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沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

改めて広域処理における浦添市のリスクを考える(6)

2016-03-07 17:18:59 | ごみ処理計画

本日2本目の記事です。

浦添市が中北組合との広域処理を推進する場合は中北組合がごみ処理計画を見直す必要があることは既に書きました。

そこで、廃棄物処理法の規定と国の補助制度に基づいて中北組合がごみ処理計画を見直す時期を考えてみます。

浦添市にとって中北組合のごみ処理計画の見直しが遅れることは中北組合のごみ処理施設(焼却炉と溶融炉)に対する施策も決まらないことになります。

そうなると、広域処理に関する協議を進めることもできなくなるので浦添市にとっては大きなリスクになります。

とは言え、浦添市が中北組合のごみ処理計画を見直すことはできません。 

法制度上、広域処理を推進する場合であっても中北組合のごみ処理計画を見直すことができるのは中北組合だけです。

なお、中北組合のごみ処理計画の見直しに当たって適用される廃棄物処理法の規定は第6条第3項になります。

★廃棄物処理法第6条第3項

市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。

この場合の「一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては」の部分は、中北組合にとっては「一般廃棄物処理計画を見直すときは」という意味になります。

という前提で下の画像をご覧下さい。

 

原寸大の資料(画像をクリック)

上の画像の左にあるように、浦添市が推進する広域処理のパートナー(A組合)が、廃棄物処理法の基本方針に適合するごみ処理計画を策定している場合は、両方のごみ処理計画の調和が保たれているので一般的なセオリーに従って協議会を設立(覚書を締結)して、国の補助制度に基づいて廃棄物処理法の基本方針に適合する「地域計画」を策定することができます。

しかし、上の画像の右にあるように、浦添市が廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画(浦添市のごみ処理計画と相反する計画)を策定している中北組合と協議会を設立(覚書を締結)して地域計画を策定する場合は、ごみ処理計画の調和がまったく保たれていないので変則的なセオリーになります。

廃棄物処理法第6条第3項の規定は、市町村の「責務」ではなく、「努力規定」になります。しかし、市町村には「努力」をする「責務」はあります。

また、市町村には自らごみ処理計画を策定する「責務」があります。そのことは、廃棄物処理法第6条第1項の規定で定められています。

★廃棄物処理法第6条第1項

市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。

では、中北組合のごみ処理計画の見直しは誰が行うのか?

もちろん、中北組合です。浦添市ではありません。

しかし、中北組合がごみ処理計画の見直しに当たって浦添市のごみ処理計画との調和を保つために何の努力もしないで協議会を設立(覚書を締結)した場合はどうなるか?

浦添市と協議をしながら中北組合がごみ処理計画の見直しを行うことになります。しかし、その場合は浦添市の意向が強くなります。なぜなら、中北組合は見直し案を考えていないことになるからです。

では、中北組合はごみ処理計画の見直しに当たってどのような「努力」をすればよいのか?

答えは簡単です。ごみ処理は市町村の自治事務であり、ごみ処理計画を策定する(見直しを含む)のは区域内のごみ処理を行っている市町村です。

したがって、中北組合は浦添市に対して暫定的な見直し案、又は複数の見直し案を提示する「努力」をすることになります。その上で、浦添市と協議を行うことになります。

しかし、中北組合が浦添市との広域処理を推進するために協議会を設立(覚書を締結)する場合は、少し様子が違ってきます。なぜなら、溶融炉を再稼動するという見直し案は協議の対象にならないからです。また、溶融炉を休止したまま焼却灰の民間委託処分を継続するという見直し案(実際は見直し案ではなく継続案)も協議の対象にならないからです。

したがって、中北組合は、溶融炉の再稼動と焼却灰の民間委託処分を回避する見直し案を浦添市に提示しなければならないことになります。

溶融炉の再稼動を回避する方法は簡単です。休止を続けるか廃止すればOKです。

しかし、焼却灰の民間委託処分を回避することは簡単ではありません。けれども、中北組合がごみ処理計画を見直して本気で浦添市との広域処理を推進するのであれば、浦添市に対して焼却灰の民間委託処分を回避する施策を提示しなければなりません。

とは言え、最終処分場を整備していない中北組合が溶融炉の再稼動を回避して焼却灰の民間委託処分を回避する方法は1つしかありません。

それは、廃棄物処理法の基本方針に適合する代替措置を講じて溶融炉を廃止する方法です

代替措置を講じるための具体的な方法は1つでも2つでも構いません。それは、協議会を設立(覚書を締結)してから、文字通り浦添市と協議をして決めれば良いことです。場合によっては、浦添市からもっと良い方法が提示されるかも知れません。

いずれにしても、中北組合がごみ処理計画を見直す場合は、代替措置を講じて溶融炉を廃止することになります。

誰が考えても、それ以外に最終処分場を整備していない市町村が溶融炉の再稼動と焼却灰の民間委託処分を回避することはできません。

これは、浦添市と協議をする以前の話です。

そして、中北組合が広域処理を検討課題にした瞬間から決まっていることです。

言うまでもなく、市町村のごみ処理計画(基本計画のことです)は、市町村の中長期的な計画の方向性を示すものなので、方向性が決まれば直ちに見直すことができます。

したがって、法制度上、中北組合は協議会を設立(覚書を締結)する前にごみ処理計画の見直しを行って浦添市に対して方向性を示さなければならないことになります。

その上で、協議会を設立(覚書を締結)して浦添市と代替措置を講じるための具体的な方法を協議して「地域計画」を策定することになります。

このことは、ごみ処理計画の見直しに当たって、中北組合には溶融炉の再稼動しか選択肢がない場合(選択肢が1つしかない場合)を想定すれば容易に理解できるはずです。

では、実際に中北組合がごみ処理計画の見直しを行わずに協議会を設立(覚書を締結)した場合はどうなるか?

このブログの管理者がシミュレーションしてみました。下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

このように、協議会の設立(覚書の締結)はできないというのがこのブログの管理者の結論です。しかし、これでは広域処理が「白紙撤回」になってしまいます。そこで、最後に協議会を設立(覚書を締結)できるパターンをシミュレーションしてみます。

原寸大の資料(画像をクリック)

※中北組合が自主的(主体的)にごみ処理計画を見直さない場合は、広域処理が「白紙撤回」になりますが、見直しておけば、万が一、広域処理が「白紙撤回」になった場合であっても、①溶融炉の再稼動を回避して、②国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことができます。また、③国の補助金を利用してごみ処理施設の更新や新設を行うことができます。したがって、中北組合がごみ処理計画を見直さない理由はないと考えます。

※中北組合が協議会の設立(覚書の締結)に当たって自主的(主体的)にごみ処理計画を見直さない場合は、ごみ処理計画を見直す努力をしたくないという「理屈」になります。そして、浦添市にごみ処理計画の見直しを委ねるという「理屈」になります。しかし、そうなると中北組合は自治事務を放棄するという「理屈」になります。


改めて広域処理における浦添市のリスクを考える(5)

2016-03-07 09:51:45 | ごみ処理計画

浦添市にとって、中北組合のごみ処理計画は「想像を絶するごみ処理計画」になるはずです。

なぜなら、同じ「焼却炉+溶融炉」方式を採用している自治体ですが、中北組合は浦添市とまったく逆のごみ処理計画を策定しているからです。

したがって、浦添市が広域処理を推進する場合は、まず、この問題を解決しなければなりません。

そこで、今日は、中北組合のごみ処理計画の見直し案について考えてみます。

下の画像をご覧下さい。

 原寸大の原稿(画像をクリック)

上の画像は、昨日ブログにアップした画像に中北組合のごみ処理計画の見直し案を追加したものです。

浦添市との広域処理に当たって中北組合がごみ処理計画を見直さなければ、その時点で広域処理は「白紙撤回」になります。なぜなら、広域施設の整備に当たって浦添市も国の補助金を利用することができなくなってしまうからです。

まず、一番上の長寿命化計画ですが、中北組合のごみ処理施設は平成15年度に整備した比較的新しい施設なので、まだ老朽化はしていません。したがって、廃棄物処理法の基本方針に従って長寿命化計画を策定することになります。広域施設を1市2村が自主財源により整備するのであれば、このまま長寿命化を行わずに自主財源により老朽化対策を行っていけば良いことになりますが、中北組合のために浦添市がそこまでする理由はありません。また、中北組合の焼却炉は広域施設が完成するまでの間は重要な設備になるので大切に管理をして行く必要があります。

なお、平成28年度は国のインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」の策定期限になっているので、ごみ処理計画の見直しに当たって長寿命化計画の策定は必須条件になります。

したがって、上から2番目の焼却炉の長寿命化の実施も必須条件になりますが、中北組合の焼却炉は平成28年度で供用開始から14年目になるので既に長寿命化を実施する時期を迎えています。ただし、まだ計画を策定していないので少なくとも来年度には計画を策定する必要があります。

そうなると、問題になるのが上から3番目の休止している溶融炉の存在です。

焼却炉の長寿命化は事業費を削減するために国の補助金を利用して行うことになります。沖縄県の場合は内地に比べて補助率が高いので、財源を確保する上では国の補助金を利用することが必須条件になります。また、国の補助金を利用することによって地方債も発行しやすくなります。このことは、住民はともかく市町村の職員(首長を含む)であればほぼ全員が承知しているはずです。また、議会も承知しているはずです。

しかし、溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行うごみ処理計画を策定している場合は焼却炉の長寿命化に当たって国の補助金を利用することはできません。なぜなら、ごみ処理計画が廃棄物処理法の基本方針に適合していないからです。

では、どうすれば良いか?

選択肢は2つしかありません。(1)休止している溶融炉を再稼動するか、(2)代替措置を講じて溶融炉を廃止するかの2つに1つです。

しかし、このブログで何度も書いていますが、中北組合の溶融炉については再稼動は最悪の選択肢になります。なぜなら、国内において稼動している事例や長寿命化が行われた事例のない溶融炉を国内で初めて長寿命化することになるからです。

これは、中北組合にとっても浦添市にとってもかなり勇気のいる施策になります。

万が一、長寿命化ができない場合は、焼却炉の長寿命化を自主財源により行うことになります。また、長寿命化ができたとしても、事故や故障等で使用できなくなった場合は、自主財源により新たな溶融炉を整備しなければならないことになります。補助金を返還して焼却灰の民間委託処分を再開するという選択肢もありますが、それでは国の補助目的である長寿命化と焼却灰の資源化を達成することはできません。したがって、溶融炉だけでなく焼却炉の分も補助金を返還しなければならないことになります。

しかも、補助金を返還して焼却灰の民間委託処分を行う場合はごみ処理計画を見直さなければならないことになります。ところが、ごみ処理計画を見直すと廃棄物処理法の基本方針に適合しない計画になるので、今度は広域施設の整備に当たって国の補助金を利用することができなくなってしまいます。

このように、中北組合の溶融炉を再稼動するという選択肢は、ほとんどギャンブルに近い選択肢になります。

そうなると、上から3番目の休止している溶融炉については(2)の代替措置を講じて廃止する選択肢しか残っていないことになります。この代替措置については幾つかの方法がありますが、今の問題はその方法を決めることではなく、まず、ごみ処理計画を見直すことにあります。

したがって、溶融炉については代替措置を講じて廃止することが必須条件になります。

その上で、どのような方法で代替措置を講じるかを1市2村において決めることになります。

実は、中北組合のごみ処理計画の見直しに当たって、この問題さえ解決すれば他の問題はなくなることになります。なぜなら、ごみ処理計画としては浦添市の計画とほぼ同じものになるからです。

広域処理を行う場合は廃棄物処理法の規定により構成市町村のごみ処理計画の調和を保つように努めなければなりません。しかし、溶融炉を廃止しても代替措置を講じれば1市2村のごみ処理計画の調和は保たれていることになります。

では、中北組合がごみ処理計画を見直したとして、代替措置を講じる方法をどのようにして決めれば良いのか?

実は、この問題もそれほど難しい問題ではありません。このブログの管理者は琉球大学と少し関係がありますが、琉球大学にはそのノウハウがあることを知っています。そして、沖縄県にはそのノウハウがないことも知っています。

したがって、この問題(代替措置を講じる方法)については琉球大学から技術的援助を受けることによって比較的簡単に解決できることになります。

なお、代替措置については、市町村の自治事務に関することなので、沖縄県にノウハウがない場合であっても法令に違反しない代替措置であれば、実施に当たって県の許可等は不要になります。もちろん、環境省の承認等も不要になります。

ちなみに、市町村には関係法令に対する自主解釈権があります。そして、琉球大学には法学部もあるので、国や県の助言を受ける前に、まず、市町村としての法令解釈をしっかりと固めておく必要があります。

なぜなら、国や県の職員は県の法定受託事務(産業廃棄物の処理等)については詳しいですが、市町村の自治事務(一般廃棄物の処理等)についてはあまり詳しくないからです。

このブログの管理者の経験によると、国や県の職員の中には県の法定受託事務と市町村の自治事務を混同して市町村に助言を与えている職員がたくさんいます。特に、担当窓口の職員の中に多い傾向があります。

したがって、市町村が市町村の自治事務に対して安易に国や県に助言を求めると間違った助言を受ける可能性があります。

以上により、広域処理における浦添市のリスクについては、国や県ではなく琉球大学の技術的援助を受けることによって最少化することができると考えます。

なお、中北組合が溶融炉の廃止に当たって代替措置を講じることになった場合は、浦添市の溶融炉に想定外のトラブルが発生したときや溶融スラグや溶融飛灰の利用が困難になった場合にも、同じ方法で代替措置を講じることができるようになります。また、広域組合におけるごみ処理施設の整備に関する選択肢が増えることになります。

その意味でも、中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止することは、浦添市にとって大きなメリットになると考えます。

※市町村のごみ処理は市町村の自治事務なので、困ったときは、まず自分で考えるということにしないと、自治事務と法定受託事務との区別がつかなくなってしまいます。

※地方自治法の規定により国や県は市町村の自治事務に対して助言を与えることはできても指導を行うことはできません。このことは、市町村の自治事務については市町村が自分で考えて自分の責任で処理して行くことを意味しています。このため、法制度上、市町村の自治事務については法令に違反しない限り地域の社会的・経済的な特性に沿った施策を市町村の自主的な判断により行うことができます。このブログの管理者は市町村はこの憲法が保障している市町村の権利(自治解釈権・自治立法権)を、住民の福祉の増進のために大いに活用すべきだと考えます。