絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

エアロビーハイ『地味なる高層の調査員 Part2 』

2008年11月04日 | プラモデル

やじ馬考古学
                                                     




「や、やった!
 画像がちゃんと出たぞ」


「お前、
 最初から真剣にやってりゃ
 よかったんだ。そう思わねえか」




インストの表面です。

ボックスアートの原画が、掲載されています。
背景の山々の印象から、荒涼とした砂漠地帯に作られた秘密のミサイル
発射実験場という雰囲気が漂っています。
実際、砂漠地帯にあるホワイトサンズミサイル実験場を、イメージしている
のかもしれません。

さて、ここでの主役はエアロビーではなく、広告なんですよネ。
全面にドーンと掲載されたプラモの宣伝は、目を引きます。
この広告は、同時期に発売された他のアイテムのインストにも、
同一のものが掲載されており、ミニカタログ的な雰囲気を出しています。
ちょっと都会的で、気の利いた感じがイイですね。
キットの完成写真も、ほどよく掲載されており、モノクロながらにぎやかな
雰囲気で、見ていて楽しくなります。
わざわざカタログを買わなくても、品揃えのよさがわかるようになっているのは、
このインストを担当したデザイナーのセンスがよかったからでしょう。


インストの裏面。
水墨画風に描かれた図が、古きよき時代のレベルの特徴で、現代のインスト
とは一線を画す作画方法となっています。

作業手順書というよりは、イラストを多用したわかりやすい構造解説書的な
雰囲気もあり、無味乾燥な線画とせず、パーツ部分に陰影をつけて、イラストに
リアル感をもたせ、目で見て楽しみながら作業をすすめていくことに、重点が
置かれているのが画期的といえます。
日本のインスト構成にも、少なからず影響を与えているといえます。
アメリカと日本のインスト比較研究も、今後の研究課題です。


パーツは、極力一体化をはかり、数を減らす努力がなされています。
しかも古いキット(1958年製ですぞ!)ながら、パーツの精度は高く
現代でも充分通用する内容です。
付属の人形も、生き生きとした表情で、個性も豊かなので見ていて
楽しいです。この時代のレベルの人形は、非常に素晴らしい出来で
いつも感心するのですが、単にキットのオマケという消極的な扱いでは
なく、人形単体でも充分に楽しめるような配慮がうれしいですね。
とくに、消火スタッフの2体はアイテムとして珍しい存在です。
1/40スケール(他のスケールでもそうですが…)では、唯一の存在です。
宇宙飛行士みたいな雰囲気で、宇宙開発の先駆け的存在のエアロビーを
いっそう引き立てます。

人形の精度の高さは、おそらくは原型師の腕がよかったという点と、
その原型をそっくりそのまま再現できる確かな金型加工技術があった
からなのでしょう。
今から50年も前に、これだけの技術を確立していたレベルに驚嘆せざる
を得ません。


エアロビー本体です。
標準的なパーツ割になっていますが、内容的にはこれで充分です。


デカールは注意書き等を含めて、かなり細かく再現されています。
とくに注意書きは、このサイズになると手書きでやるのは相当きびしいので
デカールで対応できると、大変ありがたいです。ホンマ。


X8(ホンモノ、なおX8はエアロビーの前身)
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

X8は、高層大気観測用ロケットとして開発されたもので、
正真正銘のX機なのですが、これを発展させたものが、
エアロビーとなりました。

ところで‥‥

1958年代後半で、レベル社のミサイルキットはどんなものがあったのでしょうか。
全部で20アイテムで、下記のとおりです。

リリースが、1958年と1959年の2年間に集中しているのが特徴です。
理由を推測しますと、それは1957年10月のスプートニク1号の打ち上げが
最大の要因だと思います。
ソ連(現ロシア)は、人類史上初めての人工衛星を打ち上げることに成功しまし
た。これによって、米ソの宇宙開発競争が激化するとともに、世間の関心も
宇宙空間や、打ち上げられるロケットやミサイル、人工衛星に向けられるように
なりました。

おそらく、レベルはこうした世相を敏感に感じ取って、ミサイルキットを集中的に
リリースしたのではないか、と思います。
純然たる打ち上げロケットのキットでは、一過性のもので終わってしまうかも
しれませんが、軍事用のミサイルであれば、ある程度長期の需要はあると
判断したしたのでしょう。

H-1801  SM-62スナーク(1/81スケール)       1958年リリース
H-1803  レッドストーン(1/110、IRBMタイプ)    1959年
H-1804  ナイキ・ハーキュリーズ(1/40)        1958年
H-1806  IM-99ボマーク(1/47)              同上
H-1808  タロス(1/40)                    同上
H-1810  X-17(1/40)                    同上
H-1812  タクティカルミサイルセット(1/40)     同上
H-1813  テリア(1/40)                   同上
H-1814  エアロビーハイ(1/40)             同上
H-1815  レギュラスⅡ(1/68)               同上
H-1816     ラクロス(1/40)                                同上
H-1817     ホーク(1/40)                                     同上
H-1818     コーポラル(1/40 トランスポーター付)           1959年
H-1819     ジュピターC(1/110)                            同上
H-1820     コーポラル(1/40  トランスポターなし)          1958年
H-1821     オネストジョン(1/48)             1959年
H-1822  アトラス(1/110 ICBMタイプ)         同上
H-1823  ソア(1/110)                      同上
H-1824  ジュピター(1/96)                 同上

これだけのアイテムを、短期間でそろえたシリーズですが、1960年代に入ると
その多くがカタログ落ちをしてしまい、再版もされずに姿を消してしまいました。

では、1960年代の同社のミサイルキットはどうだったのでしょうか。

H-1830    Ⅴ2(1/69)                 1960年
H-1832    マーキュリーレッドストーン       1962年
H-1833    マーキュリーアトラス           1963年 

新作はⅤ2のみです。
1966年まで発売されており、その後1973年から1976年まで再版されて
いました。
さらに、今年(2008年)ドイツレベルから限定生産という形で、リリースされ
ていましたね。

レッドストーンとアトラスは、共にもともと1959年に発売されていたキットでしたが、
レッドストーンは1960年、アトラスは1962年に生産中止になっていました。
しかし、マーキュリー計画の成功により、急きょ弾頭部分をマーキュリーカプセルに
変更して再発売したものが、上記のキットなのです。
これらふたつのキットは、のちのアポロ計画へと続くアメリカの宇宙開発を象徴する
ロケットとして人気があったらしく、レッドストーンは1969年まで、アトラスは1970年
まで発売されていました。

その後、ヒストリーメーカーズシリーズではマーキュリーアトラスが再版され、
レベル・モノグラム合併時の復刻版では、レッドストーン(IRBMタイプ)と
マーキュリーアトラスが再版されました。
なお、アトラスについては1963年以降のリリースは、すべてマーキュリーアトラス
としてであり、当初のICBMタイプとしてのリリースはないようです。

他のアイテムとして、スナーク、タロス、Ⅹ17、テリア、エアロビーハイ、
レギュラスⅡ、オネストジョン、コーポラル(トランスポーターなし)は、
生産終了がもっとも早くて1960年、ボマークが1961年となっています。

その他のキットは、タクティカルミサイルセット、ホーク、ラクロスが1963年までの
生産で、ナイキ・ハーキュリーズ、ジュピターC、ソア、ジュピター、
コーポラル(トランスポーター付)が1965年までで生産を終了しています。

スプートニクの打ち上げで、世間の関心が宇宙に向けられるようになったため、
ブームに便乗した形のレベルではありましたが、一部のキットを除き短命で
終わってしまったようです。

なお、ヒストリーメーカーズで、スナーク、ボマーク、レギュラスⅡ、コーポラル
(トランスポーター付)、ジュピターC、ソア、ジュピター、マーキュリーアトラス、
レベル・モノグラム合併時の復刻版で、レッドストーン(IRBMタイプ)、
ナイキ・ハーキュリーズ、エアロビーハイ、ラクロス、オネストジョン、マーキュリー
アトラス、近年ではドイツレベルがジュピターC、それに今年V2が再版されました。

ミサイルシリーズの超レア物は‥‥

一連のミサイルシリーズのうち、一番のレア物はX17でしょう。
X機シリーズのひとつですが、有名なX1やX15とは異なり無人の
大気圏再突入試験用ロケットで、1956年から1957年にかけて
26回の発射実験が行われました。
ただ、実物がかなりマイナーな存在であったため、モデル化しても
売り上げが低調で、早々にカタログ落ちをしてしまいました。 
 
ロッキードX17(ホンモノ)
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

次回のチラリズム
                                                                                                                  

ジーク・ハイル!

久しぶりだな。
次回は、特別講座として
なぜ、このボックスアートが傑作なのか
解説する。
腰抜けヒムラーにも、よく伝えておけ。




おい、オッサン。
ヒムラー長官には、よく言っとくぜ。
これから外を歩くときは、背後に注意するんだな。