3時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ3」
さて、もう一方の側面ボックスアートを見ていきましょう。
左の絵が、オネストジョンwithモービルキャリア、右がカリタック級水上機母艦の3番艦パインアイランド(日本風にいうなら、松島、それともパイナップルの島という意味ですかネ、確かフロリダにある島のことだと思います)です。
オネストジョンは、Jack Leynnwood氏の作。このキットはミサイルものでありながら、かなり異色のプラモで、オネストジョン本体が分解され、木枠で梱包された状態をモデル化しています。しかも、これらを運搬する車両は、軍用車ではなく民間のトレーラー。おそらく、製造メーカーの工場で完成したオネストジョンを、トレーラーに載せて軍へ納入する際の輸送風景を、そのままモデル化したのでしょう(キット自体は、新規で製作したものではなく、もともとRevellが発売していたKenworthのトレーラーを一部手直ししたようです)。
主役のミサイルが木枠に梱包されていたのでは、とてもお客さんにアピールできないと考えたのでしょうか、Leynnwood氏は、絵の右手前にオネストジョンの弾頭部分を大きく描き、さらに絵中央手前では、木枠の中から分解された翼を取り出す作業員の姿を描いて、輸送中の荷物の中身はミサイルなんですよ、と強調しています。
木枠梱包のミサイルをそのままモデル化したのは、このキットが最初で最後ではないかと思います(笑)。でも、軍への納入はこんな形で行われるんだ、ということが理解できて、勉強になりました。
一方のパインアイランドは、当時Revellの艦船キットのボックスアートを多く描いていたScott Eidson氏の作品と推定されます。「推定される」というのは、確認できる資料を持ち合わせていなかったためで、彼の他の作品(たとえば、同社のミサイル発射実験艦ノートンサウンド等)の作風を比較検討したうえで、判断しました。
この絵を見て、最初に気がつくことは手前左に大きく描かれたPBM-5マリナーの機体の一部が見える点です。主翼に装備されたフロートに兵士が取り付いて、水上機母艦への収容作業を行っており、その後方には主役のパインアイランド。さらに、その後方には島影(山?)が見えます。南太平洋の島(だと思いますが‥)で、平和な日々を過ごす水上機母艦を見事にイメージしています。
このキットは、キットナンバーから判断すると、当初ミサイル発射実験艦ノートンサウンド(実物は、カリタック級水上機母艦として建造され、のちにミサイル発射実験艦に改装されています)発売後、内容を一部変更してパインアイランドとして発売、さらにパッケージを変えて、ネームシップのカリタックとして売られていました。
今回、ドイツレベル創業50周年記念キットとして、ノートンサウンドが限定発売されるので、興味のある人は購入されたらいかがでしょうか。
ただし、この記念キットはノートンサウンド単体ではなく、誘導ミサイル艦セットとしてルーン(V1のアメリカ版)装備の原子力潜水艦ノーチラスと、ミサイル巡洋艦ボストンがセットになっています。また、日本への入荷時期ですが、当初輸入元のハセガワが7月入荷としていましたが、8月23日現在まだ入荷していないようです。
ちなみに、ノートンサウンドはカリタック級水上母艦の艦尾飛行甲板中央部に発射台を装備し、ミサイルを垂直に発射できるようになっています(キットには、多分バンガードロケットと思われるものが付属)。また、艦首部分には、砲塔を撤去してヘリコプターが離発着できるよう、飛行甲板が装備されています。
※誘導ミサイル艦セットが入荷したので、早速キットを見てみたら、ボックスアートに描かれているはずのノートンサウンドの絵が修正されていて、水上機母艦のカリタックに変身していました。これには、ビックリ!
ところで、オネストジョンとパインアイランドの双方の絵を見て、何か気がつきませんでしたか?
実は、両方とも共通した手法で描かれているのです。
それは、一番手前に機体なり車体なり物体(あるいは人物でもよい)の一部を大きく描き、その後方に主役の絵を描き、さらにその後方に背景を描くという、3種類の異なった距離感をもつ絵をうまく配置することで、立体的な遠近感を出そうとしていることです。この時代のボックスアートでは、比較的多く用いられた手法で、Revell以外のボックスアートでもその例が見られます。
※次回のテーマは「組立図を楽しむ」です。
組立図には情報がテンコ盛り、1958年をしっかり味わいます。