絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

プラモデル野次馬考古学・レッドストーン編No2

2006年08月19日 | プラモデル

2時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ2」

レッドストーンのパッケージ側面の絵に、注目してみましょう。左側の絵は、M56スコーピオンで、右側はYak25です。双方ともRichard Kishady氏の作品で1950年代後半、Revellのボックスアートの多くを手がけています。
ボックスアートというと、今では色彩豊かなリアルな絵が当たり前ですが、Revell初期のものは、簡単なイラスト風のもので、色もせいぜい2~3色程度、イメージとしては日本の駄菓子屋で売られているオモチャのパッケージみたいなものでした。
Revellとしては、ライバル会社との差別化を図る意味もあったと思いますが、Kishady氏の豊富な色彩を用いた作品の採用は、今日のボックスアートの原点になったといっても過言ではないでしょう。


M56のボックスアートは、戦場がもつ乾きをともなった熱気というか、暑さというか、そんな雰囲気が伝わります。背景の色がそう思わせるのでしょうが、それと対照的なのがYak25で、こちらはかなり寒々とした雰囲気で、いかにもソ連(いまでは、なつかしい名称ですね)というイメージをかもし出しています。ふたつの絵を対比させて、寒暖の差をうまく表現しようとしたのでしょうか(チョッと考えすぎかな)。
それから、このYak25などよく資料があったものだと思います。ジェーン年鑑みたいな軍事関連書籍に掲載されていた写真を、参考としたのでしょうか。話しは脱線しますが、当時の「鉄のカーテン(これも死語ですね)」内の兵器というのは、ナゾの部分が多くて、かつてオーロラやリンドバークが出していたヘンテコリンなミグ19みたいなお楽しみができて、好きなんです。兵器のいろいろな情報が交錯した結果、架空の兵器が生まれてしまう。やがて、それがひとり歩きをして、架空の兵器に怯えてしまう国がでてくる。複雑怪奇ですね。


なお、この時期のRevellソ連ものプラモとして、T34、バイソンがありますが、T34は朝鮮戦争等で捕獲した実物があったと思うので、資料的には困らなかったでしょうが、バイソンはどうだったのでしょうか。バイソンが領空侵犯した際、スクランブル発進した米国、または西側諸国の戦闘機が撮影した写真の内、一般公開されたものを資料としたのでしょうか。


最後になりますが、M56、Yak25の絵の下に、世界最大級のコレクションだ、みたいな文言が見えます。当時の同社のカタログによれば、100種類以上のアイテムが掲載されており、Revellの自信・誇りみたいなものが感じられます。

 


プラモデル野次馬考古学を開講します

2006年08月19日 | プラモデル

はじめに

1950年代後半から1960年代前半における米国Revell社のプラモデルは、その表現の豊かさ、精密さ、完成度の高さ、そしてリアルで迫力あるボックスアートなど、どれをとっても当時の第一級品でした。その数ある名品の中から、私がとくに興味をもっているミサイルキットを発掘し、野次馬考古学的見地から考察していきます‥‥といっても、学究的なお堅いものではありません(^〇^)。
発掘品の中に閉じ込められたさまざまな情報を引き出して、プラモデルをとことん楽しみましょう。



今回の発掘品は、『KIT No.H1803 レッドストーン 
1958年製』です。


1時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ」

このボックスアートはJack Leynnwood氏の作。一般的に、地上発射型のミサイルの場合、地上に立った大人の目線で描かれる場合が多いです。とくに、このレッドストーンやV2のように、発射姿勢が地上に対して直立するタイプのものは、地上からの目線で描くことによりミサイルの堂々たる姿、威容、そしてこれからのミッションを成功させようとする決意を強調することができます。
しかし、Leynnwood氏はこうした方法をとらず、あえてミサイルの先端から地上を見下ろす形で描いています。なぜ、こうしたアングルから描こうとしたのでしょうか。おそらく、見下ろすことで地上に展開している地上要員の動きや各種支援車両などを余すところなく描き出し、ミサイル発射直前の緊迫した雰囲気を出そうとしたのではないか、そんな気がします。
一枚の絵に最大限の情報を盛り込んで、お客さんにアピールするなら対象物の真上に目線をもっていき見下ろすのがよい、ということなのでしょう。


このボックスアートには、レッドストーンの製造メーカー名が出ています。Chrysler,そうアメリカ三大自動車メーカーのクライスラーです。当時のミサイル業界は、航空機メーカーを筆頭に電子機器メーカー、そして自動車メーカー、タイヤメーカーまでもが参入して、シェアの拡大に奔走していました。
米ソ対立を背景に、需要が急増したハイテク兵器の最高峰としてのミサイル。わが社はミサイルの開発をしていますといえば、社会的な信用も向上し、売り上げの増大も見込める。しかも、まだミサイル業界の覇権を握った者はいないとなれば、新規参入が相次ぐのも当然の話で、まさにミサイル業界は熾烈な競争に突入した時代でもありました。
ボックスアートを見ていると、こうしたアメリカ国内のてんやわんやの状況がなんとなく映し出されて、面白いです。