道草あつめ

日常思いついた由無し事を、気ままに拾い集めています。

聞くは一時の恥

2006-05-19 15:08:03 | 言葉
授業を受けようと教室に行くと、
前の時間の先生と学生がまだ残っていて、英語で何やら話していた。

彼らが出て行った後で、隣に座っていた知り合いが、こう言った。
「なんだか噛み合わない話でしたなぁ。
 学生の方は半分も聞き取れていないのに分かったつもりになっていて、
 先生の方もそれを直さない。
 こういうのが一番危ないんですわ」

この人は、同じ学科の同級生であるが、長い間商社に勤めてきたため、
数多くの海外駐在員経験がある。
(入学時に会社を辞めようとしたが、会社が辞めさせてくれず、実は現在も仕事を続けている。60歳を過ぎて、二足のわらじで、仕事と学業両方を真面目に頑張っている、すごい人である)

「お互い分かったつもりになっていて、実は理解にずれがあるなんて、
 よくあることなんですわ。
 部下に交渉に行かせた後、いざ自分で先方に行って話してみると、
 相手の話と部下の報告が全然違ったりするんです。
 だから、私は自分の耳で、きちんと理解したことしか信じないし、
 話してて分からんことがあったら、何度でもしつこく訊き直しました」

きっと、色々苦い目に遭って来たのだと思う。
非常に実感のこもった話である。

「とにかく、外国語で話す時は、怪しいところがあったら、何度でも訊く。
 厚顔無恥にならなきゃいけませんな。
 だいたい、日本語だって、完全に分かっておるわけじゃないんですから」

まことにその通りだと思う。
実に耳が痛い。
私も、話してて聞き取れなかった時に、相手の話を遮りたくなかったり、
あるいはちょっとかっこ悪いからといって、いちいち訊ねることを面倒くさがりがちである。


知り合いで、外国人の彼氏といつも英語で喋っている人がいるのだが、
経歴を訊いてみると、家庭の事情で高校は中退、中学も登校しないことが多かったという。
つまり、学校教育では、中学の最初で習うような基本事項のみしか学ばなかったのだ。
それでも、今は非常に流暢な英語を話す。

彼女の話を聞いてみると、英語を使い出した当初は、全然話せなかったらしい。
しかし、話している時は、とにかく分かるまでしつこくしつこく訊いて、
彼氏も面倒がらずに丁寧に分かるまで教えてくれて、
その結果、ほとんど問題なくコミュニケーションできるようになったという。


外国語を使う上で大事なのは、
何度でも聞き返し、きちんと分かるまでとことん突き詰めることなのである。