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音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

迷える‘音楽療法’

2023-06-08 07:07:22 | 音楽療法実践
音楽療法の活動も2000年のコロナ禍に入って難しくなり、
多くの機会が失われてしまう中で、活動を継続してきた音楽療法士も
悩み多き数年になりました。

活動としては多様な音楽を利用しながら交流することがメインですが、
先ず人と交流することが出来ず、中止にせざるを得ないことになりました。
少し経つとオンラインの実践を推奨されましたが、慣れないうえに様々な
準備が必要になることから、致し方ないことですが現場では難しいと判断されました。

ただ、私が訪問している認知症対応型グループホームの音楽療法は
少しの中止だけで再開されることになりました
消毒、検温、マスクの上にフェイスガード、距離を取りながらでした。
重い認知症の症状がある中でも、音楽が流れ、楽器活動や歌唱などで
非日常の雰囲気が行動の変化につながることがあります。

会話が不自由な人が歌うことが出来たり、楽器活動で個性的な音楽性が見られたり、
職員さんと歌唱や懐かしい話などを共有できる喜びがあります。
継続して行かせていただいても、一期一会のひと時であることは認知症の人特有の
緊張感を抱くことになりますが、流れる音楽のお蔭で距離が縮まるように感じます。

認知症を患っている人、難病を患っている人を対象にする時のプランニングに
どれほどの迷いが生じるのか、驚くほど時間がかかるようになりました。
コロナ禍を経過した中で、人に対応する時に私自身の心身の構え方に緊張感が
残っているように感じています。

実践してみると、職員の皆様や関係者の皆様に音楽療法を支えていただき、
私の気持ちと対象者の皆様の反応を共有しながら、その時間が過ぎていきます。
私ひとりではおそらく自省する中で帰宅することになりますが、
音楽療法のひと時を共有して肯定された感覚は、間違いなく次への実践に
繋がっていきます。

ただ、未だ2000年までの音楽療法をする感覚とは異なっており、
実践が終わってからも‘迷える音楽療法’の時間が必要になっています。
そんな中で、私の音楽療法が大好きです、と届いたメールに
背中を押していただいて次のプランニングを考えています

老年期を輝かせる‘心のタイムトラベル’

2023-05-17 06:25:28 | 音楽療法実践
天気予報では本日30度超えの真夏日になり、熱中症対策を呼びかけています
そんな予報ですが、朝散歩は爽やかで気持ちの良い一日を作ってくれます。

今朝は5時9分頃に日の出が始まり、あっと言う間に真夏のような太陽全体が
昇り、眩しくなりました。まだ夏至(6/21)までひと月ほどありますが・・。
様々な鳥の鳴き声に耳が敏感になり、道沿いの畑には夏野菜が準備されています。

今日はネットのヤフーニュースに「ライフレビュー」と音楽に関する記事が
掲載されておりましたので、私見*を入れながら一部ご紹介いたします。

以下
YAHOO!JAPAN ニュース 2013年5月14日(日)11:05配信より
『心が若返る! 高齢になった自分を癒してくれる、過去の思い出との接し方
【75歳からの生き方ノート】』

シニア世代の生き方について持論を展開するライフ&キャリア研究家の楠木新さん。
人生100年時代を楽しみ尽くすためには、「定年後」だけでなく、
「75歳からの生き方」も想定しておく必要があると説きます。
楠木さんが10年、500人以上の高齢者に取材を重ねて見えてきた、
豊かな晩年のあり方について紹介します。

<心のタイムトラベルで老年期を輝かせる>
多くの人はかつて自分が生きた時代や場所をもう一度体験してみたいと思うことが
あるでしょう。このタイムトラベルサービスが可能ならその夢が実現します。
子どもの頃や過去の自分と出会う場を持つことは一つの居場所の発見にもつながります。

ノスタルジーに浸ることは、新たな目標や価値を見出す絶好の機会になります。
昔の家族との語らい、大切な人との出会いや過去の思い出を反芻(はんすう)することは
今後に向かう活力になると、私は思うのです。
高齢になった自分を癒してくれるのは、他人ではなく、自分自身の過去であり、
思い出なのかもしれません。

*個人が過去の思い出に出会う機会は、過去の場所へ訪ねる以外に、写真、匂い、
音楽、味、触感などの五感の刺激からもありますが、その事を話す(伝える)家族や
友人、知り合い、仕事関係者など誰かと共有したり、誰かに伝えるすることで
自分の心の居場所になると思います。私自身も長寿だった4人の親から聞いた
昔話は興味深く、多くの教えに繋がりました。
中でも音楽にまつわる話から地域社会や人との交わりが豊かだった事を知りました

<過去の思い出に浸ると心が若返る>
過去の物事に思いを馳せるという意味での居場所は本当に人それぞれです。
音楽一つとってもクラシックから洋楽、演歌、ニューミュージック、アイドル歌謡など、
曲に関心がある人もいれば、アイドルなどの特定の人に焦点を当てる人もいます。

映画では、洋画も邦画もあってジャンルも数え切れません。
演劇、演芸などの舞台芸術が好きな人がいれば、読書歴、旅行歴など
自身が積み上げたものを大切にしている人、レトロなモノの収集に喜びを感じている人、
サッカーや野球など、スポーツを通して過去の思い出に浸ることで元気になる人もいます。

生まれ育った故郷への愛着の念が、年を重ねるごとに強くなっていくという人、
親に対する感謝をあらためて語る人もいます。
これらは先の映画の話と同様、一種のタイムトラベルサービスと呼べるものかもしれません。
最もポピュラーなのは音楽でしょう。私は70年代ヒット歌謡曲のファンですが、
不思議なことに25歳までにヒットした曲だと過去の思い出が伴っています。
それ以降の曲はそれほどではありません。

*25歳頃までの音楽を含む思い出が記憶に最も残ることは研究でも分かっています。
記憶研究として「レミニセンスバンプ」という隆起が人生の中の記憶に表出し、私自身の
音楽療法の研究においても同様の結果が得られています
懐かしい音楽を聞いて会話に繋ぐ機会は大切にして欲しいと思っています。*

昔の記憶を蘇らせることを「ライフレビュー」といい、認知症の治療にも
使われる方法だそうです。なぜ脳に良いのかといえば、当時の感情や記憶を
思い出すことで脳がその時の状態に戻るからだということです。
昔好きだった曲を聴くと、急にその頃のドキドキワクワクした感情が戻ったり、
ある匂いを嗅いだらその瞬間を思い出したりといった現象と同じ原理だそうです。

*認知症を患っている人への音楽療法は実際の現場でも多く実践されており、
歌唱を始め、歌をきっかけにした回想語りなどはご本人が生き生きとされるひと時です。
記憶する脳への刺激として音楽は大変有効だと実感しております

老人向け施設で昔の曲を歌い出すと部屋全体が盛り上がるというのも納得できます。
90歳を超えた認知症の親を自宅で介護している人は、
親は昔やっていた囲碁のルールは忘れておらず、麻雀の点棒の数え方も間違わないので
驚いたという話を聞いたことがあります。

過去に自分が過ごした場所を歩いてみるのもいいでしょう。
生まれ育った地域をウォーキングしてみる、学生時代の下宿のあった場所を訪問してみる、
若い頃に住んでいたアパートや、かつての会社があったビル周辺を巡る……。
私は新入社員当時通った喫茶店の2階に上がる階段の匂いや、手すりの冷たさが
40年以上経って蘇ってきたこともありました。

どんな経験であれ、過去の思い出に触れると心が若返るような気持ちになるのは
不思議なことです。
『75歳からの生き方ノート』(楠木新 著)小学館 2023年2月出版

グループホームの音楽療法

2023-04-29 06:59:46 | 音楽療法実践
今朝の散歩では5時半前に朝日が昇り、明るい青空を眺める一方で、西の空は
今日のお天気を予報しているかのようにどんよりした灰色の雲が広がっていました。

少し前まではまだ寒さが残り、手を擦りながら春コートを着て歩きましたが、
今日は少し汗ばむほどでした。柿や桜の木の新緑に心弾ませてもらいながら
気分はもう初夏です

今週お訪ねしたグループホームの音楽療法時にスカンポ(イタドリ)を持参して、
皆様と初夏の季節を共有しました。
綺麗に洗ってビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に保存していたものです。
始めに実際のスカンポを手に取っていただきながらお話を聞いていくと、
「フキかしら?」「何なの?知らないわ」「食べられるの?」など・・。

少しずつ情報をお伝えしながら、カッターで節の所を切って笛遊びをすると、
「私は無理・・」「これで鳴るの?」・・・、実際に鳴らしてみると驚きの声。
職員さん共々一斉に吹き始めますが、中々音が鳴るのは難しいです。
お一人だけ少し音が出て喜ばれていました。
実際にその遊びに参加出来るのは9人定員の中で3人ほどですが、
何がきっかけで表情や行動が変化するか分からないことはいつも心に留めています。

次に丸い穴が見通せるように節と節の間を切って、端を1cm弱ほどの幅で
2,3cm位切り込みを入れて水を浸しておきます。
最後にどんな形になるのかをお楽しみにしていただきながら・・。

その間に伴奏者は「スカンポの咲く頃」の曲をBGMとして弾いています。
雰囲気作りに共感しながら、やっと歌を紹介していきます。
「そんな歌は知らない」「初めて聞く」・・など、この曲はあまりご存知ないことを
知りながらも、「北原白秋さんの歌詞で、山田耕作さんの作曲です」と紹介すると
「へ~、そうなの~」と表情が変わり、前向きな姿勢に変化します。

そんな中で、スカンポの話題時にはずっと下向きで参加されていない人が、次の
「春の小川」で変化されます。メロディが流れると顔が上がり、歌詞を口ずさまれ、
誘導すると視線が歌詞幕に向いてきて最後まで歌われました。
日常の会話を始め、楽器活動も難しいと感じられる人ですが、歌うことは可能です。
職員さんと共有しながら、寄り添っていきます。
懐かしいメロディに個人の記憶が甦ってくる時間でもあります

音楽療法の活動全体への参加は難しいですが、記憶に残っている歌を
歌われる姿に感動しながら進行していきます。
私たちがお訪ねするまではベッドに寝ておられた人も参加されて歌われています。
日々生活をされている皆様の空間に、音楽が流れ、歌や楽器の音色を共有しながら
どのような形でも一緒に参加されるひと時を大切にしたいと思っています

季節のスカンポ(イタドリ)で音楽回想

2023-04-11 16:49:05 | 音楽療法実践
春は多くの山菜含む野草や花、木々の成長に出会う季節です
いつもの川沿いを散歩をしているとスカンポがズームされて目に入ってきました。
少し前には気付かなったので、アッと言う間に成長した様です。
昨年は田舎の畑の隅で偶然見つけて、とても驚いたことを思い出しました。

毎年恒例になったスカンポを見つけて、一本だけ採ってきました。
若いスカンポであれば「ポンッ」という気持ちの良い音で割れることが多いです。
早速、笛作り
節の所で切って中の空洞に空気を入れるように吹いてみると鳴りました。
やはり穏やかで深みのある音で、尺八の様です。

少しずつカットしていくと音程が上がっていきます。
今回のは1cm弱で不安定ながら長2度の高さで上がりました。
こんな実験も子ども達や高齢者の世代間交流として楽しめると面白いと思います。

名前も全国で異なっており、奈良ではイタドリ(イッタンドリ)やスカンポ、
和歌山ではゴンパチと言われていた事を教えてもらいました。
実際はかなり古くから食用とされており、ネットでも多くの情報が得られます。
実際に懐石で季節物の前菜として出されたことがあります。

作詞:北原白秋、作曲:山田耕作の『酸模(スカンポ)の咲く頃』という歌があり、
YouTubeでも聞くことができますので、高齢者の人と関わられている人にお薦めします。
回想しながら話される内容は若い年代へ伝承する役割を担います。

実際に私は田舎暮らしの義父母から『酸模の咲く頃』の歌を教えてもらいました
学校帰りに水分補給でしがんでいた事、皆でスカンポ笛を楽しんでいた事、
節と節の間を切って切り込みを入れ水が流れるところで水車のように回して遊んだ事、
山菜として料理したり保存食として食べていた事等、多くの思い出話とともに聞きました。

それ以来、スカンポを見つけると音楽療法の時に実物を持参して話をお聞きしながら、
『酸模の咲く頃』を一緒に歌います。大正14年の歌詞では「小学尋常科」ですが、
現在は「小学一年生」になっています。長い年月を経ても可愛く歌われています。
‘土手のスカンポジャワ更紗 昼はホタルが寝んねする・・・夏が来た来た ドレミファソ~’
歌詞から分かるように初夏の歌です。まだ4月11日ですが・・・。

季節の歌として、川沿いに黄色の菜の花が彩っていれば『朧月夜』を、
桜の花びらがはらはらと散る頃には『港が見える丘』をふと口ずさみます。
季節感溢れる歌はとても多くありますので、日々変化していく旬な移ろいを
歌と共有できます。花や植物だけではなく、鳥や月などの自然も関わってきます。

私が保存している歌や曲では春に関するものが年間を通して最も多くあります。
心豊かな音楽とともに、五感を開放して回想につなげられたらと願います

在宅介護生活に音楽を♪

2023-04-08 07:03:06 | 音楽療法実践
昨日の雨は田舎の畑には恵みとなり、もうすぐ収穫できる
新玉ねぎやエンドウにも有難く、楽しみでしかありません。

日の出が早朝散歩の途中で見られるように出かけましたが、
未だ冷え冷えとした空気で手を擦りながらになりました。
桜の花は殆ど散ってしまっていますが、ハナミズキが咲き始めており、
河川敷には菜の花が一面に咲いて草の緑とのコントラストが見事です

舗装されていないあぜ道沿いにはれんげそうとシロツメクサが
咲いており、♪れんげつもか はなつもか ことしのれんげは
ようさいた~というわらべ歌が浮かんできました。
幼子が喜びそうなタンポポの綿毛もあちらこちらに・・。
散歩を終える頃に見事な八重桜を愛でることができ、造幣局の桜を思い出しました

散歩していると不意を突いたようにふっと口ずさむメロディがあります。
どうしてこのメロディなのかは自分でも分からないことが多いです。
春らしい訳でもなく、特に好きだった訳でもなく・・・、不思議です。

寝たきりの母の在宅介護を少しだけ経験した中では季節の花を飾ったり、
音楽をCDで流したり、仏間だったのでおりんや木魚を鳴らしていました。
廊下伝いの隣りの部屋にピアノがありましたので、ドアを開けて
時々聞こえるように弾いていました。聴覚は最期まで残ることを信じて・・

先日のホームコンサートではダイニング&リビングの部屋でしたが、
ライブ演奏では普段の生活感を感じることもなく、音色が溢れる空間に
なりました。一般のコンサート会場へ足を運べない人や在宅介護生活を
されている人にも好きな音楽の生演奏のひと時があって欲しいと願います。
瞬間に消えてしまう音楽ですが、その空間を共有した幸せな感覚は
心に長く残り、穏やかな生活につながると思います。

音楽は活力と同時に癒される時空間を作ります。
在宅と等しいグループホームやデイサービスなどの音楽療法にも
今年度は様々な楽器演奏のライブを取り入れていけたらと考えています

コロナ禍におけるグループホームの音楽療法

2023-02-23 20:25:05 | 音楽療法実践
認知症対応型グループホームの音楽療法はコロナ禍においても
緊急事態宣言が出ていなければ継続されています

症状には個人差がありますが、グループホームでは身体的にも重い症状な上に
言葉によるコミュニケーションも難しい人が多く、緊急事態やマスクを付けることへの
理解はとても難しく、日々関わる職員さんには多くのお気遣いがあります。

現在でも外部からお訪ねする私たちは玄関先での体温測定、消毒を終えて
不織布マスクをした上にマスクガードを付け、対人距離も2メートル近くを
気にとめながら実践をしています。

ただ、ピアノやキーボードで奏でられる音楽は部屋全体に瞬時に響いて届きますので
曲の雰囲気を共有することが出来ます。伴奏の段階で歌い出す人もおられます。
今日という日の特別感と今の季節を感じられる音楽によって非日常の空間になります。

グループホームの生活は日々の暮らしを大切にされる在宅感があり、お訪ねしても
ゆったりとした穏やかな雰囲気を感じます。
皆様が集っておられる広い居間で、外からお訪ねする私たちと音楽を共有しながら
非日常のひと時をお楽しみいただきます。

目を閉じていても小さく口が開いて歌詞を追って歌われている人、
私への視線を絶やさず頷かれている人、
しんどそうにみえてもしっかり歌われる人、
楽しそうに微笑みながら参加される人、
下を向かれている人に手を添えながら話しかけて関わっておられる人、、、

お忙しい中でも、一人ひとりの関わりを大切にされる職員さんの心優しいお気遣いに
私の方が癒されていることがあります。
‘音楽’と‘人’が関わる相乗効果のある時空間になります

認知症発症リスクを低減する音楽療法利用

2023-02-08 06:15:54 | 音楽療法実践
ヤフー・ジャパンのニュース(以下、*参照)において、
2017年(2020年に改訂)に英国ロンドン大学の教授らが世界五大医学雑誌のひとつである
「ランセット(The Lancet)」に掲載された12の認知症リスク因子を紹介しています。
①難聴 ②社会的孤立 ③抑うつ ④喫煙 ⑤大気汚染 ⑥高血圧 ⑦糖尿病
⑧肥満 ⑨運動不足 ⑩頭部外傷 ⑪過剰飲酒 ⑫教育歴(知的好奇心の低さ)

さらに、日本認知症予防学会の浦上克哉さんが、その発症リスクを低減させる「3つの習慣」の
実践とともに、人間らしさの根源である五感トレーニング術を指南されています。
「3つの習慣」とは、①運動 ②知的活動 ③コミュニケーション です。

上記の3つの習慣は、音楽療法の実践においても可能です。
<①運動>は、例えばラジオ体操などに音楽のテンポ、メロディの要素が入ります。
さらに、運動に入る腹式呼吸からストレッチ、口腔体操まで音楽を幅広く利用できます。

<②知的活動>は、脳活動としても利用できます。記憶に関わる音楽、クイズ形式として
楽しむ音楽、デュアルタスク(複数課題)ゲームの音楽、曲の交換歌唱、
音楽の歴史を知る、初めての楽器体験など新奇性のある活動も入ります。

<③コミュニケーション>は、音楽の得意分野といえます。言語ではなく、その時、
その空間に音楽が流れることで共有され、癒されたり、リズム活動によって仲間意識及び
社会性を共有することができます。

ただ、音楽療法を継続してきて思うことは、音楽療法士がいないと何も出来ないのではなく、
日常的な音楽利用としてご家族を始め、医療、看護、介護関係者、行政関係者の皆様に
柔軟に応用されることを願っています。個別性の高い大好きな音楽を聞くこともお薦めです。
音楽療法士には日常利用の方法をお伝えする役割もあると常々考えています。
職員さん始め関係者の誰かが少しでも楽器演奏出来るのであれば、多いに活動される
ことを望みます。ある施設へ伺った時に、看護師さんがハーモニカ演奏しながら、
軽運動から歌唱などの活動をされていました。素晴らしいことです。

気軽に日々の活動に利用できるヒントとして、以下の書籍をご紹介します。
実際に利用できるCDもついていますので、図書館で借りてお試しください。
『脳イキイキ音楽療法』.近藤真由.講談社.2016.

*参照
五大医学誌が発表「認知症発症リスクは40%低減できる」 
                   実現するために必要な「五感トレーニング術」とは
YAHOO JAPAN ニュース 1/28(土) 10:58配信

認知症の人への20年の音楽療法から思うこと

2023-01-12 07:14:47 | 音楽療法実践
今朝も日の出直前の散歩をしていると、近くの白梅が二輪咲いていました。
小さく膨らんだ蕾がいっぱいある中で、そっと咲いている花に見とれて足を止めました。
また梅の香を求めて月ヶ瀬へ行くころが今から楽しみです。

コロナ感染者数も未だ多い現状で、やはりマスクは外すことが出来ない日常です。
実践の場においてもマスク+フェイスシールドを現在も付けて距離を保つことにしています。
混まない時間帯を選んで買い物へ行ったり、人との会話も気を遣うことになります。
そんな中で自然の風景の変化は心を豊かにしてもらえます。
季節の移ろいを肌で感じ、時には懐かしいメロディをふと口ずさんでいます。

未だ諸々の気がかりがある中ですが、音楽療法士を目指して学ばれている人から
時々ご連絡をいただきます。
ホームページを見られてご相談をメールで受けたり、ご紹介されてご連絡を
いただくのこともありますが、やはり今の現状では実践の見学や音楽療法の
勉強会などは困難であり、そもそも必要な実践の記録の積み重ねも難しいです。

そんな中ですが、介護に関わっておられる人には日々の生活の中で音楽の利用を
気楽に考えていただきたいと思っています。
認知症の人には音楽が通じること、音楽を介する交流が多いことを実感しています

重度の認知症を患っておられたある人は、ピアノの前に来て難曲を何事も無いかのように
さっと弾かれてさっと去られて行きました。会話を含む人との交流は難しい人でした。
もう一人はグループホームに入所された人ですが、珍しく三味線の準備をしている時に、
「しゃみの音がするね」と言われ、三味線をお渡しすると慣れた手つきで弾かれ始めました。
下手な私よりずっと手つきが熟練されており素敵でした。
楽器そのものが無ければ気付かないご本人の音楽歴でした。

ある人は日々思い出の歌を口ずさまれており、職員さんから何の曲を歌われているのかを
知りたいと伝えていただき、直に聞きましたが私の記憶には無い曲でした。
録音させてもらって調べてみました所、ご本人が通われていた小学校の愛唱歌だったことが
分かりました。大阪の小学校へご連絡させていただき、あらためて全曲をご一緒に
歌わせていただきました。

やはり認知症を患っていた私の義母の時には、曾孫の小学校の教科書を見せると、
もみじの歌詞と絵を見ながら最後まで一人で機嫌よく歌いました。慌てて録画しました。
嫁である私の記憶は既に無くなっていた時で、お手洗いに付き添って行くと、
「優しいお姉さんで良かったわぁ」と笑顔で話しかけてもらった懐かしい思い出です。

20年余りに亘って音楽療法をする中で、関わる機会が最も多かった認知症の皆様から
人生の学びは勿論、音楽が生活に結びついていたことを教えていただきました。
その多くの事例から、脳科学、認知心理学、発達心理学、質的心理学など多くの理論に
繋がることを学びました。

認知症を患っておられる多くの皆様に、その人らしい音楽が寄り添えますように

心理療法としての音楽利用

2022-12-18 07:42:30 | 音楽療法実践
凛とした寒さの中でしたが、まだ肌に突き刺す感じはなく
程よく気持ちの良い早朝散歩が出来ました。

今年も認知症を患っている人が生活しているグループホームや難病を患いながらも日常生活を
送られている人の集いに音楽療法のひと時として関わらせていただきました
実践をする時も終えた時も、常に‘これで良かったのか’という自問自答する時間があります。
音楽療法士の資格を取得する時に、心理療法としての研修合宿に参加しました。
個人発表した時に私が実践している内容に対する多くの質問が今でも心に残っています。

「なぜその音楽を選択したのですか?」
「なぜその進行にしたのですか?」
「参加されている人はどのような気持ちだと思いますか?」
「選択した曲は誰に、どのように届くと思いますか?」等々・・・

音楽療法士自らがプランと進行を準備しながらも当日の雰囲気や
参加者の状態を確認しながら、随時臨機応変に対応できることが求められます。
私一人では確認できない効果もあることから、参加者同士の客観的な評価が
必要になります。目に見える効果としては徐々に声が出てきて、表情や姿勢の変化、
交流のスムーズさを確認することがあります。


音楽療法を終えた時に、
「進行は良かったのか?」「気になったことは無いのか?」
「総合的にコミュニケーションはとれたのか?」「時間の配分は良かったのか?」
常に省察をしながらも、対象者始め、職員さんや関係者の皆様から
お言葉をいただくことで継続されています。

音楽療法当事者である私意外の‘他者’からの言動によって活動が活かされ、
継続につながっていると感じながら、感謝する年末です

パーキンソン病患者・家族会のクリスマス会

2022-12-08 21:30:16 | 音楽療法実践
リスクが高い難病(パーキンソン病)患者さんとご家族を対象にする
音楽療法の開催に悩みは尽きません。
支援活動として23年目の活動に入って初めての音楽療法の会ですが、
その実施に悩みながらも、時間短縮をすることで開催することになりました

奈良県のコロナ感染者数でいえば、3月の1300人超えで春からの活動が制限され、
5月と6月は減少が続いて一旦は落ち着いてきましたが、7月と8月は2000人超えが続き、
9月始めの1600人超えで、秋の音楽療法は中止になりました。

今回も先週1300人超えたために話し合って、時間短縮のクリスマス会を
実施しました。12月のクリスマス会はやはり特別です。
ライトが点滅するツリーの華やかさとクリスマスの音楽は特別な雰囲気があり、
一年の終わりの集いとして開催したい気持ちが溢れます

音楽室は換気が出来ず、風通しが悪いので2台の空気清浄機を使用して
一つだけのドアを開放しながら、1時間半を40分の短縮バージョンにしました。
リスクが高い皆様をお迎えすることで気遣うことは尽きません。

ただ、やはり皆様にとっては会える場所が貴重であり、大切にされていることが
伝わってきました。難病を患った気持ちは当事者でなければ分かりません。
ご家族の気持ちもお互いに交流してこそ伝わり、共有されていました。
久し振りに会える場所として音楽が関われることは素敵なことだと思いました

クリスマス会だけに使用する華やかな音色のスレイベルですが、スズの数や実際の重さを
感じてもらい、ツリーチャイムは‘星に願いを’の曲に音色を添えていただきました
‘きよしこの夜’ではミュージックベルの和音奏を楽しみながら歌いました。

交流する場においても、歩行と会話が不自由なくされることは難しい場合が多く、
ただ寄り添って見つめ合い、手を取り合ったり、肩に手を添えたりされる中で
久し振りの再会に涙される姿もあり、短い時間でも開催する意味があることを
痛感しました。

「会えない辛さ」に対してコロナ禍の社会は心暖かく関わることが難しいのが
現状です。何の気遣いもなく、笑顔の交流が出来る日を願うばかりです