音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

ALS訪問音楽療法♪

2010-03-31 08:21:15 | 音楽療法実践
昨年の11月に始まりました「第2回ALS訪問音楽療法プロジェクト」が
この3月で終了しました。*ALS(筋萎縮性側索硬化症)
第1回は兵庫県において実施されましたが、今回は近畿全体へも範囲を拡げて
いただき、ここ奈良県においては初めてのプロジェクトになります。
国家資格化されていない音楽療法は医療や介護施設、行政で実践することが多く、
負担が大きくなる訪問音楽療法には未だ難しい現実があります。

音楽療法士がペアを組んで、県内に在住されているALS患者さん3名の方の
お宅へ訪問させていただきました。
今月でお別れしなくてはならないと思うと、私は寂しい限りです。

介護をされているご家族の方の様々な音楽との思い出をうかがい、
あらためてお一人おひとりの人生という物語に寄り添ってきた音楽の存在を感じます
♪思い出のアルバムの歌詞にある「あんなこと、こんなこと、あったでしょう・・」
・・・音楽を通して語られていきます。

さらに、私がお訪ねしたご家庭には「記憶されていた音楽」がありました。
奥様は青春時代にギターを習われていた頃の本を別室から持ってこられ爪弾かれました。
息子さんは‘心の余裕が無くて弾けなかった’と言われながら、
一年振りのギター演奏でバッチリと参加してくださいました。
ご主人が誕生日にプレゼントされたギターは磨かれて参加しています

懐かしい音楽、記憶していた音楽、絆になっていた音楽・・・。
自然体で歌い、演奏し、ベッドのご主人の手に添えて踊られるという
アットホームな雰囲気の中、私たちが癒された感があります
日々の暮らしの中で生演奏のひと時を楽しんでいただくことになれば幸いです。
またいつか、お目にかかる日まで・・・暫しのお別れです
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心温まるライブなひと時♪

2010-03-29 08:02:39 | 音楽療法実践
音楽療法のご依頼を受けて初めてお訪ねする時に
緊張感とともに出会える楽しみを抱くことになります

多くの場合は面識のある方からのご依頼が多く、
大よその雰囲気はつかみながら行くことができますが、
今回のようにホームページを通してのご依頼をいただきますと、
メールや電話のみの打ち合わせになり、関係者の方を始め、
場所や雰囲気などによる関わりや進行も想像しながらということになります

そんな初めてのお訪ねで、お手製の季節溢れる生け花と
ホワイトボードに手書きの桜やテーマを添えて温かく迎えていただきました
そのお気持ちは参加される皆様にも伝わり、和やかな雰囲気を醸し出しました。

ホッとできる空間作りや対人援助的な温かな雰囲気が
お互いに初めて会う緊張感を解すことになり、
音楽によるコミュニケーションがスムーズになります。
それによって「その瞬間」のダイナミズムな流れが自由に変化していきます

希少難病の患者さんとご家族の方を対象にされた集いでしたが、
共有している雰囲気が予想していた進行とは異なる「ライブ」に繋がり、
何とも言えないアットホームで心地良い空間になっていきました
今回は参加された皆様お一人おひとりのマンパワーを感じました。
寒の戻りを告げている中、温かな心で足取り軽く岐路に着きました。
ご縁をいただきました皆様に感謝の気持ちを添えて・・・

音楽シャワーのお勧め

2010-03-28 08:35:58 | 音楽雑記
JR大阪城公園駅から歩いて5分ほどのところにいずみホールがあります。
クラシックが主に演奏される中ホールで音響は素晴らしいです。
「20周年記念・・無料招待」という話を耳にして、早速ホームページを検索してみました

本物の感動を若い世代に体験してもらうことを願って、
20周年企画として『ユースシート』を計画されています。
今年の7月から来年の3月までの主催講演に、小学生以上20歳以下という対象者を
招待する内容ですが、詳細はホームページをご覧ください。

多くの文化的な費用削減が言われる中で、将来を見据えた光を感じます
是非この機会に、クラシックには縁の無かった若い方や素敵ないずみホールへ
足を運んだことがない方が足を運ばれることを願っています。

多様な味覚への挑戦は多くの方が体験されて世界は拡がっていますが、
多様な音楽への扉も開いて欲しいと思います。
ゆったり身を任せて「自由で摩訶不思議な奥深さ」の音楽シャワーを体験してみてください
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念願デビュー♪

2010-03-24 23:34:30 | 音楽療法実践
音楽を楽しむために、演奏する楽器を自ら選び、
日々の練習時間を積み重ねて技術を習得するまでの道程は容易ではありません。
好きこそ・・・で、時間を忘れるほどのゆとりも難しい時代です。

施設などを訪問して音楽療法を実践するひと時だけではなく、
日常生活に音楽を利用していただく何らかのヒントに繋がればと願っています。
どのような音楽でも身近に感じていただければ嬉しく思います

ある施設でオカリナを演奏した時に、「いい音色だわぁ」と感じていただき、
自ら楽器と練習本を購入して音楽を始められた施設長がおられます。
音楽理論は苦手だと言われ、音符の下に階名をかなで書き添えながら
練習を積み重ねて、ついに実践で「おぼろ月夜」を演奏されました

ピッチが異なる私のオカリナとの二重奏に、皆様は集中して鑑賞されました。
日々の暮らしの中で音楽を楽しんでいただきたいと願っておられますが、
あれこれ多忙な日常の中で、見事なデビューを飾られたお姿に敬意を表します。
温かいオカリナの音色が皆様の暮らしに寄り添うことになります

感動のお電話

2010-03-16 21:44:58 | 音楽雑記
遠く愛知県の友人から、嬉しいお電話をいただきました。
懐かしい声で「お礼が言いたくて・・」と

お父様のお身体の具合が悪く、ICUに入っておられるそうです。
毎日許可されている30分ほどの面会を続けている時に、
音楽療法士として私がお伝えしていた
「いつも音楽が利用できることを忘れずに・・」という言葉を思い出され、
♪「黒田節」♪「南国土佐を後にして」♪「お富さん」などを歌われたとのこと
娘さんの歌に反応され、手を動かされたり、うなずかれたりされるそうです。

その反応は、間違いなく音楽でコミュニケーションが出来ているということ
娘さんである友人は、そのことをとても幸せに感じて、私にどうしても伝えたいと・・
感動で涙が溢れてきました。娘さんの歌は幸せパワーとしてお父様に伝わり、
きっとお元気になられることでしょう

音楽療法士として実際に関わらせていただくだけではなく、
いつも皆様のポケットに音楽が入っていること、
諦めないで利用していただくことをお伝えすることも役割になります。
口ずさむだけの歌が、どれほどの「生きる力」になるのかは、経験知として持っています

音楽療法士は理論と技術を理解して、コミュニケーションとして利用します。
その一方で、音楽は全ての人が「自由に使えるもの」でもあります


難病患者さんの力作

2010-03-11 23:57:50 | 音楽雑記
振戦と言われる手の震え、歩行の不安定さ、話し難さなどの
身体の不自由さを抱えながら、難病と暮らす心の不安を少しだけ軽くして、
明日への活力をお土産にと願う、パーキンソン病患者・家族の集いがあります。

3市4町1村を担う保健所管轄内の患者と家族を対象にした地域の会です。
会長は、「家族風呂」的でアットホームな雰囲気を大切にしていきたいと話され、
お一人おひとりの顔が見える会として、穏やかな雰囲気がいつも漂っています

今日は、年度終わりの総会を兼ねて、患者さんや家族さんが独自な作品を
持ち寄って展示する日でした。
「マイワーク展」と名付けられた企画は昨年に続き2回目になります。
展覧会で受賞された芸術作品、オリジナリティ溢れる作品、磨かれた技の作品、
仲睦まじいご夫婦の作品、リハビリで頑張られた作品など等・・・。
僅か2時間ほどの展示だけでは勿体無いと思える力作ばかりでした

10年近いお付き合いがある方から、まだ最近ご縁をいただいた方まで、
それぞれ自己紹介される中で、涙あり、笑いあり、歌あり・・・
患者さんと家族さんから「温かく、優しく、秘められたパワー」をいただきました。
来年度も井戸端的な集いへ、足取り軽くご参加いただきますように・・・

認知症は病気であるという理解

2010-03-10 20:44:12 | 音楽雑記
言うまでも無く、認知症は老化現象ではなく病気です。
「老化にともなう『物忘れ』」と「認知症による『物忘れ』」との違いが
手元にある数種類の認知症のリーフレットに記されています
明らかに今後も増加すると言われている認知症の「予防と理解」に
行政があの手この手で取り組み始めています。

私たちの地域では当事者グループとして「認知症の介護者の会」が
行政によって継続されています。介護者だけではなく、認知症に関わる
ボランティアや地域の理解者の方も参加されています。

あるリーフレットには「認知症のお年寄りへの対応」として、
「家に帰る」という方には「これから帰りましょう」といって
一緒に少し散歩をする・・・「まだご飯を食べていない」という方には
「ご飯を食べましょうね」と言って軽い食事を出す・・・
何らかの失敗には言い訳をして自分を守る本能が残っているので、叱ったりはしない
・・・感情的で否定的な言葉は「嫌な人」「恐い人」というネガティブな感情が残るので、
認知症のお年寄りが作っている世界を理解して寄り添うことにより
穏やかな気持ちで過ごしていただきたい。

今日の集いにおいて、介護者の方々は日常生活で切羽詰った胸中を吐露された。
上記の対応は十分理解されているのですが、昼夜逆転で介護者本人の睡眠が
ままならない中で、病気だと理解したスムーズな対応は困難に近いと感じました。
24時間365日の生活の中で、ホッとできる時間は介護サービスを利用する
ひと時であり、今日のようなお互いの思いを交換し合えるひと時だと思います

その中で、お互いの顔が見える地域の中で「認知症は病気だという理解」が
一緒に見守ってもらっているという介護者の安心感に繋がり、
穏やかな介護パワーになっていると話されたことが印象的でした。
地域の力が認知症の方と介護者の方の笑顔を支えることになります。
最後にハーモニカの音色と共に「穏やかな春」を一緒に歌いました

共通なキーワードは「孤立」

2010-03-08 22:43:58 | 音楽雑記
共通なキーワードは「孤立」。
子どもたちへの虐待に対する社説で「命は社会が守るしかない」と題し、
東京の実態調査から様々な要因が浮かび、
そこに共通するのは「孤立」だと述べています(朝日新聞.2010/03/06)

一方で、老年精神医学雑誌には認知症になりゆく経過をみると
キーワードは「孤独」だと記されています。文面から孤立に近い孤独だと理解しています。
ここ数年は当事者の声が研究に生かされることにより、
認知症に対する支援が明らかになってきていますが、
治療や対応する側は、病理として理解し、認知症の人の心を受け止め、
共感することが最も大切であると述べています(老年精神医学雑誌.2010/ vol.21)。

周辺症状といわれる暴力や興奮、徘徊、被害妄想などは
心理社会的病理を理解すればおおむね了解できるという。
患者さんが焦燥感、不安感などを抱く中で、社会的な理解を得られない
孤立感から居場所が無くなり、混乱する状態になります。

どの家庭でも同じことが起こりうること、周辺症状を少なくすることは
可能であること、認知症の人の孤独感を癒せる介護保険サービスを利用すること
などは効果があることを理解して関わることと記されています。
認知症対応のデイサービス、デイケアの音楽療法も役立つことになります

「いつでも、そばにいるような存在でありたい」と受話器を握り続けている
「奈良いのちの電話」の相談員の姿が孤立に光をあてています(毎日新聞.2010/03/05)
愛らしい子どもへ注がれる社会の視線と認知症に関わる社会の理解が
「共通な孤立」を遠ざける一つの手立てになると思います

「医療を受ける立場」の思い

2010-03-06 22:26:54 | 音楽雑記
立命館大学朱雀キャンパスで日野原重明先生の講演がありました
著名な先生ですが、現役医師としての仕事の他に、著述業やご講演、
自主的な音楽活動にも精力的で、超多忙な98歳です。

若い時に患われた外出できない病気の時に音楽との出会いがあり
現在は日本音楽療法学会の理事長でもあります。
音楽療法士の国家資格化への情熱も語られ、力強いエールをいただきました。

聖路加病院の理事長でもあり、本来は医療側の弁になるところですが、
「医療を受ける人の立場」に立って、日本の医療のあり方を
一人の人間として真摯に語られた姿に敬服いたしました。

「医療を受ける人の立場」として、難病患者さんの記録を紹介します

 ・・・最後まで人間として生き続けたい。
 (ALS闘病生活 21年間 享年53歳 呼吸器装着望まず)
 末期になればなるほど、命の重さ、生への執着は強くなっていくのもいなめません。
 むしろ末期になればなるほど、命の重さ、生への執着は増していきます。
 精一杯燃え尽きたいと望んでいます。
 「くじければ叱ってやってください。弱気になれば支えてください。
 苦痛を訴えれば和らげて下さい。意思の疎通は難しくとも言葉をかけてください。
 人間として尊厳を保ちつつ、最後に感謝をしながら、
 一足早くお別れするのが、私の夢・・・」

 参考文献
 『生命のコミュニケーション ‐筋萎縮性側策硬化症(ALS)患者の記録‐』
  豊浦保子著.東方出版.1996

お雛祭りの佳き日

2010-03-03 23:56:27 | 音楽療法実践
今日は3月3日・・お雛祭りです
いつも音楽療法でお訪ねしている施設の介護関連サービス全体を対象に
地域のレセプションホールでお雛祭りのお祝いを兼ねて集いました。
昨年私が関わった市のまちづくり事業(大正浪漫のひと時)に
施設長がご両親と参加されたことがきっかけになりました。

綺麗な絨毯を敷き詰めたパーティ会場のような素敵な雰囲気の中で、
大正浪漫溢れる音楽にご両親が溢れる涙と共に楽しまれたこと、そして
同じように施設の皆様に楽しんでいただきたいという思いを私に話されました。
「こうしたい」・・という思いを持つことは誰もがありますが、
実際に計画され、職員さんのご協力と共にご家族さんもお招きして大きな集いに
された実行力には、いつもの事ながら本当に頭が下がります

ご持参のお雛様飾りが華やかさを添えた中で、音楽をお楽しみいただいた後に、
全員で一緒にケーキセットをいただくという「優雅なひと時」になりました。
「またこんなんしてなぁ」「良かったわぁ」「ええとこやなぁ」「楽しかったわぁ」
皆様のお声が聞こえてきました。何より嬉しかったことは、お訪ねしている
施設全員の皆様と多くのご家族の方がご参加してくださったことです。

パーソン・センタード・ケアに対するプロ意識は勿論ですが、
奥底に感じられる温かいハートが伝わり幸せな余韻に浸っています