絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

レッドストーン編No6「組立図を楽しむ3:作るのは簡単、しかし夢は際限なく広がる」

2006年08月31日 | プラモデル

6時限目:テーマ「組立図を楽しむ3:作るのは簡単、しかし夢は際限なく広がる」


組立図最上部には、「重要!最初にお読み下さい」の注意事項があり、接着剤を目や衣服につけないでください‥という文言が書かれています。
当たり前のことで、どうってことないと思われるかもしれませんが、1958年当時、わざわざこんなことが書かれているということは、すでに接着剤が目に入ったという事故が何件もあったからなのでしょう。
しかも、その事故の前提条件としては、プラモデル用接着剤がすでに一般に普及しており、事前に注意を促がしておかないと、事故が多発するおそれがあったのでしょう。
「このキットは、スチレンプラスチック製なので、レベル タイプSセメントをお使いください」と、しっかり自社製品の宣伝もしています(笑)。

また、もし塗装したい場合は「レベル ペイントセット エナメルカラーをお使いください」という文章もあり、この時すでに基本的な色を揃えたプラモデル用塗料も、一般に普及していたことがわかります。
エナメル系塗料というと、プラモの世界では、ハンブロールやパクトラが有名ですが、レベルでも自社製品を出していたのですね(商売がうまい)。
日本では、古いところでマルザン、ピラー、グンゼレベル時代のレベルカラー等々、いろいろな銘柄がありましたが、そのほとんどはラッカー系塗料
が中心で、エナメル系塗料は、タミヤがパクトラと提携して販売したパクトラ/タミヤが最初ではないか、と思います。
私もパクトラ/タミヤの塗料を使ってみて、その良さがわかりました。
筆塗りの場合でも、塗料の伸びがよく、使いやすかったですね。エナメル系塗料だと、乾きが遅いといわれていましが、そんな印象はなかったです。
今では水性塗料もあり、かなり便利になっていますね。

塗料というと、いまではつやあり、つや消し、半つや消しの3タイプがありますが、1958年当時の塗料はどうだったのでしょう。多分、つやありの一種類だけだったのではないでしょうか。
日本でも、レベルカラーで半つや消し塗料を販売するようになってから、だんだんとつやの状態が3タイプに分けられるようになってきており、やはりレベルカラー以前はつやありだけでした。
そういえば、レベルカラーのフラットベースというつや消し用の液体は、けっこう便利でした。塗料と混ぜることによって、つやの状態を調整できるわけです。
では、フラットベースが販売される前は、どのようにしてつやの状態を調整していたのでしょうか。この方法を知っていたら、年がバレてしまいそうですが(笑)。
じつは、シッカロール(乳児の汗疹防止のための白い粉)を混ぜるのです。混ぜる量を加減することで、半つや消し、つや消しにしたわけです。


次に、キットの組立について見ていきます。
図についていえば、黒インクの濃淡をうまく生かした手法で、チョッとした西洋画風水墨画イメージ(ナンノコッチャ!)で描かれています。確かオーロラでも同様の作風で描かれた組立図が多数あり、もしかしたら同じイラストレーターの作かな、と思ったりしてしまいます。
作画はしっかりとしており、英語が読めなくてもちゃんと作ることができます。これは、きわめて重要なことで、誰が作っても同じように完成させるためのさまざまな情報を確実に伝達するには、視覚に訴えるのがイチバン良いという見本みたいなものです。
しかも、この水墨画風の絵は見方を変えればモノクロ写真的なイメージもあり、組立が進むにつれて、完成品はこんな形になりますよ、と作り手にワクワクするような感動を与えることに成功しています。
単なる線画ではないところに、レベルの組立図の楽しさが隠されているのです。


次回のテーマは、「パーツを楽しむ」です。

付属の人形には、思わぬ秘密があります。それは、何か‥
お楽しみに。




レッドストーン編No5「組立図を楽しむ2:レベル旧本社周辺の画像付」

2006年08月29日 | プラモデル

5時限目:テーマ「組立図を楽しむ2」


前回に引き続き、レベルの広告内容を考察していきます。
アイテムの種類としては、大別して‥‥(ただし、鉄道模型関係は除きます)

ロケット関係(ミサイル関係とは、まだ明確に区別されていないようですが)
                                                
ミサイル関係(軍用車両関係と重複する部分もあり)

航空機関係

船舶関係

軍用車両関係(ミサイル関係と重複する部分もあり)

帆船関係

自動車関係

‥‥と、1958年の時点で、すでに陸・海・空各ジャンルが、ある程度確立していたことが
わかります。しかし、その中でもロケット・ミサイルものは確立してからまだ日も浅く、他のジャンルと扱いが違っていたことが、広告の文言からもうかがえます。
広告の中で、各ジャンルごとにいろいろと能書きが書かれているのですが、たとえば「世界最大級の‥」だとか、「本物ソックリの‥」だとか、「完全なコレクション」だとか、宣伝文句テンコ盛りの状態なのですが、ミサイル・ロケットものだけに使用されて、他のジャンルにはまったく使用されていない言葉があります。
その言葉は、何だと思いますか。それは「いますぐに、コレクションをはじめよう」なんです。他のジャンルでは、こんな表現はありません。

「12を超える、本物ソックリのロケット時代のホビーキット。いますぐに、コレクションをはじめよう!」‥こんな調子です。
スプートニクショックの結果、突然
ミサイル・ロケット時代に突入したアメリカの状況と、時流に何とかうまく乗って、商売を拡大したいという企業の姿がよくわかります(どこの企業でも、同じですネ)。
事実、レベルは1958年から1959年にかけて、20数種類のミサイル・ロケットキットを精力的に開発します。その開発ペースたるや凄いもので、一気にやりとげた、そんな感じです。また、キットの品質もわずか1年の間で、驚異的に向上しました。1958年開発のレッドストーンと、1959年開発のアトラスでは、その内容の差にビックリします。アトラスは、あとで取り上げる予定ですが、数あるミサイルキットの中でも最高傑作の出来で、発射台まで精密に再現してあります。
ただし、ミサイル・ロケットキットの開発も1959年あたりがピークで、その後はストップしてしまいました。ナゼかというと、売れ筋にならなかったからです。WW2航空機やAFVものと違って、当時のミサイルものはコンスタントに売れるアイテムではなく、どちらかというとブームに乗ったキワモノ的要素が強かったから、といえそうです。
その後のマーキュリー、ジェミニ、アポロ計画の成功により、関連商品が発売されることはあっても、1958~59年のようにミサイルキットが大量に開発・発売されることはありませんでした。


最後に、前から少し気になっていたのですが、レベル本社所在地(当時)は
4223 Glencoe Avenue Venice California となっており、ナゼ米国にVenice
(イタリアのベニスと同じ綴り)があるのかな、と思っていました。
調べたところ、1905年、イタリア出身の不動産屋が、この地をベニス風のリゾート地として開発したのがそもそもの発端で、街中のあちこちに運河を設けてリッチな雰囲気をかもし出していたそうです。
位置的には、ロサンゼルス郊外にあり、サンタモニカの隣町になります。
観光地としてはベニスビーチが有名で、観光ガイドにも名前が載っています。
また、大規模なヨットハーバーがあり、けっこうお金持ちが多いところでもあります(?)。写真は上記レベル所在地住所をグーグルアースで検索したもので、写真中央部に企業らしき建物(レベル旧本社?)が見えます。レベルはモノグラムと合併後は、本社を移転させているので、現在この地で稼働しているのかどうかは不明です。
写真左上には、ヨットハーバーがあり、さらにその後ろには太平洋の海が見えます。

ちなみに、この地へ行くには、日本からヒコーキに乗ってロサンゼルス空港まで行き、そこからクルマで405フリーウェイ(サンディエゴフリーウェイ)に乗って、走ること30分。ベニスブルーバードで降りれば、そこがベニス(‥らしい。私は行ったことがないので)。


次回は、またまた「組立図を楽しむ3」です。
 

※ドイツレベル創業50周年記念キットが、いよいよ入荷します。
 ジュピターCを購入したら、ここで取り上げます。お楽しみにネ。


プラモデル野次馬考古学・レッドストーン編No4

2006年08月22日 | プラモデル

4時限目:テ-マ「組立図を楽しむ」


この組立図は、まさに情報の宝庫です。
紙面の7割を占める自社製品の広告を見ることによって、当時のRevellがどんなアイテムを揃えていたのかを知ることができますし、1958年という時代を知る貴重な資料にもなります。
最初に、この1958年のアメリカは一体どんな状況であったのかを、簡単に書いてみたいと思います。
それは、「スプートニクショック」につきます。前年の1957年10月、ソ連は人類史上初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功しました。これは、アメリカにとって、大ショックでした。なぜなら、科学技術はアメリカがイチバン、という自尊心が大きく崩れた瞬間だったからです。
しかも、ソ連は当時すでに核兵器を持っており、それをミサイルに搭載して撃ち込んでくる,
という恐怖感でいっぱいだったのです。
1958年1月、陸軍のレッドストーンミサイルを改良したジュピターCでエクスプローラー1号の打ち上げに成功するも、ソ連にはまだまだ大きく水をあけられていた状態でした。
どちらにしても、スプートニクの成功によってミサイル(定義としては、ロケットも含みます)時代に突入したのは間違いなく、掲載されているアイテムも時代を反映して、ミサイルものが目につきます。

どんなアイテムが掲載されていたのか、というと
ジャンル別に‥‥
※価格は当時のもの

○ロケット関係 XSL-01 有人宇宙船   1.98ドル

○ミサイル関係スナーク  SM62      89セント
                        ボマーク I.M.99      1.49ドル
          タロス                               79セント  
                        X-17               79セント
                       戦術ミサイルセット(リトルジョン   
             &ダート)           98セント    
                       エアロビーハイ        98セント      
                                                
○航空機関係  スイス航空 DC-7     98セント    
          フォッカーDR-1(1/28)
  1.98ドル      
          スパッド(1/28)
        1.98ドル      
          KC-135           98セント     
          B58 ハスラー        98セント     
          ロッキードWV-2       98セント     
          マーチンPBM-5マリナー 98セント     
                                              
○艦船関係   空母エセックス        2.49ドル      
          戦艦アリゾナ         1.98ドル      
          駆逐艦 フォレスト シャーマン1.69ドル       
          駆逐艦 バックレイー    1.69ドル      
          ブラジル            1.98ドル      

○軍用車両関係M4シャーマン        1.49ドル      
          18トン高速トラクター     .98ドル                                                                                                  
          T34                1.29ドル      
          M2 155ミリカノン砲    1.29ドル      

○帆船関係  カッターイーグル       2.98ドル      
         バウンティ             2.98ドル      
         サンタ マリア         2.98ドル      
         フライング クラウド      2.98ドル      

○自動車関係キャデラック ブラハム    1.49ドル      
         コンチネンタル マークⅡ      .98ドル       
         リンカーン フューチュラ    1.29ドル       
         ポンティアック クラブ デ メール1.29ドル      
         フォード カントリースクワイアー 1.49ドル                                           
                                             
以上32種類で、他にHOゲージの鉄道模型があります。
Revellが、電動の鉄道模型を手がけていたのは、チョッと意外です。
組立図の広告で、鉄道模型が紹介されているのは、この時代(1950年代後半から60年代前半くらい?)だけのようなので、その後は販売を中止したのかもしれません。
アイテムとしては‥‥

 トレインセット3種
○ディーゼル機関車+貨車3両                14.95ドル                    

○ディーゼル機関車(上記機関車とは異なる)+貨車3両(上記貨車とは異なる)
                                   19.95ドル 
            
○蒸気機関車+貨車3両(上記2種とは異なる)       29.95ドル
この蒸気機関車は、煙突から煙を出し、機関車特有のシュッ、シュッという音を出すらしい。どんなカラクリか、見たいものです。

○貨車3種(トレインセットの貨車とは異なる)        2.98ドル2種
                                    3.49ドル1種

○鉄道関連施設セット  鉄道監視塔、ポイント小屋、給水塔など、他人形6体
                                    2.49ドル

○農家セット        農家、ニワトリ小屋など、他人形、家畜付
                                    1.98ドル

○警報機付踏切                          5.95ドル 


プラモデル関連の広告では、スターブラストモービルがあります。
これは放射状に伸びたアームの先に、航空機のプラモを取り付けて飾るもので、全部で14本のアームがあります。
スターブラスト(星が爆発したような放射状の、というイメージなのかな)とは、なかなかいいネーミングを考えたものですね。「たった1.98ドルだから、買おう」みたいな文言が書かれています。
このモービルに取り付けられたプラモを見ると、上記の広告に記載されていたもの以外に、どのような航空機キットを出していたのかがわかります。

A4スカイホーク、F101ブードー、B57、B47,R3Yトレードウインド、
F100、F9Fクーガー、バイソン、F89,F102、F84F、他3種は写真が不鮮明のため不詳。


他、プラモと鉄道模型のカタログの広告も出ていました。
プラモのカタログは、「100種類を超えるキットがフルカラーで掲載されているので、すぐに手に入れよう。10セントですよ」などと、購入を勧める内容。
わざわざ「100種類を超えるキット」と謳っているということは、この時代常時100種類取り揃えていること自体、かなり凄いことだったのでしょうね。
ちなみに、ライバル会社のモノグラム、その他リンドバーグ、オーロラなどは、当時どれくらいのアイテム数を出していたのでしょうか。


なお、鉄道模型のカタログも10セントでした。


次回も、組立図に掲載された広告について、考察していきます。
広告を見ながら、1958年を楽しみましょう。




                   


プラモデル野次馬考古学・レッドストーン編No3

2006年08月21日 | プラモデル

3時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ3」

さて、もう一方の側面ボックスアートを見ていきましょう。
左の絵が、オネストジョンwithモービルキャリア、右がカリタック級水上機母艦の3番艦パインアイランド(日本風にいうなら、松島、それともパイナップルの島という意味ですかネ、確かフロリダにある島のことだと思います)です。

オネストジョンは、Jack Leynnwood氏の作。このキットはミサイルものでありながら、かなり異色のプラモで、オネストジョン本体が分解され、木枠で梱包された状態をモデル化しています。しかも、これらを運搬する車両は、軍用車ではなく民間のトレーラー。おそらく、製造メーカーの工場で完成したオネストジョンを、トレーラーに載せて軍へ納入する際の輸送風景を、そのままモデル化したのでしょう(キット自体は、新規で製作したものではなく、もともとRevellが発売していたKenworthのトレーラーを一部手直ししたようです)。
主役のミサイルが木枠に梱包されていたのでは、とてもお客さんにアピールできないと考えたのでしょうか、Leynnwood氏は、絵の右手前にオネストジョンの弾頭部分を大きく描き、さらに絵中央手前では、木枠の中から分解された翼を取り出す作業員の姿を描いて、輸送中の荷物の中身はミサイルなんですよ、と強調しています。
木枠梱包のミサイルをそのままモデル化したのは、このキットが最初で最後ではないかと思います(笑)。でも、軍への納入はこんな形で行われるんだ、ということが理解できて、勉強になりました。    

一方のパインアイランドは、当時Revellの艦船キットのボックスアートを多く描いていたScott Eidson氏の作品と推定されます。「推定される」というのは、確認できる資料を持ち合わせていなかったためで、彼の他の作品(たとえば、同社のミサイル発射実験艦ノートンサウンド等)の作風を比較検討したうえで、判断しました。
この絵を見て、最初に気がつくことは手前左に大きく描かれたPBM-5マリナーの機体の一部が見える点です。主翼に装備されたフロートに兵士が取り付いて、水上機母艦への収容作業を行っており、その後方には主役のパインアイランド。さらに、その後方には島影(山?)が見えます。南太平洋の島(だと思いますが‥)で、平和な日々を過ごす水上機母艦を見事にイメージしています。
このキットは、キットナンバーから判断すると、当初ミサイル発射実験艦ノートンサウンド(実物は、カリタック級水上機母艦として建造され、のちにミサイル発射実験艦に改装されています)発売後、内容を一部変更してパインアイランドとして発売、さらにパッケージを変えて、ネームシップのカリタックとして売られていました。
今回、ドイツレベル創業50周年記念キットとして、ノートンサウンドが限定発売されるので、興味のある人は購入されたらいかがでしょうか。
ただし、この記念キットはノートンサウンド単体ではなく、誘導ミサイル艦セットとしてルーン(V1のアメリカ版)装備の原子力潜水艦ノーチラスと、ミサイル巡洋艦ボストンがセットになっています。また、日本への入荷時期ですが、当初輸入元のハセガワが7月入荷としていましたが、8月23日現在まだ入荷していないようです。
ちなみに、ノートンサウンドはカリタック級水上母艦の艦尾飛行甲板中央部に発射台を装備し、ミサイルを垂直に発射できるようになっています(キットには、多分バンガードロケットと思われるものが付属)。また、艦首部分には、砲塔を撤去してヘリコプターが離発着できるよう、飛行甲板が装備されています。
※誘導ミサイル艦セットが入荷したので、早速キットを見てみたら、ボックスアートに描かれているはずのノートンサウンドの絵が修正されていて、水上機母艦のカリタックに変身していました。これには、ビックリ!  


ところで、オネストジョンとパインアイランドの双方の絵を見て、何か気がつきませんでしたか?
実は、両方とも共通した手法で描かれているのです。
それは、一番手前に機体なり車体なり物体(あるいは人物でもよい)の一部を大きく描き、その後方に主役の絵を描き、さらにその後方に背景を描くという、3種類の異なった距離感をもつ絵をうまく配置することで、立体的な遠近感を出そうとしていることです。この時代のボックスアートでは、比較的多く用いられた手法で、Revell以外のボックスアートでもその例が見られます。


※次回のテーマは「組立図を楽しむ」です。
  組立図には情報がテンコ盛り、1958年をしっかり味わいます。


プラモデル野次馬考古学・レッドストーン編No2

2006年08月19日 | プラモデル

2時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ2」

レッドストーンのパッケージ側面の絵に、注目してみましょう。左側の絵は、M56スコーピオンで、右側はYak25です。双方ともRichard Kishady氏の作品で1950年代後半、Revellのボックスアートの多くを手がけています。
ボックスアートというと、今では色彩豊かなリアルな絵が当たり前ですが、Revell初期のものは、簡単なイラスト風のもので、色もせいぜい2~3色程度、イメージとしては日本の駄菓子屋で売られているオモチャのパッケージみたいなものでした。
Revellとしては、ライバル会社との差別化を図る意味もあったと思いますが、Kishady氏の豊富な色彩を用いた作品の採用は、今日のボックスアートの原点になったといっても過言ではないでしょう。


M56のボックスアートは、戦場がもつ乾きをともなった熱気というか、暑さというか、そんな雰囲気が伝わります。背景の色がそう思わせるのでしょうが、それと対照的なのがYak25で、こちらはかなり寒々とした雰囲気で、いかにもソ連(いまでは、なつかしい名称ですね)というイメージをかもし出しています。ふたつの絵を対比させて、寒暖の差をうまく表現しようとしたのでしょうか(チョッと考えすぎかな)。
それから、このYak25などよく資料があったものだと思います。ジェーン年鑑みたいな軍事関連書籍に掲載されていた写真を、参考としたのでしょうか。話しは脱線しますが、当時の「鉄のカーテン(これも死語ですね)」内の兵器というのは、ナゾの部分が多くて、かつてオーロラやリンドバークが出していたヘンテコリンなミグ19みたいなお楽しみができて、好きなんです。兵器のいろいろな情報が交錯した結果、架空の兵器が生まれてしまう。やがて、それがひとり歩きをして、架空の兵器に怯えてしまう国がでてくる。複雑怪奇ですね。


なお、この時期のRevellソ連ものプラモとして、T34、バイソンがありますが、T34は朝鮮戦争等で捕獲した実物があったと思うので、資料的には困らなかったでしょうが、バイソンはどうだったのでしょうか。バイソンが領空侵犯した際、スクランブル発進した米国、または西側諸国の戦闘機が撮影した写真の内、一般公開されたものを資料としたのでしょうか。


最後になりますが、M56、Yak25の絵の下に、世界最大級のコレクションだ、みたいな文言が見えます。当時の同社のカタログによれば、100種類以上のアイテムが掲載されており、Revellの自信・誇りみたいなものが感じられます。

 


プラモデル野次馬考古学を開講します

2006年08月19日 | プラモデル

はじめに

1950年代後半から1960年代前半における米国Revell社のプラモデルは、その表現の豊かさ、精密さ、完成度の高さ、そしてリアルで迫力あるボックスアートなど、どれをとっても当時の第一級品でした。その数ある名品の中から、私がとくに興味をもっているミサイルキットを発掘し、野次馬考古学的見地から考察していきます‥‥といっても、学究的なお堅いものではありません(^〇^)。
発掘品の中に閉じ込められたさまざまな情報を引き出して、プラモデルをとことん楽しみましょう。



今回の発掘品は、『KIT No.H1803 レッドストーン 
1958年製』です。


1時限目:テーマ「ボックスアートを楽しむ」

このボックスアートはJack Leynnwood氏の作。一般的に、地上発射型のミサイルの場合、地上に立った大人の目線で描かれる場合が多いです。とくに、このレッドストーンやV2のように、発射姿勢が地上に対して直立するタイプのものは、地上からの目線で描くことによりミサイルの堂々たる姿、威容、そしてこれからのミッションを成功させようとする決意を強調することができます。
しかし、Leynnwood氏はこうした方法をとらず、あえてミサイルの先端から地上を見下ろす形で描いています。なぜ、こうしたアングルから描こうとしたのでしょうか。おそらく、見下ろすことで地上に展開している地上要員の動きや各種支援車両などを余すところなく描き出し、ミサイル発射直前の緊迫した雰囲気を出そうとしたのではないか、そんな気がします。
一枚の絵に最大限の情報を盛り込んで、お客さんにアピールするなら対象物の真上に目線をもっていき見下ろすのがよい、ということなのでしょう。


このボックスアートには、レッドストーンの製造メーカー名が出ています。Chrysler,そうアメリカ三大自動車メーカーのクライスラーです。当時のミサイル業界は、航空機メーカーを筆頭に電子機器メーカー、そして自動車メーカー、タイヤメーカーまでもが参入して、シェアの拡大に奔走していました。
米ソ対立を背景に、需要が急増したハイテク兵器の最高峰としてのミサイル。わが社はミサイルの開発をしていますといえば、社会的な信用も向上し、売り上げの増大も見込める。しかも、まだミサイル業界の覇権を握った者はいないとなれば、新規参入が相次ぐのも当然の話で、まさにミサイル業界は熾烈な競争に突入した時代でもありました。
ボックスアートを見ていると、こうしたアメリカ国内のてんやわんやの状況がなんとなく映し出されて、面白いです。