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音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

回想法に役立つ音楽♪

2010-08-03 18:04:32 | 音楽療法実践
認知症に関する学術的な研究は医療、介護、地域、社会の分野で
共有しながら重要な位置づけとして認識され始めています
既に厚生労働省からは2025年には320万人を超す方が認知症になると述べ、
多様な学会においても回想法が注目され始めており、
回想法に関する研究会や講座が各地で開催されています

音楽療法の実践の中でも回想を入れながら進めることがあります
人生を歩まれてきたお一人おひとりにスポットがあたる場面には
個別性の高い歌や曲などの音楽が寄り添っていることが多くあります。
生き生きとした表情とともに語られる人生のひとこまには
その人らしさが溢れてきます

理論と実践技術は必要になりますが、お一人おひとりに専門家が
寄り添うことは不可能な中、身近にいる家族や地域の支援者の皆様が
少しでも役立つ初歩的な技術を得てもらう機会が必要になります。
「気持ちがスカッとした」
「懐かしい話をゆっくり聞いてもらえて嬉しかった」
「歌ったら一瞬にしておさげ髪の私に戻ったわ」・・・

心の足取りが軽くなり、表情が明るくなられていく現場から
地域全体へ発信され、介護者も共に笑顔になってもらえることを願い・・・
音楽回想の実践を重ねていきたいと思っています

7月15日は「中元」の日

2010-07-15 19:27:36 | 音楽療法実践
今日7月15日は「中元」の日です
中国から伝わったと言われる「上元(1月15日)」
「下元(10月15日)」の三元の一つだそうです。
ちょうど日本では七月盆と重なるところもあり、
食べ物をお供えされる方もおられることでしょう。

さらに、今日は何の日かとネットでいろいろと調べてみると、
明治元年に大阪港が開港し、大正2年に宝塚唱歌隊の第一期生が誕生し、
昭和13年に開催予定だった東京オリンピックを中止した日だとか・・。
高齢者の方々を対象にした音楽療法の実践では「今日」という
レアな季節感のある音楽を準備して行きますが、
上記の内容があれば、多様な音楽につなぐことが出来そうです

通所の介護や医療サービスであれば、自宅へ帰られた時の話題提供になり、
日本という国と共に、ご自身の回想につながるひと時になります。
教育的ではない音楽療法のひと時は、一人ひとりが持っておられる速さ、
リズムなどに伴奏者が合わせていく技術が求められます
集団の時にも個人への目的によって、一人ひとりに寄り添っていく
進行を可能な限り大切にしたいと思っています。

生の演奏だからこそ、「その時」「その場」だけの時空間に漂う音楽を
介する相互コミュニケーションが可能になります。
一期一会の音楽と人との出会いを重ねて、信頼関係が生まれていきます

七夕さまの音楽療法

2010-06-28 18:56:59 | 音楽療法実践
日本の五節句の一つである「七夕」が近づき、
お訪ねする施設や地域のあちらこちらで七夕飾りが始まっています
宮廷から庶民への行事になったのは江戸時代に入ってからと言われています。
旧暦の七月になりますので、新暦では8月16日になり、星空が綺麗に見えた頃です。

中国と日本の風習が結びついた行事であり、
日本で七夕は「棚(たな)」と「機(はた)」という字を書いていたそうです。
七月七日の夜に神を迎えるため、棚作りをして、機を織る行事があったことから、
七と夕をあてたとされています。もともと仏教行事で、盆行事の一つとして、
祖先の霊を祀る前に、穢れを祓い清める習慣があったともいわれています。
(参考図書:「今日はどんな日?」高橋司.PHP研究所)

一方、牛飼の牽牛(彦星)と機を織る織女(織姫)が年に一度会えるという、
ロマンティックな星物語としての七夕伝説も楽しまれています
星に纏わる音楽をBGMにしながら、物語を朗読していただくこともありますが、
♪笹の葉さらさら~と「たなばたさま(昭和16年)」を歌いながら、
願い事を書いた短冊を吊るすという習慣も馴染み深いものになっています

音楽療法の実践ではキラキラした星のイメージを感じる
「ツリーチャイム(バーチャイム)」という楽器とお楽しみいただいています
触れられた時のキラキラした皆様の目に出会えることは
「たなばたさま」のこの時期にいただく私の幸せでもあります

子どもが楽しむ「オノマトペ」♪

2010-06-16 06:49:49 | 音楽療法実践
いよいよ関西も梅雨入りして、実践でもどっぷり雨の音楽に浸かります
雨の音や雰囲気に逆らわないで、ある意味楽しみながらの気分です。

ある音に似せて人工的に作り出す「擬音」効果として、レインスティックや
波音箱(ダンボール箱に小豆を入れて波や雨の音を作ります)を利用します
その擬音や擬態を言葉にした「オノマトペ」の曲が多いことに気が付きます。
♪「雨降りお月」の「シャラシャ~ラ~ シャンシャ~ン」
♪「あめふり」の「ピッチピッチ チャップチャップ」
♪「七夕さま」の「さ~らさら~」

幼児や低学年の学童の子どもたちはオノマトペが大好きです。
伝達する言語として形成される過程においても、
「シュッポシュッポ」「チンチロチンチロ」「ウンパッパウンパッパ」
「チックタックチックタック」「ピョンピョン」などの歌詞を喜び、
時には意味不明な「ダバビグバ」「ポペッピュ」などの「濁音」に反応します

さらに、そんな言葉にリズムを付けると楽しそうに踊りだします。
身体表現が素直でスムーズな子どもに音楽は欠かせないことを感じます。
梅雨の鬱陶しさを気分的に晴らすためにも「音楽」の利用を考えてみませんか・・・
傘をさしながら、♪「ピッチピッチチャップチャップランランラン」


ピック病の方への音楽療法

2010-06-10 17:12:52 | 音楽療法実践
1994年にピック病を含む「前頭側頭型痴呆(現在は認知症)」という名称が提唱されました
地域において精神科医による「認知症を考える」内容の講演の中で、
大まかな割合としてアルツハイマー病が5割を占め、ピック病は16分の一ほどであると言われ、
私が関わらせていただいている方は希少な割合に入ることを確認しました。
終了後、ピック病の患者さんに関わる時のアドバイスを個人的にお尋ねしましたが、
「大変難しい・・」と述べられました。

暴言を始め、睨むような常に険しい表情を伴い、誠意のない印象を持たれる
病気の特徴があることから、社会の場ではトラブルになることが多いと言われています。
とはいえ、本人に病気の認識は全くなく、さらに外見では判断できない病気であることから、
より一層、人間関係が難しくなっていくことが考えられます。

神経変性疾患としてMRIで前頭、側頭葉の明確な萎縮と共に、
SPECTにおいても対応する領域の血流低下を示すことから、
人格変化などから認知症を疑う時は、初期の診断が求められます。

音楽療法のひと時により、ご本人が穏やかな表情になり、一時間近く自分の居場所として
感じていただけたことをお伝えすると医師は驚かれました。
施設の職員さんは「初めての音楽療法をきっかけにして、施設の仲間の方とも繋がりが出来、
穏やかになられました。信じられないほどの変化です。」と話されましたが、
日々の暮らしの中で「あきらめない優しい関わり」が徐々に伝わったからだと感じています

伴奏者の方は家族としての当事者の気持ちを共有する立場から、「ご家族の方がどんなに安堵され、
喜ばれておられるかという思いがよく分かります。関わらせていただき嬉しいです。」と。
音楽療法の場において、「一人の方の幸せを願う」思いを共有したひと時でした

*参考文献「老年精神医学雑誌.2007/ Vol.18」

梅雨入りの前に

2010-06-03 07:09:13 | 音楽療法実践
六月に入るとそろそろ「梅雨」を意識し始めます
平年値は近畿地方で六日頃だそうですが、はたして今年は・・?
先日の「音楽療法をあなたと共に考える会」でも使用楽器として
蛙のギロやレインスティックをご用意しましたが、
視覚的な道具として雨傘も欠かせません。

「『からかさ』ないときゃ 誰と行く~」という雨降りお月の歌があります。
広辞苑では、頭にかぶる「笠」に対して「柄(から)付きのかさ」の意として
『からかさ』を掲載しています。イメージとして和風の傘を想像しますが、
傘を張るのに用いる和紙をからかさ紙というように、
ビニールの傘ではないことが分かります。
以前、傘作りの工程を対象者の方から教えていただいたことを思い出します

実践で効果音や道具は大きな要素を持ち、時々驚くほど効果があります。
音によって懐かしい感情がわき、記憶が甦り、歌との相乗効果をもたらします。
穏やかな雰囲気を醸し出すことにもつながり、季節感も味わっていただけます

ギロを入れながらの「蛙の歌」、から傘をさしながら「雨降りお月」、
ビニール傘と共に「あめふり」、アジサイの花を愛でながら「かたつむり」、
歌謡曲では「或る雨の午後」「雨のオランダ坂」「雨のブルース」「雨の御堂筋」
「雨の慕情」など等、思い浮かべるだけで楽しくなります
晴れが続いている今のうちに「雨本番」の準備にかかります

構造的な要素

2010-05-28 07:30:39 | 音楽療法実践
音楽療法の実践をする時に構造的な配慮が重要になります
日々の生活において水周り関係が動線的にスムーズなことや、
太陽の光を取り入れるなど、多くの配慮が求められていることと同様です。

実践の例を挙げると、パーキンソン病患者・家族の会の会場は
車椅子の方が参加しやすいバリアフリーになっていること、
トイレが近くにあり独立性が高いこと、雨天の時に地下の駐車場から
直接入ることができること、転倒の時に身体への衝撃が少ない絨毯敷きであること、
会場への出入り口が広いこと、会場の中も広く余裕があること、
少しお洒落な雰囲気があること、など・・・。
構造的に評価が高く、継続して利用されています

個人から小集団、大集団と実践で関わる中で様々な配慮が必要になります。
集団になると「周囲の方に気付かれずそっと個人が抜けられること(トイレなど)」
「座席の前後左右に余裕があること(個人個人に関わることが出来るように)」
「眩し過ぎないこと」「よく聞こえること(マイクを利用する選択)」
「個人の希望に応える座席へ誘導」「実践者と対象者の距離感(少なくする)」
「歌詞幕を利用する時の配慮(指し棒.文字の大きさ.色の使いかた)」など。

たとえ初めてお訪ねする場所であっても、構造的に居心地が良いことから、
進行がスムーズにいき、相互間の距離も近く、感覚を共有できることがあります。
他の実践場所でも役立てることができるかどうか、客観的な分析が求められます。
構造的な事への配慮で、コミュニケーションがスムーズになると感じています。
音楽的な構造とともに、実践には「重要な要素」になります

『音楽療法をあなたと共に考える会』のご案内♪

2010-05-27 07:20:17 | 音楽療法実践
12日付けのブログで「音楽療法Q&Aのひと時」をご案内いたしましたが、
申込人数に少し余裕がありますので、再度掲載させていただきます

音楽療法に関する様々なご意見を交換しながら、
ざっくばらんに話し合えるひと時を企画しております

音楽が多様な要素を持っているうえに、心理的、社会的、対人的などの
療法としての側面があり、医学から福祉までの広い分野に亘って実践されています。
今回は日本音楽療法学会認定音楽療法士3名が「療養」「身体及び知的障碍」
「認知症」の各分野における事例報告をさせていただきながら、
音楽療法に関する最新情報をお伝えいたします。

既に、「音楽療法士の資格について知りたい」「実践を体験したい」
「施設で活動をしていますがヒントをいただきたい」
「音楽は何もできないけれど音楽療法について知りたい」
「音楽を利用して役立ちたい」「音楽療法を近くで学びたい」等など、
申込の皆様からご質問を承っていますので、誠心誠意お答えさせていただきます。

初めての企画ですので、「皆様と共に音楽療法を考える会」にしたいと考えています。
お仕事のご都合を考慮して、日曜日と月曜日の2時間ずつ、計4回を設けておりますので、
その中からひと枠を選択いただきまして、お申し込みいただければと思います。
以下に詳細をご案内させていただきます。
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

******「音楽療法をあなたと共に考える会」******
日時(いずれか1つ選択):
   5月30日(日)①午前10時~12時 ②午後1時半~3時半
   5月31日(月)③午前10時~12時 ④午後1時半~3時半
場所:奈良県大和郡山市三の丸会館(近鉄郡山駅より徒歩3分)研修室3
費用:1000円  定員:各回とも先着20名
申込:ご氏名.ご連絡先.日時の選択(①~④).ご質問内容をご記入下さい。
   FAX及び電話:0743-21-3641(西村)
   *留守にしていることが多くご迷惑をおかけいたしますが、
    ご連絡先をお伝えいただきますよう、宜しくお願いいたします。
   メール:onen@iris.eonet.ne.jp

子どもが知らない親の姿

2010-05-26 23:49:54 | 音楽療法実践
「父がハーモニカを吹くことを初めて知りました」・・・
家族だからお互いのことをよく知っていると思われがちですが、
親が子どもに対する関心と子どもが親に対する関心の度合いは異なります。
親は「這えば立て、立てば歩めの親心」で子どもの変化を
常に意識しながら年月を経ていきますが、子どもは「親になった」親との
付き合いから始まり、過去について知る機会が少ないのかもしれません。

高齢者施設の実践でご本人のお子様(中年の年齢ですが)が、
知らない親の姿を知る機会になることが少なくありません。
日々の暮らしを支える職員さんがご存知ない姿を見て驚かれることも
ありますが、職員さんを通して子どもさんに伝わることになります。

入所されて少し経った時に、「ハーモニカをお持ちで吹かれています」と、
職員さんからお話を聞き、実践で演奏していただくことにしました。
ご本人は遠慮されていましたが、職員さんから後押しをいただき、
ハーモニカを演奏されました。伴奏も含まれた素晴らしい演奏でした

そのことを家族会で職員さんがお伝えされると、
「初めて知りました」と娘さんも息子さんも驚かれたそうです
音楽療法の依頼を受けて実践を重ねていくと、お一人おひとりに寄り添う
様々な音楽があることが分かり、日常生活に活かされることになります。
・・・ハーモニカの音色が日々の暮らしに馴染んでいます

嬉しい再会

2010-05-23 07:55:01 | 音楽療法実践
高齢者施設へ入られて間がない方が、「心地良い場」として
暮らすことができるのかは、すでに生活されている周りの方と
日々の生活を支えてくださる職員さんとの関係性が大きく影響します。

「社会的な孤独」は高齢者、育児者、介護者・・・様々な人にとって
心身の健康を考える時に、ある意味「危険因子」だと言われています。
社会的、心理的な孤独の対処には心温かなコミュニケーションが求められます

誰もが、初めての場所へ行く時に緊張感や不安感を少なからず持つと思います。
まして「住む場所」になる時には、より一層増すことが考えられます。
音楽療法で地域にある複数の施設へお訪ねしていると、
以前ご一緒させていただいた方と再会することがあります

継続してお訪ねしている高齢者総合施設は異なる内容の施設が隣接しています。
私が音楽療法をしている場所は三面がガラス窓で、隣りの施設も見えます。
始まって少しすると、隣りの施設からじっとこちらを見ておられる人が
目に入ってきました。よく見ると、先月まで別の施設で音楽療法に参加されていた
馴染みの方です。歌いながら手を振ると、笑顔で手を振り返されました。

少しずつこちらへ向かって一人で歩いて来られます。
音楽が大好きな方でしたので、聴こえるところでお楽しみいただければと思っていました。
すると、音楽療法の担当職員さんが気付かれ、中へ誘導してくださいました。
そっと後ろの席へご案内されると、ニコニコしながらすぐ歌われていました

終了の少し前に、担当の職員さんが来られ、隣でご一緒に寄り添って下さいました。
終わりのご挨拶をすると、近くに座られていた男性が、「またおいでや~」と
笑顔で声をかけてくださっています。・・・微笑ましく、嬉しい光景でした

大好きな音楽があり、ご本人自らの行動に職員さんたちも自然体で寄り添い、
在住の方からも温かい声かけがあり、「心地良いひと時」だったことと思います。
「幸せな社会」の在り方を垣間見たように感じました