
15日(日)昼は働いたりだらだらしたり競馬したりで当らず、前日好調だった反動でだめな一日に。とはいえ夜は、Mixi 内コミュニティオフ会といって全員知った顔だが、こっちはほかに初めての人を紹介できたりしておもしろく時間は過ぎる。歩いて近くのKさん宅でさらに飲んで朝に帰還

桜もあっという間に過ぎ、あわただしいままの一週間。
サッカーは、もう何みたのかよくわからず、確かめろめろのリバプール:アーセナルに、楽しみにしてたサラゴサ:バルサは考えてみれば半分で中断、CLはもうろうとしながらみたバレンシア:チェルシーだけかな。新聞避けてたからまだ楽しみは残ってていいか。
四月も半ば。ちょっと前の華やかな桜の季節と、もう少ししての長い休みの時期にはさまれて、ただ曇った日々が続くばかり。でもその間にも、植物は伸びているし、ねこどももいろいろやっている。
この頃バッグの中にちょっと前に読み終わった茨木のり子『詩のこころを読む』が入っていて、柄谷行人でも幸田文でもない気分の時に適当なところを開いて言葉を味わっている。たとえばこんな言葉だ。

むすこには聞こえないようですが
その若い幹のあたりで
小鳥たちがいっせいに さえずっています
彼には見えないようですが
鏡の中では潮がうねっています

安西均『新しい刃』

息子が初めてかみそりを使うところをうたったこの言葉。もう潮がうねらないわれらには小鳥のさえずりがきこえる。ねこは小鳥がさえずるのは聞こえても、「小鳥がさえずる」が何のことか知らない。
ぱらぱらとめくるとこんな言葉も。

きずなは地にあこがれは天に
うつくしい樹木にみちた岸辺や谷間で
いつか年月のまにまに
冬過ぎて春来て諸国の天女も老いる。

永瀬清子『諸国の天女』

きっと言葉を持つものだけが、時間を語らなければならない

【カウンター07】
ラーメン1/47 他外食5/17 外酒1/28  海外サッカー2.5/26.5

(Phは新たな携帯で最初にねこを撮るのはどうしようと思っていた。前機の最初はその頃いたカロンタンで、ブログプロフィールの一枚。今回誰を撮ろうと思ってたら、すぐそばに来て態勢をとった「/(スラッシュ)」を。BGMは曇り空に似合うということで仕事しながらきいてたロキシー・ミュージック avalon からこれはぴったりバルバラのベストでまさにシャンソンの天女)
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リアル、プロフェッショナル、ビューティフル

2007-04-12 20:32:48 | 身のまわり
何かただの日記です。

昨夜も塾で作業中に力尽き、朝になって帰宅。にゃんにゃん、おお、すまんすまん、じゃらじゃらとキャネットを置き、さて仕事に。しかしそういえば、起きた時、J-WAVEでサッシャとキミちゃんが松坂:イチローで騒いでいたなと思い、うっかり後で楽しみのチャンピオンズリーグが映らないように細心の注意の下、NHK-BSを。第1打席は、これぞスポーツの真髄と思われる緊張した時間だった。
始まる前から最高潮のフェンウェイパークに、過去の2人の対戦を思い出そうとしたがまったくない。調べてみると99~00シーズンだけで、初対決3打数3三振で「自身が確信に変わった」というインタビューは憶えていたが、内容となるとまるでおぼつかないのだ。
私が日本の職人イチローでもっとも舌を巻いたのは、松井がまったく打てなかった阪神・遠山の外角球をオールスターの初対戦で、テニスのようなチョップショットでレフトに打ち返した時。なるほど、線で打とうとしたら難しいけど、ああやって点で捕らえれば、少なくとも世界最高級の技術があればああやって打球は飛ぶんだ。野球って何てわけわからないんだろう、と嬉しさに震えた。難しいボールはからだを開いても外に向かって点で捕らてはね返す、それが職人としてのイチローの真骨頂なのだと思う。
そして注目の第1球。真ん中低めに普通の投手のスライダーのように素早く曲がるカーブに、イチローのバットは動かない。解説・長谷川が「これは意外ですね。まさかこう来るとはイチロー君も思わなかったでしょう」。正しいスポーツ解説とは、素人にわかりえないことを語り理解と興奮を促す、こういうものだ。
そしてスライダーと低めのストレートをインサイドに集中。これではあの流し打ちはできない。追い込まれて打たされるかたちになった打球は本来のスピードは持てず、これまた一流の松坂のグラブに吸い込まれた。
その後も松坂は徹底的に内角を攻める。長谷川がおしえてくれる。「これは松坂がバルテックにそういってあるとしか思えませんね」。松坂は揺るがない。
フォーク、スライダー、ストレートは内角低目だけ。同じような4打席の中で、伸びのあるストレートは確か1球もなかった。私としては、打てるもんなら打ってみろという果し合い的な外角高めストレートをイチローがどうすべきかという力のぶつかり合いがみたかったのだが、それは見事なかたちで果たされなかった。
「イチローさんは、何が何でも、どんな形でもいいから打ち取りたいと思う人。すべてを使って抑えたいと思う」、「イチローさんは、僕が成長を認めてもら
いたい、と思う唯一の人」というゲーム後のインタビューが泣かせる。
松坂はどこまでもリアリストなのだ。われわれ凡人は、試合に負けたが勝負には勝ったとか好き勝手をほざいてやまず、一番いい球を放れば負けても仕方なしなどと思っていて、たとえば中日時代の落合とオールスターで対戦した阪急・山田がシンカーを投げず、落合が「何だよ山田、シンカー全然投げないじゃん」などといえば、まったく山田のやつの卑怯者め、などと抜かしていたが、それは見当違いもいいところなのだろう。
一流のアスリートは、常に勝つことをめざすのではないか。何をやっても勝つというアティテュードこそが、トップアスリートの証明なのだ。
しかしイチローを完全に封じた松坂は、最近まで対戦していた城島に打たれ、ゲームには負けた。これだから野球はわからなく、そしてすごい。

と、途中で近所の人が留守の父親を訪ねてくるのや佐川急便らに対応しながら、ボストンごしに仕事を進めたりしていると、いつの間にか11時。腹もいい具合にへってきたので、ここは月曜に達されなかった自衛隊前のとんかつ屋に行くことにする。多分開店するだろう11時に着いたが準備中だったので、これはちょっと待つかと近くの公園にこの日はキリン・ゴールドと前回に続き幸田文。芝を刈る人しかいない公園で桜はらはらの中、見事なエッセイを味わい、再びとんかつへ。ロースかつ定食720円は、十分満足の時間だった。

そして、前日壊れたカギを直すために塾に行く。と、そこでネットでいろいろチェックしていると、いつの間にか眠りの神が到来し、速やかにお誘いに応じる。寝られる時は寝る、これが正しい。
こういう睡眠は30分で効果は絶大。起きて前夜に頼んでおいた、近くに住む自転車店を営む叔父に頼みに行く。何しろ私は自慢ではないが、技術科などでいすや本棚をつくっても使えたためしがない、とんかちオンチなのだ。
お客さんがいたので少し経って叔父が登場。状況を説明すると、あっという間に完璧なパフォーマンスを見せた。いやぁ、やっぱりプロは違うと、自転車店に行き父の妹である叔母にいうと嬉しそうだった。

これで午後4時。本来なら仕事があるが、そういえば1月に行って以来、3回はね返されている携帯機種交換がある。せっかくだから、まだ桜があるうちに行っておこうと、車で3分のソフトバンクに向かった。
それにしても携帯というのは、どうしてこんなに面倒なことになったのだろう。この間もらった委任状を家族割引の父親に書かせて持っていき、1月に採りおいてもらったんですがと事情を説明するとテレビに出てくるようなみんな同じ顔の受付嬢、ではもう期間が過ぎていますのでこちらはどうでしょう、これは月々980円ですが、その代わり980円割引されるんですよ、とむちゃくちゃなことをいっている。最近、覚えた技として話を早く切り上げるためには、近くにあるパンフレットをみて説明に出てきた単語にわけわからくてもそれはこれのことですねと反応すると、そうなんですよとすぐに終わってちょうどいい。どうせ、きいてもためにはならん。
それで前はシルバーのやつだったのだがこれは実は気に入らず、電話は赤か青がいいとひそかに狙っていたらギャルが、この黒と白とピンクと青です、ああ、青か赤がいいと思ってたんですよ、ピンクはちょっと問題があるので、青でお願いしますと3秒で決まり、うっかり父親の名前なのにフルネームの実印を押してしまって書類1枚反故にした以外はスムースに完了。アドレスを移すのに20分かかるというのでギャルにではと言い残し、なぜかなくなったネジとカーテンレールの玉を買いにホームピックへ行く。

クギ売り場に行くと初老の人がすみません、ちょっと、いや私は店のものではないんです、ちょっと待ってください、今呼んできましょう、とレジ方面に走ると放送で「○○さん28番にお願いします」。たたたと28番に行くと、普通のおばさん店員が来た。まあ先に来たのはあっちだからと初老の人を探すといない。ではと、持ってきたクギを見せてこれと同じのがほしいんですというと、はいはい、これは4ミリですねと鉄の定規に穴の開いたようなのに挿して、でもちょっと違うかなあなどといい、ISOになる前の古いのはこっちなんですが、これでしょうかねとぐるぐる回している。
むう。月々980円かかりますが、980円割引ですのでというITの末端に比べ、何とシンプルなことか。ネジが回ればそれでいい、そして世の中のネジの多くを把握しているらしいこのおばさん店員は美しい。
そこへ初老の人が来たので、あっ、あの人も何か探してましたよ、でも別に飛び出しててもいい場所なのでこれでいいですよ使えなくても安いし、何といっても180円だ。そうですかでは、と初老の人に向かうと彼は、BSアンテナをつけたんですけど穴を埋めるのが……、ではパテですね、こっちです。困った人を助けるというのはこういうことだ。
カーテンレールの玉は30年前とあまり変わらないらしく一種類しかないので安心して買い、再び孫正義の手下のところへ。
もちろんギャルに罪はない。待ち構えていて、どうぞと紙バッグを差し出すのでお世話になりましたと外へ出る。では、この不条理は誰のせいなのか。

ここでだいたい5時。ではせっかくだから駅周辺の桜でも撮ろうと歩いていき、夕方の唐沢堀から下台池あたりで撮影する。
途中、土手に進出して青い花と太鼓橋の絵を撮っていると、川向こうで別の初老の人がいう、そらあ、なんつー花だい、私は野草研究家ではなくとくに詳しくないので、ええ、何でしょうかと返すと、毎年そこに咲くんだよ、でももうちょっと前の方がよかったねえ。
人間はこうでなければいかん。断言はできないが、たぶんあの孫正義の手先は花の名前どころか、ここを通っても花が咲いていることにすら気づかず、大切なカレシやお友達とのオシャベリかメールやらに現を抜かすだろう。そういう精神にとって「キレイ」ということはテレビやイオンやマツモトキヨシにあり、「美しい」は言葉すらないのかも知れないといったら言い過ぎだろうか。そしてクギのおばさんは多分、家にはクギではなくてガーデニングやプランターの花々が彼女の金属やパテとの闘いを癒しているのだろう。ただの偏見に過ぎないが。
おお、うっかり紋切り型のくだらぬ文明批判になってしまった。さてと仕事せねば。

(Phは新携帯の撮影から夕暮れの下台池。BGMはJ-WAVE)
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雪は花、海は黄色、ねこと眠って、さくらあぶらなはんぶらあな

2007-04-11 18:09:58 | 週間日記
今回は水曜夕更新の先週日記です。

2日(月)昼は恒例電話取材~夕、別府・のび太でカレーうどん~塾入りして原稿
3日(火)京都へ取材出張。詳しくは前回記事に。食べたのは、往路で弁当・東京幕の内~京都・はやし食堂ですうどん~藤ラーメンでラーメン+餃子。茨木のり子『詩のこころを読む』読了
4日(水)昼は原稿。晩は出張授業~東方・長崎ちゃんめん
5日(木)なぜか仕事進まずよく寝る
6日(金)晩は塾。迎えに来た同級生Hさんに始めたばかりというパートの話を興味深くきく
7日(土)昼は競馬でファストタテヤマに8万馬券を頂戴でやった。夜は同級生M君一家と行田・らあめん健からM君宅で飲みレッズ戦、『ロボット刑事K』、『宇宙戦艦ヤマト』など観賞であれこれ
8日(日)昼は競馬で桜花賞1万も的中。夜は本屋に太田に行き、県議会選はすっかり忘れる。目当てのラーメン屋見つからず入った良家というのはインディペンデント~塾に行って仕事~力尽きてそのまま寝る

さくらさくらとさわぎとおしのすばらしき七日間。
とはいえ佳境に入ったチャンピオンズリーグは、ミラン:バイエルン、ローマ:マンU。でも、残り2ゲームみないまま、来週かと思っていた2ndレグが始まっていて、うっかりさっき goo でか結果も知ってしまってまいった。
今日水曜こそ雨でも好天日多く、月曜はサッポロ黒ラベルと幸田文といっしょに市内人の少ない公園、火曜は自転車で菜の花たんぼ探訪と、いつになく自然に親しむ。雪のなかった今年、公園は一番白く染まり、川辺の道は菜の花とハハコグサで黄色い海と変わっていた。晴れた火曜はねこといっしょに『ヴァージン・スーサイズ』サントラ、10cc "I'm not in love" をききながら、一年にあるかないかの気持ちいい午睡。
そして耳には Mixi の方からおしえてもらった『カルミナ・ブラーナ』で、先週知った言葉から一つ選べば茨木のり子から学んだこの詩。

アランブラの宮の壁の
いりくんだつるくさのように
わたしは迷うことが好きだ
出口から入って入口をさがすことも

~『アランブラの宮の壁の』岸田衿子

さくらあぶらなはんぶらあな

【カウンター07】
ラーメン4/46 他外食2/12 外酒1/27 読了本1/5 海外サッカー2/24

(Phは市内東公園春の雪。BGMは今日初聴のヨッフム版『カルミナ・ブラーナ』)
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ひがしやまささめさくらあるはんぶらぶら~桜遠征其の二

2007-04-06 14:58:27 | 身のまわり
時々行かせてもらえる関西取材出張。今回は桜の時期とあって、仕事を終えた夕方、帰りの新幹線まで少し花見をと京都駅で降りる。

といってよく知らない土地ゆえ、どこに行ったらいいかも知れず。京都、桜で思い出したのは谷崎『細雪』で姉妹が季節の花に遊ぶシーン。とはいえ、それすらどこだったか確かでないので、ではと駅ビルで前に行った三省堂を探すが食品売り場に出てしまい、時間がもったいないので京都タワー内書店で新潮文庫のページを繰り、姉妹が最後に取っておく京都で一番が平安神宮ということ、ほかに円山公園などの単語を仕入れる。

というわけで平安神宮方面の100系バスに乗車。渋滞はあっても、市内観光には普段の街の風景も楽しめるバスがいい。外国人やらガイドブックを抱えたかつてのアンノン族のごときOL風やら30年前に実際そうであったような花のついた帽子のマダムやらといっしょくたに運ばれて行き、途中、清水寺、八坂神社でどっと降りるのでいくらか不安になりつつ、ここはたとえ後悔する結果になっても目的地は変えない決心で平安神宮に向かう。それにしてもどっと人が降りても、また、ごいと乗って来るのがさすが世界的な観光地。と思う間に巨大な赤い鳥居が見えて平安神宮に着く。

それは五時前くらいで、苑内見学は五時半までという。今からで大丈夫ですか、ええ三〇分もあれば、花はどうですか、部分的にですが三分咲きにはということで600円はどうかとも思ったが、まあ谷崎がいうのならと入場。けれどこれはきっと本からでなく、一部みただけの市川崑版の映画とはずいぶん印象が違う。蒔岡姉妹の頭上にあったのは豪華絢爛に拡張する桜だったのだが、神宮の桜はこれが満開だったとしても凝縮するような感じがあり、池とか菖蒲とか、そういう周囲との関係でこそ美しいもののような気がした。または、谷崎の頃とは桜そのものが違ってしまっているのか、それとも美の基準が変わったのかも。
そうはいっても、左近の桜と各建築物の配置などは、高校の頃、何もわからぬまま感じた法隆寺の企みと同種のおおらかさを思う。

と、平安神宮を後にしたのが五時半頃。「平安神宮」と書かれた石碑の前で信号待ち、と、多分娘さんか上品なマダムをデジカメに写す初老の人に、「いっしょに撮りましょうか」と声をかけるも、本当に嬉しそうにお礼の言葉を重ねつつのノーサンキューもまたいいもの。
さくらさくら、ひとのこころにひかりともす。

で、人のあふれるバス乗り場。時間がもったいない、ではと、道中計画した八坂神社付近まで歩くことにする。
歩きは人間の速度だ。想定としてどこの店で夕食を食べようかと目星を着けてはいたけど、バスからは気づかなんだ林食堂なる店が気になり、ラーメンは順延でビールとすうどんを頼む。どうってことないがうまい。おおきにと、ビールを頼んだのにお茶を気にするおばちゃんの心遣いが嬉しい。

ちょい酔い心軽い歩みで、目にとまったのは信三郎なる頒布屋。しっかりしたつくりと、東山文化を思わせるシンプルなデザインがすばらしい。こうした和ものクロスオーバーはどんどん広がってほしいが、ちょっと高いので見送り。

古都をずんずん歩いて、とうとう知恩院から円山公園に。
よくは知らぬが、屋台もたくさん出ているところを見ると花見の名所らしい。たけのこ焼きというのに興味を持ったが、まあいいやとスルー。ちょうど標準語のおばさん集団が、上野公園みたいなもんじゃない、そうよねというのは、まったく同じことを思っていただけに安心する。があがあ集まった発泡酒の箱や、宴始まる前から毛布に包まって座り寝の若者がいるのも関東とそう違わない。

ではと、そそくさと円山公園からさらに南下。こっちは、今に輪をかけて何も知らなかった高校生の修学旅行でも来た清水寺に来た。25年の間には世界遺産の本の原稿を書いたこともあって、少しは知っていることもあるが時間はないので駆け足訪問。
サーチライトに驚きつつ坂を上がり、近道という茶わん坂を。途中、小学生の兄弟風が走っていて、もうだめ心臓が飛び出しそうだとかいっていたが、ああいう何のためかわからぬ無謀さも観光地ならでは。
あまり人がいないなと思いつつ焼き物など見て上がると、北関東者には親しい伊香保のような石段。つい上ってみると、おお、こっちがメインだった清水坂に出る。
そうだ、ここは修学旅行でも来た。夜も更けたのに外国人含めた観光客でいっぱい。漬物試食だの、いつか買いたいと思っていた扇子など物色し清水へ。夜間参拝400円は高くないけどもう7時過ぎ。8時半の新幹線に乗らないとねこどものところに帰れない。ここはスルーで、帰りに小風呂敷、干支でもあるうさぎ柄の1枚550円を買ってしまったが何に使うのだろう。
京都タワーがきれいねという観光客に、そうかあの悪名高い施設もまんざらでもないなと思いつつ坂を下り、そのタワーに向かって急いだ。

と、途中でトイレにも行きたくなり、腹もへってきたのでいよいよお約束のラーメン。五条通りで目についたラーメン藤というので、ビール+餃子+ラーメンの黄金トリオを味わう。これはなかなかだった。
会計を済ませ駅まではどのくらいかかりますかと問うと、地下鉄に乗った方がよろしいで、歩いたら? 二、三十分かかります、ときき、近くの駅に入ったらそれは間違うなといわれた京阪の方で、遠くに見える京都タワー目指して歩くことにする。夜風はやさし。

タワーも近づき、駅周辺は歩き慣れているから、ここは東本願寺ではと裏通りを歩くと、門のところに大きなはいいろねこ。誰が置いたかカリカリフードを食べるに、おお、元気かと声をかけると、たぶんそういうことはないはずだがやつからみて4時の方向に平行移動。心配するな、こっちは旅の関東ものだ、家にねこもたくさんおる、といいながら去るとまたカリカリ。ねこは種の観念が強いというが、うちのねこのことはどう思っているのだろう。

さて、駅に着きみやげ少し買い、のぞみに乗る。ビールを買ってたらあやうく間に合わないところだった。ビール1Lとともに、往路で少し読み始めた茨木のり子『詩のこころを読む』があまりに典雅で、新横浜を前に読みきってしまう。知らなかった詩人も何人か覚えたけど、最後の方の一編のアルハンブラ、現地音に従ってアランブラ宮殿の詩に思いをよせる。

高崎線は籠原止まりで寒く、携帯の電池切れたと緑電話使っていたレディとともに階段で風除け。深谷駅の桜は平安京よりずっと盛りで、家に帰ってねこどこどもにゃあにゃあに、おおおめえら、こっちは今日は上洛したのだぞ、あっちのねこはなぜかお寺の裏にあるカリカリ食べてるんだぞといっても、やつらキャネットカリカリばかりで耳貸さず、それもまた四月。

(というわけで、吉祥寺編と似通った内容。どこに行っても同じようなことしてます。Phは平安神宮左近の桜から夕陽。こんなことなら携帯代えてから行けばよかったと少し後悔。BGMはけっこう春らしい、the delgados "universal audio")
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そろってそぞろそろそろぞろぞろ

2007-04-02 17:52:49 | 週間日記
天気いまいちでも美しい季節。理想的、月曜夕更新の先週日記です。

26日(月)OG・JさんのPC無線LANをやっと設定完了し、いい天気の中を返しに行く。晩は上柴・東華楼で台湾ラーメン~恒例電話取材~原稿
27日(火)打合せで築地へ。詳しくは29日記事に。ラーメンは三鷹・江ぐち~吉祥寺・麺僧と、いい気になって2杯。読了本、往路に橋本治『「わからない」という方法』、復路に須賀敦子『ヴェネツィアの宿』
28日(水)晩、別府・のび太で力うどんは餅が磯部揚げ状態で出てくるという驚くべき形態でなかなかヒット~年度最後の出張授業で中学生に春休みの暮らしについてきく
29日(木)晩は振替で授業。迎えに来た同級生Hさんといろいろ話す
30日(金)夕方からシネマテークたかさきで溝口健二『残菊物語』と『山椒太夫』は完璧。帰りに駅近くのラーメン・やまちゃん
31日(土)昼は撮影。不調に陥った塾モデムの代りが届き接続成功。10時間食わずで、拾六間・福龍大盛醤油ラーメン
1日(日)昼、競馬は不発。晩は同級生M君宅へ行きインポートチーズとお好み焼き。OG・Eさんも来ていろいろ話し、大食い~NHK『すみれの花咲く頃』というのをみる

サッカーは、結果知っていたとはいえ十分楽しめた2週間キャリーかクラシッコと、これはまいったエバートン:アーセナル。テレビはNYY井川や桐蔭・中田のホームラン、BSでやってた『あしたのジョー』もちらちら。
と、まあ盛りだくさんな1週間だったけど、この時期の主役はやっぱり桜。誰かに会えば、あそこが見頃だとかこっちはまだだなどとたしかめ合うし、一人でも帰りはいつもと違う道を通ってめったに会わない樹に向かう。
とはいっても、桜だ桜だと騒いでいるのは人間だけのこと。ねこどもにあっては、暖かくなってきたのが何より嬉しいだろう。少し前に生まれたやつらもやうやう机の間から顔を出すものも現れ、花で重たげな枝のように大きな頭ふらふら。
ひと、さくら、ねこ、そろって そぞろ そろそろ ぞろぞろ

【カウンター07】
ラーメン5/42 他外食1/10 外酒1/26 劇場映画2/13 読了本2/4 海外サッカー2/22

(Phはてこてこ出てきた暫定名くろまめを机の上に乗せて。BGMはそぞろが魅力のドビュッシーは『管弦楽のための映像』「春のロンド」から『弦楽四重奏曲ト短調』に)

***水曜朝カウンター補修
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