絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

エアロビーハイ 『地味なる高層の調査員』

2008年10月20日 | プラモデル

プラモデルやじ馬考古学
                                                                     


「オイ、エアロビーの画像は
 大丈夫だろうな」


「だ、大丈夫だ。確認した」

……?



馬鹿野郎!テメェーッ!
オレの顔にドロを塗りやがって  」

☆!★!

……というわけで、今回はエアロビーのボックスアートを取り上げます。

この時代のレベルのロゴには、誇らしげに「Authentic Kit」の文字が
書かれています。正真正銘のキット、そんな意味でしょうか。
同社の自信というものが、輝いていますね。

これなど、手前に人物を大きく描くとともに、エアロビーの先端部分も同じように
大きく描き、ちょっと意表を突くようなダイナミックな構図になっているところが
ミソで、Leynnwood先生初期の作品。
先生お得意のLeynnwood式遠近画法
(以下、L式遠近画法と呼びます。なお、これは私が勝手につけた名称です)
の典型的な例ですね。
では、イラストをパーツに分解していくと‥‥

パーツ①

最初に目につくのは、大きめに描かれた耐熱服(あの宇宙人スタイルの装備)姿の
隊員。これに注目しましょう。
エアロビーは1958年のリリースなのですが、この時点ですでにL式遠近画法が
使われています。

L式遠近画法では、ボックスアートの左端または右端に人物(車両などでもよい)を
大きめに描くのが特徴です。

下記の作品2点を見てください。
これらは、両方とも先生の作品ですが、きわめて典型的な例ですね。
ワキ役としての人物や車両が、ボックスアートの端に大きく描かれています。
過去のブログで、何回か指摘したことですが、基本的に遠近3種類の対象物を
描くことで、ボックスアートに奥行きを与え、3Dほどではないにしても、ある程度の
立体感を表現しようとする試みが、この技法なのです。

Leynnwood先生は、1950年代後半から1960年代前半にかけて
この技法をよく使って、作品を描いていました。
もちろん、この技法は先生の専売特許というわけではありません。
同時期、他のアーティストも同じような技法を使っており、ある意味流行だった
のかもしれません。

作例①

手前‥‥除雪車と人物
中間‥‥主役の航空機
遠方‥‥雪山

作例②

手前‥‥右手を上げる人物
中間‥‥主役のヘリコプター
遠方‥‥雪原、雪山

描く対象が異なっても、基本的な構成はエアロビー、作例①、②のように、
まったく同じです。

パーツ②

エアロビーの先端が、ボックスアートから飛び出すようなイメージで描かれており、
見る者に迫ってくるような錯覚を与えるのがGood!
エアロビー自体、ロケットの直径は小さいのですが、構図の取り方が上手なので
大きく堂々たる姿に見えるのは、さすが先生!
人物と比較すると、エアロビーの直径は町中の電柱くらいの太さでしょうか。

パーツ③-1

左後方に直立するエアロビーと背景の山。
この両者の間には、茶色の荒地が広がるのみです。
奥行きを感じさせるために、この荒地には構造物など大きく描かれていません。

パーツ③-2

何だか手書き風ロゴタイプが、古き時代を感じさせます。

背景の空の色が、黄色っぽくてチョット不気味。
核戦争をイメージしているのでしょうか。
それとも、単純にアメリカ西部の砂漠地帯の砂が、風で舞い上がり
アメリカ版「黄砂現象」を引き起こしているのでしょうか。
まあ、エアロビーは核ミサイルではないので、核戦争云々は考えすぎなのかも…
山々を黒っぽく描くことで、黄色い空がよりいっそう印象的に感じられます。

そんなわけで、エアロビーのイラスト構成は……

手前‥‥パーツ①
中間‥‥パーツ②
遠方‥‥パーツ③-1、③-2


当時、レベルのボックスアートにデンと印刷されていた
「SCALED  FROM  OFFICIAL  BLUEPRINTS」

公式の設計図から縮小した……そんな意味でしょうか。
ウチの製品は、いい加減な資料は使っていませんよ。
何と言っても公式の設計図が資料なんですから。
……そんな自信と誇りが、あふれ出ています。
品質を保証するマークとして、スタンプ風のデザインが、なかなかいいですね。

ところで、「公式の設計図」って一体何でしょうか。
ホンモノを製造しているメーカーから、提供された図面ということなのでしょうか。
確かに、これなら正確さ100%でしょう。
でも、軍が関係しているものであるならば、国防総省あたりの承認が必要なの
ではないでしょうか。
米ソの冷戦が激化していた当時、あまりに精密なプラモデルを販売すると、
それが闇ルートでソ連に流れ、軍事情報が流出することになるのではない
でしょうか。
しかしながら、その考えは実に日本的なものなんですね。

アメちゃんたちは、日本のように隠すようなことはせず、俺たちはこんなスゴい
兵器をもっているんだぜ、……と言わんばかりに相手に見せつけて、ビビらせる
のを常套手段としていますから、自軍の兵器をモデル化してくれるのは、大いに
結構と思っているのかもしれません。


ボックスサイドのイラストを見ていきます。
左から、テリア、空母フォレスタル、そしてX3。

テリアは、Leynnwood先生初期の作品。
ミサイルの先端が、イラスト枠から飛び出しているのが、オモロイ。
おそらく、レベルのデザイナーが意外性とか動きを表現しようと、意図的に
手を入れたのでしょう。
同社のアートディレクターだったKishady氏が、デザインしたのかもしれません。


私の世代ですと、戦後のアメリカ空母といえば、やはりフォレスタル
飛行甲板に描かれた「59」のナンバーが、メチャなつかしい。
1950年代後半、世界最大の空母として、ソ連に睨みをきかせていたんですね。
ボックスアートも、その堂々たる姿を生き生きと描いています。
艦載機も時代を反映して、カットラスやスカイウォーリア(ちょっと、小さくて判別
しにくいですが…)など、なつかしい機体ばかりです。

この作品は当時、レベル艦船キットのボックスアートを描いていたEidson氏の
のものです。
この位置から見た空母は、広々とした飛行甲板と艦載機群をシッカリ描くことが
できますから、アングル的には最高。
しかも、この位置から見ることによって、空母のスピード感がより体感できるように
考えて、構図を決めているのには感心します。

キットは、1957年のリリースで、のちにパッケージを替えて、1961年にサラトガ、
1962年にレンジャー、1966年にインディペンデンス、1979年にレンジャーとして
再リリースされました。スケールは1/542です。

かなり前の話ですが、横須賀で空母ミッドウェーを見学したことがありました。
あれもデカかったなー!
飛行甲板など、野球ができるくらいの広さ(実際、乗組員が野球をしていました)で
これが空母なのか……と、いたく感激したものです。
でも、艦内通路はメチャ狭くて、やたらと曲がりくねっていて、まるで迷路のよう。
しかも、壁や天井はいろいろなパイプやケーブルが張り付いており、ゴチャ
ゴチャ感丸出し。ハッチ類は、デカくて、ゴツくて、重いとくれば、何となく、戦う船
の雰囲気が漂ってきます。
広大な飛行甲板と路地裏みたいな艦内通路、この不思議なアンバランスが妙に
印象に残っています。

空母といえば、最近原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀を事実上の母港として
配備される、という報道がありましたが、この艦名を聞いてポラリス潜水艦を
連想したアナタは、多分私と同じ世代か、それ以上です。
子どものころ、ゴム動力で動くポラリス潜水艦のプラモデルを作って、
お風呂や池で遊びませんでしたか?
潜水艦の代表格といえば、やはりジョージ・ワシントン(ヤッパ、話が古い)。
ドイツのUボートは、現代と違ってマイナーでした。

X3は、その特異なスタイルで有名です。

1957年のリリースで、レベルのアートディレクターをしていたKishady氏の作品。
このアングルからだと、X3の剣のような長く尖った機首の様子がよくわかります。
どのボックスアートでもそうですが、アーティストは対象物の特徴を描き出すために
どのアングルから見たら一番良いのか、つねに考えています。
その結果、Kishady氏は機体前方右側から描くことを選択しました。
このアングルからですと、異様ともいえる長大な機首がよくわかります。
実機の特徴をとらえるには、きわめてオーソドックスな方法です。

ところで……


X3の、もうひとつのボックスアートといえば、1969年にリリースされた
Leynnwood先生の作品があります。
こちらは、X3の機体後方斜め下から見上げる形で、同機の特徴を出そうとして
います。

飛行するX3と追跡機の機体の色が、背景の色と絶妙なコントラストを織りなして
きわめて印象的に仕上げられています。
しかも、X3の機体を包むように白のぼかしを入れることにより、驚くべきスピード感
を体感させてくれます。この技巧は、やはり先生ならではのもの…といえますね。

それから、X3の主翼の前縁を見てください。
赤くなっていますよね。
これは、大気との摩擦で焼けているところを表現しています。
実際に、こんなことがあるのかわかりませんが、X3のスピード感をどう表現したら
よいのか、いろいろと知恵を絞っているのがわかります。

グンゼレベル時代に、日本でリリースされたので、作った人もいるでしょう。
白のモールドが印象的で、他にD558スカイロケットもありましたね。
この手の実験機なるものは、日本のメーカーではなかなかモデル化しにくい
ものなので、レベルのキットは貴重です。

ほかのX3のキットといえば、リンドバーグのものが知られています。
スケールは1/48で、レベルのものよりひとまわり大きいです(ちなみに、
レベルは1/65)。しかも、このキットはジェットエンジンが内臓されており、
リアル感を高めていました。

次回のチラリズム
                                                                                                                   

                

オイ、楽しんでくれたか。
次回は、インストとパーツをやる。
しっかり読まないと、土に埋めたるで。

高層大気の探査で活躍したエアロビー。
レベルのミサイルシリーズでは、探査ロケットでありながら
ミサイルと同格の扱いです。
アメリカでの、評価の高さがわかりますネ。