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音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

100才の人との音楽療法

2024-02-25 12:48:22 | 音楽療法実践
20有余年のお付き合いをいただいている介護サポートの会社があります。
ちょうど介護保険制度が開始される1年前の1999年に、市主催の介護ヘルパー無料講習が
開始されて受講しました。約3ヵ月、132時間のホームヘルパー2級講習でした。
ほぼ毎日の講習がひと月ほど続き、その後実習に入り、実際に施設や在宅訪問を
体験しました。
その時にご一緒した人が長いお付き合いになる介護サポート会社を立ち上げられました。

ちょうど義母が80才の高齢になり、いつ介護が必要になるかもという思いもありました。
その後、2年も経たない時に要介護になり、ヘルパーの資格が随分役にたちました。
私自身は既に音楽療法の学びを始めておりましたので、介護サポートの会社からの依頼
として、私に実践のご依頼をいただきました
あれから20年が経ちました。

日本音楽療法学会の認定資格を有する時に、講習参加を含め実践経験及びレポート提出が
あり、その時にもお力添えをいただきました。
その介護サポートの会社のデイサービス時のお付き合いから始まり、今年満100才を
迎えられる人は今グループホームにおられます。
初めてお目にかかった時から歌うことがお好きで、積極的にご参加されていました。

100才を迎えれる今は、歌詞幕や歌詞カードを目で追うことは難しくなりましたが、
耳はよく聞こえていますので、歌詞を先読みすると歌われています。
楽器を自力で持つことは難しいですが、職員さんが補助しながら参加されています。
ご存知な曲は先読みは不要でしっかりと歌われます。
長いお付き合いになりますが、いつも100才の人生に少しでも寄り添うことを願って
音楽回想用資料を見ながら準備します。

大正13年生まれ。翌年にラジオ放送が始まりますが、全国的にはまだまだの時代です。
終戦時は21才。テレビ放送開始は20才代後半。
唱歌を特に好まれて歌われますが、その積極的な姿勢に私と伴奏者の人とでいつも
‘私たちの方が元気をいただく’ことを共有しています。
施設では最高齢ですので、いつも一抹の不安を持ちながら伺うことになりますが、
お目にかかれることで幸せをいただける音楽のひと時です

その人らしさに寄り添って♫

2023-10-28 06:46:46 | 音楽療法実践
秋晴れの空を見上げながら、認知症対応型グループホームへの道のりで
美味しそうに熟した柿、畑で準備されている冬野菜を見て秋を実感しました

日本ならではの十三夜の話題を始め、秋祭り、運動会、実りの秋、秋に咲く花々、
関西では一番の話題になっている野球の関西対決など話題が盛り沢山です。
全ての話題に音楽が関係していますのでプラン及び進行は楽しみになります

グループホームでは認知症を患っている人9名が地域の住宅街で住み、
地域ならではの空気、音、雰囲気を日常的に感じておられます。
外出が難しいと思われれる重度の人、会話に不自由さはほぼ感じられない人、
目が不自由な人、笑顔だけ見せてもらえる人・・、お一人おひとりの姿です。

今冬はインフルエンザの流行がニュースで流れていますので、今までと同様に
玄関で熱を測り、消毒をして上がらせていただきます。
始まりのご挨拶から話していると、「最近目が急に悪くなって見えにくくなった」
と話された人に、職員さんは直ぐに部屋から眼鏡を持ってこられましたが、
やはり見難いことを伝えられました。

歌う活動の時は‘先読み’をすると、しっかり声が出ていて安心しました。
目が不自由な人には職員さんが寄り添って、楽器活動の補助をしながら
耳元で歌詞を囁かれて一緒に歌われていました。
楽器活動などが難しい重度の認知症の人にも寄り添って一緒に参加されています。
もうすぐ卒寿を迎える人が、ノリノリで指揮者のようにリズムにのせて手を振られると
直ぐにビデオを撮られています。ご家族さん、職員さんと共有されることでしょう。

日常生活をご一緒に過ごし、支えておられる職員さんからは音楽療法のひと時を
ご一緒にお楽しみいただきたいという想いが伝わってきます。
進行する中で、どれ程多くのサポートをしていただいていることでしょう。
お一人おひとりの「その時」「その場」のその人らしさに寄り添いながら、
音楽療法のひと時を共有できることへの感謝の気持とともに、幸福感をいただいて
帰路に着きました

運動会と音楽♫

2023-10-08 07:07:55 | 音楽療法実践
すっかり秋の空気に変わりました。
涼しさを感じる心地良い時は短く、急に寒さを感じるようになりましたが、
稲刈りを終えた畑にはもみ殻の山が美しく作られています。

地域の秋祭りと運動会の季節がやってきました。
近くの小学校の運動会が開催され、スピーカーから音楽が聞こえてきます。
毎年、どのような音楽が使われるのか、とても楽しみです。
音楽療法の実践で利用する音楽は「天国と地獄」「クシコスポスト」等です

運動と音楽は切り離せない関係性があります。
今はあまり聞こえてきませんが、ラジオ体操は筆頭にあげられます。
リハビリ時においても、本人が好む音楽を利用されることを聞いています。
音楽が聞こえてくると、無意識に身体が動いてくることもあります。
パーキンソン病の人は「リズムと身体の関係性」が特徴であり、有効です。

聞こえてきた今年の運動会の音楽を調べてみると、
「ミックスナッツ(Official髭男dism)」「GO!!(FLOW)」「サチアレ(なにわ男子)」
「逆光(Ado)」「一途(King Gnu)」「Magic(Mrs.GREEN APPLE)」等々・・・

流石に令和の音楽がメインです。
選曲される先生がお若いのか、子ども達の受けが良いのか・・、
定かではありませんが、流行曲と運動会が重なる選曲かと思いました。
1、2、1、2、、、というリズムでは無く、かなり複雑さがある中での「乗り」を
子ども達は全身で軽く受けながら乗っていけるのでしょう。

コロナ禍を経た運動会の進行も変化しているようで、
早朝の場所取りや家族とのお弁当タイムなどの長時間の運動会は
姿を消し、見学する側の応援する位置変更も効率よくなっているようです。
コロナ禍の後の社会生活に様々な変化が見られます。

因みに、私が流行曲を全て把握していることはなく、知らない曲調べに
スマホのGoogleのマイク(曲調べ)を利用しました。
驚くほど便利な時代です

「六甲おろし」の思い出♪

2023-09-15 07:04:42 | 音楽療法実践
阪神タイガースの応援歌である『六甲おろし」について調べると、
1936年(昭和11年)に「日本職業野球連盟」というプロ野球連盟が発足され、
当時は「大阪タイガースの歌」として発表されたそうです。
1963年に「阪神タイガースの歌」に変更されていますが、現在は「六甲おろし」が通称です。
プロ野球史上で現存する最古の球団歌と言われています。

作曲は、高校野球テーマソング『栄冠は君に輝く』、『高原列車は行く』、『鐘の鳴る丘』
で知られる古関裕而(こせき ゆうじ)さんで、
作詞は、『人生劇場』『湖畔の宿』『赤城の子守唄』の佐藤惣之助(さとう そうのすけ)さんです。
「VICTOR ENTERTAINMENT」のHPで立川清登さんの素晴らしい歌声が配信されています。
朗々とした歌声は流石です。気持が晴れ晴れとしてきます

ただ、我が家にある多くの歌の本の中に「六甲おろし」の楽譜は見当たりません。
歌謡曲、童謡、唱歌、民謡、行進曲等々・・・、いくら探しても見つからないので、
自筆の楽譜を利用しています。立川清登さんの曲ではG調でしたが、実践の場では
皆様の音域に合わせて転調して歌うことになります

私自身は特別なファンではありませんが、「六甲おろし」の歌は演奏しても、歌唱しても
背筋が伸びる感があります。関西ですので、ファンの人も多く、「六甲おろし」のお蔭で
皆様との関係性がスムーズになることも多々ありました。

「六甲おろし」をリクエストにいただくことも多く、誕生月に合わせて歌ったり、今年の様に
ずっと阪神がトップを走っている時には応援歌としてプランに入れたりします。
音楽療法の場においても多くのファンの人との繋がりができ、嬉しさ溢れるお顔が浮かびます。

18年振りの優勝ということで、2005年の頃の思い出を辿りながら、皆様との楽しい会話が
出来ればと思います。そんな回想のひと時にも「六甲おろし」の歌や音楽があることを
願っています。
  1. 『六甲颪に颯爽と 蒼天翔ける日輪の 青春の覇気うるわしく 
    輝く我が名ぞ 阪神タイガース オゥオゥオゥオゥ 阪神タイガース フレフレフレフレ』
ファンの皆様、優勝おめでとうございます

♪「難病交流会」を終えて

2023-09-14 20:21:19 | 音楽療法実践
一昨日実施された「難病交流会」を無事に終えることができました
多くの楽器運搬時に難病相談支援センターの職員さん始め、関係者の皆様が
用意された台車でスムーズに運ばれ、会場作りもしていただいて助かりました。

始まる前の打ち合わせ時にも、進行に際しての細やかなお気遣いをいただき
お出迎えする側の気持として、とても楽になりました。
今回はクラリネットとピアノ演奏を鑑賞に入れましたが、難病交流会でも
おおよそ4年振りになりますので、ライブ演奏に際してお二人ともに
緊張感がありました。

音楽療法を実施する側が緊張すると目に見えない空気感として伝わりますので、
出来る限り、リラックスして明るくお迎えしたいと思っています。
何より、私たち演奏者が「楽しむ気持」でいることを共有しながら始まりました

未だマスク着用が共有事項としてある中での実施というだけでも緊張感が生まれます。
ただ、音楽はその場、その時の空気感を変える時には大変役立ちます。
徐々に皆様の表情や身振りなどで雰囲気が柔らかくなり、自然発生的な拍手も出てくる中で、
支援センターの職員さん共々、音楽を共有するひと時になったのではと感じています。

始まり時から活動に参加することが難しいと思われた人に心を寄せていました。
最後の♪故郷を一生懸命歌われていた姿に胸がいっぱいになりました。
終了後にご挨拶すると、ご病気と何年も闘っていること、現状の身体のこと、
今日歌った歌詞が気に入ったので持ち帰りたいこと、などを話されました。

一期一会の音楽療法の時は、ずっと継続しながら関係性を築くことはできませんので、
実践の中で出来る限りコンタクトを取り、少しでも穏やかな日常生活につながることを
願いながらお別れすることになります。
持ち帰られた歌詞を見ながら、穏やかなお気持ちになっていただければ幸いです。

打ち合わせ時から終了時まで心細やかで、優しいお気遣いを沢山いただきました。
関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます

「難病交流会(奈良県)」のご案内♪

2023-09-04 15:52:24 | 音楽療法実践
奈良県の「難病交流会」として、音楽療法が来週9月12日(火)に開催されます。
厚生労働省のHPをみると、令和3年現在で指定難病は「338」の記載があります。
指定難病としては、①原因が不明 ②治療方法が確立されていない 
③長期の療養を必要とする などの条件が記されています

一般的に知られているのは、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、筋ジストロフィー、
筋萎縮性側索硬化症、ベーチェット病など多くの病名があります。
奈良県難病相談支援センターが開設されたのは2005年(平成17年)です。
旧郡山保健所内に設立されましたが、その後は郡山総合庁舎内に保健所とともに
移転して、奈良県内唯一の難病情報発信を始め、多様な集いや講演、交流会などの
活動がHPに掲載されています。

4年前の秋に難病交流会として音楽療法をいたしました。翌年からコロナ禍に入って
保健所は超多忙を極め、現在においても気を緩められているようには感じられません。
そんな中で、難病を患っておられる人とご家族、ご友人、付き添われる人が集い合って、
音楽という娯楽感、共有感、音楽性などを少しでもお楽しみいただけるひと時になれば
嬉しく思います

4年前の時はバイオリンとピアノで映画音楽の演奏を鑑賞の時間としてプログラムの中に
入れましたが、今年はクラリネットとピアノでジャズの雰囲気でくつろいでいただき、
楽器活動も演奏と一緒にお楽しみいただけるプランもご用意しています。
長い息(長生き)を意識した季節歌唱から始まり、健口(けんこう)運動としては
早口言葉&リズムをお楽しみいただき、9月らしい中秋の名月にまつわる曲もあります。

担当保健師さんがチラシに掲載された素敵な言葉・・
「音楽を通して心と体とリフレッシュしてみませんか?」
難病相談支援センターへの申込が必要になります⇒0743-55-0631
https://www.pref.nara.jp/63996.htm

4年振りの音楽交流会♪

2023-08-09 06:04:35 | 音楽療法実践
県の保健関係の音楽交流会が4年振りに開催される運びとなっています。
2019年11月に交流会が開催されて以来になり、翌年の2000年からは
コロナ禍に入り、保健関係の現場はさぞ大変だったことだと思います。

その気持ちも残っておられるのか、7月の打ち合わせ時には未だパーティションが
あるテーブルで、勿論マスクを外すことはありませんでした。
そんな中ですが、依頼される気持ちとしては皆様に楽しんでいただけるひと時を願っておられ、
関係者も楽しみにされていることが伝わってきました。

9月の開催ですので、少し内容を詰めながらですが、鑑賞のひと時としてお願いしました
クラリネットとピアノの合わせを久し振りにしました。
やはり、生演奏は良いものです
身体全体に音色が響いて伝わってきます。自然に体もリズムに乗りながら、解放感も感じ、
コロナ禍がやっと落ち着いてきたことを実感する時間でした。

前回の時にはご丁寧にお礼のお電話を参加者(保健担当者からの了解を得て)の人から
いただきました。コロナが落ち着いたら是非もう一度開催して欲しいということでした。
私自身も楽しみにしていました。当日、再会出来ますように・・

ご案内していただいているチラシに、
‘音楽を通して心と体をリフレッシュしてみませんか’
と書いてあります。
ゆっくりと長息を意識しながら始まり、リズム活動と軽運動、互換歌唱による不思議な感覚、
季節の歌詞を回想とともに楽しみ、リズムと音色を感じる楽器活動・・等々

私自身も楽しみに準備させていただきます






真夏の音楽療法♪

2023-07-28 05:52:18 | 音楽療法実践
今朝も、空一面が橙色になってきた日の出前の5時過ぎからセミの声が賑やかです。
その鳴き声に迎えられるように太陽が奈良盆地にお目見えです。
地球は太陽に生かされている・・・、今朝はそんな気持ちになりました

大暑を過ぎて、祇園祭りや天神祭りなど大きなお祭りが久し振りに盛大に開催された
七月も終わりを迎えました。今年はかなり厳しい暑さになると言われています。
そんな中ですが、認知症対応型グループホームへの音楽療法の実践は続きます

冷房が効いた施設の中では外の暑さを実感することは無く、辛うじて皆様の夏の装いに
季節が感じられます。暑い外から出向いてきた私たちへの気遣いの声をいただきます。
目が少し不自由で下を向いている人、笑顔で出迎える人、朝から待っておられて
今は部屋にいる人、私たちが誰なのか不思議な表情をしている人、・・・
お一人おひとりの個性や今日のその人らしさが溢れています。

90才後半の人もおられますので、今日もお目にかかれたことに先ずは安堵します。
入所されて間がない人の雰囲気も気になりながらお声かけをします。
落ち着いてきたコロナとは言え、未だ私たちはマスクを外すことはなく、本来の笑顔の
交流は無い中で、声の明るさを意識することになります。

夏になると海にまつわる曲がプランに多く入りますが、海の無い奈良では特に
欠かせない楽器?があります。波音箱とかってに名前を付けて持参しています。
あまり小さくない段ボール箱に海の色の紙を貼り、小豆を入れて波の音を作ります。
本来は、衣服などを入れて運ぶ時に使用した「柳行李(やなぎごおり)」に小豆を
入れて使用すると言われており、柳や竹で編んでいるので、独特で素敵な音になります。

海の波音を感じながら、海の曲で日本を巡っていきます。認知症を患っておられても
歌うことは可能です。特に思い出深い曲にはその人らしさが垣間見られます。
時には涙とともに歌われ、職員さんがすぐに寄り添ってくださいます。
グループ活動ですので、お一人おひとりの深い思い出に寄り添うことは難しいですが、
社会全体で共有していた時代の思い出話に皆様が共感されます。

そんな社会性のある思い出話は伝承する役割もあり、若い職員さん達にとっても
貴重な時間になります。私も父母や義父母、祖母から世代や年代を超えた多くの話を
聞いてきました。今思えば、生きた「社会の時間」でした。
家族だけではなく、地域や職場などで話を聞く機会があれば大切にして欲しいと
若い人達には願っています。

音楽療法のひと時が終わって帰る準備をしている私たちにいただく皆様の表情、
お声かけ、行動(お見送り、握手など)から、真夏のど真ん中を帰るパワーをいただき、
穏やかで心優しい気持ちになれます。

息苦しい暑さの中でも、人との関わりによって爽やかなひと時を感じられますように

学生さんと考える‘高齢者福祉論’における音楽の利用法

2023-07-02 16:43:24 | 音楽療法実践
久し振りに京都へ出かけました。
行く度に思う事ですが、人通りは混雑していますが、広い鴨川も浅く狭い白川も
本当に綺麗で、流れにまで品格があるように感じられました。

高齢者が人生を通して関わる社会的な音楽又は音について考えるとともに、
胎児期の7ヵ月から臨終の際までの生涯発達に関する音楽の利用法について
大学生にゼミ形式で講義する時間をいただきました

一人の人生の中でどのような音楽に親しみ、馴染み、楽しみとして
暮らされてきたのかを考える時に、社会性、地域性とともに、一人ひとりの個人の
特有性(個別性)が上げられます。

「どのような音楽が思い出深く残っているのか」という個人に関するアンケートを
修士論文の時に実施しました。個別性が実に豊かだったことを思い出します。
青年期前後の年齢が際立って思い出深い記憶として残っていることが分かり、
記憶研究の‘レミニセンスバンプ’と同じ結果であったことを結論としました。

音楽の機能としては、身体的、生理的、社会的、心理的、認知的、対人的の
多様な側面と関わっています。
その多様な側面のどこに関わることが出来るのかを考え、
認知症含む高齢者を対象にした時に音楽療法の目標として実施することになります

中でも、高齢者特有の伝承能力をはじめとして、他者との交流を含む社会性の能力、
音楽に集中しながら自己尊厳を維持又は回復する能力、ユーモアを共有する
個人の能力、等々。高齢者ならではの関わり方を共有したひと時でもありました。

若いとは言え、既に多様な悩みも抱えておられ、人生を長く歩まれてきた高齢者との
心暖かい交流をきっかけにして、少しでも前向きに次の一歩を楽しまれることを
願っています。
いつの時代にも、「こんなことがあったね」と過去のことを共有しながら
‘世代間交流’として話し合えるひと時を大切にしたいものです

認知症の人の‘音楽’による記憶

2023-06-11 06:38:26 | 音楽療法実践
認知症対応型グループホームの音楽療法を実践してきて20年近くになります。
グループホームだけではなく、認知症の人の対応フロアがある特養も同様です

認知症の人を対象にした音楽療法がかなり多く実施されており、研究に関しても
多くの関連学会はじめ、研究会においても発表されています。
その中でも、記憶に関連することが多く、あらためて認知症の人の‘音楽’による
記憶を考えています。

認知症を患うと、近年の記憶が失われていく症状が伴うと言われていますが、
昔の記憶は残っていることが多いという研究結果は多くあり、理論化されています。
実際に認知症の人が地域グループの中にいて、懐かしい音楽を一緒に歌う時に
誰も違和感がなく歌唱されている場合があります。

私の実践の中でも馴染んでこられた楽器を最近でも弾いておられてきたかの様に
いとも容易く弾きこなされる姿に何度お目にかかったかしれません。
身体的記憶及び手続き記憶や非陳述記憶という言い方がされています。
「身体で覚えた記憶」という意味で、楽器だけではなく、水泳や自転車などの
記憶も同様になります。

歌唱に関して言えば、前奏を聞いただけで顔が上がり、表情の変化とともに
口が動き始め、声を出す‘歌唱’につながります。
普段会話をされることが少ない人が、しっかり最後まで歌われると日常に関わっている
職員さんの驚きと喜びの表情を私も共有し、感動のひと時になることがあります。

音楽療法は音楽を媒体にした交流になりますが、あらためて‘音楽’による記憶の
大きさを確認する大切な空間です。終了後の話し合いの時には感動された感想を
いただきます。音楽を利用した双方向の交流があり、同時にその場の雰囲気が
非日常の時間を共有することになります。不思議なひと時でもあります。

認知症を患っていて何かと不安定だった義母も音楽を介した時は、豊かな表情と
共に、会話が流暢になり、伝承する役割を持った人生の先輩の姿でした。
私が初めて聞く歌を口ずさんでいる時があり、義母にとっては大切な青春の
思い出だったに違いありません。

認知症を患っている多くの人が、音楽を通して少しでも豊かで安寧な気持ちで
過ごされることを願ってやみません

今日の図書紹介です。
『記憶と人文学』.三村尚史(みむらたかひろ).小鳥遊(たかなし)書房.2021