沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

中北組合に対する沖縄県の責務を考える(その5)※法令違反の是正と法令遵守

2016-06-22 08:03:44 | ごみ処理計画

その5は、法令違反の是正と法令遵守について書きます。

まず、下の画像(2つ)をご覧下さい。

1つ目の画像は、環境省の財産処分の承認基準から広域化計画に伴う財産処分に関する部分を抜粋した資料です。なお、防衛省の承認基準にはこのような記述はありませんが、法制度上、防衛省も環境省と同じ基準になるはずです。

2つ目の画像は、財産処分に関する浦添市と中北組合の事務処理を整理した資料です。

財産処分承認基準(環境省)

浦添市と中北組合が広域組合を設立すると、それまで所有していた既存施設(財産)は広域組合に無償譲渡することになりますが、その場合は関係府省庁に届出を行えば財産処分の承認があったものとして取り扱うことになっています。ただし、広域組合は、①譲渡前と同様に所有財産を使用して、②善良な管理者の注意をもって所有財産を管理しながら、③効率的に所有財産を運用しなければならないことになります。  

浦添市と中北組合は平成31年度に広域組合を設立する予定で事務処理を行っているので、それまでには財産処分の届出を行うことになります。その場合、浦添市は環境省、中北組合は防衛省に届出を行うことになります。なお、広域組合に無償譲渡した既設施設には、それまでと同様に地方財政法第8条の規定が適用されることになります。

このことは、「広域処理」が中北組合の「不適正な事務処理」に対する「免罪符」にはならないことを意味しています。

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下の画像は、中北組合が溶融炉を休止したまま焼却炉の長寿命化を行わずに広域組合に対して溶融炉と焼却炉を無償譲渡した場合を想定して作成した資料です。

中北組合が防衛省に対して届出を行うときには地方財政法第8条の規定に基づいて溶融炉と焼却炉の「所有の目的に応じた効率的な運用に対する施策」を決定しておかなければなりません。また、広域組合を設立する場合はごみ処理施設に対する施策が廃棄物処理法の基本方針に適合していなければならないことになります。したがって、中北組合は休止している溶融炉を再稼動して焼却炉とセットで長寿命化を行う前提で届出を行うことになります。

しかし、中北組合が所有している溶融炉の再稼動と長寿命化は浦添市の財政に累を及ぼすような施策になるので地方財政法第2条第1項の規定に違反することになります。また、広域組合に無償譲渡してから溶融炉を再稼動して長寿命化を行う場合は広域処理のスケジュールが大幅に遅れることになるので、広域処理は白紙撤回ということになってしまいます。

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【地方財政法第2条第1項】

地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。

下の画像は、中北組合が溶融炉を廃止する場合の補助金適正化法第22条の規定に基づく財産処分の承認手続について整理した資料です。ただし、溶融炉の経過年数(補助金の交付の目的に従って実際に溶融炉を稼動していた期間)が10年を超えているという前提で整理しています。

中北組合が広域組合を設立する前に溶融炉を廃止すれば、中北組合が広域組合に無償譲渡する既存施設は焼却炉と建物(附帯施設を含む)だけになります。しかし、溶融炉のために整備した建物部分については、補助金の交付の目的(焼却灰の資源化と最終処分場の延命化)と異なる目的で使用することになるので、転用(目的外使用)に関する財産処分の承認手続が必要になります。

ただし、その場合は「包括承認事項」の適用を受けなければなりません。なぜなら、そのまま承認手続を行った場合は建物部分に利用した補助金(建物の残存年数に応じた金額)を返還しなければならないからです。

なお、中北組合の行政区域内には溶融炉と同様の社会資源(最終処分場等)が充足していないので、溶融炉の廃止に当って「包括承認事項」の適用を受けるためには自主財源により代替措置を講じなければならないことになります。その上で、溶融炉を解体撤去して建物部分の有効活用を図る必要があります。ただし、溶融炉の解体撤去と建物部分の有効活用については計画を作成して報告すれば良いことになっています。

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下の画像は、平成27年度における中北組合の事務処理の実態を整理した資料です。

 財産処分承認基準(防衛省)

中北組合は平成26年度から溶融炉を休止していますが、補助金適正化法第22条の規定に基づく財産処分(建物部分の転用)の承認手続を行っていません。また、溶融炉を廃止するための代替措置も講じていません。

なお、防衛省の場合は2つ目の画像にあるように設備の休止(修繕等を行うために休止する場合を除く)を行う場合は建物の転用に関する財産処分の承認手続が必要になる(一時使用に該当しない場合は財産処分に該当することになる)ので、中北組合は補助金適正化法第22条の規定に違反していることになります。

また、溶融炉の休止は所有財産を所有の目的に応じて効率的に運用していないことになるので地方財政法第8条の規定に違反していることになります。

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下の画像(3つ)は、地方財政法第8条の規定に関する考え方を整理した資料です。

【地方財政法第8条】

地方公共団体の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて最も効率的に、これを運用しなければならない。

地方財政法第8条の規定は国が長寿命化に関する施策を推進するための根拠法になっているので、溶融炉の処分制限期間が経過している場合であっても、所有している場合は効率的な運用を図らなければならないことになります。したがって、溶融炉を休止している中北組合は地方財政法第8条の規定に違反していることになります。ただし、溶融炉に対する補助金返還義務は消滅しています。

なお、中北組合が溶融炉を休止していても国や県が地方財政法第8条の規定に適合していると判断した場合は、国内で10年以上稼動している数多くの溶融炉が休止することになります。そして、国や県から長寿命化を要請されても拒否することができるようになります。

ちなみに、那覇市南風原町環境施設組合は、現在、平成18年度に整備したごみ処理施設(焼却炉+溶融炉)の長寿命化を実施するための入札に着手していますが、同組合も中北組合と同じように溶融炉を休止して長寿命化を拒否することができることになります。そして、那覇市民と南風原町民は溶融炉の長寿命化に関する入札の中止を求めることができることになります。

地方財政法第8条の規定は、地方公共団体が所有している財産に対して適用されるので、溶融炉を廃止すれば適用されないことになりますが、その場合は廃棄物処理法の基本方針に適合しない施策になるので、国の補助金を利用する権利を自ら放棄することになります。

このように、中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止すれば廃棄物処理法の基本方針に適合する施策になるので、国の補助金を利用する権利を確保することができます。

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下の画像は、補助金適正化法第22条の規定を整理した資料です。

【補助金適正化法第22条】

補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

このように、補助事業者(地方公共団体)が補助事業により取得した財産(建物部分)を補助金の交付の目的に反して使用(転用)する場合は各省各庁の長の承認を受けなければならないことになっています。

上の画像は、補助金適正化法第22条の但し書きの部分に該当することになります。建物の処分制限期間を経過していれば無条件で但し書きの部分に該当することになりますが、建物の処分制限期間を経過していない場合は「包括承認事項」の適用を受けるための施策が必要になります。ただし、中北組合は①の要件を満たしていないので、②の要件を満たす施策を行わなければならないことになります。

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下の画像は、中北組合が溶融炉を休止したまま防衛省に対して既存施設の無償譲渡の届出を行った場合を想定して作成した資料です。

このように、中北組合は溶融炉の休止に伴う財産処分の承認手続を行わないまま、既存施設の無償譲渡に関する届出を行うことになるので、先に法令違反を是正しなければ届出は認められないことになります。

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下の画像は、中北組合が既存施設の無償譲渡に関する届出を行う前に法令違反を是正した場合を想定して作成した資料です。

溶融炉の廃止に当って「包括承認事項」が適用されない場合は、建物部分に利用した補助金(残存価額に相当する金額)を返還すれば承認されることになりますが、代替措置を講じていないので、焼却灰の民間委託処分を続けることになります。ただし、その場合は廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理を行っていることになるので、広域組合を設立しても国の補助金を利用することはできないことになります。また、焼却炉については長寿命化を行っていないことになるので、広域組合を設立する前に広域処理は白紙撤回ということになります。

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下の画像は、中北組合が平成31年度に広域組合を設立して既存施設を無償譲渡するために適正な事務処理を行った場合を想定して作成した資料です。

 このように、広域組合を設立する前に、①中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止して、②焼却炉の長寿命化を実施していれば、③広域組合は広域施設を整備するまで地方財政法第8条の規定を遵守して事務処理を行っていくことができます。ただし、④平成29年度に代替措置を講じて溶融炉を廃止しなければ、⑤平成30年度に国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことはできないことになります。

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下の画像は、広域組合を設立するために平成30年度に地域計画を策定することを前提にして、浦添市と中北組合の適正な事務処理を整理した資料です。

【地方財政法第2条第1項】

地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。

 【廃棄物処理法第6条第3項】

市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。

法令に違反して事務処理を行っている市町村が「地域計画」を策定することはできません。しかし、法令を遵守して事務処理を行っている市町村であっても、策定する「地域計画」が法令に違反している場合や廃棄物処理法の基本方針に適合していない場合は不適正な「地域計画」になってしまいます。したがって、その場合は広域処理を推進することは不可能になります。

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下の画像の1つ目は、平成28年度からスタートした第四期沖縄県廃棄物処理計画から市町村との連携・協力に関する部分を抜粋したものです。そして、2つ目の画像はこれまでに何度も使用している廃棄物処理法の規定に基づく沖縄県の責務に関する資料です。

このように、沖縄県は浦添市と中北組合に必要な技術的援助を与えて広域処理を促進する立場にあります。また、浦添市や中北組合と連携・協力を図りながら広域処理を促進する立場にあります。

このように、沖縄県には県の第四期廃棄物処理計画の達成に必要な措置を講じる責務があります。そして、浦添市や中北組合に対して適正な技術的援助を与える責務があります。

なお、第四期沖縄県廃棄物処理計画については廃棄物処理法第5条の6の規定に基づいて国にも計画の達成に必要な措置を講じる責務があります。 

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下の画像は、沖縄県が廃棄物処理法の規定に従って中北組合に対して適正な事務処理を行った場合を想定して作成した資料です。 

沖縄県が浦添市と中北組合との広域処理を促進するためには、まず、中北組合の法令違反を是正しなければなりません。ただし、中北組合は防衛省の補助金を利用してごみ処理施設を整備しているので、補助金適正化法第22条違反については沖縄防衛局を通じて是正の要求を行ってもらうことになります。

沖縄防衛局には廃棄物処理法第5条の6の規定が適用されるので、県が防衛局に対して是正の要求に関する事務処理を要請して防衛局が中北組合に対して是正の要求を行うことは、県と国が第四期沖縄県廃棄物処理計画の達成を図るための措置になると考えます。

なお、中北組合の地方財政法第8条違反については、沖縄県が直接、中北組合に対して是正の勧告を行うことができます。ただし、防衛局による是正の要求や県による是正の勧告は平成28年度中に行わなければ、目的を達成することはできないことになります。

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下の画像は、沖縄県と沖縄防衛局が平成28年度中に廃棄物処理法の規定に従って適正な事務処理を行った場合を想定して作成した資料です。

消去法で考えると、中北組合が平成29年度に代替措置を講じて溶融炉を廃止しない場合は、浦添市との広域処理を促進することはできないことになります。したがって、県が中北組合に対して法令違反の是正に関する事務処理を行う場合は、同時に既存施設に対する適正な施策についても技術的援助を与える必要があると考えます。

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以上が、法令違反の是正と法令遵守に関するこのブログの管理者の率直な意見です。

最後に下の画像をご覧下さい。

これは、浦添市と中北組合との広域処理を促進するために沖縄県による適正な技術的援助が求められる重要計画を整理した資料です。

下の資料のうち、「地域計画」については、そもそも、市町村が国と県と協議をして策定する計画なので、適正な技術的援助が行われると考えています。

しかし、一番上の「行動計画」は各市町村(一部事務組合を含む)が主体的に策定する計画であり、しかも平成28年度が策定期限になっています。そして、国は県に対して各市町村が平成28年度までに「行動計画」を策定するように要請しています。

したがって、沖縄県にとってはこの「行動計画」が第四期沖縄県廃棄物処理計画に従って浦添市と中北組合との広域処理を促進するための最重要計画になると考えます。

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インフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」には、既存施設の維持管理に関する中長期的なコストの見通しを記載することになっています。そして、更新コストに関する見通しも記載することになっています。この場合の更新コストとは広域施設を整備するためのコストになります。

しかし、平成28年度中に浦添市と中北組合が法令を遵守した適正な「行動計画」を策定するためには、平成28年度の上半期において、広域処理を前提とした中北組合の既存施設に対する具体的な施策を決定しなければならないことになります。 

もちろん、その具体的な施策は法令違反を是正する施策でなければならないことになります。

その6に続く