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雨月奇譚

2013-10-22 21:17:56 | ゲーム
 『雨月奇譚』はトンキンハウスとウィルが『ジャガーノート』の前に作ったプレステのホラーアドベンチャーゲームです。1996年製なのでさすがに作りや絵柄は古くさいですが、他のどんなゲームにも似ていない雰囲気ややりきれなさが印象的です。

 重病で入院している主人公は飛び降り自殺をしようと病院の屋上へ行きますが、そこで少女に「死んでも楽になんかならないよ」と声をかけられます。少女について行くとお化け屋敷「雨月座」の中に入ってしまい、出口を求めてさまようことになります。そしてそこでは過去の3人の男の人生を追体験することに。この時の3編のストーリーは江戸時代に書かれた上田秋成『雨月物語』をアレンジしたもので、それぞれ「吉備津の釜」「浅茅(あさじ)が宿」「菊花の約(ちぎり)」が原作。中でも「吉備津の釜」は「牡丹灯籠」の原案になった物語。そしてお化け屋敷の中では本編となる「三十年村迷宮奇譚」という本作独自のストーリーが展開します。


オープニングムービーと序盤

 ゲームとしては「見る」「話す」「移動」「アイテム」の4つのコマンドを選ぶだけの単純なアドベンチャーですが、上記の追体験シナリオではザッピングのような進行もあって、ちょっと凝ったものとなっている部分もあります。また、ところどころに3D迷路がありますが、迷路というほど複雑なマップはないので簡単です。ほとんどは雰囲気を味わうだけの仕掛けでしょう。普通にプレイすれば半日もあれば十分クリア可能。やはりホラーアドベンチャーとしての特徴はその雰囲気と展開でしょう。

 お化け屋敷で出てくるお化けは見るからにチープですが、それだけにパカパカと動く様が気持が悪いです。その出し物にはヤマもオチもイミもなく、終いに主人公は楽屋にまで入り込む始末。お化けに扮する役者に対して「出口はどこだ」などと聞き回っていると、座長を捜すはめになります。そのうちに崖を下り、山道を進み、砂漠をさまよい、時間さえループして少女と座長を捜します。その際には通常ではあり得ないような謎を解くことになりますが、そのあたり『ジャガーノート』へと通じているのかも知れません。

 主人公がお化け屋敷や三十年村で見させられる3人の男の人生はいずれも非業の最期を迎えます。しかもそこでは自分からおかしな運命を呼び寄せてばかり。最後に現れる「雨月座」の座長が言うには、これら3人は主人公の前世であり、前世で方向付けられた人生を来世でもなぞっており、それを抜け出すには今すぐ生き方を変えろとのこと。このあたりの会話で、主人公は前世の3人について「馬鹿なことをしているなあ」という感想を述べているので、プレイヤー側もちょっと安心してしまいますが、ところが…。

 気がつくと主人公は病室で目覚めますが、結局は自分の生き方や思考を変えることはできず、その足は病院の屋上へと向かい…。そしてプレイヤーが「馬鹿なことをしているなあ」と思いながらエンディングを観ていると…。

 とにかく最初から最後までやりきれない展開です。普通のホラーではなく、死生観に直接訴えるものなので、まさに「死んでも楽になんかならないよ」という世界。でもそれは、正しく真っ当に生きるべしというメッセージであって、突き落とされはしたけれど前向きに生きてみようという気になることができる、ちょっと気分のいいゲームです。


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