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事務所費問題をめぐる社説について

2007-02-22 01:27:39 | 時事問題
20日、小沢一郎民主党代表は、高額すぎると批判された事務所費の内訳を詳細に公表した。高額であったのは事務所費で不動産を購入したからである。不動産は政治団体(陸山会)が利用するものであり、小沢氏個人には何の権利もないと説明した。

事務費問題は分かりやすい問題であったために(また他に大きな問題もなかったために)21日の大手五紙は社説でこの問題を取り上げた。五つの社説を読んでとても面白かった。五つの社説とも多かれ少なかれ小沢氏の説明を評価していた。なかでも、朝日新聞「小沢氏の一歩 さあ、どうする自民党」や毎日新聞「社説:小沢氏会見 次は自民党が公表する番だ」が、もっともストレートに小沢氏の行為を評価していた。

たとえば、朝日は「政治資金の使途を詳細に公開するのは、新たな疑念や批判を招く可能性もある。それを覚悟のうえで公開に踏み切った小沢氏の決断を評価したい。」とする。これらの社説はタイトルから明らかなように、事務所費で批判を受けている自民党出身の閣僚に対しても公表を迫っている。

さらに毎日新聞は、今回の問題に関して議論されている政治資金規正法の改正論議よりも、公開が先であるとまで述べている。
「自民党からは早速、「巨額な資産を取得した原資は何か。そういう疑問には答えていない」(中川秀直幹事長)といった声が出ている。しかし、自民党はその前にすべきことがある。松岡農相らが事務所費について可能な限り内訳を公表することだ。これまで農相らは、政治資金規正法で内訳は公表するルールになっていないことを理由に説明を拒み、安倍晋三首相も与野党の協議に委ねてきた。もはや、この姿勢では許されまい。
 小沢氏は会見で「首相をはじめ、閣僚、与党幹部も事務所費の公開に踏み切るよう希望する」と語った。まず、与党もそれに応じたうえで、双方の説明が妥当か、堂々と議論すべきだ。規正法の改正論議はその次の話である。」(毎日新聞「社説:小沢氏会見 次は自民党が公表する番だ」)

もっとも毎日新聞は、政治団体が政治資金で不動産を取得することへの疑義は呈している。
「しかし、そもそも「団体代表・小沢氏」と「個人・小沢氏」が文書を交わすというわずらわしい手続きまでして政治献金で不動産取得や秘書寮建設をする必要があるのかという根本的な疑問は残る。
 秘書寮を賃貸でなく、政治団体が土地を取得し建設した点について、小沢氏は「献金してくれた人たちの意思を大事にしたい」と説明し、家賃を払うより、資産が残る分、長期的には有効だとの考えを示した。だが、これだけの資金を集められるのは、ごく限られた政治家であり、多くの国民は「政治献金で都内の土地を取得する」とは想定していなかったのではなかろうか。政党交付金として税金が政党に交付されている今、公私の区別には一段と気をつかわなくてはならないはずだ。」

確かにその通りであり、我々の感覚らすれば賃貸すればいいのに、なぜわざわざ不動産を取得するのかと考えてしまう。この点朝日は小沢氏に甘いのではないか。
「小沢氏は「(秘書寮は)賃貸でもいいが、家賃として献金がなくなってしまう。資産として活用する方が献金を有効に生かせる」と語った。資産の名義は小沢氏になっていても、私的には処分できないよう定めた確認書を公表した。
 政界を引退したら「後進への支援や、ライフワークである日米、日中の草の根交流の基金に充てたい」と言う。」(朝日新聞「小沢氏の一歩 さあ、どうする自民党」)

このように小沢氏の言い分のみを並べている。
これに対して小沢氏に対して厳しい評価をしているのが読売新聞だ([政治とカネ]「小沢さん、前副議長の問題もある」)。読売は、はじめから小沢氏の行為に「政治とカネの問題をめぐる論議に、一石を投じることになるだろうか。」と疑問符をつける。そして公表が遅すぎたと述べて、政局が関連していることを述べる。それならば民主党の方にも問題があるとたたみかける。
「民主党の角田義一前参院副議長の疑惑についても真相を調査し、明らかにすべきだ。在日本朝鮮人総連合会傘下の団体から献金を受けた疑惑は、外国人や外国人団体からの献金を禁じた政治資金規正法に反し、事務所費とは異質かつ遥(はる)かに重大な問題だ。
 角田前副議長の問題を放置することなく、厳正な対応を取ってこそ、民主党への信頼も高まるのではないか。」(読売新聞[政治とカネ]「小沢さん、前副議長の問題もある」)

事務所費とは関係ないが、政治とカネという視点からすれば関係ないとは言えない角田氏の問題を持ち出すのは微妙ではある。しかも寄付は50万円だけだ。しかしクリーンを売り物にしている民主党からすれば、ゆるがせにはできない問題である。朝日が小沢氏を持ち上げ、読売が小沢氏を揶揄するとは、十数年前とは逆転した構図である。何とも皮肉な展開だ。

今後の対策については日本経済新聞が詳しい(「事務所費問題さらに議論を」)。
「…自民党の改革加速議員連盟は先に資金管理団体の不動産取得を全面禁止する提言をまとめている。これを機に政治団体の不動産取得の是非やあり方について、さらに論議を深める必要がある。
 一方、民主党は現在、領収書の添付が義務づけられていない事務所費などにも、1万円超の支出はすべて添付を義務づける規正法改正案を今国会に提出する方針だ。公明党は5万円以上の事務所費に領収書添付を義務づける法改正を主張している。自民党内では領収書添付に消極的な声が多いが、これは透明性を高める有力な手段だろう。事務所費を政争の具にするのではなく、問題点を冷静に検証して、必要な法改正に取り組むことが与野党の責務である。」

さらに産経(【主張】事務所費公表 自浄能力が試されている)は独自の視点で、政治資金に第三者の監査を入れることやネット上での公開を求めている。
「透明性を高める決め手は、公認会計士による外部監査やすべての政治資金についてインターネットで公開する-などだ。いずれの政党が政治とカネの問題に真摯(しんし)に立ち向かい、自浄能力を示せるのかが試されている。」

ネット上に政治資金の収支が公開されれば、これほど私たちにとって喜ばしいことはない。簡単に情報にアクセスでき、情報を分析のために処理することができるからだ。
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