今年最後の講義じゃゾ。
しっかり聴くように。
オイ、そこの!
居眠りこくな。
喝!
パーツを楽しむ
プラモデル野次馬考古学
マーキュリー/アトラス編
「パーツを楽しむ:アトラスがもっとも輝いたとき」
このパーツ構成を見ても、アトラスの金型製作にレベルがなみなみならぬ熱意をもって取り組んだことがわかります。
手すりなどの繊細なパーツ群などは、当時の技術の粋をこらして、極限まで細く作り込まれていますし、このスケール(1/110)ではかなり小さくなる階段のステップ部分にも、ちゃんと滑り止めの模様をモールドするなど、かなり細かい配慮を見せています。
あたかも、レベルの職人魂を見るような思いです。
俺たちのキットを見てくれ。これぐらいのプラモデルなんか、朝飯前さ。しっかり楽しんでくれよ、‥‥そんなメッセージが聞こえてきます。
さらに、このキットはアメリカの「溢れんばかりの喜び」が、オーラのごとく光り輝いています。
ソ連に出遅れたミサイル開発競争の起死回生の満塁ホームランが、このアトラスだったんですから。
このキット「Everything is GO」の初版が発売されたとき、シルバー(ピカピカのメッキものではありません)、オレンジ、ライトグレーの3色のパーツで構成されていました。
なにか、とてもゴージャスな雰囲気です(これも「溢れんばかりの喜び」の反映か)。
パッケージを開けたときに、目に飛び込んでくるカラフルなパーツ群。いかにも、アメリカ的。インパクトは絶大です。視覚効果も十分ですね。
ちなみに、ICBMタイプのものはホワイト、イエロー、グレーの3色のパーツ構成で、6体の人形がついていました(マーキュリー/アトラスには、カプセル内の宇宙飛行士以外、人形は付属していません。いったい、人形はどこに消えたのでしょうか?)。
「Everything is GO」のキットは、その後何回かリリースされていますが、再版のものはパーツがライトグレー一色になっており、例の「溢れんばかりの喜び」も、いささかトーンダウンです。
発射台本体は、建物というか工場プラントのプラモデルを作るイメージです。
キットを見ると、発射台の途方もなく巨大で圧倒的なさまを実感できます。
これまた、繊細なパーツ群。1959年製ながら、キットに古さは感じられません。
細かいマーク類満載のデカールは、作り手に十分な手ごたえを感じさせます。
オマケ:宇宙と音楽の融合、スペースサウンド紹介
「スペースサウンド」とは、何でしょうか。
これは、「宇宙」や「人工衛星」などをテーマとした音楽のことで、1960年代前半に大いに流行しました。
当時普及してきた電子楽器、電気ギター(うわっ、なつかしい言い方)やキーボードなどの独特な電子音を駆使して、宇宙のイメージを作り出していました。
ガガーリンやグレンの有人宇宙飛行成功、さらには次々と打ち上げられる人工衛星など、いままで空想科学の世界でしか語られなかった人類の宇宙進出が一挙に現実味をもったことが、最大の要因です。こうした状況のなか、流行に敏感な音楽業界がこれを見逃すはずはなく、多くのスペースサウンドが、世に送り出されていったのです。
下はアポロ11号の月面着陸成功によって、リリースしたベンチャーズのLP。
もともとは、1960年代前半に発売されていたもの(1964年リリースの「Ventures in Space」)を、ジャケット及び収録曲を変更して再リリースしたもの。
アポロ打ち上げのド迫力な写真が、宇宙開発競争の勝利者アメリカをイメージさせます。
下2枚は、ジャケット内側の写真。
月面の写真が、デカデカと掲載されており、「月面着陸」のインパクトの強さがうかがえます。
アルバムに収録した曲目を見ても、宇宙をイメージさせるものがズラリと並びます。
いままでの宇宙開発の歴史を、年表風にまとめています。
曲の解説など、どこかに吹き飛んでしまい、宇宙開発に力点を置いたデザインなどは、さながら科学雑誌のよう。
下はイギリスのグループ、トーネイドースの「テルスター」シングルジャケット。
レコードジャケットの、このレトロなデザインが時代を感じさせます。
メンバーを見てください。
スーツでビシッと決めた姿は、1960年代前半のバンドの典型的スタイル。
おや?
マッシュルームカットのおにいさんがいますね。
これも1960年代前半を象徴するファッションです。
ところで、「テルスター」とは何でしょう。
これは、1962年7月にアメリカが打ち上げた通信衛星テルスター1号のことで、この成功で、アメリカとヨーロッパのテレビ中継が短時間ですが可能となりました。
衛星中継など、いまではべつにどうってことはないのでしょうが、当時としては驚異的な出来事であったらしく、この「テルスター」という曲が発売されるやいなや、爆発的な売り上げを記録して、1962年12月22日付ビルボード誌第1位にランクされました。
こちらは、スウェーデンのグループ、スプートニクス。
アメリカ製スペースサウンドとは趣が異なる、素朴で澄んだ音色の北欧風味付が素晴らしい。
宇宙服をイメージしたステージ衣装など、話題が多いグループでした。
日本ではどちらかというと、「霧のカレリア」の方が知られていると思います。
この曲はスペースサウンドではないのですが、ロシア民謡風のメロディーが日本人の感覚にマッチして、ヒットしました。
なお、ジャケットにメンバーの写真が載せられていますが、ファッションを見てもわかるように1970年代のものです。
オッ!なつかしい。17cmLPではないですか。
ジャケットの写真が、宇宙時代の幕開けを感じさせます。
ジェミニ計画で、ホワイト宇宙飛行士が船外活動をしたときのものですが、このときの「宇宙遊泳」に世界の注目が集まりました。
「夢のマリナー号」はベンチャーズのオリジナルで、火星探査機マリナー4号の成功を記念して作られたもの。
「アウト・オブ・リミッツ」は、イギリスのグループ、マーケッツの大ヒット曲。1964年2月1日付ビルボード誌第3位にランクされました。イントロが、チョッと不気味です。
ベンチャーズも、うまくカバーしています。
「テルスター」は、上でも紹介しましたがトーネイドースの大ヒット曲で、ベンチャーズと聴き比べると、両者の違いがわかって面白いです。
「ブルースター」は、イギリスのシャドウズの曲で、TVドラマ「メディック」(日本では放映していないと思う)のテーマ曲。
美しいメロディで、スペースサウンドの代表曲。
ベンチャーズのリードギタリスト、ノーキー・エドワーズのボトルネック奏法が光ります。
続く
特報!
世界最大規模を誇る、野次馬大学付属戦争博物館。
ここで、世紀の発見があった!
それは‥‥
館長のオイゲンじゃ!
次回から、ドイツ第三帝国に関する参考文献を紹介するゾ。
第一弾は、あのパウル・カレルじゃゾ。
知らんとは、いわせん。
ワシに続け!
ジーク・ハイル!
ジーク・ハイル!
ジーク・ハイル!
喝!
スミマセン。
次回から、徹底的に脱線します。
皆様に顔向けできません。
‥‥‥‥
次回のチラリズム
あのパウル・カレルが、東部戦線の写真集を出していたのだ。
ドイツ側からみた独ソ戦資料、「バルバロッサ作戦」 「焦土作戦」に続く、もうひとつの文献にスポットライトを当てるゾ。
次回の投稿は、正月休み明けになります。ジーク・ハイル!
プラモデル野次馬考古学