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野良ミケの死

2010-11-25 16:40:40 | 日記
いままでこのブログでもいくつかのテーマをあつかってきた。

その中には「死」をテーマにしているものもある。

自分でも不明なのだが、私にとってブログを書くということは、
すごく大きな意味があるのだろう。
だから気が重くなるようなテーマにもあえて取り組んできた。
なぜなら、書くことによって乗り越えられることがいくつもあるからだ。
怒り、不信、悩み…。
それらは、書くことによってなんらかの乗り越えが可能だと思う。

だけど「死」とか、「自然」に関してはそうもいかない。
どんなちっぽけな死でも、ごく日常の自然の摂理にしても、
人間の心情をさしはさむ余地がなく、図り知れないところがあり、
想像力が行きつかない。
結局、ある側面をクローズアップして、そのそこに横たわる広大な
暗闇が存在することを暗にほのめかすしか手段がない。
これは大変にもどかしい作業でもある。

だから今回の記事も書かずに心にしまっておこうと思っていた。
だが、今日、そのことを思い起こさざるを得ない出来ごとがあったので、
敢えて書くことにする。


11月21日は休日で一日中家にこもって一人作業をしていた。
気がつけば、夕方の6時半。
表では「ちびクロ」の鳴き声が聞える。
いつものように、奴のために家の猫どものあまりとプラスアルファを
皿に盛り、玄関に差し出した。

その時、どうもちびクロの立ち位置がいつもと違う。
まあ、気にするまでもないと、餌を食べ始めるところを確認してから、
自分のごはんを買いにゆこうと、自転車に乗る。

そこで、道のわきに横たわる猫をみた。

「くそっ! まじかよ!!」

見ないことにしたかった…。
だから、知らん顔をして、自転車をこぎ出した。

スーパーにいく途中、自転車をこぎながら、

「ただ、寝ていただけさ…」とつぶやいていたが、

くやしくて体が震えてきた。

「ちくしょう!!」

今きた道を引き返した。

横たわる猫。

「野良ミケだ!」

静かに、眠っているように横たわる猫。

小さな頭のまわりに血だまりができている…。

それでも「寝てるだけだよな。」と話しかける。

「………ちくしょう!!」

あわてて、保健所に電話したが、今日は休みだ。
(怒りのやり場がなく、守衛さんに向かってどなってしまった。)

家の中に入り、猫一匹が収まる紙袋をさがす。
ビニール袋だと、みんなにみられてしまう。
それはさすがにしのびない。

そうっと、猫をもちあげる。いつの話なのだろう…。
まだ血がかわいていない。そして、頭から血がしたたりおちる。

静かな雨のような音がする、軽い!…。
軽い! 軽い! 軽い! 軽い! 軽い!!!!!!

麻紐で死体の入った袋を丁寧に結ぶ。

無我夢中だった。その後はあまり覚えていない…。

気がつけば、布団にもぐりこんでいた。


今日、となりのおばさんがお礼をいいにきた。
猫の死体をみかけた子供がおばさんに報告したらしい。
目に涙をいっぱいにためている。
もう、10年以上、近所に住み着いていたミケだったという。
毎日せっせと餌をあげていた人だ。
子供は白い猫だといったが、ここ2、3日ミケが姿を現さないので
事実を悟ったようだ。

亡骸を見なかったのが、せめてもの救いだと思う。


今、こうしてこのブログを書いている時間、
いつもならば、となりのおばさんの素っ頓狂な猫撫で声が聞えてくるはずだ。
今日は静かに、ただ静かに空に夕焼けを映している。
もう日がくれる、か…。

妻のために買った花を一輪、道端にたむけた。
猫好きの妻も今日は許してくれると思う。

「さよなら、ミケ」


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