
★ 教員の「働かせ放題」「やりがい搾取」を解決しない、
政府案の給特法“改正”案に私たちは反対します!
署名の発信者 給特法改正案に反対する 有志
「自分も例に漏れず超過勤務は100時間超え」
「疲れてくると目が霞(かす)んで生徒の顔が見えなくなり、いじめに気付けないほどだった」
「ぶっつけ本番と言いますか、自分でも予習できていない状態で授業をやらなくてはいけないこともありました」
「本当に栄養ドリンクでも飲まないと、もう体が持たない。生徒ひとりひとりと向き合う余裕が到底なくなってしまいました。私を含めて6人の先生がうつ病などで休職。こんな環境では今後学校は存続できなくなるのではないかと」
(※1)
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教員はこのような長時間労働、過重労働の状態に置かれ続けています。
こうした事態に抜本的な対策を講じることなく、ただ教職調整額を現在の「月給の4%」から6年かけて10%に引き上げ、「新たな職」として「主務教諭」を設けるという、今回の政府の法案に私たちは納得できません。
[この署名で私たちが提案したいこと]
[1] 給特法そのものを見直し、教員に残業代を支払うよう改めてください
[2] 子どものためにならない「新たな職」の法制化は見送ってください
[3] 教員を増やすことをまじめに考えてください
教員の長時間勤務については、これまでの施策は有効性に欠け、学校現場はいまも限界状態です。
日教組の調査によれば、教員の残業時間は平均が過労死ラインを超えており、4割弱の教員は1日の休憩時間を0分と答えています。
授業準備に必要な時間がとれず、子どものことをじっくり考える余裕もなく、現場の教員たちはぎりぎりのところで学校を支えています。
心身を壊して休職しなければならなくなった教員は過去最多となっています。
慢性的に疲弊している教員のもと、子どもたちはのびのび育つでしょうか。
忙しそうにしている先生に子どもは声をかけられません。
準備のゆきとどいた授業も受けられません。
子どもたちへのダメージは、やはり過去最多となっている不登校、いじめ、自殺という形で表れています。
つまり、教師の過重労働・長時間労働は、教師の「労働者としての権利」という観点からだけでなく、「子どもの学習権」の保障という観点からもきわめて重大な問題なのです。
現在の状態は、まちがいなく日本の未来を危うくするファクターです。
私たちは、学校に未来を明るくする存在であってほしいのです。
事態の深刻さに政府も「学校における働き方改革」をかかげ、半世紀ぶりに公立学校教員の働き方を律する給特法の改正案等の法案を提出しました。
しかし、その中身はあまりに残念なものでした。
これでは現状は変わりません。
悪化させる可能性さえあります。
私たちは怒りを禁じ得ません。
最初に提起した3つの提案を、以下に詳しく説明します。
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[1] 給特法そのものを見直し、教員に残業代を支払うよう改めてください
いま必要なのは、給特法そのものの見直しです。
給特法はもともとは長時間労働をしないことを前提とした法律でしたが、現在起こっている教員の時間外労働の多さは、給特法の下でも違法な可能性が高いことが教育法学者や弁護士らから指摘されています。
給特法では、公立学校の教員には残業時間に対応した残業代を支給せず、その代わりに一律の教職調整額を支給することとされています。
今回の政府の法案は、残業代不支給の条文はそのままで、教職調整額を年1%ずつあげ、6年かけて10%(月2万円程度の給与増)にするというものですが、必要なのは、他の労働者や国立・私立学校の教員と同じように、時間外労働に対して残業代を支給できるようにすることです。
教職調整額を規定した条文を廃止することにより、教員に残業代が支給できるようになった場合、行政が本気で業務削減や人員増に取り組まざるをえない状態が生まれます。
今の給特法の枠組みのままでは、その緊張感はうまれるべくもありません。
教職調整額は、教員に「定額働かせ放題」の状況を強いてきました。
この比率を多少上げたところで、勤務時間短縮とは無関係です。
しかも、政府案では財源として今教員が受け取っている諸手当を削減するという条件までついており、待遇改善の効果は微々たるものです。
いま学校を終わりにしないために必要なのは、わずかな調整額アップではなく、他の職種と同様に教員に残業代を支給することです。
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[2] 子どものためにならない「新たな職」の法制化は見送ってください
今回の法案には、教員のなかに「各校に主務教諭を置くことができる」という、「新たな職」の法制化が含まれています。
主務教諭と一般の教員との間には賃金格差が設けられることが予定されています。
このように教員間に責任や賃金の階層構造を増大させる施策は、互いの専門性や教育への思いに敬意を払いつつすべての教員が対等に意見を述べ合い運営に参加するという学校のあり方をいま以上に阻害するおそれがあります。
また、主務教諭がわずかな加給と引き換えに過大な業務負担を背負わされることになることも危惧されます。
すなわち、このような新たな職の導入は、教員間の分断や「物言えぬ職員室」を作りだす危険があります。
それが果たして本当に子どものためになるのか、不可逆的にこれまでの子どもを大切に考える組織風土を変えてしまう主務教諭の導入には慎重な姿勢が必要であると考えます。
さらに「新たな職」の導入は、教諭の基本給を減らす恐れもあります。
東京都では「主任教諭」制度の導入に伴い、教諭の基本給削減が行われました。
今回も同様の事態が、東京だけでなく他県にも広がるおそれがあります。
「新たな職」は、当事者の教職員の声を十分に聞いたうえで制度の提案に至ったとは言い難く、法制化を見送ることを求めます。
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[3] 教員を増やすことをまじめに考えてください
今回の法案には、教員の長時間勤務の解消に資する要素はありません。
国は、法制度を変えなくとも、「学校業務の見直し」で何とかなると思っているのでしょうか。
学校現場の実態は、業務見直しで何とかなる次元ではありません。
業務量に比べてあまりに少ない教員を増やさなければ、問題は解決しません。
特に、教員しかできない授業の負担が、長時間残業がなかった時代に比べて、相当に増加していることは看過できません。
全国連合小学校長会も中教審に「喫緊の課題は、教師一人当たりの授業の持ちコマ数である」として、「授業の持ちコマ数軽減」を求めました。
そのためには、全国知事会など地方三団体が政府に要望したように、義務教育標準法等における教員基礎定数の算定の比率を改善することが不可欠です。
いま切実なのは、時間面での改善なのです。
教員基礎定数の改善は、少子化の今こそチャンスです。
現在の定数を維持するだけで相当の改善が見込まれることが、研究者の試算で明らかにされています。
さらに、別の調査では、担当する児童生徒数の多さが残業時間を増やすように影響していることも検証されています。
持ちコマを削減するために、1つの授業に多くの児童生徒を詰め込んでしまっては、現在の学校の余裕のない状態やきめ細かい指導の欠如は改善されません。
現在のような働き方を抜本的に変革するために、教員定数の改善にまじめに取り組んでください。
【呼びかけ団体】
給特法“改正”案に反対する有志
【呼びかけ人】(五十音順)
・内田 良(名古屋大学教授)
・工藤 祥子(神奈川過労死等を考える家族の会)
・小国 喜弘(東京大学教授)
・小玉 重夫(白梅学園大学学長・東京大学名誉教授)
・児美川 孝一郎(法政大学教授)
・嶋﨑 量(弁護士)
・清水 睦美(日本女子大学教授)
・鈴木 大裕(土佐町議会議員・教育研究者)
・髙橋 哲(大阪大学准教授)
・西村 祐二(岐阜県立高校教諭・「斉藤ひでみ」)
・本田 由紀(東京大学教授)
・油布 佐和子(早稲田大学名誉教授)
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※1:冒頭4つの声の引用元
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/4J2L59JP5N/
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