絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

ラクロス編「ボックスアートを楽しむ:陸モノの香り」

2008年05月23日 | プラモデル

プラモデル野次馬考古学                                   

                                                  



諸君!
オイゲン教授じゃ。

総統暗殺未遂事件に巻き込まれて、エライ目にあったゾ!
爆発があった際、飛んできた豆腐のかどで頭部を負傷し、
入院していたんじゃ。

また、ビシバシいくゾ!
喝ッ!


ラクロスミサイル with モービルランチャー 編  1/40スケール 1958年リリース

『ボックスアートに漂う陸モノの香り』


ここは、米軍の演習場なのでしょうか。
それとも、西ヨーロッパの戦場なのでしょうか。
ボックスアート右上にある、レベル社のトレードマークでチョットわかりにくいですが、
何かモクモクと爆煙が立ち上がっているのが見えます。
もしかしたら、原子雲なのでしょうか。
空は黄色く、何か異様な雰囲気です。米ソ全面核戦争の前兆なのでしょうか。
次々と発射されるラクロスミサイル。核弾頭装備なのでしょうか。
だとすれば、発射後兵士達はただちに待避しなければなりません。
なぜなら、ラクロスの射程はせいぜい20km程度ですから、放射能障害を避ける
ためにも、すぐに荷物をたたんで撤収しなければならないのです。

……とまあ、勝手に想像をふくらませていた訳ですが、冷戦という時代背景があり
ますから、ボックアートも何か核戦争をイメージさせるものとなっています。
この時代(1950年代後半から1960年代)のミサイルもののボックスアートは、
核戦争をイメージさせるものが多く、ミサイル=核戦争というのがひとつのパターン
になっていました。
ボックスアートは、時代を反映します。
とくにアメリカにおいて、それが顕著だったといえるでしょう。

それから、このボックスアートはある意味で、リアリズムの追求がなされています。
それは何かというと、トラックの後輪がそうなんです。地面のデコボコでタイヤが
上下に動いた状態を、それとなく表現してあります。よく見ないと判別しにくい部分
ですが、このイラストレーターは兵器のメカニズムにかなりのこだわりを持っていて
イラストレーター自らが、楽しみながら絵を描いている、そんな感じがします。
では、このイラストレーターは誰でしょうか。
作風からすると、Leynnwood氏かな?初期の彼の作品は、後の作品と作風が違い
ちょっとレトロっぽい雰囲気が出ています。その雰囲気が似ているので、もしかしたら
……と思っています。後ほど取り上げますが、同時期の作品と見比べてくださいネ。

もうひとりの候補は、Kishady氏。
下のボックスアートをご覧ください。これは、同時期に発売されたM-35のもので
彼の作品ですが、トラックの後輪がラクロスと同じ描き方になっており、もしかすると…?
でも、作風がラクロスとチョッと違うような感じもします。
軍用トラックというと、地味なイメージがあるのでボックスアートに動きを出すために
あえてこのような描き方をしたのかな、とも思いますがどうなんでしょうか。

ところで、この絵は不思議な奥行きが感じられます。

絵の右側に描かれた海岸と海を見てください。
何となく、閑散とした雰囲気を感じませんか。
沖に停泊する艦船は、海上を埋め尽くすほどの大船団……ではありません。
海岸目がけて進む上陸用舟艇は、かつて硫黄島や沖縄で見られたようなアリの大群をイメージさせる……ものではありません。
海岸は上陸した兵士や陸揚げされた物資で、ごった返している……わけではありません。
そこには、おそろしく閑散とした世界が広がっています。
しかし、この閑散とした状態こそが、この絵に不思議な奥行きを与える大きな要因となっているのです。




…ところで、下の写真をご覧ください。
アレッ!と思いませんか。
野次馬考古学の今世紀最大の発見(笑)です!
ラクロスのアングルといい、地面の状況といい、背景の山々といい、ボックスアート
そのものだとは思いませんか。
おそらくイラストレーターは、この写真を参考に描いたのではないか、そんな気がします。ただ、根拠はありません。ボックスアートと構図が類似しているというだけで、これはもう私の独断と偏見の世界ですから……
この写真の撮影時期が1958年以前だと特定できれば(キットのリリースは1958年なので)、私の仮説はかなり有力となるでしょう。


出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
        MGM-18ラクロス



パッケージ側面のボックスアートを、見ていきましょう。
左からF104,タロス、砕氷艦イーストウインドとなります。

F-104は、1957年のリリースでKishady氏の作品。
『最後の有人戦闘機(わっ、なつかしい言葉!)』といわれ、そのミサイルのような斬新なデザインで衝撃的デビューを飾ったF104。
当時、米空軍機といえばジュラルミン地むき出しのピカピカ機体が全盛期の時代で、ピカピカに輝くF104など、とても新鮮な印象をもったものでした。
ボックスアートは、当然のことながらジュラルミン地の機体を描いているわけですが、機体各部分で微妙に異なる金属の質感をうまく出しながら、あたかも鏡のように輝くF104を、そのまま絵の中に凝縮させた彼の力量は、大したものです。

このキットは、胴体のパーツ割の方法が少し変わっていました。
一般的には、胴体を左右に分割するところを、このキットの場合上下に分割していました。しかも、胴体上部は主翼と一体成形という変則的なもので、数あるF104のキットの中でも、このようなパーツ割はあまり見たことがありません。どうして、このような方法をとったのでしょうか。
おそらくレベル社のスタッフは、下反角がついた主翼を正確に組み立てるには、このやり方がベストと判断したのでしょう。
当時のF104のキットは、左右の主翼を各々胴体に差し込んで組み立てる方法が多かったのですが、これだと接着剤が固まるまで主翼をしっかり固定しておかないと、主翼の自重でダランと下がってしまい、みっともない姿になってしまいます。
これを避けるため、あえて胴体を上下に分割し、胴体上部と主翼は一体成形にしたのでしょう。
作りやすさを追求した結果、レベル社の解答はこのようなものとなったわけです。  


タロスは、1958年のリリースで、Leynnwood氏の作品。
ボックスアートは、タロス本体以外はカットしてあるので、イマイチわかりにくいのですが、ミサイル発射実験場における簡易ランチャー(鉄パイプを組み合わせた簡単な脚部分と、上下に可動するランチャー)に取り付けられたタロスをモデル化したので、パッと見た目地対空ミサイルみたいな印象です。
ボックアートは地上要員の最終チェックを受け、いよいよ発射という緊迫した雰囲気をうまく描きだしています。
後方には、ものすごい炎を吹き出して、一直線に飛んでいくタロスが見えます。
あっ、地上要員が待避しています。
まもなく発射です。
5…4…3…2…1……
そんなシーンが目に浮かびます。

ところで、この絵の作風ですがラクロスと比べて、どうでしょうか。
う~ん、ヤッパ、ラクロスを描いたのはLeynnwood氏かな?

このキットには、クルーが3体付属していますが、その中の1体は大柄でちょっと太めな海軍士官を表現しています。
以前、レッドストーンのところでも書いたのですが、この時代のレベル社は、人形にもしっかりとした個性を持たせており、没個性の人形群が多い日本とは一線を画した存在です。


最後は、砕氷艦イーストウインドで1957年のリリース。Eidson氏の作品。

このキットは、砕氷艦という地味なアイテムながら、けっこう息が長くて1960年に同型艦のバートンアイランドとして再リリースされ、1968年にイーストウインド、1972年と1979年にバートンアイランド、さらにレベル社とモノグラム社が合併した際、1997年(…だったと思う)復刻版としてイーストウインドがリリースされています。
この復刻版は、1957年版を再現したもので、寒々とした北極海をイメージさせるボックスアートが秀逸でした。
このボックスアートでは、小さすぎてわからないのですが、じつはイーストウインド艦首付近の氷上に歩くシロクマが描いてあり、ここは北極ですよ……という、作者のメッセージが添えられているのが楽しいです。

それから、バートンアイランドは日本の南極観測船「宗谷」と大いに関係があります。1958年、宗谷が南極の氷海に閉じこめられたとき、これを救出したのがバートンアイランドだったのです。まさに、救いの女神ですね。
宗谷は南極観測船とはいうものの、当時の外国南極観測船と比較して砕氷能力が劣っており、こんな事態になってしまうこともあったようです(ソ連船に救出されたこともありました)。
もっとも、当初から南極観測船として設計されたわけではないので、責めるのは酷というものですが……

次回のチラリズム
                                                                                                                
                                                 
                                              
                                                                  

なつかしいキットが、掲載されていますね。
インストを見ていると、今でも売っているような錯覚を覚えます。
でも、50年近く前の話なんですよね。




ジーク・ハイル!                                                                                                                                                                                                                                                                    
         私を覚えててくれたかね。
 野次馬考古学の講座が再開されて、
 我が総統は、とてもお喜びだ。
 ヒムラー長官も歓喜のあまり、階段から転げ落ちてしまったゾ。

  次回は、ラクロスのインストを紹介する。
 幸運を祈る』