議論百出、「百マス計算」で評判の、陰山英男先生は、際物ではないしっかりした教育観をお持ちの方のようである。有名になったからこそ、その発言力にも重みが伴うだけに、現場の声を広く発信する役割も担っていただきたいものである。著作多数だが、『東京新聞』連載エッセイから、教育現場に関わる話題2編を紹介しよう。
もっと子どもにかかわらせて
ある調査によると、学校に対する信頼が非常に低いという調査結果が出たということが新聞に出ていた。正直なところ、そんなものだろうと思う。しかし、では学校はだめかというと、そうではない。一度教師にアンケートしてみるといいだろう。今、何がしたいかと教師に聞けば、もっと子どもにかかわらせてほしいとみんな言うだろう。
地域によって違うとも聞くが、今の学校は恐ろしく忙しい。本当に忙しい。命を削って仕事をしていると感じるほど忙しい。それで、何がそんなに忙しいかというと、各種の行事や調査、記録など。子ども相手よりパソコン相手である。
では、なぜこうも調査などが多いか。それは、学校批判が強いため、現場の尻を叩くためにいい結果を求めるべく、調査という名のムチが現場に飛ぶのだ。そして、その調査に合わせるべく、各種計画作りに時間を使う。
しかし、子どもにかかわらなくて、いい教育ができるはずはない。私から見ると、完全なミスマッチだ。みんなそれぞれの立場で学校をよくしようと考えているが、すれ違い、お互いの首をあるいは自分の首を締め上げている。ただ、残念だが、あちこちで話を聞いていると、確かに問題と思われる教師もいる。
結局今は小さながんを治療するために、全身に強力な放射線治療をしているようなものではないだろうか。その副作用でがんばる教師の方が、まいっているのだ。少し力をゆるめて、がんばっている学校や教師を応援するという方向になればきっとうまくいくと思うが、どうだろう。
(陰山英男=広島県尾道市立土堂小校長)2005年10月11日『東京新聞』「放射線」
嫌われても言うべきこと
最近、日本教育新聞が、日本の教師の自殺や中途退職の現状を特集し、職場で話題になった。
学力は再び向上し始めたが、同時に校内暴力も急増し、小学生による対教師暴力が急増し始めている。そんな状況下で、教師がまともでいられるはずがない。
一年間の全国での自殺者は八十人、東京都では新任のうち百人近くが一年内に退職してしまう。民間企業に勤めたが、教育への思いが強く、教師になった者さえ含まれるという。
一方、一般紙では、学校教育に関する不満の一位は、教師の質だと報道される。
公平を期す意味で、全国の教師に保護者の質をどう思うかを聞いてみるといいと思う。
ついでに、マスコミや社会の在り方もだ。質が悪いと言われる結果、当たり前のことを訴えることさえ勇気がいるご時世になってしまった。
朝ご飯を食べさせてくださいとある校長が訴えたとき、朝ご飯を食べさせられない家庭はどうするのですか、と逆に保護者に詰め寄られた。
食べさせられない家庭は、食べさせるよう努力する。それしか答えはない。
朝食を食べさせない、それは虐待である。家庭が苦しいなどということも理由にならないのではないか。昔はもっと苦しい家庭がいっぱいあったが、朝食を食べさせられないなんて、親は恥ずかしくて言えなかっただろう。
愚直でいい。大事なことは嫌われても言う。それが大切ではないだろうか。私の書いた本で最も読まれたのは、「本当の学力をつける本」である。あれはどう読んでも、家庭教育批判の本だ。それを多くの保護者の方にも評価していただいたところに、私は希望を見る。
(陰山英男=広島県尾道市立土堂小校長)2005年12月13日『東京新聞』「放射線」
陰山英男
1958年兵庫県生まれ。兵庫県公立学校教諭を経て、広島県尾道市立土堂小学校校長。デジタル機器・コンピュータの活用から低学年でのそろばん指導まで、新旧問わず効果的な教育方法を広く導入している。教諭になった当初から「子どもに学力を保証することこそ教師の仕事」をモットーに、「早寝早起き・朝ご飯」や体力向上で子どもの生命力を、牛の心臓の解剖や鍋でテレビアンテナを作る実験などで子どもの知的好奇心を高め、百ます計算、古文暗唱、オリジナル漢字テストなど、さまざまな教材・教育手法を駆使して子どもの学力を伸ばしてきた。著書・教材も多数。中央教育審議会義務教育特別委員会委員。
※本当の学力をつける本―学校でできること 家庭でできること(文藝春秋社)価格: ¥1,300(税込)
※<教育技術MOOK>陰山メソッド 徹底反復「百ます計算」 価格: ¥525
※<教育技術MOOK>陰山メソッド 徹底反復「書き順プリント」小学校1・2・3年 教育技術MOOK 価格: ¥525 (税込)
※陰山メソッド生活ノート―基本的な生活習慣を2か月でしっかり身につけよう!教育技術MOOK 価格: ¥525 (税込)
※学力はこうして伸ばす! 価格: ¥1,260 (税込)
もっと子どもにかかわらせて
ある調査によると、学校に対する信頼が非常に低いという調査結果が出たということが新聞に出ていた。正直なところ、そんなものだろうと思う。しかし、では学校はだめかというと、そうではない。一度教師にアンケートしてみるといいだろう。今、何がしたいかと教師に聞けば、もっと子どもにかかわらせてほしいとみんな言うだろう。
地域によって違うとも聞くが、今の学校は恐ろしく忙しい。本当に忙しい。命を削って仕事をしていると感じるほど忙しい。それで、何がそんなに忙しいかというと、各種の行事や調査、記録など。子ども相手よりパソコン相手である。
では、なぜこうも調査などが多いか。それは、学校批判が強いため、現場の尻を叩くためにいい結果を求めるべく、調査という名のムチが現場に飛ぶのだ。そして、その調査に合わせるべく、各種計画作りに時間を使う。
しかし、子どもにかかわらなくて、いい教育ができるはずはない。私から見ると、完全なミスマッチだ。みんなそれぞれの立場で学校をよくしようと考えているが、すれ違い、お互いの首をあるいは自分の首を締め上げている。ただ、残念だが、あちこちで話を聞いていると、確かに問題と思われる教師もいる。
結局今は小さながんを治療するために、全身に強力な放射線治療をしているようなものではないだろうか。その副作用でがんばる教師の方が、まいっているのだ。少し力をゆるめて、がんばっている学校や教師を応援するという方向になればきっとうまくいくと思うが、どうだろう。
(陰山英男=広島県尾道市立土堂小校長)2005年10月11日『東京新聞』「放射線」
嫌われても言うべきこと
最近、日本教育新聞が、日本の教師の自殺や中途退職の現状を特集し、職場で話題になった。
学力は再び向上し始めたが、同時に校内暴力も急増し、小学生による対教師暴力が急増し始めている。そんな状況下で、教師がまともでいられるはずがない。
一年間の全国での自殺者は八十人、東京都では新任のうち百人近くが一年内に退職してしまう。民間企業に勤めたが、教育への思いが強く、教師になった者さえ含まれるという。
一方、一般紙では、学校教育に関する不満の一位は、教師の質だと報道される。
公平を期す意味で、全国の教師に保護者の質をどう思うかを聞いてみるといいと思う。
ついでに、マスコミや社会の在り方もだ。質が悪いと言われる結果、当たり前のことを訴えることさえ勇気がいるご時世になってしまった。
朝ご飯を食べさせてくださいとある校長が訴えたとき、朝ご飯を食べさせられない家庭はどうするのですか、と逆に保護者に詰め寄られた。
食べさせられない家庭は、食べさせるよう努力する。それしか答えはない。
朝食を食べさせない、それは虐待である。家庭が苦しいなどということも理由にならないのではないか。昔はもっと苦しい家庭がいっぱいあったが、朝食を食べさせられないなんて、親は恥ずかしくて言えなかっただろう。
愚直でいい。大事なことは嫌われても言う。それが大切ではないだろうか。私の書いた本で最も読まれたのは、「本当の学力をつける本」である。あれはどう読んでも、家庭教育批判の本だ。それを多くの保護者の方にも評価していただいたところに、私は希望を見る。
(陰山英男=広島県尾道市立土堂小校長)2005年12月13日『東京新聞』「放射線」
陰山英男
1958年兵庫県生まれ。兵庫県公立学校教諭を経て、広島県尾道市立土堂小学校校長。デジタル機器・コンピュータの活用から低学年でのそろばん指導まで、新旧問わず効果的な教育方法を広く導入している。教諭になった当初から「子どもに学力を保証することこそ教師の仕事」をモットーに、「早寝早起き・朝ご飯」や体力向上で子どもの生命力を、牛の心臓の解剖や鍋でテレビアンテナを作る実験などで子どもの知的好奇心を高め、百ます計算、古文暗唱、オリジナル漢字テストなど、さまざまな教材・教育手法を駆使して子どもの学力を伸ばしてきた。著書・教材も多数。中央教育審議会義務教育特別委員会委員。
※本当の学力をつける本―学校でできること 家庭でできること(文藝春秋社)価格: ¥1,300(税込)
※<教育技術MOOK>陰山メソッド 徹底反復「百ます計算」 価格: ¥525
※<教育技術MOOK>陰山メソッド 徹底反復「書き順プリント」小学校1・2・3年 教育技術MOOK 価格: ¥525 (税込)
※陰山メソッド生活ノート―基本的な生活習慣を2か月でしっかり身につけよう!教育技術MOOK 価格: ¥525 (税込)
※学力はこうして伸ばす! 価格: ¥1,260 (税込)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます