goo blog サービス終了のお知らせ 

音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

音楽を通したパーキンソン病患者さんとの思い出♪

2011-01-24 23:56:20 | 音楽療法実践
難病であるパーキンソン病は服薬の生活を継続することが条件ですが、
寿命をまっとうできると言われています。
ただ、併発する他の病気との闘いをされている方も多く、
お別れした多くの方と音楽を通した思い出をいただきました

先日開催されました「パーキンソン病支援10周年記念の集い」で
保健師さんを始め関係者の皆様との再会をしましたが、
お別れした皆様のお顔が幾度と無く浮かんできました。
ご本人はおられない中で、ご家族の方に足を運んでいただいた事は
嬉しく、懐かしく、何より継続してきて良かったと思える時でした

音楽療法を継続していることもあり、当り鉦の音色とリズムを聞いて
楽しく踊り始められた方、小旅行の行き先で口ずさんだ
♪三百六十五歩のマーチに合わせて驚くほど歩かれた車椅子の方、
「この歌で若い頃は踊ったものだよ」と♪ダンスパーティの夜を
リクエストされた方・・・。
160曲になるリクエストの中に、お一人おひとりの思いが詰まっています。

季節を楽しむ音楽、小声や筋肉の緊張へのリハビリ的な音楽、
現実や自分と異なる世界を体験する音楽、様々な楽器に挑戦して参加する音楽・・
居心地の良い音楽の時空間作りに、来年度もご一緒できそうで幸せです。
♪春よ来い、は~やく来い

「うさぎ」に纏わる唄♪

2011-01-10 18:43:25 | 音楽療法実践
音楽療法を実施する時に、先ず大まかな流れを考えます。
何の目的で、音楽の何を使用するのか・・
対象者の皆様の表情や動作を想像しながら、
音楽の選択をしている時間が好きで、心を寄せる大切な時です

ただ、現場では想像を超える皆様の発言や行動が
ダイナミックな流れを作っていきます。
そのライブの楽しさを共有できる幸せは冥利につきます。

今年は卯年ですので、うさぎに纏わる歌をお尋ねしていますと、
初めてのご縁をいただいた90歳の方が、気持ちよく歌われました
♪うさぎのお耳はなぜ長い?
 月の世界の姫様が
 お呼びになったその時に
 長ぁく 長ぁく 伸びました♪

初めて聴く歌でした
帰宅後、調べてみると「ウサギの耳はなぜ長い?」の
わらべ唄があるようです。
四国や中国地方で歌われたようですが、
歌詞が微妙に異なって紹介されています。

日本全国のご出身の方とご縁をいただくお蔭で、
知らない多くの歌を伝承していただく機会にもなります


若年性認知症の方への音楽療法

2010-12-23 03:49:13 | 音楽療法実践
「若年認知症」は18歳~64歳で発症する認知症の総称です。
患者数は推計よりかなり多く、10万人にのぼるとも言われています。
高齢になってからではなく、働き盛りの年代であることから
精神的なケアが必要になってきます。

音楽療法の実践でも最近は珍しくなくなってきました。
先日お訪ねしましたグループホームに入所された
「若年性認知症」の方はお姿からも若いことが伝わりましたが、
精神的にはかなり病まれているような雰囲気がありました。
視線は合わず、表情は硬く、言葉を交わすことは見られませんでした。
ご挨拶をさせていただき、いつもと変わりなく進めていくと
歌は口ずさまれ、楽器活動も表情の変化なく参加されていました。

クリスマスの時期ですので、ミュージックベルの活動を入れて
♪「きよしこの夜」をご一緒に歌った時に、表情が一変しました
涙をこらえるような感情が溢れでた表情になり、
「非言語コミュニケーション」として音楽が存在しました。

これからも音楽を介しながら、時空間を共有しながら、
コミュニケーションをさせていただけると感じました


心温まるクリスマス会♪

2010-12-19 20:47:51 | 音楽療法実践
認知症対応型のグループホームでクリスマス会が開催され、
いつものセッションとは別にクリスマス会のための音楽を担当しました
ここはご家族さんも施設のケアを共に考えるための「家族会」があります。
関わる誰もが常に「パーソン・センタード・ケア」を共有している雰囲気を感じます。

たとえ重い認知症を患ったとしても、ミクロな地域社会であるご近所さんが
温かい目で見守り、日常に関わる職員さんは「本人」の幸せを中心に考えながら、
情報を常に共有し、ご家族は心の余裕を持って本人に寄り添うことが出来る・・・

24時間体制の勤務の中、職員さんのシフトをそれぞれが調整しながら、
ミュージックベルの練習の成果が発表されました。
ちなみにベルは職員さんのお一人が昨年から担当されています。
それ以外にもメインの時代劇、日ごろの活動として歌と運動の紹介、
3名のオカリナ演奏など盛り沢山です。
時代劇の脚本を始め、舞台設営から刀や鬘の小物まで全て手作りです

今年、ホームで看取られた方との思い出をまとめた職員さんの随筆が
ご家族さんの皆様に回覧されていました。
「本人」の自己実現に寄り添いながら、最期までのケアを綴られており、
温かくて優しさに溢れた熱い「思い」が溢れています。
ご家族さんはきっと読みながら我が親と置き換えられ、
「幸せ」を感じられたのではないでしょうか

「本人」を見守る関係者の連携をハッピーリングと言われることがありますが、
「幸せ」を願う気持ちが一緒だからこそ、居心地が良いのかもしれません。
誰かが違う方向を見ている時は、リングが歪み、それが疲れにつながり、
その雰囲気は誰よりも「本人」が感じ取ることになるでしょう。
今日の天気のように爽やかで、心温まる一日でした

グループホームにおけるターミナルケア

2010-12-17 18:12:17 | 音楽療法実践
今日、音楽療法を継続しているグループホームでクリスマス会の打ち合わせがありました
そこで、ホーム長から12月生まれのAさんがお誕生日に亡くなられたことを告げられました。
グループホームは「認知症対応型」の施設ですが、認知症以外の病気とも闘いながら
暮らされている方は少なくありません。Aさんも例外ではなく、癌との壮絶な闘いをされ、
ホーム長が最期を看取られました。遠く離れて暮らされているご家族さんのご希望もあり、
ホーム長始め、職員さんの温かく行き届いた介護を受け、いつでも医師と連絡を取れる状態でした。

Aさんは音楽が大変お好きで、懐かしいお顔やお話振りが甦ってきます。
しっかりと歌唱され、積極的な踊りもされる参加の中で、
常に大好きな故郷の話題に繋がり、多くを伝えていただきました

スカンポを持って行くと、「イタドリやな!昔はようなっとったからよう食べたで」
初夢についてお尋ねすると、「(故郷の)○○ちゃんに会ったし、○○ちゃんもいて遊んだ」
春日八郎さんの♪「お富さん」を歌うと、「春日八郎は田舎の青年会に2回来た。芝居もしたで」
野球についてお尋ねすると、「阪神タイガースと西鉄ライオンズが好きで横浜の球場まで見に行ったなー」
♪「六甲おろし」の歌では、「この歌は誰でも皆知っとるで」
霧島昇さんが歌う♪「旅の夜風」では、「霧島昇は藤山一郎に薦められて歌手になったんやで」
♪「炭鉱節」では、「青年団で優勝してあやめ池まで踊りに行ったんや」

音楽回想も含む音楽療法のひと時は、表情も生き生きとされ、懐かしい思い出話が溢れてきます。
今夏、ホーム長と職員さんに付き添われてAさんは大好きな故郷へ帰られました。
懐かしく、いつも思い出話に出てくる幼馴染みの方々にもお会いできたそうです
ホーム長から小旅行の話を聞きながら胸がいっぱいになった4ヶ月前のことを思い出しました。

癌と闘いながら、この数ヶ月は音楽療法に参加出来ない状態で、お部屋で療養されていました。
今年のお正月にはコマ回しを見事にされたお姿が浮かんできました。
「いろいろと教えていただき有難うございます」と終わりのご挨拶をすると、
「いやいや、教えてもらうのはこっちの方や」とおっしゃってくださいました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

パーキンソン病患者・家族会への音楽療法

2010-12-15 22:53:55 | 音楽療法実践
他地域のパーキンソン病患者・家族会から音楽療法のご依頼を受けました
地元のパーキンソン病患者さんと関わらせて頂いてから
今秋で10年を越えましたが、その間に本当に多くの学びを頂きました。

患者さんの症状は個別性が高く、日内変動もある中で安定したお姿を
見ることは難しいと認識しています。
「この寒い時期は体調が悪いんだよ」と言われた方は、
そんな中でも笑顔を見せて冗談を交えながら気を遣って頂きました

歩行時の一歩が出難い方、思うように言葉が出ず話し難い方、
ジスキネジアの症状が出ている方、表情が乏しく感じられる方・・・。
それぞれの症状を抱えながら、音楽のひと時を共有して頂きました

どのような症状に対しても見守ることくらいしか出来ませんが、
病気のことを理解している者だと感じてもらうことは
安心に繋がるのではと思っています。
パーキンソン病の特性に対して音楽の効果があると言われており、
日本音楽療法学会や関連の研究会などにおいて研究発表は多くあります。

「来年も絶対来てや」というお声などから、お力添えを頂きました。
音楽を介したライブな時空間は幸せも共有できたように感じました

24音のジングルベル♪

2010-12-10 22:18:26 | 音楽療法実践
専門学校で学生が一音ずつミュージックベルを担当して
24音による♪ジングルベルを演奏する機会を持ちました
何度も演奏回数がある人から、二度だけ機会がある人・・、
それぞれの「出番」を意識して楽譜を真剣に目で追っていきます。

徐々にお互いの音を聴きながら、ハーモニーの中に流れる
メロディを感じ取っていきます。
身体でリズムを取る人、指で楽譜を一音ずつ追っていく人、
歌詞を口ずさみながら活動する人・・・

大半の学生は音符をスムーズに読み取ることは出来ない中で、
いつもの講義とは異なる「活動」に生き生きとする学生や
仲間同士で確認し合う姿が見られ、ほぼ完成していくと
終了時には自然と拍手がおき、集中から解き放たれた安堵の
笑顔が溢れました

集団の活動時には「活動の成果」そのものが目標ではなく、
一人では感じられない凝集性による「信頼」「協調」「連携」
「共有」など、様々な要素が見えてくるように思います。
社会という大きな集団の場へ出た時に必要なことを、
音楽活動を体験して感じてもらえたらと願っています



♪「愛染かつら」の凄さ

2010-11-29 23:51:57 | 音楽療法実践
晩秋になると高齢者の方を対象にしたセッションでは
欠かせない曲があります
BGMとして流れてくるこの曲に合わせて口ずさまれ、
徐々に歌詞をしっかり思い出されて終わりまで歌われます。

音楽劇としてナレーションを入れていくと
「かわいそうにね~」「早く逢えたらいいのにね~」・・・
何も言わずに涙を堪える男性もおられます。

皆様の記憶が甦り、「映像が迫ってくるようだ」、
終了時には「おさげ髪の自分に戻ったようだわ」と
言われる表情は少し興奮気味に映ります。
最後にハッピーエンドで終わると笑顔が溢れ、
歌う声も最高に弾んできます

「心も体もすっかり開けっぴろげになってしまったわ」と
少し恥ずかしそうに私に言われましたが、
年齢がどこかへ飛んで行ってしまったようです

プランを送付させていただいただけで、
当日には看護婦さんとお医者さんの衣装を用意され、
‘役者二人’が「せりふ」で盛り上げてくださいます。

♪旅の夜風(愛染かつら)の力は凄いです。
晩秋になると、私の方が楽しみしているほどです

ご家族が驚かれたハーモニカの演奏

2010-09-29 21:57:11 | 音楽療法実践
施設や病院の常勤としてではなく、個々に契約をして訪問する
音楽療法士は日常生活を把握することは難しい状態です。
その為に、セッション前や終了後のミーティングで対象者の方の
近況など、情報を共有することになります。

そんな中で、職員さんが個々の方に潜在している「音楽」を
意識してくださることから、豊かなケアに繋がることがあります
対象者の方の人生に纏わる様々なことをご家族からうかがって
ケアに繋げる努力を積み重ねておられますが、
逆にご家族さんがご存知ないご本人の姿を見つけられることがあります。

グループホームで自室にハーモニカが置いてあることに気付かれ、
お話をしながら演奏をうながされると、見事に吹かれたそうです
その後も、メロディさえ分かれば何でも吹いてくださるとのこと。
ご家族の方は初めて聴きましたと言われたそうです。

職員さんはそのことに感動され、訪問する私にも伝えていただきました。
音楽療法の時にご本人に演奏していただければと・・。
症状が重くなり、塞ぎこみだった方ですが、音楽療法の時に
お願いをしてみるとハーモニカを演奏してくださいました。
隣りで目を閉じて聴いておられた在ホームの方は、終了後笑顔で
その方へ「上手いなぁ」という心の声を添えて大きな拍手を送られました

アフターミーティングで職員さんは、
「吹いておられる時のお顔はいい顔されていますね~」と。
ハーモニカの音色に包まれた温かい音楽のひと時でした

大集団の音楽療法♪

2010-08-22 12:33:23 | 音楽療法実践
音楽療法の臨床は個人から少人数を対象とすることが多い中で、
100名以上の大集団を対象に「音楽を利用した健康づくりのひと時」として
単発で依頼を受けることが度々あります。

その人らしさに寄り添った心身の健康に役立つ音楽を提供することを
含みながら、多くの皆様とどのようにコミュニケーションをとり、
楽しさを共有することができるのかがポイントになってきます。

高齢者学級や地域交流などは大集団のダイナミズムを利用できること
になりますが、施設や病院などにおいては活動自体が困難な方々が
多いことを考慮しながら、ゆったりとした気持ちでしっかりお伝えし、
皆様の自主的な発言や行動を尊重しながら進行することになります

さらに関係職員の皆様には日々の暮らしに音楽を利用するヒントを得て
いただく機会として、同時にいつもとは異なる「その人らしさ」に
出会う機会として、意識を持って日常に還元していただければ幸いです

大集団の時はセラピストサイドに多くの理解者と臨機応変な活動が可能な
アシスタントの皆様の力が大切になります。
一緒に楽しみながら、常に優しいアイコンタクトができ、
療法士と同じ視点を持ちながら進行を補助していただきます。

参加された皆様や関係者の皆様に数々の失敗を大きく包みこんでいただきながら、
大集団のひと時を終えると、いつもとは異なる安堵感があります
プラン作りから進行に関するアドバイザー的な、又はプロデュース的な
音楽療法士の役割もあるように感じました。
いずれにしても・・・大変多くの皆様にお世話になりました