NHKの元ディレクター相田洋(ゆたか)氏が ライフワークとして制作を続けて来た、移民の方々の物語が 今回50年目を迎えました。
相田氏は1968年 雪深い岩手から理想郷の建設を夢見て、一族を引き連れパラグアイに移住したある男性のドキュメンタリーを作ろうとしました。
男性に同行し、移民船「あるぜんちな丸」に乗り込み 長い船旅を続ける中で、船に乗った人々の姿、移住にかける想い、移住に至った経緯に興味を持ち、結局 男性一人だけでなく、この船に乗り込む人々の物語をつづり始めました。
これが 最初のドキュメンタリー「乗船名簿AR-29」です。
49日間の船旅を終え、それぞれが自分の移住地に向かうために下船するときに、多くの人たちが「10年たったら、私たちがどんな暮らしをしているのか、見に来てください。」と相田さんたちに告げていったそうです。
相田さんは その想いを受け止め、NHK特集「移住 あるぜんちな丸乗船者の10年」(1978年)、NHK特集「移住20年目の乗船名簿」(1988)、NHKスペシャル「移住 31年目の乗船名簿」(1999)という3つのドキュメンタリーを制作しました。
私が初めて見たこのシリーズは「移住 31年目の乗船名簿」でした。
それから19年、「移住50年目の乗船名簿」では お孫さんたちに囲まれて幸せに暮らしている方、日本に戻られた方、鬼籍に入られたかたも何人かいらっしゃって、ほほえましく思ったり、驚いたり、涙したり、まるでよく知っている人の物語のように感じさせられました。
第1回のアマゾン編では 実際に身近な方たちの物語がつづられていたので、特に興味深く見ました。
わが家は夫がこの「あるぜんちな丸」の4年後、横浜を出港した「ぶらじる丸」で渡伯してきました。
夫は農業移民ではなかったので、密林を開拓した人たちや胡椒やジュートの栽培に携わった人たちの苦労とはまた違いますが、ブラジルに来てからの いろいろな話を聞かせてくれました。
単身で渡ってきた夫は、番組で見たような家族移住とは また違ったメリット デメリットがあったと思います。
自分の生まれ育った国を出て、遠く離れたブラジルに何を求めて来たのか、番組の中の人たちの言葉を思い返しながら、身近な人たちの物語を見つめなおしていきたいと思いました。