本日2本目の記事です。
浦添市が中北組合との広域処理を推進する場合は中北組合がごみ処理計画を見直す必要があることは既に書きました。
そこで、廃棄物処理法の規定と国の補助制度に基づいて中北組合がごみ処理計画を見直す時期を考えてみます。
浦添市にとって中北組合のごみ処理計画の見直しが遅れることは中北組合のごみ処理施設(焼却炉と溶融炉)に対する施策も決まらないことになります。
そうなると、広域処理に関する協議を進めることもできなくなるので浦添市にとっては大きなリスクになります。
とは言え、浦添市が中北組合のごみ処理計画を見直すことはできません。
法制度上、広域処理を推進する場合であっても中北組合のごみ処理計画を見直すことができるのは中北組合だけです。
なお、中北組合のごみ処理計画の見直しに当たって適用される廃棄物処理法の規定は第6条第3項になります。
★廃棄物処理法第6条第3項
市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。
この場合の「一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては」の部分は、中北組合にとっては「一般廃棄物処理計画を見直すときは」という意味になります。
という前提で下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
上の画像の左にあるように、浦添市が推進する広域処理のパートナー(A組合)が、廃棄物処理法の基本方針に適合するごみ処理計画を策定している場合は、両方のごみ処理計画の調和が保たれているので一般的なセオリーに従って協議会を設立(覚書を締結)して、国の補助制度に基づいて廃棄物処理法の基本方針に適合する「地域計画」を策定することができます。
しかし、上の画像の右にあるように、浦添市が廃棄物処理法の基本方針に適合しないごみ処理計画(浦添市のごみ処理計画と相反する計画)を策定している中北組合と協議会を設立(覚書を締結)して地域計画を策定する場合は、ごみ処理計画の調和がまったく保たれていないので変則的なセオリーになります。
廃棄物処理法第6条第3項の規定は、市町村の「責務」ではなく、「努力規定」になります。しかし、市町村には「努力」をする「責務」はあります。
また、市町村には自らごみ処理計画を策定する「責務」があります。そのことは、廃棄物処理法第6条第1項の規定で定められています。
★廃棄物処理法第6条第1項
市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。
では、中北組合のごみ処理計画の見直しは誰が行うのか?
もちろん、中北組合です。浦添市ではありません。
しかし、中北組合がごみ処理計画の見直しに当たって浦添市のごみ処理計画との調和を保つために何の努力もしないで協議会を設立(覚書を締結)した場合はどうなるか?
浦添市と協議をしながら中北組合がごみ処理計画の見直しを行うことになります。しかし、その場合は浦添市の意向が強くなります。なぜなら、中北組合は見直し案を考えていないことになるからです。
では、中北組合はごみ処理計画の見直しに当たってどのような「努力」をすればよいのか?
答えは簡単です。ごみ処理は市町村の自治事務であり、ごみ処理計画を策定する(見直しを含む)のは区域内のごみ処理を行っている市町村です。
したがって、中北組合は浦添市に対して暫定的な見直し案、又は複数の見直し案を提示する「努力」をすることになります。その上で、浦添市と協議を行うことになります。
しかし、中北組合が浦添市との広域処理を推進するために協議会を設立(覚書を締結)する場合は、少し様子が違ってきます。なぜなら、溶融炉を再稼動するという見直し案は協議の対象にならないからです。また、溶融炉を休止したまま焼却灰の民間委託処分を継続するという見直し案(実際は見直し案ではなく継続案)も協議の対象にならないからです。
したがって、中北組合は、溶融炉の再稼動と焼却灰の民間委託処分を回避する見直し案を浦添市に提示しなければならないことになります。
溶融炉の再稼動を回避する方法は簡単です。休止を続けるか廃止すればOKです。
しかし、焼却灰の民間委託処分を回避することは簡単ではありません。けれども、中北組合がごみ処理計画を見直して本気で浦添市との広域処理を推進するのであれば、浦添市に対して焼却灰の民間委託処分を回避する施策を提示しなければなりません。
とは言え、最終処分場を整備していない中北組合が溶融炉の再稼動を回避して焼却灰の民間委託処分を回避する方法は1つしかありません。
それは、廃棄物処理法の基本方針に適合する代替措置を講じて溶融炉を廃止する方法です。
代替措置を講じるための具体的な方法は1つでも2つでも構いません。それは、協議会を設立(覚書を締結)してから、文字通り浦添市と協議をして決めれば良いことです。場合によっては、浦添市からもっと良い方法が提示されるかも知れません。
いずれにしても、中北組合がごみ処理計画を見直す場合は、代替措置を講じて溶融炉を廃止することになります。
誰が考えても、それ以外に最終処分場を整備していない市町村が溶融炉の再稼動と焼却灰の民間委託処分を回避することはできません。
これは、浦添市と協議をする以前の話です。
そして、中北組合が広域処理を検討課題にした瞬間から決まっていることです。
言うまでもなく、市町村のごみ処理計画(基本計画のことです)は、市町村の中長期的な計画の方向性を示すものなので、方向性が決まれば直ちに見直すことができます。
したがって、法制度上、中北組合は協議会を設立(覚書を締結)する前にごみ処理計画の見直しを行って浦添市に対して方向性を示さなければならないことになります。
その上で、協議会を設立(覚書を締結)して浦添市と代替措置を講じるための具体的な方法を協議して「地域計画」を策定することになります。
このことは、ごみ処理計画の見直しに当たって、中北組合には溶融炉の再稼動しか選択肢がない場合(選択肢が1つしかない場合)を想定すれば容易に理解できるはずです。
では、実際に中北組合がごみ処理計画の見直しを行わずに協議会を設立(覚書を締結)した場合はどうなるか?
このブログの管理者がシミュレーションしてみました。下の画像をご覧下さい。
原寸大の資料(画像をクリック)
このように、協議会の設立(覚書の締結)はできないというのがこのブログの管理者の結論です。しかし、これでは広域処理が「白紙撤回」になってしまいます。そこで、最後に協議会を設立(覚書を締結)できるパターンをシミュレーションしてみます。
原寸大の資料(画像をクリック)
※中北組合が自主的(主体的)にごみ処理計画を見直さない場合は、広域処理が「白紙撤回」になりますが、見直しておけば、万が一、広域処理が「白紙撤回」になった場合であっても、①溶融炉の再稼動を回避して、②国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を行うことができます。また、③国の補助金を利用してごみ処理施設の更新や新設を行うことができます。したがって、中北組合がごみ処理計画を見直さない理由はないと考えます。
※中北組合が協議会の設立(覚書の締結)に当たって自主的(主体的)にごみ処理計画を見直さない場合は、ごみ処理計画を見直す努力をしたくないという「理屈」になります。そして、浦添市にごみ処理計画の見直しを委ねるという「理屈」になります。しかし、そうなると中北組合は自治事務を放棄するという「理屈」になります。