『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

全国の行きたい本屋さん!

2018-01-17 11:47:01 | Shop & Caf


『本の時間を届けます』(2016年)篠賀典子 芹澤健介 北條一浩著 洋泉社

今日の一冊はコチラ。ゆくゆくは、ブックカフェをやりたい私。
今はまず、とにかく児童文学の魅力を伝えたい!と伝えることに専念したいけれど、それがある程度広まって来たら、やはり手にとってゆったり読める空間がやっぱりほしい。

でもでも、書店業界未経験の一主婦がブックカフェをやるだなんて、無謀すぎない?
そんな声が聞こえてきそうです。いや、やる勇気のない言い訳に、そんな声発しているのは、実は自分自身かもしれませんが

いや、これができちゃうんだな~。特に女性ならば!そんな気にさせてくれて、励ましてくれたのがこちらの『本の時間を届けます』

全国の個性派女性オーナー書店や、本がつないで誕生したコミュニティが10ケース紹介されています。これが、どれも魅力的なんです!!!中でも行ってみたいのは・・・

◆辺鄙な田舎でも人が来る!うずまき舎(高知県香美市)

◆古本バル:月よみ堂(東京都杉並区)

◆読書会も魅力:croixille(クロアゼィユ 京都府京都市)

◆ブックカフェ&一人出版社センジュ出版(東京都足立区)

◆島の施設図書館:男木島図書館(香川県高松市)


特徴は、気負いがあまりない方が多いこと。
ふわっと、えいやっとやってみた→なんとなく続いてます。そんな感じ。

語弊があるかな。いい加減とか努力してない、というのとは違う。本への熱い思いと志が人一倍はある。ただ、経営に関する目標を設定するだとか、戦略だとか、そういったものと無縁でもできるんだなあ、って

お一人お一人にストーリーがあって、それがねえ、もうじわっとくるわけなんです。特に一人出版社のセンジュ出版さんの吉満明子さんの話には私泣けてしまいました
バリバリのキャリアウーマンで、巻き髪&ヒールで武装した編集長。それが、カオス状態だった自宅の片づけをし、クッキーを久々に焼いたら涙が止まらなくなる。嗚咽しながら、本当は自分はこういう時間を求めていたんだ、って気付くのです。さらに、子どもが生まれて考え方がガラッと変わり、こう述べられていたんです。

「物事の規模や数ばかりを追いかけていたわたしが、それまで取るに足らないと目にも留めていなかった身のまわりのことが、実はとっても大事だったんだと。自分の行動範囲が狭くなって、素の自分になれたというか、“等身大”になれたことで、それまで見えてこなかったものが見えてきたのかな、と思います」(P.115)

そのほかにも、過疎地、被災地で心のよりどころを作るみなさんに心動かされ、ああ、いいなあって。
児童書専門店の老舗さんですら閉店していってる寂しい今日この頃。やっぱり本屋さんという空間が好き。

ここに登場する場所、全て訪問してみたい!2018年、本をめぐる旅なんていうのもいいなあ。

自然とのつながりを取り戻す!

2018-01-15 08:10:53 | ファンタジー・日本


『龍のすむ森』(2006年)竹内もと代作 小峰書店

ブックオフから連れて帰ってきた子たちのうちの一冊。
こういう自然と人間とのつながりを思い出させてくれるような物語は、どんどん増えてほしいなあ。

≪『龍のすむ森』あらすじ≫

主人公の智は、母と二人で父親の故郷である清瀬村へと戻ってくる。実は、智の父は「必ず帰る」という手紙を残して蒸発。いじめにもあい、父の田舎に引っ越してきた智。そこで、実は智の家系は竜神社の神主であったことを知る。龍に出会いたい村の子信と智は、頻繁に森へ出かけるように。智が一人でいるときにしか現れない不思議な少女は一体誰?父親はなぜ消えたのか?

続きが気になって、どんどん読み進めます。
ただ、大人が読むと物足りないかな。田舎の村って決してパラダイスではない。狭い社会だし、こんなにすっと都会の子が馴染めるのかなとかも大人は思ってしまう。ガネ仙人や少女との出会い方がちょっとあっけなかったり・・・最後に戻って来た父親にすべてを話すところなど、私だったら話せないし、話したくないと思うので違和感。

それでも!!!
こういう日本を舞台にし、日本人のDNAが呼び覚まされるような物語はどんどん増えていってほしいと思うのです。自然とのつながり、それを思い出させてくれるような物語。森の‟気配”を感じてほしい。何かがいるってこと、龍の存在。龍といえば、こちら↓



『冬の龍』(以前書いた感想はコチラ)も、東京にだって龍はいたと思わせてくれる物語で、少年たちの仲間の絆も良い物語でしたが、この手だと私はやっぱり現代の天狗を描いたコチラがダントツに好き↓



『天狗ノオト』(以前書いた感想はコチラ

こういう自然とのつながりを思い出させてくれる物語を読んだ後は、心に何ともいえない広がりが残る。あ、つながれるかも、という感覚。緑が目に飛び込んできて、水の流れる音が耳に飛び込んでくる。そして、心を豊かにしてくれる。

もっともっと、私たちのDNAを呼び覚ませておくれ~!!!

親子で楽しめる美味しい物語♪

2018-01-14 08:21:06 | 幼年童話


『スプーンは知っている』(2015年)新藤悦子著 講談社

心がほっこり、そして、すぐにでも巻末に出ているレシピを作りたくなってしまう美味しい物語。小学校中学年からですが、低学年でも読み聞かせしてあげると、親子で楽しめそう!

『手作り小路のなかまたち』という本の後に出たシリーズものですが、内容としては続きものではないので、こちら単体でも十分楽しめます♪

主人公は小3のかなめちゃん。手作り小路と呼ばれるところに住んでいます。
吉祥寺みたいなイメージかな?でも、吉祥寺ほど若者のための町でもなくて、昭和初期のような人々のつながりがあって・・・でも、和風というわけでもなく、おしゃれで異国感も入りこんでくるところが、新藤さんワールド。

かなめちゃんはいつも、カード屋の自分のうちではなく、お隣のカフェ[ビーンズ]に寄るんです。そこで、今日のおやつと人形のタマムさんとおしゃべりするのが日課。そう、かなめちゃんは人形とお話できるんです。

このね~、タマムさんっていうのがいいの。カラフルな民族衣装を着て、木のスプーンにまたがり、天井からつるされているんです。こんな風に↓



花豆ばあばが亡くなってからというもの、ちっとも笑わなくなったカフェのマスター豆吉じいじに笑顔を取り戻してもらいたくて、花豆ばあばのレシピに奮闘するかなめちゃん。さあ、うまくいくのでしょうか!?料理あるあるも出てきて、大人ならクスッとしてしまうかも。

私が好きなのは、ドライフルーツをなぜわざわざ熱湯で戻さなければいけないかというところの、タマムさんの説明。

「もどさないと、煮ても、かたいしんが残ったりするの。それに、もどしてあげることで、ドライフルーツの時をもどして、むかしを思い出させてあげるのよ。」

「ドライフルーツには、豊かな過去がある。もどしてやわらかくして、おいしい過去を引きだしてあげるの。レシピにはちゃんと理由があるんだから。」(P.72)

さてさて、料理の秘密とは???誰もが知っていて、でも忘れがちな秘密。
ああ、もう、ホントに新藤さんの物語を読むと、むしょうに食べたくなっちゃうから困ります(笑)。


さてさて、そんな、作者・新藤悦子さんを鎌倉にお呼びしますよ~!!!2月25日(日)は、ぜひ観光がてら鎌倉へいらしてください♪

【第一部】
『イスラム世界を物語る - 絵本・児童文学から見る暮らしと文化 -』
13:00-15:00@鎌倉市中央図書館多目的室 参加費無料

※ こちらは、私も所属している図書館とともだち・鎌倉主催なので無料です!

【第二部】
『作家・新藤悦子さんと過ごすイスラムの食と織物の夕べ』

10名限定で新藤さんと食を囲みながら過ごすプレミアムな夕べですよ~。とっても、贅沢な時間!こんな機会めったに持てないので、これは早く予定押さえておいてくださいね。

場所は鎌倉市内の某所(参加者に直接お知らせします)。
17:00-20:00(参加費:4,500円)でトルコ家庭料理のミニ料理講習会付きです。

ご興味のある方は下記問い合わせフォームからお願いします↓

大人のための児童文学


人生の終わりにしたいこと

2018-01-12 13:01:05 | 絵本


『ローズのにわ』ピーター・レイノルズ作絵 かとうりつこ訳 主婦の友社

今日の一冊はこちらの絵本。これ、いい!!でも、絶版なのかな?ぜひ図書館で。


■ 寂しい場所に出会ったらどう思う?どうする?


ローズは、いろんな国、いろんな場所に表紙絵のティーポットに乗って旅をしていたんですね。このティーポットに乗って、というところが絵本ならではで、とおっても素敵。空想の翼が広がります。で、訪れた記念に花の種を集めていたんです。

ある日、そろそろその記念の種たちを用いて、自分の庭をつくってみようかな、と思い立ったローズはたどりついた島の町を探険。
町は、コンクリートだらけのとても忙しい町で、中でも寂しい場所に出たんですね。そこだけ、ぽつんとそこだけ土がむきだしに。いろんな国を見てまわってきたローズ、そのときどんなことを思ったでしょう?


「あ~、だから都会は嫌なのよね!」
「この町の人はコンクリートだらけで心が麻痺してるのかしら!?(ぷんぷん)」


いやいやいやいや。
そんな批判めいたことは思いません。旅人にありがちな批評家にはローズはなりません。彼女は、ただこう思ったんです。

「ここに いろが あったら どんなに すてきだろう。」


そして、集めた記念品の種でそれを実現しようと思ったんです。


■ 待つ、待つ、ひたすら待つ


ところが、ところが!
探険からティーポットにもどると、なーんと鳥たちにほとんどの種が食べられてたんです!
でも、ローズは責めない、悲しまない。正直、「あ~あ」くらいは思ったかもしれないけれど、絵本には、

「おなかいっぱいで幸せそうな鳥たち」


としか、書かれてません。そう、集めた種は、鳥たちを幸せにしたんだなあ。

そこで、ローズは残りの種をかきあつめ、じっと待つ。天候に左右されながらも、ひたすら待つ。待つ、待つ、待つ。

これ!!!

現代人の私たち(って一緒にしちゃってるけれど、はい、私です)に欠けがちな姿勢。自然に左右されながらも淡々と待つという姿勢。
そして、あきらめないで、まちつづけるローズのうわさは、町の人たちにも伝わっていくんですね。見てる人はいるんだなあ。自分で「私こんなにがんばってるんです!見て見て」と言わなくても。ハッとさせられます。

さあ、ここからが、スゴイ。ある日女の子が紙で作った花をお庭にうえてくださいと持ってくるんです。それから、毎日子どもたちはやってくるように。

「みんな、かみで つくった はなを もって。
みんな、ローズに かける ことばを もって。」

いいなあ。持ってきているのは、気持ち。じん、としちゃいます。


■ 旅(人生)の終わりにしたいこと・・・分かち合い


そんな旅好きな人なローズでしたが、ついに終の棲家を見つけるんですね。それが、みんなで作ったこの花いっぱいの空間。最後はこんな言葉で締めくくられています

旅をするのも、もうおしまい。ローズは家にたどりついたのです。
「ここが、ローズのにわ。みんなのにわです。」




「みんなの」。なんだか、ぐわっと来てしまいました。名作『ルピナスさん』みたい。↓



結局、人生の終わりにしたいことって、誰かを幸せにすることだったり、それを分かち合うことだったり。世の中を美しくすることなんだな。




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遠くからでも人が来る理由は

2018-01-09 19:47:41 | 講演会・勉強


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今日から学校が始まり、やっと母も時間が少しできるかな。

・・・って、、あれ?こちらのgooブログは卒業して、新ブログに移行するんじゃなかったの???

ハイ、すみません、使いこなせなくて放置のままだったので、使いこなせるまで、やっぱりコチラでもう少々(笑)。

新年あけて、はじめての学びは絵本読み聞かせ講師のとんちゃんの鉄板講座@川崎へ。

とんちゃんってスゴイんです。とんちゃんに会いに遠くから人が来る。
講座の内容にももちろん興味はあったけれど、それプラス、なぜわざわざみんなが遠くから来るのかも興味津々だったんです。
今回も千葉や埼玉、当日病気でキャンセルだったけれど群馬の方も!

とんちゃんが魅力的だから、遠くからでもくる。でもね、絵本講師も絵本セラピストの方も全国にいーっぱいいる。それなのに、地域の近くの人ではなく、わざわざとんちゃんに会いに来る。なぜか。
一つには、他の人よりも発信力があることも大きい。発信しなければ、その人の魅力って伝わりませんからね。

もう一つ、とんちゃんは、知識ではなくて、体験を語る。だから、素直にすーっと受け入れられるんだなあ。かといって、ふんわりほわほわの優しいだけじゃない、私の好きな毒舌も持ち合わせている。あ、少々です(笑)。だから、痛快!

さらに大事なこと、とんちゃんは、講師陣にありがちな、べきべき星人じゃないんです。
こうあるべき、そうあるべき、のべきべき星人じゃない。

一番深く頷いてしまったところは、
「別に絵本がエライわけじゃない。絵本じゃなくてもいいんです」
っていうところ。子どもと一緒に畑仕事する人はそれでもいいし、スポーツの人だっているでしょう。

私も同じこと思ってる。別に児童文学じゃなくてもいい。その人の分野でいい。
けれど、私自身はココに魅力を感じてるから、その魅力を伝えるお手伝いができたらいいなあ、って。

新年早々、刺激をもらいました。
とんちゃん、ありがとう!



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