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音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

若年性認知症の方への音楽療法

2011-08-10 07:12:41 | 音楽療法実践
認知症に関わる様々な施設をお訪ねしていると
最近の傾向として若年性認知症の方が増えていることを感じます。
医学的な進歩も伴って診断につながってきたことも
要因になりますが、患者さんは10万人に近いと言われています

入所されてまだ月日が経っていない若年性認知症の方は
とても寡黙でコミュニケーションがとても難しい中で
言語ではない音楽が寄り添っていきます

情報が全く無い中で、あれこれと音楽を提供していくと
山口百恵さんの曲に少し口ずさまれる姿がみられました。
「百恵さんのファンですか?」とお声かけすると肯かれました。
50歳代のお誕生月に♪しなやかに歌ってと♪いい日旅立ちを
ご用意するとしっかり歌詞幕を見つめて口ずさまれました。
私はその姿に胸がいっぱいになりました。

職員さんが隣で寄り添いながら一緒に歌われ、終了後の
カンファレンスの時に音程がしっかりされていたこと、
歌の始まりから歌われていたことを伝えていただきました。
もう一人の職員さんは「歌われている時に表情がキラキラしていたね」
と表現されました

お一人おひとりの人生に寄り添ってきた音楽があることを
あらためて感じるセッションになりました。
少しだけ・・・距離が縮まったように感じました

お一人おひとりに寄り添う音楽♪

2011-07-28 06:15:19 | 音楽療法実践
音楽の分野はあまりにも広く、高齢者を対象にした
集団のプランを考える時に偏りすぎないように心がけています。
ただ、ゆったりと穏やかに始まり、少し活性化する活動を入れ、
徐々に歌唱や楽器活動で大きな波を作り、またゆったりとクールダウン
していくという流れは変わらないことになります。

お一人おひとりの音楽嗜好や思い出深い音楽がある時は
個人の誕生月に合わせてプランに入れることが多いです。
入所されたばかりや、無口な方だったりすると選曲に
悩むことになりますが、偶然ぴったりとはまった曲を
突然歌われたり、表情が生き生きとしてくる変化が見られます

睡眠が昼夜逆転になった生活で参加されていた方が
時々眠そうに何となくぼんやりと参加されていましたが、
山の歌として用意した♪「北上夜曲」を弾くと、
表情が明るくなり、しっかり歌われ始めました。
最後まで歌われる姿に職員さんが笑顔で寄り添われました

初めて参加されたある方は緊張されている様子が見られました。
途中で離席を始めるような不穏な動きがあり、職員さんが
寄り添われた時でした。海めぐりとして北海道の♪知床旅情の後に
東北の♪「斎太郎節」を始めると様子が一変しました。
笑顔が出て、歌詞幕へ集中され歌いだされました。
お別れの挨拶をすると「楽しかったです。民謡が好きです」と
言われ、来月も一曲ご用意することをお約束しました

涙を拭われたり、表情の変化が見られたり、しっかり歌われ始める
などの変化に、お一人おひとりの人生に寄り添ってきた音楽が
あることを教えてもらいます。語り尽くせない人生に音楽がそっと
寄り添うひと時に幸せな気持ちをいただきます

職員さんが語る「音楽利用」

2011-06-18 07:08:02 | 音楽療法実践
音楽療法の前後に参加された皆様からご感想を
いただくことが多くあり、その言葉を大切にして
継続される‘ライブ’として繋いでいくことになります
社交辞令も含みながらですが、伝えていただく時の
表情や仕草などから本意をくみ取ることも必要になります。

参加された人からではなく、日々の暮らしを支えておられる
施設職員さんから音楽利用に関する言葉をいただきました。

・その場の空気を換えることができます。
・言葉ではないコミュニケーションができます。
・毎日の健康体操に替え歌を使うとし易いです。
・不穏な気分の時にお好きな歌で関わると穏やかになられます。
・入所したばかりの人でも一緒に歌う事を共にすることで安心感につながります。
・自ら歌われる歌からその人らしさを知ることになります。
・歌っていると徐々に声が出てこられます。

あらためて音楽には多様な要素があることを確認されながら、
暮らしの様々な場面で関わっておられることを知りました

医療、介護、地域社会、教育、芸術、娯楽など多くの領域において
どのような目的でどのような音楽を利用するのか・・・
広く大きな「社会」の中に存在する音楽を感じています。

地域包括の介護予防事業

2011-06-01 23:22:29 | 音楽療法実践
地域包括支援センターは保健、福祉、医療の総合マネージメントケアを
行う機関として介護保険法で定められ、
生活機能と運動機能の向上、認知症予防、介護予防などの
支援事業を提供しています

ある街の広報紙には
『高齢者が住み慣れた地域でその人らしい生活を送るために、
介護予防サービスをはじめ、さまざまなサービスが包括的・継続的に
提供される必要があり、高齢者の生活を支える総合機関として
地域包括支援センターを設置・運営しています』と記されています。

隣接市の介護予防事業として音楽療法を実施させていただきました
開催される場所へ足を運ぶ機会は社会との接点になり、
集団に身を置く「自分」を知るひと時につながります。
お互いに声を掛け合う地域の姿が見えます。

包括支援センターお薦めの介護予防運動、健口体操として早口言葉、
季節を共有した歌唱、興味津々な楽器の音色、リズムを感じながら楽器活動など等・・
音楽の要素が溢れるひと時をお楽しみいただけましたら幸いです
あなたらしい心身の健康に音楽が役立つことを意識しながら
日々の暮らしに利用していただくことを願っています。

予想していなかった久し振りの再会もあり、
地域は一つの町だけではなく繋がっていることを実感しました。
包括支援センターの職員さんの積極的なお力添えは大変心強いものでした
ご縁が拡がるひと時をいただきましたことに感謝です。

音楽療法が介護保険のサービスになるために

2011-05-20 21:08:52 | 音楽療法実践
介護保険が出来た時に「ケアはプロに任せて家族は寄り添って
もらえるように・・・」と希望を抱くメッセージがありました
ところが現実はなかなか厳しいものがあり、家族が慣れない介護に
行き詰まって翻弄している姿が多くみられます。
介護保険を利用するにしても地域によってサービスの内容が異なり、
各家庭の事情によって利用するに至っていない現状があります。

ある施設の音楽療法の実践において、家族さんに寄り添う
娘さんのお姿が印象に残り、私の方が幸せをいただきました
「知ってる?この歌」「よく歌ったよね」「よく声が出てるよ」・・・
笑顔で寄り添う親子の姿は介護保険による究極の目的のように映ります。
この親子は音楽療法だけではなく、どのような時間も寄り添って抱く
幸せを感じられるのかもしれませんが、音楽は多くの場で
二人の心の架け橋として利用されやすいものだと思いました。

音楽療法が介護保険の利用サービスに入って、少なくても誰もが
選択権を持てる日が来るように願っています
その日まで音楽療法のEBMをしっかり提示できるように
実践を積み重ねていくことになります。
音楽療法を実践している施設や病院、学校などから
効果の声を挙げていただくことが前へ歩む力になります。


認知症治療として考える音楽療法

2011-05-18 07:05:38 | 音楽療法実践
認知症を患っている患者さんは予想を超えて270万人になったと言われています。
関連学会による情報や専門医の増加によって病気の理解につながり、
一般の人が病院へ行き易くなった時代要因もあるかと思います。
最近の学会誌などから認知症の治療に関する内容の変化が見られてきました

中核症状と言われる記憶障害とは異なる徘徊や暴力、妄想などの
周辺症状(BPSD)へのケアのあり方に焦点が当てられ始めています。
それは薬物療法の危うさと限界を表しているようにも感じます。

『介護環境の調整や家族への指導がBPSD改善のためには重要になる。
患者に対する非難・叱責など患者が不快に感じることは避ける。
患者が抱く不自由さを知りそのうえで必要なことについて手助けする。
患者が残された能力で生き生きと過ごせる時間をつくる工夫をするなどの
家族指導が必要となってくる。・・・
患者と家族がどのような日常を過ごしているかを確認し、
両者にとってよりよい環境を導き出せるよう治療を続けていくことが必要である』
(引用文献:老年精神医学雑誌 2011/Vol.22 熊谷亮・一宮洋介・新井平伊)

上記のような家族への適切で温かい見守りを入れた治療をされる医師が
多いことを願いますが、医療の中には療法と言われる治療があり、
「残された能力」で生き生きとした時間つくりに
音楽療法はお役にたてるのではと実感しています

「心の洗濯をしたみたいですっきりした」
「歌っているうちにおさげ髪の自分に変身していったわ」
「知らないうちに身体が動いて汗かいたわ」
言葉で伝えられない人も表情の変化が見られることが多くあり、
一緒に関わっていただく関係者の皆様と共有することになります。

その人らしさに寄り添いながら「お一人おひとりの心身の健康」に
音楽を役立てる療法として広く利用されることを願っています

♪夏は来ぬ♪の力

2011-05-12 07:22:07 | 音楽療法実践
私が実践で最も多く関わらせていただいている施設は
認知症対応型グループホームです。
人数は9名が定員ですので、お一人おひとりの「その人らしさ」
に寄り添うことができ、ゆったりとした時間が流れます

あるグループホームでは若年性認知症の50歳代の方から
90歳代の方までと年齢の幅が広く、選曲も多岐に亘ります。
この季節になると2番の歌詞に♪五月雨のそそぐ山田に~と
歌う「♪夏は来ぬ」を用意していきます

歌うことや楽器活動を強制することはなく、自主的な参加を大切に
しながら、穏やかな音楽のひと時をご一緒していただきます。
50歳代の方は大変無口で言葉によるコミュニケーションは
日々の生活の中でも難しいことを職員さんからお聞きしていました。

そんな中、音楽が流れると自然と口ずさまれることがあり、
その貴重な曲を日々の暮らしに取り入れていただくことになります。
先日、年齢差を越えて全員が始めから口ずさまれたのは「♪夏は来ぬ」でした。
職員さんと笑顔でアイコンタクトしながら確認し合いました。

明治29年に教育唱歌集に掲載されたとうかがっていますが、
脈々と続く日本の情景と重なる不思議な魅力があります。
お一人おひとりの口ずさまれている感情は異なるかもしれませんが、
共有される歌として大きな力を感じました

スカンポの咲く頃♪

2011-05-02 08:16:37 | 音楽療法実践


風薫る五月に入りました
吉野の山里はすっかり新緑の黄緑色に
模様替えをしていました。
少し冷えた四月の名残のような山桜や
例年通りの山藤の紫が彩りを添えています。

四月の我が家は怒涛のような日々が続き、
気分的に春を愛でる余裕はありませんでした。
山笑う新緑の季節は短いですが、
存分楽しみたいと思っています

田舎の庭でボタンの蕾が一日で開花しました。
暖かさを知ってのことでしょうか・・。
何事も無かったかのような「自然の豊かさ」に包まれて癒されます。
思いっきり深呼吸をして青空を眺めると
元気が湧いてきます。

季節といえば、一週間前辺りからあちらこちらの土手や水辺で
スカンポ(イタドリ)を見つけ始めています。
「スカンポの咲く頃」を歌い、スカンポ笛を鳴らし、
若い茎であれば裂きながら味わうことも出来ます。
奈良県ではイタドリという方が多いですが、
イタンポやイッタンなどと呼ばれることもあるようです。
音楽療法の実践前にスカンポ採りが欠かせなくなる季節になりました

音楽で復興を願う

2011-03-26 21:05:36 | 音楽療法実践
昨日、子ども達が奏でる和太鼓演奏に元気をもらいました
「復興頑張れ!」の声も大きく響き、集まった義捐金と共に
気持ちがきっと被災地へ届くことでしょう。

出会いや別れが多いこの季節の恒例行事である卒業式や謝恩会、
さらには春のお祭りなどが自粛されている中で、
子ども達が練習してきた和太鼓演奏も披露する場を失っていました。

地域の介護施設が主催した音楽の集いで披露することができ、
利用されている皆様とご家族はもちろんですが、
地域において広く支援活動されている皆様や
地域住民の方が参加され、気持ちが一つになったように感じました。

その他、職員さんの幼子たちが♪むすんでひらいてや♪さんぽを
歌いながら踊ると会場の空気までも可愛くなりました
寸暇を惜しんで練習されてきた職員さんのミュージックベル、
オカリナ、クラリネット、民謡、琴などの音色が豊かに拡がりました。

心の痛みが癒える日はありませんが、
復興を願う気持ちを歌や演奏に込めて
これからも実践を継続していきたいと思います。


音楽で気持ちを届けたい

2011-03-22 07:03:12 | 音楽療法実践
始まりは地域にある素敵なパーティ用レセプションホールで開催された
「あなたに来てほしい音楽療法のひと時 ~大正浪漫のあの歌この歌」
の演奏会にグループホームの施設長がご両親とともに参加されたことから・・

その時のご両親の感激ぶりを見て「施設の皆様にもこの素敵なホールで
音楽を楽しんでいただくことができれば・・」と
春の音楽会開催についてご相談を受けて昨年の春に実施しました。
その後も音楽療法を継続していく中で、職員さんが元々持っておられた音楽経験や
初めて挑戦される音楽が拡がりをみせていきました。

今年は職員さんの音楽経験が花を咲かせるひと時になる予定です。
ミュージックベル演奏、琴、オカリナ、クラリネット、和太鼓、民謡・・
こんなに盛り沢山になることは予想していなかった事・・・
大変お忙しい中で練習されているお姿に感激しています

労を惜しまない施設長の熱い思いが波のように多くの人に伝わっていきます。
今の大災害のことを思い、開催することを少し悩まれていましたが、
こんな時だからこそ、今の幸せに感謝しながら皆で気持ちを
一つにして届ける音楽のひと時になればとお伝えしました。

いよいよ間近になりました。
今日は最終打ち合わせに行きます